アーミング   

 ストラトキャスターの使用開始と同時にアーミングは派手になっていく(The Painterのソロではグニャグニャ、ブルブルと入れ込んでいる)・・・・・・第2期Deep Purple の頃はウイングバーにまで改造して狂ったように連発していたが、1973年頃からはFenderオリジナルのアームに戻り味付け程度のアーミングとなり、その後色々とっかえひっかえ付け替えるも、80's年代後半にはほとんど使用しなくなり飾りと化している。理由は「皆が使っている」からだそうだ。
 ブリッジをフローティングさせているため、アームダウンのみならずアームアップも行い、よりトリッキーなプレイを演出する。ただし、弦が切れるとチューニングは一発でお釈迦である。Blackmore's Nightでは使用しなくなったため、現在トレモロアームは外されており、ブリッジはフローティングさせていないようである。
 
 私はアームを持ち上げたりしていたわけだが・・・・。とにかくアームをプレイすることは、君(インタビューア)が言ったように酷くカッコ悪いことだと考えられていた時代の話なんだ。でも、今や凄くクールなことになっている。だから今、私のアームは床に埋めてしまった。つまり、使わないんだ。クールに決めようなんて、私の一番したくないことだからね。(1997年当時のインタビューより抜粋)
 
  

  

トレモロピッキング

 第3期Deep Purple 頃から目立ちはじめ、1978年頃まで使いまくっている。実際この頃のブート盤を聴いても、ライブ中すべての曲で使用しているほどで頻繁に出てくる。この時期のお気に入りの十八番であったと思われ、後述のボトルネックを使用しながらも行っていた。スタジオではMistreatedA200Coronarias RedigKill The KingStill I'm Sad、Bad GirlSnake CharmerWeiss HeimA Light In The Blackのソロあたりがすぐに浮かび、何れの曲も70年代中後半録音であることからも当時の十八番だったことが伺える。
 1979年のDown To Earthツアーあたりになると、単調な同一音トレモロからフィンガリングによる音符移動型の発展的なラン奏法トレモロ(下図参照)へと移行するが、Eyes Of The WorldやLost In Hollywoodのブレイクソロ、Love's No FriendCatch The Rainbowのロングソロ、タウラス踏み込み独演ソロあたりでは頻繁に聴くことができる。1981年のツアー時にはほぼ姿を消し、代わりに弦を軽めに押さえてハーモニクスを伴いながらのトレモロ(Journeymanソロ・・・等)が多くなる。   

 管理人にとってLongアドリブの展開に詰まった際よく使用して次の展開を模索する休憩タイム的に使うことが多かった奏法だったので、この時期のRBのライブアドリブは難易度が低く、一番再現しやすくコピーも短時間でサクサク進めることができる。トレモロする時の右手のフォームは、基本形のグーが崩れて指は開き気味になり、ピッキングの位置をブリッジ側に移動させ、ピックの当たりは手の腹が見える方向へ寝かし気味に震わすように行っている。
 この他に1980年からはトレモログリスアップがお気に入りの定番となる。80年代前半はワンステージに最低1回はアドリブ中どこかで演っていたようで、遂にはSpotlight KidDiffcult To CureEyes Of FireRock FeverMiss Mistreatedなどアルバムにまで投入されるが、あっという間にグリスマイブームは去る。(Diffcult To Cureのキメパートとして残るくらいか・・)
 以降、トレモロは稀有な奏法に格下げとなってしまっていたが、Blackmore's Nighでは復活(Home Again等・・・)し、エレアコマンドリン弾きが多少聴けるようになる。
            
       
 

スライドバー 


 初めて使用したのはおそらくAlbum-FireballのNo No Noだと思われるが、特に70's年代後半はお気に入りで、Album-Long Live Rock'n Rollではアルバムの半分位のソロをスライドさせているほどである。ステージでは第3期Deep Purpleのツアーから使用しているらしく、Live In LondonではSmoke On The Waterのソロを前述したトレモロを伴いながら使用しているのが聴ける。誰しもはまってしまう時期はあるもので、RBにとっては70年代後半から80年代前半が正に猫も杓子も状態となっているが、過ぎたるはなお及ばざるが如しと気づいた?あとも要所要所で必ずアルバム毎に、ライブプレイでも絶対に外せない必須アイテムとなる。
 
         

 スライドギターによるスロープレイはある意味難しい。増してやアドリブともなると。ノービスクラスを脱し、指が思う通り動くようになるオフィサークラスになると、ギターが愉しく、更に速く動かしたいと思うのは世の常だろう。しかしベテラン級になってくると別の意味でまたギターが難しくなってくる。運動系ではなく感性による表現力に対する自分自身の無能力感への芽生え。ピッキングの強弱に始まりVib、休止符、スタッカート、スラー、そしてタメ、突っ込みなどのレベルを含有した情緒豊かな感情表現への自己傾倒である。染み付いた無味な手癖とは趣が異なる情感込めたメロディアス・インプロヴァイス(アドリブ)の難易度の高さ。こればかりは才能に卓越した早熟な奏者でない限り、多数を占める世間一般の凡才奏者では人生経験の積み上げ(物理的な練習の積み上げではなく、加齢による精神分野の変化)が必要な世界かもしれない・・・とにかく音符が少なくなればなるほど、ボーカル的なメロがギタープレイにも必要となる。脳みそで歌い上げたアドリブの声をそのままギターフレーズへ瞬時に即興で表現できなければならない。
 には、スロー&メロウに固執するだけではなく、攻撃的なロックプレイに満ち溢れたスライドプレイもマスターしておくべきであろう。メチャ弾きをしたくなるテンポのMad Dogの後半アドリブで、RBはスライドバーにより実にハードロックに満ち溢れたアタッキーなフレーズをオフィシャルサウンドとして記録してくれている。20歳代の頃は「何でまた・・」と意気消沈した思いからアルバムに合わせた練習では、スライドせずおもいっきりメチャ弾きプレイでアドリブったもんだ・・・このテンポにスライドは渋い!そして難しい!ことに気がつくことなく。

 年季の入った感動的なスライドプレイはBlackmore's Nightのスタジオでのストラト節で、一層磨きがかかる。フレーズの一部に別チャンネルで取り込み、連続的な流れに仕上げる技法を好んで使用する。当然Liveで再現するのは不可能となるが・・・・Rainbow時代にも散見(StarstruckThe ShedEyes Of Fire中間ソロ、Wolf To The Moon等々・・・)されたが、如何にも!といった風情だが、Blackmore's Nightに至ってのそれはさり気なく混入し、その切れ目が容易に感じ取れない雰囲気に仕上げている。No Second Chance中間部ソロ、Way To Mandalay中間部ソロDiamond And Dustエンディングソロ、All For One冒頭、Jast Call My Name中間部ソロ、Rainbow Eyes中間部ソロ、Carry On...Jon冒頭Land of Hope and Glory のストラトパート、2021年のSecond Element中間部solo末尾等々・・・聴者によってはスライドギターだと気がついていないかもしれない。

      
 
 ブラックモアはスライドバーをスティール(Steel)と呼称しており、ステージではアンプの上(ドラムセットの台の上、キーボード側にもあるようだ)に用意されており、無造作にそれを掴むとそのまま指にはめずかぶせて覆うように使い、すぐに捨ててフィンガリングできる態勢をとっている。捨てたスティールは、そそくさとローデイーらしき奴が回収してまたアンプの上に戻す。

         

 BNのエレアコプレイにおいても健在で、ライブオープニングの導入部及びShadow Of The Moonのソロ前半はローランドのギターシンセ混じりにプレイするのが定番だ。このギターシンセサウンド混じりのスライドプレイを何回も耳にしている人は、Way To Mandalayのサウンドをキーボードだとは思わないはずだ。
    
 R:皆、この曲の始まりがキーボード・シンセサイザーだと思うらしいんだが、実際はギター・シンセサイザーなんだ。
 Q:キーボードじゃないのは、聴けば明らかですよ。まさにブラックモアだという音でアルバムが始まるから、僕はうれしかったんですが。
 R:だが、あまりにも多くの人が「キーボードで始まる曲ですが・・・」と決め付けるので、私達は「あの曲の始めは何の楽器だと思う?」と訊くことにしているんだ。すると皆、「キーボード」と言うよ。私はキーボードではなくて、ギターだというのは明らかだと思うんだけれどね。(中略)
 Q:本当に、あれをキーボードだと皆が言うんですか?そんな・・・
 R:あの曲がギターで始まったと判ったのは、君が初めてだよ。皆、あれをキーボードだと思っているようだからね。
 Q:しかしファンであれば・・・(2004年当時のインタビューより抜粋。実際にはエングルの生音も微かに所々混ざっており、RBファンのギタリストなら予備知識なしでも一発で見抜けるはずだ。)

  

         

 使用前は口に咥えていたり、ビール瓶なんかでスライドさせたりもする。構えはただ被せるのではなく人差し指と小指でバーの穴のある側面を挟み込み、中指と薬指で補助的に添えている様子が解かる。

          




        
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