2009.04.22
 
B-Univのカラー
環境や音源が激変した時代
上司として
[H.]の活動
「スペースハリアー」の歌詞
Hiro師匠のベストアルバムの行方
今後挑戦したいこと〜「GA-CORE」に望むこと
おまけ〜【新録】幻のスペースハリアーボーカルVer.だ!

 
  <出席者紹介>
Hiro師匠
セガのFM音源サウンド黄金期を築き上げた名コンポーザー。代表作は「スペースハリアー」「アウトラン」「アフターバーナー」「ファンタジーゾーン」等多数。2009年4月よりAMR&D1のサウンドセクションチーフ。
光吉猛修
歌って踊れるセガの名コンポーザー。代表作は「R-360」「デイトナUSA」「セガラリー」「シェンムー」等多数。作曲以外では「バーチャファイター」の影丸などの声も担当している。また、アニメ版「バーチャファイター」では主題歌「愛が足りないぜ」で歌手としても有名。2009年4月よりAMR&D1所属。

 
●B-Univのカラー
   
原: S.S.T.BANDの後、レコード会社が代わって、光吉さんはB-Univをやられてますよね。
   
光吉: 僕と並木(晃一)さんですね。
   
原: 私は当時、ライブチケット(ゲームミュージックフェスティバル'94)を取ろうとして電話したら、「B-Univは出演できなくなった」って言われたことを覚えているんですが、病気か何かだったんですか?
   
光吉: 実は、僕あんまり覚えて無いんですよ。でも、誰かに同じことを言われたことがありますね。「デイトナ」の後に病気したんで、そうだったかもしれません。
   
原: B-Univは、S.S.T.BANDとは方向性というかカラーが違ったと思うんですが、意識してそうしていたんですか?
バーチャレーシング&
アウトランナーズ

1993年に発売されたB-Univの初アルバム。「バーチャレーシング」「アウトランナーズ」のオリジナル版に加え、アレンジを10曲収録。
   
光吉: 僕と並木さんが残ったんで、その二人がやりたいようにやった感じですね。S.S.T.の頃は松前(公高)さんがメインとして仕切って、 S.S.T.っていうカラーを作っていたと思うんです。でも、B-Univであえて変えようとは思ってなかったと思うんですけど、どちらかというと並木さんのカラーが強かったかもしれませんね。プログレっぽかったりとか。
   
原: なるほど。
   
光吉: 僕は決してプログレの人間じゃないんで(笑)。作る曲が変な曲なんでプログレの人間ってよく言われたんですけどね(笑)。まぁ、あれに関しては並木さんが方向性を出していたと思います。
   
原: で、並木さんがセガを退社されたから、自然に止めることになったという感じなんでしょうか?
   
光吉: たしか「バーチャ1」と「デイトナ」までやってましたよね。まぁ、止める理由は別にもあったんですけど……。
   
原: 会社的な?
   
光吉: そう、会社的な(笑)。
   

 
●環境や音源が激変した時代
   
原: B-Univをやっていた頃は、ちょうどアーケード基板の音源も変わった頃だと思うんですが、「バーチャレーシング」は光吉さんですよね?
   
光吉: そうですね。
   
原: 環境や音源がすごく変わったと思うんですが、どうでしたか?
   
光吉: 全然変わりましたね。ツールもより充実して来て、あまりプログラムを知らなくても制作できるようになってきた過渡期ですよね。「デイトナ」を作っていた頃に至っては、さっき師匠が言った(第2回インタビュー参照)林(克洋)さんが初めてMIDIをっていう話からさらに進歩して、自分がマックとシーケンサーで作ったMIDIデータを基板の音源で鳴らすっていう。たしかその頃、師匠はツールっていうかプログラムの方をやってましたよね?
   
Hiro: そうだね。
   
原: Hiroさんがプログラムをメインでやられていたというのは、モデル1とかモデル2になるんですか?
   
Hiro: その前のSYSTEM32ぐらいから全員のツールとドライバを作り初めて。で、モデル 1〜3、ST-Vまでやってたかな。だからその頃、俺はまったく曲を作ってないで す。
   
原: でも「ハングオン」のアレンジヴァージョンを「クールライダーズ」っていうゲームで作っていますよね?
   
Hiro: あぁ、あれなんだっけ?
   
光吉: なんだっけ、あれ。システムマルチ?
   
原: システムH1ですかね。
   
Hiro: あれはそのボードを使ったプロジェクトの曲が しょぼかったので。
   
  (一同笑)
   
Hiro: この音源はもっと良い音が出るはずだって(笑)。で、「ハングオン」と同じバイクゲームだったんで「ハングオン」をちょっとアレンジしたものを作りました。あれは開発時はもっと音が多かったんだよね。ドライバの開発時はサウンドでCPUを100%使えたから一杯鳴ってたんだけど、ゲームに入れたらゲームがすっごい遅くなって、音を半分ぐらいに減らして。
   
原: (笑)
SUPER HANG-ON 20th Annversery Collection
「スーパーハングオン」生誕20周年を記念して発売されたCD。「スーパーハングオン」と「ハングオン」のオリジナル版に加え、並木晃一によるアレンジ4曲、[H.]によるアレンジ1曲を収録。
   
Hiro: 減らす前の音源録音しておけばよかったなぁ。
   
光吉: ははは(笑)。たしか、めちゃくちゃ鳴ってましたよね。
   
Hiro: すごい豪快に鳴ってた。データはたぶんあると思う。8インチディスクで(笑)。
   
原: あ、でも90年を過ぎてるから8インチではないと思うんですが。
   
光吉: 8インチじゃないですね。5インチか3.5インチ。
   
Hiro: じゃあ、復活できるかも。
   
原: さっき、システムマルチの話が出ましたが、「アウトラン」の続編的なゲームで「アウトランナーズ」ってありましたよね。あれには光吉さんはどんな感じで関わったんですか?
   
光吉: あれは別の方がメインで、僕はサポートってことで。
   
Hiro: 中村(隆之)君?
   
光吉: 中村君ですね。
   
Hiro: 俺も一曲作った。
   
光吉: そうでしたっけ。
   
Hiro: ロシア……違うな、スペイン……?
   
光吉: あぁ、どこかの国の曲ですね。
   
原: “Magical Sound Shower”のアレンジとかは光吉さんだと思うんですが、Hiroさんからダメ出しとかなかったですか?(笑)
   
光吉: いや、それも僕が勝手にやったと思います(笑)。
   
Hiro: 俺が知らないうちに(笑)。あ、違うな。その時は同じ部署だったんで中村君から「アレンジしませんか?」って話が来たんだよね。で、「めんどくさい」って言ったら光吉になった気がする。
   
光吉: ははは(笑)。そうなんだ。
   
原: 自分の曲をアレンジしたり、もう一回作り直すってことは、基本的にやりたいって思わないんですか? それとも、やりたい曲とそうでない曲があったりするんですか?
   
Hiro: 時期によるんじゃないかな。
   
原: 本業が忙しいかどうかってことですか?
   
Hiro: そうそう。時間があれば全然OK。
   
原: 光吉さんはその後、サターンで「バーチャファイター」や「デイトナUSA」をアレンジしてますよね。サターンの頃は内蔵音源とCD再生の使い分けみたいなことはあったんですか?
Let's Go Away The Video Game DAYTONA USA Annversery BOX
「デイトナUSA」生誕15周年を記念して発売されたボックスCD。4枚組でオリジナル版の他に各種移植版や続編の曲を収録。
   
光吉: サターンの頃は、CD-DAで曲は全部レコーディングしてましたね。効果音と声が内蔵音源ですね。
   
原: その後のドリームキャストはどうですか?
   
光吉: ドリキャはプロジェクトによると思います。「シェンムー」とかは曲が多かったんで基本的なところは内蔵音源で、大事なとこだけはストリームって感じでした。
   
Hiro: う〜ん、ドリームキャストのドライバも作ったような気がする。
   
原: ドリームキャストはNAOMIと一緒だからかもしれないですね。
   
Hiro: だからか。
   
原: プログラムがメインになっていたHiroさんが、作曲の方に戻るきっかけは何かあったんでしょうか?
   
Hiro: ツールやドライバを作ってるメンバーがCRI(現CRI・ミドルウェア)に移るってことになって。で、CRIに行くか、セガに残って曲を作るかっていう分かれ道があって、だったら曲の方が楽しそうだなって。本当は両方やりたかったんですけどね。
   
原: プログラムから作曲の方に戻った時は、ドリームキャストやNAOMIが主流だったと思うんですが、その頃に内蔵音源で作った曲ってありますか?
   
Hiro: なんだっけ、スケボーのゲーム。
   
光吉: 「トップスケーター」?
   
原: 「エアートリックス」ですか?
   
Hiro: そう「エアートリックス」。「エアートリックス」は、アーケードで最後に内蔵音源で作った曲です。その頃はドライバを作り終わった頃だったのかな。もうストリームで出せる技術はあったんですけど、最後になりそうだったので「内蔵音源で全部表現する!」って言って作った。
   
原: ストリーム再生になると、それまでのような制限は無いということになると思うんですが、あえてゲームっぽい音を出したりするようなことはありますか? それとも意識しないで作る感じでしょうか?
   
Hiro: 意識はしないかな。ストリームなんでそれ用に良い音になるようにって。
   
光吉: 僕もそうですね。
   
Hiro: でも、あくまでBGMなので、ゲームの場面を盛り上げるような曲作りは変わらないですね。曲だけ目立っても意味無いし、場面とミックスした時に力を発揮する曲作りをしています。
   
光吉: ストリーミングじゃないとできないような曲、生のオーケストラとかになると内蔵音源じゃ限界があるんで、生の良さを活かす選択肢としてストリーミングって考え方をしているだけですね。
   
原: もし、企画の人から昔のFM音源っぽい曲を作ってと言われたら、頭を切り替えてできそうですか?
   
Hiro: 全然大丈夫。さすがに打ち込みはしたくないけど(笑)。
   

 
●上司として
   
原: 現在、Hiroさんはサウンドの統括をされているということなんでしょうか?
   
Hiro: いや、アーケードは、1研、2研、3研とあって、その中にそれぞれサウンドがあります。で、3研の長ですね(※)。
   
  ※インタビュー後に部署統合があり、2009年4月よりAMR&D1に異動されました。
   
原: 作曲以外の仕事も多いのでしょうか? 例えば人事的なこととか。
   
Hiro: そうですね。そういうつまらない仕事(笑)。
   
光吉: (笑)
   
原: 昔の雑誌記事を見ると、「後輩が入ってきたら、これ作っといてねーとか言って、優雅な生活を送る」みたいなコメントをされてますが、どうですか?
   
Hiro: 今も変わってないです。
   
光吉: (雑誌記事を見ながら)しかも「そのわりには面白そうなのだったら、これは俺がやるとか言って譲らない」だって(笑)
   
  (一同爆笑)
   
原: こんな感じですか?
   
Hiro: その通り。(雑誌記事を見ながら) え、これ20年前の記事なの?すげぇ。
   
  (一同笑)
   
Hiro: 夢を実現してる。
   
光吉: 夢を実現してるというか、変わってないですよ(笑)。
   
  (一同笑)
   
Hiro: 実現してるじゃん。こんな上司になりたいって言う。すばらしいねぇ。
   
光吉: Dreams come trueって感じですね。
   
  (一同爆笑)
   
Hiro: (雑誌記事を見ながら)「曲が浮かぶのは寝ている最中ですね」だって(笑)。
   
光吉: ははは(笑)。
   
原: 鈴木裕さんと同じですね(笑)。
   
光吉: ポップアップだ(笑)。
   
  (一同爆笑)
   
原: 少し話しが変わりますが、ゲーム業界というと人の出入りが激しいイメージがあるんですが、Hiroさんや光吉さん、先ほど(第2回のインタビュー参照)お名前が出た高木(保浩)さん等、セガのサウンドの方は長く勤められている方が多いですよね?
   
Hiro: そうですね。結構多いですね。
   
原: 社風とか環境がいいとか、何かあるんですかね。
   
Hiro: 上司がいいんじゃないですかね。
   
  (一同笑)
   
Hiro: 20年間変わらない信念っていう。
   
光吉: ノーコメント(笑)。
   
  (一同爆笑)

 
●[H.]の活動
   
原: 現在お二人は[H.]としてCDを出したり、ライブをされていますが、[H.]自体は、Hiroさんが自分でやりたいって言って始めたんですか?
   
Hiro: 最初は「クラッキンDJ」のゲームのイベントでやったんですよね。ゲームの販促イベントの中でライブをやったんだと思う。
   
原: [H.]はヒットメーカーのHということでいいんですよね?
   
大野: HiroのHじゃないの?(笑)
   
光吉: (小口)久雄のHという説もありますね(笑)。
   
Hiro: まぁ、いろいろ集まってるってことで。
   
原: 開発が分社化してまた統合したり、いろいろあったと思うんですが、現在の[H.]はセガのバンドということでいいんでしょうか? それとも3研のバンドということになるんでしょうか?
   
Hiro: 自分が[H.]に入ってると思った人は入ってます。セガの人じゃなくてもだれでも。
   
原: ライブをやる時は、古い曲と新しい曲が混ざっていて自由にやっているように思うんですが、広報から依頼があったりはしないんですか?
   
Hiro: 依頼はないですね。でも一応、AOUだったらAOUに出展してるものに絡められるようにしてますね。一応会社の仕事としてやってるんで(笑)。
   
原: そうですよね(笑)。
   
Hiro: でもEXTRAとかは来る人がオールドファン が殆どだから昔の曲がメイン。ピンポイントで!
   
原: 最後は、光吉さんがTV版の「バーチャファイター」の「愛がたりないぜ」を歌うことが多いですよね。
   
光吉: たくさんやってるんで、みなさん覚えているのもありますね。
   
原: あれは光吉さんは歌だけで、作詞や作曲は別の方ですよね。でも、自分の曲になってる感じですよね?
   
光吉: これだけ歌ってますからね。あと、カラオケに入ってて、カラオケで名前を見たって言ってくれる人が多いんですよ。そういう意味でも自分の歌の代名詞になってますね。
   
Hiro: でも、そろそろ飽きてきたよね。
   
  (一同笑)
   


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