A級戦犯合祀

産経新聞 2001年8月16日
A級戦犯合祀
講和条約には拘束されず
青山学院大名誉教授 佐藤和男に聞く

新たな戦没者追悼の場の設置を求める意見が繰り返し出てくる背景には、靖国神社に
合祀(ごうし)された「A級戦犯」の間題がある。サンフランシスコ講和条約一一条で
東京裁判の結果を受諾したのに、A級戦犯を祭るのは矛盾する‐という見方が
「靖国反対論」の論拠にもなっているが、どう解釈すべきか。
佐藤和男青山学院大名誉教授(国際法)に聞いた。
−A級戦犯間題をどうみるか
「A級戦犯は国際法上の根拠がない『平和に対する罪』などで裁かれたが、
東京裁判は侵略の定義すら示せなかった。また、当時の国際法では戦争権は
国家の権利として認められていた。
彼らが戦争犯罪人であることが明確なことのように論じるのは、非常におかしい」
−1講和条約の拘束力をどう考えれぱいいか
「講和条約一一条は、占領終了後も日本に東京裁判の刑の執行を続けさせるためのもので、
日本に一定の歴史観を押し付けるものではない。
私が昭和六十一年にソウルで開かれた国際法学会に出席したときも、
議論したすべての外国人学者が『日本政府が講和成立後も、東京裁判の判決理由
(すべて日本が悪いという考え、東京裁判史観)に拘束されるなどということはない』と語った」
‐首相や閣僚の靖国神社参拝は政教分離に反するとの見方がある「憲法6条は、政教分離の
原則を定めているが、その憲法を日本に押し付けた米国はどうか。
大統領は就任式で聖書に手をおくし、国会の上下両院には専属の牧師がいて
祈とうを行う。米連邦最高裁の判例は『長期にわたる伝統的な慣行は、
政教分離に当てはまらない』としている。靖国神社参拝もそうだ」
■サンフランシスコ講和条約一一条 日本国は、極東国際軍事裁判所並ぴに日本国内およぴ
国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判※を受諾し、かつ、日本国で拘禁されている
日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。(後略)
※ここでの「裁判」は「判決」の訳が正しいとされる。
さとうかずお 世界法学会理事。昭和2年、東京生まれ。東京商科大(現一橋大)大学院修了。
主な著書に「国際経済機構の研究」「憲法九条・侵略戦争・東京裁判」など

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