ゲーム理論


ゲーム理論の前提
1)各人は、自己の利益を最大化するように、行動する。
2)その際、各人は、合理的に判断して、自己の戦略を決定する。
3)従って、他者(競争相手)のとる戦略を予想して、自己の戦略を立てる。

ゲームの種類
0)ゲームは、協力型と非協力型のゲームに分けられる。(以下の例は、すべて非協力型)
1)最終的に、賭けマージャンのように、参加者の得る利益を合計するとゼロになる「ゼロサム(Zero-Sum)」ゲームと、そうでない(総和がゲームの前と較べて増加もしくは減少する)「非ゼロサム」ゲームがある。
資本主義社会は、常に富(利益)が増加する、非ゼロサム型の社会だと考えられてきた。
2)プレイヤーが同時に行動する同時進行型のゲームと、そうでない交互進行型のゲームがある。
囲碁や将棋は交互進行型のゲームなので、先手が有利とか、後手が有利という差が生じる。両者が同時に次の手を指すようにすれば、先手と後手のハンデは生じない。
3)参加者に全ての情報がオープンな情報完備ゲームと、各プレイヤーの持つ情報に差がある情報不完備ゲームがある。(以下の例は、情報完備型)

囚人のジレンマ
いま、犯罪を犯して警察で取り調べられている二人の犯人がいるとする。証拠が掴めない警察は、犯人の双方に、司法取引を持ちかける。司法取引とは、警察に有利な証言をした者を無罪にするという約束である。そこで、
1)もし二人が証言を拒否し、最後まで黙秘すれば、犯罪の決定的な証拠は得られないので、二人とも、一年の禁固刑になる。
2)もし一方だけが自白すれば、自白した者は司法取引で無罪、もう一方の者だけ、五年の禁固刑になる。
3)もし二人とも自白した場合には、司法取引の対象にはならないが、自白により罪を減刑されて、二人とも四年の禁固刑になる。

A\B 黙秘 自白
黙秘 (1, 1) (5, 0)
自白 (0, 5) (4, 4)

すると、犯人Aはこう考える。「もし、Bが黙秘したと仮定しよう。すると、俺は、黙っていれば一年の禁固刑、自白すれば無罪だ。また、Bが自白したと仮定しよう。すると、俺が黙っていれば五年、自白すれば四年ですむ。どちらにしても、自白した方が得だ。」
全く同じ事をBも考える。
こうして、二人は、二人とも自白して、仲良く(!)四年の禁固刑という、二人にとって最悪の選択をしてしまうことになる。
(これは、400円の牛丼を280円に値引きすれば、自分の店だけ売上が増える、という吉家さんと松野屋さんの安売り競争の場合にも当てはまる。両方の店が値引きした場合には、両方の店とも売上は前より下がるが、これを選ぶしかない。カッコ内は売上高。)

吉家\松野屋 据え置き 値下げ
据え置き (5億円, 5億円) (3億円, 6億円)
値下げ (6億円, 3億円) (4億円, 4億円)

ミニマックス定理
ミニマックス(Mini-max)とは、最も負け難い(つまり、最も勝つ可能性が高い)、ゲームにおける「最小最大」の戦略である。
それは、一言で言えば、「最悪の選択肢のうちで、最善の対応を選ぶ」というものである。

ナッシュ均衡
ゼロサムゲームだけでなく、非ゼロサムゲームにも、互いの利益が一致する均衡点が存在する。これを、ナッシュ均衡と呼ぶ。
ゼロサムゲームにおいては、ミニマックス解(同じことだが、マックスミニ解)がナッシュ均衡である。


ミニマックス定理についての実際的補足

橘  投資で大きく成功できる人は、リスクをとれる人です。物事を合理的に考え過ぎると、「この成功はただの運。次の投資が成功する確率も五分五分なんだから、ここでやめておこう」となってしまう。でも、莫大な利益を生み出すためには、「これで成功できたんだから、次は倍にして勝負するんだ」と信じてガンガン行かないといけない。
岡田  ここまでの話を聞いていて、僕は成功できるのは確率論でものを考えられる人なのかと思ったんですけど、実は逆なんですね。
橘  そこそこの利益を得ることが目的なら、合理的思考のできる人の方が断然有利です。金融市場における因果論というのは勘違いなので、それを信じて勝負しても大半は失敗するだけですから。それでもごく一部の人は、運や偶然で成功するんです。
岡田  なるほどなあ。僕、ITバブルで成功した人に興味があって、たくさん会いに行ったことがあるんですが、彼らは確かに後者に当てはまっている。要するに、ノウハウがあったから成功したんじゃなくて、先のことを考えずに投資する度胸があったから成功しているんですね。成功が確率論だということをわかっていたら、怖くて動けなかったはず。
橘  まさに典型ですね。お祭りのときに踊れる人が成功するんです。
岡田  とはいえ、成功者になれるのが一握りだということを考えれば、普通の人間は合理的な思考を身につけて、そこそこの成功を収めること、失敗しないことを目指す方がはるかにいいわけですよね。
橘  夢がないことを言ってしまいますが、その通りです。

岡田斗司夫 FREEex『僕らの新しい道徳』(朝日新聞出版 2013)


参考文献
ウイリアム・パウンドストーン『囚人のジレンマ フォン・ノイマンとゲームの理論』 青土社(1995年)
ビジネスマン向きのゲーム理論の本は、本屋さんに行くと、最近よく目につきます。


→ロールズ

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