ベトナム農業の歴史

(1)ベトナム村落の成立からフランス植民地時代(1945年以前)

(2)独立と戦争と農業集団化(1945-80年)
  2-1. 独立後の土地改革(1945-57)
  2-2. 北ベトナムでの農業集団化(1958-75)
  2-3. 全国的な農業集団化(1976-80)

(3)脱集団化とドイモイ政策(1980年以降)
 
3-1. 100号請負下の農業 (1981-88)
  3-2. 10号請負下の農業(1988-92).
  3-3. 土地法・合作社法と現代の農業(1993-)



歴史年表

参考文献

 


(1)ベトナム村落の成立からフランス植民地時代(1945年以前)

 一般に東南アジアは東アジアに比べて面積に対する人口が希薄で強固な社会的紐帯がない社会であるといわれている。この中で北部ベトナムは人口が稠密で、雨季の洪水・乾季の低温と旱魃という厳しい自然条件のもとで古くから強固な村落共同体が形成されていた。

 10世紀に千年に及ぶ中華帝国の支配から独立したベトナムは、11世紀に本格的な長期政権(李朝)が成立しベトナム国家の枠組みが確立した(ただし領域は現在の北部のみ)。15世紀の黎朝時代に、集落をいくつか併せて社(Xã)という行政の末端組織が作られた。この時代、新開地の水田が国有地化され、税納付と引き替えに社に支給された。この公田と呼ばれた国有田は、17〜18世紀の戦乱 によって国家権力の統制が弱まると村落(社)の共有田となり、村落民の間で割り替えられた。公田を管理する社は共同体としての性格を強め、北部ベトナムの強固な村落共同体が形成されていった。なお南部は植民による新開地であるため、北部に比べて村落共同体は強固ではなかった。

 19世紀にフランスの植民地となったベトナムでは南部メコンデルタの開発が進むが、このなかでフランス植民地政府は土地をフランス人及び対仏協力ベトナム人に払い下げ南部における大地主制が成立した。  
 


 ベトナム農業歴史年表

11世紀

初めての長期政権(李朝)。

15世紀

黎朝成立。社(行政末端組織)成立

17〜18世紀

社が公田管理する村落共同体へ成長

1802

阮朝成立。メコンデルタの開拓進む

1945

北部に共産政権(ベトナム民主共和国)。社の大型化が進む

1954〜55

北部で土地改革が行われる

1958〜60

北部農業集団化。集落ごとに合作社

1960年代

戦時下の要求から合作社の規模拡大。自然村ごとに合作社が組織。

1975

共産政権が南北統一。南部においても農業集団化を図る。合作社は社ごとに組織される。

1981

100号指示

1986

ドイモイ開始

1988

政治局第10号決議

1993

93年土地法

1996

新合作社法

1998

1998年土地法改正





 参考文献

 「ベトナム農業の歴史」は下記の資料を参考に作成した。

日本語文献
桜井由躬雄(1987年)『ベトナム村落の形成』,創文社

ベトナム語文献
Nguyễn Sinh Cúc1995), Nông Nghiệp Việt Nam (1945-1995), Nhà Xuất Bản Thống Kê
Tổng Cục Thống Kê (1994), Niên Giám Thống Kê 1993, Nhà Xuất Bản Thống Kê
Tổng Cục Thống Kê (2001), Niên Giám Thống Kê 2000, Nhà Xuất Bản Thống Kê


ベトナム農業の歴史(2)へ進む

表紙に戻る


管理人への連絡はコチラまで