談話室 読者の意見 テーマ「外務省」

産経新聞 平成14年3月16日(土)から

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外務省改革は精神改革から

外国で感じた大使館員の差

人事評価制に民間人導入を

身内の世界で自浄能力なし

親切心かける在外大使館員

仕事の誇りも何もない官庁

人間としての誇りを取り戻せ

大切な機密費 国益に使って

“民間感覚”で改革断行を

今も変わらぬ常識外の役所

国民が求める自主的な外交を

日本局設けて監視体制作れ

外務省改革は精神改革から

小山正義 20 (大阪市)

イギリスの歴史学者、アーノルド・トインビーは「国家滅亡の要因は、

外的の侵入などではなく、国家自身の『自己決定能力の喪失』である」

と論じている。

外務省は、鈴木宗男衆議院議員との関係で、まさに自己決定能力が

喪失したことをまざまざと見せつけた。

北朝鮮の日本人拉致疑惑、不審船事件、中国人の密入国と犯罪の増加など、

どれをとっても可及的速やかに対応すべき問題なのに、外務省は

見てみぬふりをしてきた。

国会議員の圧力に屈してしまう役人たちに期待できるものはない。

外務省はまず、職員の精神構造の改革から手をつけてほしい。

(大学生)

 

外国で感じた大使館員の差

引馬晃一 66 (東京都)

自分の経験を述べたい。私は東南アジアのある国に合弁会社を設立した。

大使館へ事業開始のあいさつに赴いた際、対応した館員は、

事業の説明を一応聞いた後、

帰りがけに「われわれは日本の国の代表であり、一企業には関係ない。

大使館に迷惑のかからないようにしてほしい」と、いかにも

何をしにきたのか、と言わんばかりの対応であった。

数ヵ月後、私の会社にドイツ大使館員が数人の民間人を連れて訊ねて来た。

「この度、わが国の企業が当地に進出したので、よろしく協力してほしい」

とのあいさつであった。

日本とドイツの大使館員の対応の差に唖然とした。

われわれは額に汗し、納税を行い、その税金をもって外交のプロである

外交官に職務を付託しているのである。

外務官僚は公務員としての自覚が欠如しているのではないか。

(会社役員)

 

人事評価制に民間人導入を

篠原昌史 72 (栃木県)

相次ぐ不祥事は根底に「外務省は他省より格が上」の特権意識があるからだろう。

綱紀も緩みきっていたのだ。あれだけの事件ならみな知っていたはずだが、

自浄作用が機能しなかった。

有能なノンキャリアが才能を私利私欲の充足にあてていた。

佐藤優・全主任分析官は悪者視されているが、あのエネルギーをエリート組も

見習うべきであったし、彼の能力を生かせなかったことも情けない。

幹部だけでなく民間人有識者を入れた人事評価制度が必要ではないか。

日本は大国として米国、中国などと激しくやり合う機会が増えている。

骨太の幹部もいるはずだ。近代の歴史感覚で堂々と理論武装し、

独立国の主張を展開してほしい。

(会社役員)

 

身内の世界で自浄能力なし

池田閏一 65 (長野県)

中央官庁で明治以来、名称が変わっていないのは、外務省だけ。

それだけに、外務省は行政改革に関係ない「聖地」であった。

国民にとっても、外交政策は日米安保の枠組みの中にあり、

関心も薄かった。国会議員にすら「外交は金にも票にもならない」

とみられ、族議員もいないとされてきた。

ところが、昨年、外務省職員による機密費詐取事件などで、税金の

私的流用などを知り、唖然とした。

そして、鈴木宗男議員と外務省官僚との癒着による疑惑の続出。

国民は怒り心頭である。

外務官僚は二代にまたがっている人たちも多く、他の省庁に比べ

身内の世界ともいわれ、自浄能力に乏しかった。

外務省を再生させるためには、膿を全て出し切って再出発し、

国民の信頼を回復することが一番であると思う。

(団体嘱託)

 

親切心欠ける在外大使館員

田中誠司 66 (鳥取県)

十年ほど前、メキシコを旅行中の息子から「手持ちの旅費が

不足しそうなので、送金してほしい」と言ってきた。

銀行に相談すると、当時のメキシコは経済的に厳しい状況で、

日本からの送金が現地銀行に入金されても引き出すのに二、三

週間もかかると言われた。

思い余ったあげく、メキシコの日本大使館に電話をして、

事情を説明し、大使館あてに送金するので、息子に渡してほしいと、

何度も平身低頭する思いでお願いした。

ところが、大使館員は頭ごなしに、無謀な旅をさせた親の責任を

追求、なかなか応じてくれない。

大使館にとっては、不注意な一旅行者のために「なんでそんなことを

しなければならないのか」というところだろうが、外国で困っている

日本人旅行者を見殺しにするような態度だった。

もう少し親切心がないものかだろうかと、今でも胸にひっかかっている。

(元公務員)

 

仕事の誇りも何もない官庁

広瀬義雄 65 (広島県)

この役所について考えると悲しくなります。仕事の内容を考えると、

外務事務所の名がふさわしいとさえ思えるほどです。

国の存亡と名誉のかかった宣戦布告さえ、まともにできず、あまつさえ

戦後、彼らが次官にまで出世して、勲章をもらっていることを見ても、

また、今回の事柄を見ても、外務省には戦前から現在にいたるまで、

仕事の誇りも自覚も自信もないのです。

日本は建国以来、国の存亡にかかわる外交は数例を除いてなく、

正直と中庸を好む国民性のためか、欧米のように駆け引きを駆使し、

国益を守ることが苦手です。

しかしながら、貿易立国を運命付けられ、紛争解決策としての

戦争を放棄した日本には、諸外国に勝る外交が必要です。

根拠のないエリート意識を捨てゼロからスタートする心構えで、

国益を念頭に再生してもらいたいと思います。

(無職)

 

人間としての誇りを取り戻せ

青木恭子 61 (神奈川県)

「誇り」。外務省に必要なものは、この一語に尽きるのではないだろうか。

たしかに、高いハードルを越えて外交官になり、自分たちはエリートだと

いうプライドはあるだろう。

だが、国家としての誇り、外務省としての誇り、何より人間としての

誇りが感じられない。

外交官は一人ひとりが国家を代表することが多い。つまり個人イコール

国家でもある。卑屈になることなく、逆に見下すこともなく、国益と

自国民、自国の将来を大切にする外交のプロ。そうなることが求められ、

それができる素材と見込まれたからこそ、外務省に入ることができたのだろう。

外務省の悩みの種だった政治家の過干渉、せっかくの素材を腐らせてきた

キャリア制度の弊害、理不尽な慣習などは、川口順子外相の下、

少しずつ変わることを期待する。世間の厳しい視線を受け止め、

日本人が承継してきた人としての誇りを取り戻してほしい。

(主婦)

 

大切な機密費 国益に使って

桑田幸代 59 (大阪府)

国民政治の舞台裏では、一国の運命を握る情報がやり取りされているという。

そんな舞台裏にアプローチし、何らかの工作を仕掛けるのに要する

経費が機密費である。

村山内閣当事、内閣官房長官を務めた野坂浩賢氏が、官房長官室の金庫に

預かった機密費を生々しく証言している。

当事八千万円の現金があり、五百万円から一千万円もの大金が使われる

日も有り、翌日には補充されていたという。

問題は使途。国会議員の海外視察の餞別として、若手には三十万円、

ベテランには百万円を贈るのが慣例になっていたそうだ。

いくら領収書なしで、帳簿にも載せない”隠し金”といっても税金である。

国益のため使ってもらいたい。

(会社員)

 

“民間感覚”で改革断行を

前野勝彦 36 (香川県)

相次ぐ不祥事を白日の下にさらし、鈴木宗男衆議院議員の暗躍ぶりを

あぶりだした田中真紀子前外相の”腕力”に拍手を送る人が多い。

川口順子外相も「特定の政治家の不当な圧力の排除。外務省の体質や

仕事ぶりは一般社会の常識から外れている。外交は官邸と連絡をとりながら

遂行する」と述べている。元官僚であることを指摘されると、心外そうな表情で

「七年間、民間会社に勤めた経験を生かす」と切り返している。

そして民間らしい発想を「速やかな人事の発令」と「期限を切った調査報告」

に発揮した。また、「顧客(国民)の満足」「コスト意識」という言葉を

使って、外務省改革になみなみならぬ意欲をみせている。

改革を更に前進させてほしい。

(教員)

 

今も変わらぬ常識外の役所

中沢知造 48 (香港在住)

香港に長年住んで、不動産関係の仕事をしている。時には在香港領事館の

お世話になることがある。ここにはチョビひげもおればタワシを鼻の下に

くっつけた様なひげの領事もいた。

服装にうるさいのがお役人なのに、人相・風体が良くない。

どう見ても堅気には見えないし、これまでまともな外交活動が

できるかと不思議に思っていた。

日本の所得水準ならメードが雇える。私の家でも住み込みで働いてもらっている。

夏休みにはメードを連れて帰国する。

そのビザを取りに行くと、日本で不法就労させるつもりなのだろうと、

毎回疑われる。

当地で正業を営んでいるのである。違法行為をすれば、全てを失うのを

知らないのかと、いつも担当者と言い争う。

日米開戦の際、宣戦布告通告よりも同僚の送別パーティを優先させた伝統ある外務省。

世間の常識から大きく外れた役所で、日本人を守ってくれないのは、昔も今も

変わらない。

(不動産賃貸業)

 

国民が求める自主的な外交を

萩原聖巳 57 (埼玉県)

日本人全員が、鈴木宗男衆議院議員の問題で露見した外務省の体たらくぶりに

驚き、あきれ返り、そして怒りを覚えている。

根本的な改革には、組織の解体、再構築と人事の刷新しかない。だが、それには

時間がかかる。

そこで、@大幅な人事異動、A外部のチェック機能の充実、B首相の強力な

リーダーシップの三つを即時断行することが必要だ。

戦後の日本外交をみると、その自主性のなさに驚く。日本には“外交”などというものは

本当はないのではないか。米国からせがまれ、受身の外交はあっても能動的な

主権国家としての“外交”などにお目にかかったことがない。自主独立の

外交こそ国民が求めるものである。

(会社員)

 

日本局設けて監視体制作れ

三田浩一 37 (大阪府)

外務省がこうもみじめで、無力であるとは思わなかった。

日本人を守ってくれるはずの国家組織が劣悪なら、

国民であるわれわれの立場はどこにあるのだろう。

外務省も一つの外国とみなして、監視する必要がある。

同省日本局を新設して、外務省をチェックするのである。

日本局はいわば市民オンブズマンのような監視組織で、

メンバーは利権と無縁の市民、いうならば“在日日本人”というところか。

政官癒着の現状を見れば、もはや国会は行政へのチェック機能を失っている。

外務省の迷走にブレーキがかかりそうにない。外圧にも弱く、浮遊する外務省には

下交渉だけをしてもらって、本交渉は日本局が行うのである。

日本人の生命や財産を守ってくれそうにない現在の外務省の姿を見ると、

こんなジョークも言いたくなる。

(医師)

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