改造計画その1−−−前輪リム18インチ化:page 1


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ホイールの種類
「オールカラー版バイク・メンテナンス百科」より
・リムとは何じゃい−−−スポークホイールについて

 リムと言われて何のことかわからない人もいると思うので、少しだけ書いておこう。間違っても某格闘ゲームのキャラクターや某ガン○ムの手足ではない。

 リムのことを語る前にホイールについて説明しておきたい。バイクのホイールは大きく分けて3種、キャストホイール、スポークホイール、ディッシュホイールがある。

 キャストホイールは鋳型一体成形のホイールで、特徴としては、基本的に重い、タイヤのチューブレス化に欠かせない、弾性が無い、が挙げられる。弾性が無いというのは衝撃に弱いという事だが、直接路面へのトルク伝達においては弾性があるとホイール内で変形が起こるので、決して悪い事ではない。これらの特徴により、ロードスポーツバイクの標準的なホイールとして位置付けられている。

 スポークホイールは、車軸軸受を持つホイールハブ(以下「ハブ」)、タイヤをはめる外わくであるリム、ハブとリムを繋ぐスポークの3種類のパーツからなるホイールである。特徴としては、軽い、タイヤのチューブレス化が難しい、弾性に富む、が挙げられる。これからわかるように、キャストホイールとは全く正反対の性質を持つ。主にオフロード、ビンテージ、アメリカンバイクに使用される。うちのジェベルもスポークホイールであり、これに関してはまた後で詳しく説明する。

 ディッシュホイールはスポークホイールのスポーク部分が金属プレートに置き換わったものであり、弾性的にキャストホイールとスポークホイールの中間的存在と位置付ける事が出来る。しかし、機能的に他者に劣るのか見た目の美しさがメリットとされ、現在では一部アメリカンバイクに使用されているにとどまる。

 さて、スポークホイールについて詳しい話をしたい。ジェベルが属するオフロードバイクの多くがスポークホイールを採用する理由は、前述のとおり軽量、弾性に富むということである。悪路走破を目的としたオフロードバイクは軽量かつ耐久性を求められ、しかも悪路走破性向上のためホイールは大径化する。ホイールをデカくした上、しかも軽く強くしろと言われても、キャストホイールには到底無理な話である。

 前述したとおりハブ、リム、スポークの3つからなるスポークホイールは、当たり前だがハブ以外のものは別物に交換できる構造である(ハブは車軸とセットとなる)。スーパーバイカーズのマシンが簡単にインチダウンが出来るのは、ハブは純正のものを使用しスポークとリムを新しいものに交換できるからである。簡単だとは書いたが、構造的に簡単だと言っているだけで、実はハブの中心とリムの中心を合わす(この作業を「芯出し」と呼ぶ)のに神業的技能を必要とする。はっきり言って素人に出来るものではない。……と言うと嘘になるが、コツをつかめないと永遠に終わらない作業になるらしい。しかし、オフロードバイクというものは適当でも走るものなので、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。たとえ芯だしに成功してもどうせチューブをつけるとバランスは崩れるものだし。

 話はそれたが、つまりはリムを交換することが出来ると言う事だ。その際、スポークで調整する必要性があるが。



ジェベル前輪

・なぜ18インチなのか?

 スーパーバイカーズと言うものは必ずと言っていいほど17インチである。それはなぜか。理由は現在のロードスポーツタイヤがほぼ17インチに統一されているからである。何と言ってもタイヤ選択の幅が広い。と言うより、オンロードバイクのキャストホイールを移植することが多く、自然にそうなるのだろう。まぁ、現在では17インチサイズがオンロードタイヤの適切なサイズであると言う概念が出来あがっているので、それに逆らう必要性が無ければそれに習うべきであろう。

 うちのジェベル(以下「ジェベ公」)もそれに習いたかったのだが、出来ない理由があったのだ。問題はタイヤ幅である。フロントフォーク間とチェーンオフセット距離が非常に狭いのだ。リアにタイヤ幅106mmのTW302-4.10を履かせると、もうチェーンに当たるか当たらないかドキドキのクリアランスであった。全然問題無かったんだけどね。それはさておき、現在のオンロードタイヤというのは極太志向であり、扁平率も減少傾向にある。つまり、タイヤ外径に対してタイヤ幅が広いのだ。じゃあ何故スーパーバイカーズのマシンにはくっつくのにジェベルにはくっつかないのか。答えは簡単、バイカーズのベースマシンは元々タイヤが太いのだ。ジェベルはオフロードバイクの中でもトレールマシンと言う分類に入り、タイヤは細めになる傾向がある。その中でもジェベルは最高級に細い。いやまぁ、細いことが悪いわけではなくそれなりの恩恵があるのだが。強いて言うなら、そんなジェベルをバイカーズにしようと考えるのが悪い。

 ちなみに17インチでもジェベルに入るタイヤはある。ただ、ごっつーショボいのだ。まずは前輪から17インチ化して様子を見てから後輪も、と考えていたのでフロントフォーク延長を考えていない今はあんまりタイヤ径を小さく出来なかったという理由もあった(ノーズダイブの面から)。

 そんなジェベルに救いの手を差し伸べたのは18インチタイヤである。18インチタイヤというのは往年のバイクの標準的なタイヤサイズで、当時のタイヤは今ほど太くはなかった。現在ではビンテージバイクがその伝統を引き継いでいる。で、おりしも今はストリート系が流行っていてビンテージ向けタイヤも豊富とは言えないがあるにはある。ジェベルのフロントフォーク間から考えてみて、ビンテージ前輪標準の3.00-18は入る。それに18インチなら後輪と同径となりバランスがとれる。ひいては後輪リム17インチにせずにすむ。「これだ!」と決めたのである。当然と言えば当然の流れである。

 ……しかし、わしゃ本当にスーパーバイカーズを目指しているのか? 遠ざかってる気が……。



ジェベル後輪

・具体的な改造手段

 当初、前輪18インチ化はジェベル純正18インチ後輪リムを前輪ハブに移植することを考えた。これはスポークホイールの利点として、純正ハブを利用して新リムとのフィッティングをスポークで調整できると言うことから考えたことである。スポークもオーダーできると言うことである。ジェベルは前後ともスポーク穴は36穴でスポーク本数も問題無く、それに後輪リムがリム幅1.85でちょうど前輪リムをその幅にしたかった(ノーマル前輪リムの幅は1.60である)ので好都合であった。純正部品なら安く上がるしオッケーオッケーと喜び勇んでいきつけのバイク屋(と言っても部品しか頼んでない)に相談したら「できるかアホー」と言われた。と言うのも、スポークと言うものは設計でハブ、リムからの固定角度が決まっているとのこと。ある程度の許容角度はあるらしいが、ジェベルは前後輪で角度が全然違うのである。これはジェベルが前輪はディスクブレーキ、後輪がドラムブレーキであることに起因する。ディスクブレーキのブレーキディスクを固定するハブは小さく、ドラムブレーキを内包するハブは大きくなる。ハブの大きさはスポークの角度に影響するのである。

 というわけで、いきなり挫折。しかしまだ奥の手がある。RKエキセルリムである。これはスーパーバイカーズ御用達の特注リムである。リム幅、スポーク穴数を指定でき、しかも純正スポークを使用するという話である(のはずだったのだが……:後述)。以前よりその存在は知っていたのだが、価格が不明瞭であったため避けていたのだ。だが、そうも言っていられなくなったので、いきつけのバイク用品店に行って相談した。話によるとちゃんとスポークの角度を考えて設計してくれるとのこと。安心安心。以下、店員さんと私の会話を脚色ありで示す。

店員「なるほど、バイカーズにしたいわけね」
私「ええ、エセバイカーズです。はっはっは」(←既に自分で言ってる)
店員「ちょっと待ってて、値段聞いてくるわ」

(しばし待つ)

店員「安いで、16,200円! しかもセール中で20%引き!」
私「安っ! そんな安くていいんですか?」

 そんな喜ぶ私に店員はにこやかに告げる。

店員「でも純正のスポーク切ってネジ切り直さなあかんって言ってたよ」
「えっ……!」

 当然と言えば当然なのだが……21インチから18インチへ小さくするわけだから。でもそこはそれ、設計で何とかしてくれるものと思っていたのだ。

私「ス、スポークを特注してくれるところって知りません?」
店員「え? 知らんよ」

 うーむ、ヤバい。しかしもう手段はこれしか残ってないので注文することにする。で、今度はバイク屋に直行。スポーク加工が出来るかどうか聞くためだ。

私「……できます?」
バイク屋店員「でけへん」

 仕方がないので自分でやることにする。ここはいっちょ機械工学科卒の腕前を見せてやるか……。

 大丈夫なんか? ホンマに……。



トレールとキャスター角
「オールカラー版バイク・メンテナンス百科」より

・18インチ化による問題点

 前輪を18インチ化の加工だけでも多くの問題点を抱えているのに、18インチ化によるディメンジョン変化も問題を多く発生させる。タイヤ外径を変更することにより、車体の走行性能を表すキャスター角とトレールが大きく影響を受けるのである。バイクはバイク単体で完成品であって、改造することを前提とした設計なんぞしとらん。ということは改造するととんでもないものが出来る可能性があると言うことだ。

 しかし、そんなものはやってみないとわからない。世の中のバイクいじり人は経験とカンでカスタマイズしてきたわけで、それに習い私も経験とカンで「18インチへのインチダウンはたぶん、いや、危険じゃない程度で大丈夫、おそらく」という推測した。だから既に計画は着々と実行に移っていっている(そうか?)わけだが、新しいバイクがどういう性質を持つかどうかを予測するのも悪くない。トレールを計算する式があるので、いっちょここで新タイプのキャスター角とトレールを計算してその値が適切なものかどうか考察することにする。

 まぁ、まず基本の式となるトレール式だが、

Tr=tanθ(Rf-Fo/sinθ)

{Tr:トレール[mm] Rf:前輪半径[mm] Fo:フォークオフセット[mm] θ:キャスター角[°]

である。他に式がないので4つの変数のうち、3つわからないとこの式は意味がないと言うことである(数学的には意味はあるのだが、今は値が求められないと意味がない)。

 現段階でわかっているのはノーマルジェベルのデータは諸元表から、トレール112mm、キャスター角29°の2つ。2つじゃ計算できないのだが、前輪半径はジェベル125純正前輪タイヤTW19のデータが無いのでわからない。しかたないので、ダンロップD604 2.75-21タイヤ外径が689である事から考えて、前輪半径を345と仮定することにして、フォークオフセットを算出することにする。計算の過程を書いても仕方ないので結果だけ、Fo=69.3。これで推定ノーマルジェベル125のデータが揃ったわけだ。といってもインチダウン後のトレール算出に必要なのはフォークオフセットだけなんだけどね。



キャスター角算出

 さて次にインチダウン後のトレール、キャスター角算出をしたいわけだが、今のところフォークオフセットしかわかっていない。とはいえ、前輪半径は使用予定タイヤ、ダンロップTT100GP 3.00-18のタイヤ外径627から、新しい前輪半径を313.5と仮定する事が出来るので、あとひとつわかれば全てが導き出される。しかし、導き出しようがないので、キャスター角を独自に算出することにする。図のように、前後荷重不変・ホイールベース固定・車体を不動としインチダウンによりどれだけ接地面が傾くかを計算し、その値をノーマルのキャスター角から引けばインチダウン後の新キャスター角が求められる。方法としては、後輪車軸を基準点として前輪半径の変化量だけ接地面が傾くわけだから、ホイールベースで前輪半径変化量を割ったものが正接(tan:タンジェントのこと)で、それから角度が求められる(はず……だけど)。いちおう式を書くと、
tanθ=(前輪半径変化量)/(ホイールベース)

である。計算結果は1.3°。これを元のキャスター角から引く、29-1.3=27.7、ということで27.7°である。さてこれでインチダウン後のトレールが算出できるようになった。で、出し渋っても仕方ないのでいきなり結果を書く、結果は86.3である。元のトレール値と比べると25.7mmも減っていることになる。

 キャスター角27.7°、トレール86.3mmという結果が出た。ただ、これは仮定しまくった結果なので正しいとは言えないが、推定というレベルでは十分なものだと思う。

 さて、想定できてもこの値が一体何をどう示しているのかさっぱりわからない。この際、他車種と比較してみて乗り心地を想像するしかない。という事で96年のバイクカタログをチェック。基準はキャスター角、トレール、前輪サイズの3つで行った。該当車種は3種。
 設定\機種 新ジェベル ルネッサ K125 CD125T
 キャスター角 27.7° 27.4° 28° 27.3°
 トレール 86.3 95 85 89
 前輪サイズ 3.00-18 90/90-18 3.00-16 3.00-17
 種別 謎 ビンテージ ビジネス ビジネス

 これを見る限りでは、危険なバイクにはならないと思われる。ディメンジョンがビジネスバイクに近いっていうのも安全なのか単にカッコ悪いのか難しいところだ。

 しかしもうひとつの問題として、前後輪荷重配分が現段階では算出不能なため、上記3種と同等の乗り味、コーナリング性を示すかどうかはわからない。結局はやってみないとわからないという事か。


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