看板から見るベトナム
ハノイの道路脇には、社会問題について行政当局が人民に呼びかけている看板が多く立っている。今回はこの看板を通してベトナム社会の実相に迫ってみたい。
ベトナム社会(とりわけ都市部)で大きな問題となっているのが、麻薬問題である。当然の事ながら、看板にも麻薬問題についてのものが多い。
『麻薬注射はエイズへの道』
(注;Ma Tuy とは麻薬の意味)
この看板を何と表現すべきであろうか。社会主義革命を成し遂げたベトナムにおいては、絵画においてもそのプロレタリア全人民的所有の原則が貫徹され、それは当然の様にブルジョワ的リアリズムとは一線を画す表現形式に至らざるをえない。しかし社会主義への過渡期として市場経済を指向するドイモイ政策は、その内包する矛盾を止揚(アウフヘーベン)するための・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・って、自分でも何を言っているのかわからなくなってきたな。
うーんとね、こんな奥歯に挟まった言い方じゃなくて、はっきり言おう。
はっきり言って・・・・・・・・
ヘタ。(´Д`;) めちゃくちゃヘタ。
何じゃい、この子供の落書きみたいなんは。何考えとんねん。なめとんのか。
・・・・え!?そんなにエラそうに言うなら自分で書いてみろって?
おうおう、書いたるわい。俺が本気になったら、こんなもんより格段にうまいモンでもお茶の子さいさいや・・・
できた。見てみぃ、俺の画力に腰抜かすなよ・・・・
・・・・・・・_| ̄|○ あかん・・・・全然あかん・・・・
まぁいい、この問題は私の画力とは関係がない。問題は、麻薬問題に取り組むベトナムから我々は何を感じ、何を学ぶかだ。
『麻薬=エイズ
絶対ダメ、たとえ一回でも』
上記の看板は麻薬による人生の絶望を表しているのだろう。しかし、これもまた画力がイマイチなせいで、万歳している人に見えなくもないのは何たることか。
こういった看板では麻薬はエイズにつながるのでやめろと言うのが多い。日本的な感覚では、麻薬はエイズとは関係無しでそれ自体が問題という気がするが、ベトナムでは麻薬とエイズはセットでお買得、ご一緒にポテトもいかかでしょうか、となる。
さらにこんな看板もある。
ヽ(>△<;)ノ きゃ〜〜 街に怪人が現れたわ〜 助けて〜
( ゚д゚) あら、OKなの、だったらいいわねぇ
つっか、子供が遊んでいるような場所にこんな看板を出すなよ
上記の写真はエイズ防止のためにコンドーム使用を呼びかけている看板である。このような看板が町中に堂々と立っているからと言って、ベトナムが性に開放的な国だと思ったら大間違いだ。
ベトナムは性に対してとても厳しい国である。売春が厳禁なのはモチロンのこと、エロ本ですら全く売っていない。漫画ですら規制がある。
ちなみに下記の絵は、ベトナムで出版されている『ジョジョの奇妙な冒険』の一コマであるが、どこの場面かわかるだろうか。
正解はJOJO第一部の最終場面で、死ぬ間際の主人公ジョナサン・ジョースターに恋人(この場面では新妻)エリナが口づけをする場面である。原作(日本版)でのエリナのセリフは以下のようなので、是非本屋で単行本を買って比較してほしい。
この唇の
ぬくもりの
中には・・・
ああなんてこと
『死』の実感がある・・・・・
−ジョナサン・ジョースターは
死ぬんだわ
でも・・・ふたり一緒なら
ずっとこうして
いたい・・・
原作では確かにブチュウ(´ε` )しているはずの絵が、キスシーンは御法度ということで、ベトナム人が描いた上記のような絵に差し替えられてしまっているのである。まぁ別にそれはそれでいいんだけど、看板同様のプロレタリア級画力のおかげで(って俺が言うのも何なんだが・・・(^。^;))、せっかくの感動的な場面が台無しである。ベトナムの子供たちはこんな絵を見て感動できるのだろうか?
それともこれがベトナムでは萌え顔なのか・・・?
謎が謎を呼ぶところで次号に続く。