妖華−女神館の住人達
 
 
 
 
 
第二百話:Call my name.
 
 
 
 
 
「レイジングハートの解析?」
「ヘイ。あれを解析して武装強化した方が、折角開花した能力も生かせるかと思うんだけどね〜」
 シンジの声がどこかご機嫌なのは、黒瓜堂と二人して小宴会の最中だからだ。
 といっても、呑んでいるのはシンジばかりで、黒瓜堂の方はほとんど酒が進んでいない。
 帰りにシンジを送るから、などというまともな理由でないことは言うまでもない。
 巴里から戻って以来、酒を飲んでもちっとも旨いと感じなくなったシンジだが、この店で造られるワインだけは脳と舌が反応する。
 但し、最上位ランクになると身体が持たないので、今呑んでいるのは中位より少し下のワインになる。
 アルコール度数は変わらないのに、酔い方が全く違うのだ。
「あんなものを解析したところで、うちの数式を当てはめて改造することはできませんよ。第一面倒だ」
「駄目?」
「レイジングハートは面倒だ、と言っている」
「むぅ〜」
 酒でうっすらと上気した顔に、僅かな拗ねにも似た表情を浮かべているシンジなど、住人達の前では絶対に見せることのない表情だ。
 不満そうに口を尖らせていき、それが限界まで達したところで、不意に表情は元に戻った。
「ああ、そうか。レイジングハートが駄目なんだ。りょーかいしました」
「少し呑ませすぎたかな。知能が低下しているね」
 ぶるぶるぶる。
 全力で首を振るシンジだが、既にボトルは2本空になっている。
「一発かまして逃げる――君の思考は間違っていない。だが、攻撃をかわしきれる君とは違い、完全に避けられる根拠が無い。一発の威力は小さくとも、何度も受ければダメージも蓄積する。つまり、だ」
「完全な防御が前提になる、と」
「その通り」
 黒瓜堂が邪悪に頷いた。
「完全に受けきるからこそ、攻撃の一手にも重みが増すというもの。更に言えばそれを使うことで、こちらが苦労して大技を発動する必要もなくなる。相手に合わせて同じことをする要は無い。起動詠唱に時間はかかるが一定の効果は保証されるものと、詠唱は極めて短時間だが、効果は術者の能力にすべて掛かってくる。君が開発した娘なら、どちらが相応しいかな?」
 長々と語りながら、黒瓜堂の主人は反応がない事を既に知っていた。
 わずかに肩へ掛かってくる重みと吐息の音は、酔客がメニューを甘眠に切り替えたことを伝えている。
 とそこへ、
「よく眠っているわね。数秒と経たなかったわよ」
 背後から聞こえた美しい声にも、黒瓜堂は振り向かなかった。
「院長の往診が必要な患者はいない筈だが」
 ここは、帝都でもなければ黒瓜堂の店でもない。
 魔界なのだ。
 妖艶な院長と魔界の美しい女王は、互いを滅ぼさずにはいられない不倶戴天の敵であり、それ故に互いの領分(テリトリー)を侵すことは滅多にしない。
「秀蘭に案内してもらったのよ」
 ああ、と黒瓜堂は納得した。
 姉同士、妹同士は敵対関係だが、相手を入れ替えるとどういうわけか仲良しになる。
「姉の逆鱗に触れる事を覚悟で案内(あない)役をつとめるとは、さて何を受け取ったのやら」
「言いがかりね」
 ぷい、とシビウはそっぽを向いたが、その白い指が妖しく口元に触れたと黒瓜堂は気づいていた。
「その酔客はわたしが預かるわ」
「断る」
 間髪入れずに黒瓜堂は否定した。
「なにをしに来たか知らんが、彼は今私の横で眠っている。明日になればまた、教師の任を担わねばならん。幼女を弄って身体を温めてきた変態になど渡さんよ」
「だから、よ」
 シビウの声に危険なものが混ざる。
「Cランク程度のワインで酔い潰れるなど、肉体強度が低下している証拠よ。おまけにフェンリルには痛打を浴びせるし、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積しているから、些細な事でもすぐに発動するのよ」
「……」
 黒瓜堂は、すぐには反応しなかった。
 魔女医の言葉が、女としてではなく、医師としての指摘であることは分かっていたのだ。
 疲労云々はともかく、女神館へ赴く前はもう少しのんびりしていた。大幅に変わったわけではないが、時折剣呑なものが顔を見せるようになったのは事実だ。
「で、連れ帰ってどうするね」
「日中は通常生活で結構。三夜、私の元へ預けていただくわ。それで六割は抜いてご覧に入れる」
「本人の意思は?」
「そんなものは、あなたがどうにでも出来るでしょう。それとも都度、医者が記憶を弄るに任せるお師匠様かしら?」
「良かろう」
 患者本人が酔臥する横で、症状から治療法を提示する医師と、それを勝手に承諾する知己。
 つくづく良い友人に恵まれない奴だ、と本人が起きていたらぼやくに違いない。
「症状は本人が知る必要はなかろう。原因は知れている」
「そうね」
「ただし」
 初めて黒瓜堂が振り向いた。
「患者の夢には決して干渉しないと誓約してもらおう――ドクトル・シビウの名において」
「承知しているわ」
 シビウがすっと一礼する。
 戻ったその顔には笑みが浮かんでいた。
「じゃあ、もらっていくわね」
 絶望の淵に立たされた患者に、希望と生きる勇気を与える笑みであり――。
 健康診断にやってきた知り合いの手を取り、有無を言わさず服をはぎ取りベッドに放り込んだその姿を見下ろす時の笑みであった。
 だが、そのいずれに於いても、美しき魔女医のこころが同じであることを、黒瓜堂は知っている。
 シンジを軽々と抱き上げたシビウが、訪れた時と同様に足音も立てずに去って行く。
「組み込むのは絶対防御に雷撃と衝撃…ふむ、ベースの素材はあれにするか」
 携帯電話を取りだしてかけると、
「ああ、私だ。この間、ウクライナから届いた荷物の中に、カドゥケウスの杖があった筈だ。解体して、工房に出しておいて。一本組み立てるから」
 何やら指示を出しながら、危険な女にお持ち帰りされた知己の事など忘れたように振り返りもしなかった。
 
 
 
 
 
 ベッドの上で、座り込んだふたりの少女が向き合っていた。
 片方は服を着ているが、片方はトップレスである。
 フェイトの最大射撃魔法をなのはは簡単に受け止め、のみならず自らの雷撃魔法を重ねて跳ね返した。
 しかも両手足を拘束され、呪文を詠唱する間もなく、ほぼ間髪を入れずに撃ち返してきたのだ。
 受け止めて散らすならまだしも、跳ね返す――しかも威力を倍増して――など、聞いたことが無い。
 ここが魔界ではなかったら――。
 なのはの武器が怪しげな杖ではなく、レイジングハートだったら――。
 こうまで瞬時に勝負は付かなかったかもしれない。
 或いは、フェイトとてこうも簡単に不覚を取らなかったかもしれない。
 とはいえ、フェイトはこの場所での勝負を選択した。
 一対一である以上、ついこの間まで自分に手も足も出なかった相手に、戦いもせず背を向ける事は、フェイトのプライドが許さなかったのだ。
 ただ、自分の敗北がこの場所とはあまり関係ないであろうと、フェイトは朧気に察していた。
 普通の魔法具であれば、そのまま跳ね返すなど出来るものではない。受け止めることと、跳ね返すことは全く別なのだ。
 つまり、なのはがレイジングハートを封印していた時点で、勝負は決まっていたことになる。
(完敗ね…)
 負けたこと自体は諦めもつくのだが、当然負ければジュエルシードは手に入らない。母の命(めい)に応えられなかったことだけが、なのははそれを要求しなかった。
 それどころか、なのはが要求したのはフェイトの身体であり、
「結果は見えていた、とはいえよく出来ました。あの最少詠唱であれだけの魔法吸収が出来ればたいしたもの。シンジ君も褒めてくれるでしょう」
「そ、そうかなぁ〜」
 うっすらと赤くなって照れていたなのはが、
「さて、これからどうしますか?」
「私が勝ったので、フェイトちゃんをお持ち帰りです。フェイトちゃん、いいよね?」
 ね?も何もないのだが、応諾の反応も出来ず、フェイトは首筋まで赤くなって顔を背けている。
「悪くないが、その必要はない」
「え?」
「わざわざ連れ帰る必要もないでしょう。魔界(ここ)で十分です」
『「ここっ!?」』
 思わず二人の声がハモり、見合わせたなのはの顔もうっすらと赤くなる。
「初体験は屋外に限ります。と、ハムラビ法典777条にも書いてある」
「そ、そうなんですか」
 ええ、と平然と頷き、
「書いてありますが、そのまま実行させたのでは私の存在意義が無くなる。さっき、ご褒美をあげると言ったでしょう。ここを使うといい」
「?」
 たった今、魔界を指してここと言ったばかりなのに、何を言い出すのかとちょこんと小首を傾げたなのはの前で、黒瓜堂はスーツの懐からペンを取り出した。ボールペンに見えたが、先を引っ張ると長さが伸びだし、みるみる内に長くなっていった。
 やがて動きが止まった時、その全長は2メートル前後にもなっており、黒瓜堂はその根元を持つと、宙に何やら描き出した。
 二対の視線が見つめる中でペン先は図形を描いていき、やがてそれが長方形となった時、何も無い空間に現出したのはドアであった。
 ややブラウンのかった見るからに重厚そうなドアは、把手の上下に鍵穴が設けられており、それはなのはの知る限り、玄関のドアに使われる物体である。
「トイレは右、浴室は左にある。中の物は好きに使って構わない。鍵は開いているが、中からの施錠は不要です」
「も、もしかして開けっ放しですかっ?」
「君らの痴態を魔界中に公開しても、私には何のメリットも無い。好きなだけ愉しんだら、ドアを開けて帰られるといい。ゲート付近に出るようセットしてある。ではごゆっくり」
 興味を失ったかのように、さっさとウニ頭をくるりと翻した黒瓜堂の後ろから、
「あ、あのっ」
 呼ぶ声に足は止まったが、言葉は返さない。
「あの…その、アルフは…」
「全身の毛を毟られるより、見物人と化すことを選択した。あとで再会出来るだろう」
「……」
(大丈夫だよ)
 なのはが、不安の色を隠せないフェイトの耳元で囁いた。
(黒瓜堂さんが、ああいう風に言うときは無事だから)
(う、うん…)
 頷いたフェイトは、まだなのはに膝枕されたままだ。
 なのはは、歩き出した黒瓜堂のウニ頭を見送っていたが、やがてそれが森に姿を消すと、フェイトに視線を向けた。
 が、フェイトもちょうど同じ事をしていたようで、二人の視線がパチッと出会う。
「『あ…』」
 何となく気恥ずかしくなり、二人とも視線をそらす。
 視線は合わせぬまま、
「じゃ、じゃあ行こうか…いい?」
「う、うん…」
 敗者は勝者の命令に服従、が条件なのだから、さっさと行くよでもいっこうに構わないのだが、その辺りになのはの性格が出ている。
 立ち上がり、フェイトが身を起こすのを待ってから手を差し出す。
「……」
 一瞬躊躇ったフェイトだが、そっと差し出された手をとった。
 見た目とは違い、重さを感じさせることもきしみ音を立てることもなく、すっと開いたドアの向こうに拡がっていたのは五十平米ほどの洋室であった。
 中央にメーキングされたキングサイズのベッドが位置し、その右側にはサイドテーブルが置かれ、部屋の両側にはそれぞれドアがついている。
「すごい…広いお部屋…」
 豪邸自体は級友の家で見たこともあるが、何も無い空間に突如現出した部屋というのは、全く違った印象を与える。
 年代を感じさせる造りとそこかしこに施された装飾は、身体の疲れを癒やすには適しても、ロリレズ向けには雰囲気が重すぎるようにも見えるが、そこは悪の師匠に認められた少女だけあって、気にする事も無くフェイトと共に歩み寄った。
 靴を脱いでベッドの上に上がると、マットをぽんぽんと叩いた。
 はやく、はやくぅ、と目で促され、おずおずとフェイトもベッドに上がる。
 フェイトがベッドに上がると、なのははさっさと上着を脱ぎ捨てた。
 純白のジュニアブラも躊躇う事無く脱ぎ捨てると、ちょこんと正座する。
 それを見たフェイトも、ボロボロになったマントをベッドの横に置き、 ところどころ破れたアンダースーツに手を掛けたところで、なのはがすっと手を伸ばしておさえた。
「え?」
「私が脱がすんだから全部脱いじゃだーめ」
 可愛らしい笑みを浮かべながら、中年めいたことを言い出した。
 で、冒頭の場面に戻る。
 正座の姿勢で向かい合い、なのはがそっと唇を突き出すと、フェイトも続き、二人の唇が僅かに触れ合い、二人の肩がぴくっと震える。
 少女との口づけは、フェイトは初めてだが、なのはは既に経験している。その時と違うのは、それが取っ組み合いの挙げ句強いられたキスで、今は自ら選んだということだ。
(フェイトちゃんの唇…ちょっとアイリスのより固い気がする…)
 言われるまま、ただただ懸命に唇をくっつけ合った前回とは違い、唇の感触を分析しているなのはだが、無論フェイトは自分の唇が他の少女と比べられていることなど思いもよらない。
 目を閉じたまま、数度唇を触れあわせた後、なのはの舌がそっとフェイトの唇を割った。ぬめぬめとした舌の先端が触れ、そのまま舌を押し込もうとして――動きが止まった。
(?)
 フェイトの舌が侵入を拒んでいる、と気付いた瞬間、フェイトの舌がなのはの舌を押し返してきた。
 しかも、そのまま舌を押し込んできた。
(!)
 思わず目を開けると、フェイトも目を開けてじっと見ている。
 おもちゃに攻められている、と知ってなのはの闘争心に火が点いた。ぐっと顔を前に押し出し、フェイトの舌を真っ向から迎え撃つ。舌が止められた、と気付いたフェイトも舌を突き出し、少女達の舌が互いの口腔内に侵入しようと絡み合い、優位に立とうと主導権を奪い合って攻め合う。
 
互いに目を見開いたまま相手を見つめ、唯一の武器となる舌だけで押し合い絡み合い、混ざり合った唾液がぽたぽたと膝の上に伝い落ちる。
 膝の上に置いた手は微動だにせず、舌だけを激しく絡ませ合うなのはとフェイト。
 口での呼吸は出来ず、鼻呼吸を強いられる。
 荒くなる鼻息の音もとめどなく滴るよだれも、気にする事無く相手の口腔を侵略しようと、少女達の淫闘は激しく、そして静かに続いたが、数分が経った頃にとうとう均衡が崩れた。
 既に魔法戦での決着はついており、ここでなのはを陵辱してもフェイトにメリットはない。
 一方、なのははと云うと、魔法勝負では圧勝したのだが武器は黒瓜堂に用意されたものだし、魔力自体はシンジに開発されたものだ。こんなところで、口腔の犯し合いに絶対負けるわけにはいかない。
 なのはのプライドと――Sっ気がフェイトのそれを上回り、とうとうなのはのちっちゃな舌がフェイトの口腔へ侵入した。
 薄紅色の舌に侵入されると、再度それを押し返す力は残っておらず、フェイトは妖しく鼻をならしてなのはの舌を受け入れた。
 たっぷりとフェイトの口腔を犯してから顔を離す。
 見つめ合う少女達の目はいずれも濡れていた。
「もぉフェイトちゃん、私のおもちゃになるっていったのに!」
 ぷう、とほほをふくらませるなのはに、
「えっちな勝負も負けちゃった。残念」
 うっすらと微笑ったフェイトを見て、わざと抵抗したのではないか、とそんな思いが一瞬なのはの心を過ぎった。
(まさか、ね…)
 浮かんだ思いを振り払い、フェイトの肩を掴んで押し倒すと、僅かに破れたアンダーウェアの胸元へ歯を当てると、一気に横へ引き破いた。
 自らは片手で器用に薄ピンクのパンツを脱ぎ捨て、フェイトの上に覆いかぶさり乳首に吸い付く。甘噛みされた乳首がぷっくりとふくらんでくると、フェイトの顔から徐々に余裕が消えていき、吐息に切なげなものが混ざってきた。
「あふぅ…んんっ」
(うふふっ)
 フェイトが喘ぐほど、なのはの征服欲は満たされていく。フェイトの可愛らしい喘ぎを聴きながら、両手で器用にフェイトの服を剥ぎ取っていく。
 もちろん、その間も尖ってきた両方の甘い乳首へ交互にしゃぶりつくことは忘れない。
 
服を剥ぎ取られても、もうフェイトに抗う素振りはなかった。剥ぎ取る、とは言っても破いていくだけなので、服自体は身体にまとわりついている。
 上半身がほぼ露わになったところで動きを止め、
「さ、フェイトちゃん、ぬぎぬ…あれ?」
 ぬぎぬぎしまちょうね〜、と言おうとフェイトを見ると、いつの間にかうっとりと目を閉じている。
「あの〜、フェイトちゃん?」
「!」
 目を開けると見つめているなのはと視線がぶつかり、真っ赤になったフェイトだが、つられて自分まで頬を赤らめたことに、なのはは気付いていない。
「ふ、服…ぬいじゃおうね?」
「……うん」
 チカイエカの鳴くような声で応えた。
 されるがままに手を上げ、脚を開き、あっという間になのは同様、一糸まとわぬ裸になったフェイト。その全身はうっすらと色づき、なのはになめ回された小さな乳首は唾液にまみれ、濡れ光りながら存在を誇示するように尖っている。
 一本の筋でしかない自分の性器と比べ、フェイトのそこは大淫唇もわずかに膨らみ、かすかながら小淫唇も顔をのぞかせている。
 性的興奮のせいもあるが、それが性徴ではなく、調教によるものだとは、無論なのはは知らない。
(フェイトちゃんのおまんこ、やらしー形してる…ちょっと羨ましいな…)
 さすがにそれは口にしなかった。
 恥ずかしがるならともかく、しょんぼりされでもしたら困るのだ。
「じゃ、じゃあ…フェイトちゃん続き…」
 こくっと頷いたフェイトだが、
「んー…」
 伸ばしたなのはの手が途中で止まった。
(え…?)
「わ、わたしにも…してくれる?」
「うん…」
 起き上がったフェイトが、仰向けに寝転んだなのはをまたいで四つん這いになる。少女達の視界を互いの性器が占め、二人は暫し目の前の女性器を見つめていた。
 僅かに荒くなった吐息に時折生唾を呑み込む音が混ざり、室内を静寂が支配する。
 ただし、二人の視線にあるものは幾分異なっていた。
 自分以外の少女の股間を観察した事がないのは、なのはもフェイトも変わらない。
 が、
(こ、これが女性器…私のもこうなって…?)
 なのはの性器に視線を注いでいるフェイトに対し、なのはの視線はフェイトの尻に向いていた。
 温泉でアイリスと掴み合いの喧嘩をした時、怒ったレニに二人まとめて尻穴に指を突き入れられたことを思い出したのだ。
(お、思い出しちゃった…)
 股間がじわっと熱くなり、なのはの双眸に危険な光が浮かんでくる。
「フェイトちゃん、もっとおまんこよく見せて」
「わ、わか…ひゃうっ!?」
 言われるまま尻に手を掛けた途端、素っ頓狂な声がフェイトの唇を割った。性器を舐め合うのだと思ったら、いきなり尻穴に舌を差し込まれたのだ。
「ま、待ってっ、そこ違うっ!そこはおし…ひぐっ!」
 
母が女王様と化してフェイトを責める時も、尻穴には触れなかった。排せつ専用と思っていた場所に躊躇いなく舌を入れられ、たまらず逃げようとするフェイトだが、両脚を手でがっしりと抱え込まれ、尻穴に舌が入った状態では、逃げようにも逃げられない。
(…ん?)
 フェイトの尻穴を舐めながら、なのははあることに気付いた。本来ならそこにあるまじき味――ボディソープの匂いをそこに感じ取り、なのはがにやあと笑った。
(なーんだ、フェイトちゃんお尻触られるの期待してたんだ)
 なのはの雰囲気が妙に変わった事を察知し、何とか逃れようともがくフェイト。
 だが、なのはの拘束は微動だにせず、尻穴からやっと抜いたと思ったらそのまま膣口に舌を這わせてきた。
 無論フェイトは、前の穴も後ろの穴も処女ではない。母親に散々なぶられて開発済みだが、尻穴の経験値は殆ど貯まっていない。
 母親も、そこを責める時だけは、自らの指も舌も使わなかったのだ。
 それでも嬲られる歓びを知っているそこに、少女の小さな舌がぎこちなく入り込み、ペロペロと舐め回されるともう、フェイトに逃れる術もやり返す気力もあっというまに奪われていった。
 十分も経った頃にはもう、フェイトの膣口と尻穴は、なのはの涎とフェイトの愛液が混ざった驛にまみれ、いつしかフェイトは自分から尻を振るようになっていた。
 幼い肢体は汗と愛液と唾液で妖しく濡れ光り、二人とも恥ずかしげも無く嬌声を絡ませながら責める少女は尻穴を舌でほじり、責められる少女は脚を開いてもっと入れてとせがむように受け入れる。
 責めるなのはと責められるフェイトと、二人とも初めて身体を合わせた少女同士とは到底見えぬ淫らさで痴態を繰り広げていたが、徐々にフェイトの身体から力が抜けていき、尻を高く上げていた四つん這いの態勢から、なのはの脚の間にぺたんと上半身を落とした。
 尻だけはなのはに抱えられたまま、肩で荒い息を吐いている。
 執拗にフェイトの尻穴を責めていたなのはが、ちらりと自分の手を見た。
(……)
 数度、ゆっくりと開閉を繰り返してからフェイトの尻を解放する。
(あ、あれ…?)
 尻を上げる力は無くとも、フェイトは未だ達していなかった。不意に快楽の波を断たれ、緩慢な動作で後ろを見たフェイトの目に映ったのは、自分の尻を解放した上に、飽きたかのように手を開閉しているなのはの姿であった。
 しかも、ちっとも再開する気配がない。
「あ、あの…」
「なぁに?」
 にこっと微笑って訊ねるなのはだが、今のフェイトに、その笑みに含まれているものに――確実に邪悪なもの――気付く余裕は無く、
「や、やめないで…お願い…」
 蚊の鳴くような声で哀願するのが精一杯だった。
「んー、どーしよっかなぁ〜」
 表情の邪悪さが一層深くなり、フェイトを焦らしていたなのはだが、ふっと真顔になった。
「…んで…」
「…え?」
「名前、呼んでくれる?なのは、もっとしてって…い、言えたらしてあげるっ」
 早口で告げたその顔は、いつの間にかうっすらと赤くなっている。
 ゆっくりとフェイトが尻を上げていく。
 誘うようにぷりぷりと左右に尻を振りながら、
「なのは、お願い。フェ、フェイトのお尻まんこ…いっぱい可愛がってくれる?」
 股間から幾筋もの愛液を垂らしながら、尻を振って誘うようにねだるフェイトの尻がなのはの視界を占める。
 フェイトの愛撫をねだる声が脳内でリフレインし――なのはの中で何かが弾けた。
「いいよ、フェイトちゃん、もっとっ、もっと可愛がってあげるっ!!」
 フェイトの尻を左右から鷲掴みにすると、ひくつく尻穴へ舌を根元まで差し込みかき回し、同時に膣口へ掌をあてがい、ぐにぐにとこね回す。
 とろとろに蕩けた幼い膣は、搗いたばかりの餅のようになのはの手に吸い付いてきた。
「なのはっ、お尻もっ、お尻もまんこも気持ちいいよぉっ!!もっと、もっとほじってぇっ!」
「うんっ、フェイトちゃん、フェイトちゃん、もっと気持ちよくしてあげるぅっ」
 フェイトとなのは、二人の少女はどこかネジが吹っ飛んだような表情で、互いの体液まみれになり、獣のような喘ぎを鳴き交わしながら、汗まみれの裸体を絡ませ合った。
 シックスナインの姿勢で互いの尻を抱えた態勢からなのはが起き上がり、フェイトに思い切り開脚させて尻穴と勃起乳首を同時に責め出すと、フェイトは口を半開きにしてされるがままになっていたが、その視線はどこか虚ろになっている。
 
どれほど時間が経ったのか、すっかり我を忘れ、混ざり合った体液で濡れ光ったフェイトの身体に、あちこちキスマークをつけながら責め立てていたなのはの手が漸く止まった。
 可愛らしく、或いは獣のように唸り、喘いでいたフェイトの反応が止まったと気付いたのだ。
「ごめんね、フェイトちゃん。あんまりフェイトちゃんが可愛いからつい夢中に…!?」
 口を半開きにして、半ば白目をむいているフェイトから、反応は返ってこなかった。
「死…死んじゃってる?フェイトちゃん?フェイトちゃーん!?」
 慌てて揺するが、フェイトの反応はない。
「どどど、どーしよ、どーしよう!」
 裸のまま、なのはが両手を頬に当てて室内をドタバタと走り回る。
 欲情は一瞬で吹っ飛び、青ざめた表情で走り回っていたが、ふとその足が止まった。
「そ、そうだっ、黒瓜堂さんにっ」
 と言っても、連絡用の端末を持っている訳ではなく、辺りを見回したなのはの目に、壁に掛かった電話機が映った。
 数字の印字されたボタンは付いているが、掛ける先の番号も分からぬまま、なのはは受話器を手に取った。
 相手はすぐに出たが、不自然な早さに気付く余裕は、今のなのはにはない。
「終わりましたか?」
 やや低めの邪悪な声が、なのはの不安な心を覆っていく。
 とりあえず、幾分落ち着いた。
「は、はい。フェイトちゃんのアヘ顔もいっぱい見られて満足…じゃなくて!あのっ、フェイトちゃんが動かなくなっちゃったんですっ」
「ほう。では胸に顔を当ててごらんなさい。もし、反応がなければまた連絡を。心臓が動いていれば問題ありません。冷蔵庫に入っているドリンクを口移しで飲ませれば、まもなく目覚めるでしょう」
 なのはの反応を待たず、通話は切れた。
 数秒、受話器を持って立ち尽くしていたなのはだが、はっと我に返りベッドに駆け戻る。絶頂顔で伸びているフェイトの胸に耳を当てると、そこは確かに生者の鼓動を伝えてきた。
 ほっと安堵して、指示通りドリンクを手に戻ってきたなのはだが、フェイトを見下ろす内にその表情が微妙に変化してきた。
「まったくもー、フェイトちゃんのくせに!」
 何がどう、フェイトちゃんのくせに、なのかは不明だが、裸のまま腰に手を当て、これも全裸で横たわっているフェイトの口元をじっと見つめている。
 間もなく、なのはの視線がゆっくりと動いた。
 その先にあるのはフェイトの唇と――自分の股間。
 やがてフェイトが取り戻した時、その頭はなのはの太ももに乗せられていた。
 なのはがショーツ一枚の半裸なのはいいとして、自分もパンツ姿になっている事に気付き、フェイトの顔がみるみる赤くなる。
 穿かされた、と気付いたのだ。
「な、なのは。あの…あ」
 ちう。
「アヘ顔晒して喘ぐフェイトちゃん、とっても可愛かったよ。勝って良かった」
 頬への口づけと共に囁かれ、またも身体の奥が疼いてくるのと同時に、フェイトは同時に僅かな違和感も感じていた。
 
 自分を責める淫技といい、この下品とすら言える台詞といい――ここに来る前、高町なのははこんな娘だったか?
 
「フェイトちゃん、もう体力戻った?」
「ふぇ?」
「もう一回、えっちしよ。ね、いいでしょ?」
 のぞき込んでくるなのはの乳首は、既に尖って勃起している。
「で、でももうへとへとで…」
「もぉ、しようがないなあフェイトちゃんは」
 なのはと二人して、獣のような痴態を晒していたことは覚えている。このまま続けたら、自分が自分でなくなってしまうような気がして断ったのだ。
 受け入れてくれたかと安堵したのも束の間、
「じゃ、賭けしよっか」
「か、賭け?」
「そ。おまんこ舐め合って、私が先にアヘ顔になったらフェイトちゃんの勝ち。フェイトちゃんが先にアヘ顔晒したら私の価値。フェイトちゃんにはアヘ顔ダブルピースしてから、私ともっとえっちしてもらいまーす」
「ア、アヘ顔ダブルピース!?っていうかそれ、結局えっちするってことで…あっ」
 じゃあ決まりね、とフェイトの反応も待たず、なのはが器用にフェイトのパンツを脱がせていく。
 自らも下着を脱ぎ捨てて全裸になると、フェイトの顔をまたいで向きを変え、フェイトの眼前に幼い性器をさらけ出した。
「じゃ、いくよ。よーい、スタート!」
 
 
「フェイトちゃんのおまんこ、もうぐしょぐしょだね。やっぱり私とえっちしたかっ…あぅっ」
「あふっ…くうぅっ…か、勝って私は帰るんだっ、絶対負けないっ!な、なのはのまんこだってもうぐちゃぐちゃじゃないっ」
 
 
「オーナー、失礼いたします」
「おはいり」
 室内に入ると、黒瓜堂の主人は羊皮紙に何やら書き込んでいた。
 普通の紙でも端末でもなく、羊皮紙の時点で邪悪な匂いが漂ってくる。
「さっき、なのは嬢から連絡があった。フェイト・テスタロッサが動かなくなった、とね」
「映像もおさえてあります。確認されますか?」
「いや、なのは嬢の台詞で首尾は分かった。レビア、よくやってくれたね」
「はっ」
 頷いたまでは良かったが、素直に褒められたもの、ついうっかりと、
「幼女達が、夢中で汗だくのロリボディ絡ませ合って、とてもモエモエな映像ですわ」
「それはそれは」
 レビアの言葉に、嘘偽りはなかったのだが、黒瓜堂の語尾が僅かに低くなった事には気付かなかった。
「幼女の痴態を眺めてお疲れだろう。これを食べるといい」
 差し出されたのは、何やら包装された菓子であった。
「ワインボンボンだ。さっき出来上がった」
 そう言うと自らもひとつ、包みを解いて口に入れた。
 とりあえず、毒ではなさそうだと包みをとくと、酒瓶の形をしたチョコレートが出てきた。
 口に入れると、僅かに苦みの勝ったチョコレートの味が口の中で広がる。
 特に変わったところはない。
 噛むと液状のワインが出てくるところも同じ、何の気なしに嚥下したレビアだが、その直後に顔色が変わった。
 口内では感じなかったのに、のど元を過ぎた途端に強烈な熱さが伝わってきたのだ。
 みるみる身体が熱くなり、脳天からつま先まで一気に熱が拡がっていく。
(!?)
 いくら度数が高い酒でも、この疼くような刺激は妙だと黒瓜堂を見ようとした瞬間、小さな喘ぎがその唇を割った。
 きゅーっと、身体の奥底を鷲掴みにされたような異様な快感が乳首とクリトリス、そして首筋で爆ぜたのだ。
 首筋はレビアの性感帯のひとつだが、余人になど教えていない。
「オ、オーナー…私に何をっ…」
「せっかく幼女の痴態を演出してもらったのだ。彼女たちには及ばぬまでも、多少の快楽は褒美にせずばなるまい?」
 その台詞を聞いて、何やら地雷を踏んだらしいとようやく気付いたレビアだが、その間にも身体の疼きは容赦なく強くなっていき、下半身は半分以上性感帯と化したような気さえする。
 全身がしっとりと汗ばみだしてきているし、股間は既に濡れた下着の感触を伝えている。
 放っておけば、確実に全身性感帯などという世にも傍迷惑な性欲促進の憂き目は間違いない。
「オーナー…お、お願いだから…なんとかしてください…」
「君にはやってもらう事がある」
 見物する黒瓜堂の表情からは、偶然失敗作を供した風情はない。
 間違いなく意図的で、そしてほぼ確実に解毒剤もある筈だ。
 だが懇願するレビアの表情など気にした様子もなく、
「幼女達のお楽しみも、もう終わる頃だろう。二人を魔界の入り口まで送ってきたまえ」
「……」
 たとえ鬼でも悪魔でも、相手は雇用主である。
 目に悔し涙を浮かべて身を翻したレビアの後ろから、
「アルフと名乗るフェイト・テスタロッサの従魔は、人形(ひとがた)にも、獣の形にもなれる。覚えておくといい」
 怒気に覆われていたレビアの全身に、淫気が混ざる。
 怒りと淫らな気を漂わせて出て行くレビアの後ろ姿を見ながら、黒瓜堂は微笑った。
 実に愉しそうな笑みであった。
「完全な狼形態とケモミミ娘、さて、彼女はどちらを選ぶと思う?」
 
 
 
 
 
(つづく)

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