妖華−女神館の住人達
 
 
 
 
 
第十九話:春の夜の夢は美女の競演
 
 
 
 
 
「後を頼みます」
 それだけ言って、真宮寺一馬は霊刀を手にして歩き出した。
 帝都の魔気を吸い取り、限界まで肥大した降魔に向かって。
 精鋭部隊も、もはや降魔の前に為す統べなく、人はその滅びを待つしかない所へと追いつめられていた。
 誰が喚んだのか、一馬にとってそんな事はどうでも良かった。既にその意識から、この帝都を守る事以外はすべて喪われた状態にあった。
 破邪の血を引く者のみが霊刀と共になし得る技は、どんな人的兵器よりも降魔には有効であろう。
 その代償が、あまりにも大きな物であったとしても。
 術者たる一馬も、既に満身創痍となっており、到底大技に臨む状態ではなかった。
 それでも、巨大な触手を伸ばし、街の破壊に勤しんでいる巨大な降魔へ向けて、一馬はその歩みを止める事はない。
 と、その足が止まった。
 全身の激痛でさえもなお、止まる事の無かった歩みが。
 一人の老人が、その視界に映ったのだ。
 回りの喧噪など目に入らぬかのように、悠然と立っている老人が。
 黒服に身を包んだ屈強な男達が、その周囲を固めている。
「長老…お休みの時刻(とき)を妨げてしまいましたか」
 一馬は深々と一礼した。
「わたしも、なかなか熟睡は出来ない定めのようですな」
 老人はうっすらと笑った、かに見えた。
 飛んできた消火栓を、横の男が軽く薙ぐと、それは地に落ちて重たげな音を立てた。
「我らの力不足、申し訳ありません」
 一馬は謝したが、それは心からのものであった。
 長老は答える代わりに、穏やかな視線で一馬を見た。
 人生を幾多も数えたような、そしてそのすべてを見抜くような視線で。
「霊刀と破邪の血−行かれるか、一馬殿」
「身勝手なのは分かっています」
 一馬の口から出たのは、奇妙とも言える言葉であった。
 血の臭いも騒擾の響きも、彼らだけは避けているように見えた。
「帝都を守るのは…守りたいからではないのだと…」
 では、どうして命を賭しての術に挑めると言うのか。
「部下達に、つゆ払いさせましょぅ」
 長老が静かな声で言うと、男達が一斉に一馬を取り囲んだ。
「恐れ入ります」
 軽く一礼して、一馬はすっと歩き出した。
 そこから百五十メートルの間を、一馬は両目を閉じたままで歩いた。
 慣れ親しんだこの帝都、地理は既に知り尽くしている。
 だが、今は違うはずだ。
 被害に遭った人間の遺体や、或いは建物の残骸が点々と散らばっており、到底まともに歩ける状態ではない。
 にもかかわらず、一馬の目は開かない。
 まるで、障害物が除去されると分かっているかのように。
 そしてその通り、一馬の足が何かにつまずくことは無かった。
 ぴた、と一馬の足が止まる。
「もうこの辺で」
 一馬の声に、囲んでいた気配も同時に止まる。
 初めて目を開けた一馬は、後方へ一瞬視線を向けた。
「ありがとう、感謝します」
 その目には、累々と並んだ小降魔の死骸が映っていた。雑魚とは言え、今の一馬にとっては重荷であったろう。
 先導する男達が、それらを排除したことを一馬は知っていた。
 ゆっくりと首から十字架(クロス)を外し、それを近くにいた男に渡した。
「これを…」
 これを、と言いかけて言葉にならない。
 涙が落ちている、と気付くのに数秒かかった。
「仙台へ…お願いします」
 男は軽く頷いた。
 これでいい、一馬は内心で呟いた。
 これで私は安心して逝ける−娘に繰り返させないために。
 つかの間瞑目した一馬が目を開けた時、その顔には何故か微笑が浮かんでいた。
 からん、と音を立てて鞘が落ちた。
 抜き身を下げて歩き出したその背へ、
「必ず、娘さんにお渡しします」
 声を掛けた男の口元には、妙な物が見えていた。
 すなわち、乱杭歯が。
 男は吸血鬼であった。
 
 
 
 
 
 美女二人の冷気のせいか、近づいて来ようとしていた妖魔達の足が止まった。
 一応頭領とも言える山羊頭も、襲撃の手を止めている。
 まるで、接近禁止の看板でもそこにあるかのように。
「患者を治すのは私の役目」
 とシビウが言った。
 その視線はシンジではなく、フェンリルに向けたまま、
「でも、治療代を払わない患者は診るわけには行かないわ」
 
 シビウ病院。
 あらゆる診療科目を網羅し、ここに来ればかかるべき科が見あたらない、と言うことは無いとされる。
 医師から看護婦まで、どこへ行っても一級線で通用する者ばかりが揃っており、極めつけはこの院長であった。
 その診療報酬はやや変わっており、この新宿区民であれば、驚くほど安価で治療を受けられる。
 同じ帝都でも、この圧倒的な魔力の数値を計測する区は特別扱いらしい。
 ただし、碇シンジの名を持つ者以外は。
 そして区外であれば、目の玉が数メートルくらい飛び出しそうな報酬を、間違いなく要求される事になる。
 そもそも十年前の降魔大戦以降、その姿をがらりと変えたこの街は、発生する患者の数も桁違いだし、何よりもその種類が他の街とは異なるのだ。
 戸山町にある戸山公園、その周囲を囲むように立てられている戸山住宅は、いずれも夜の生き物、すなわち吸血鬼の専門住居だが、彼らがここに生きられるのはシビウのおかげである。
 そう、他人を襲うことなく生きられるよう、特殊な血液を製造・販売しているシビウ病院の。
 それもごく安価で。
 その一方で、シンジにだけは特別な報酬を要求するこの医師は、けが人が出る前に来たと言うのだろうか。
 だが。
「余計なお世話ね。マスターは私が守るのよ」
 これもシンジではなく、シビウを見たままフェンリルが言った。
「自分の力量を知ることから、まずは始める事ね。さもないと、大怪我するわよ」
「試してみるかい、シビウ」
「前から一度、あなたとは決着を付けようと思っていたのよ」
 なお、三人の中ではシンジの身長が一番高く、火花はシンジの胸元あたりで散っているところだ。
 違う殺気が高まった瞬間、シンジの手が二人の頬に、にゅうと伸びた。
「ギャラリーが多いようだ」
 確かに公開の修羅場には、これ以上適した場はあるまい。
 十体の山羊頭を先頭に、数十は下らない脇侍が取り囲んでいるのだ。
「シンジを独占できる絶好の機会なのに」
 ため息でも出そうな声でシビウが言うと、周囲をちらっと見た。
「あ、それはダメ」
 そう言ったのはフェンリルではなくシンジだったが、そんな台詞は無視して、
「この礼はするわよ」
 声に危険な物が混ざったと同時に、その手がケープから抜き出された。
 いや、もしかしたらその台詞もちゃんと入って居たのかも知れない。
 すっと伸びた手の先には銀光が煌めいており、刃物にも似たそれは、刃にしてはあまりにも細く、そして長い。
 それは針金の束であった。
 ケープの下に、一体どれほどの針金があるのか、それはみるみる長さを増した。
 そして数秒後。
 低いうなり声がした−シビウの足下から。
 骨格だけしかない、しかも針金で作られたそれは、あきらかに生きたもののそれを備えていた。
 虎が、針金で創り出された虎が、危険な息を熱く吐きながら、降魔達を見据えているのだった。
「まずは一頭」
 続いて一頭、また一頭と、シビウの手が動くたびに、針金細工の虎が増えていく。
 本物と区別の付かぬ程の、いやそれ以上にどう猛な気を漂わせながら。
 五頭になった時、やっとシビウの手は止まった。
「猛虎演舞」
 シンジの耳に、妖しい声でシビウが囁いた。
 五と言う数は、シンジの繰り出す虎をかたどった、炎の数を指していたのだろうか。
「お行き」
 その声を聞いた途端、無機物の筈のそれが、一斉に地を蹴った。
 虚を突かれたか、一匹の山羊頭がそれに捕まった。
 虎は、山羊頭を丸ごと口に入れたのだ。それが針金なら、それが呑み込まれる事はない筈だ。
 だが、針金の枠組みにもかかわらず、確かに山羊の頭は消えていく。
 間違いなく、虎に呑み込まれているのだ。
 ゆっくりと、だが確実にその身体が消えていく。
 そしてその全身が姿を消すまでには、十秒ほどの時間で事足りた。
 そしてそれと同時に、他の四頭も次々と狩りを始めた。
 ある物はその牙にかかり、またあるものはその巨大な前足の一撃に、為す術もなく倒れていく。
「医者などに任せていられないね」
 幾分冷ややかなフェンリルの声がすると同時に、たんっと地面を軽く踏んだ。
 ざわ、と何かの気配が動いた次の瞬間、一体の脇侍が宙に浮いた。
 その足には蔓が幾重にも巻き付いており、その身体を微動だにさせない。
 十メートルの高みから一気に落ちたそいつは、全身の装甲をひしゃげさせて吹っ飛んだ。
 後を追うようにして、一斉に伸びてきた蔓が、針金細工の虎と同様脇侍達に襲いかかっていく。
 幸い後ろは御苑であり、用いるべき自然には事欠かない。
 猛虎が唸り、蔓が風を切って巻き付いていく。
 ある者は胴を食いちぎられ、またあるものは全身を叩き付けられて。
 シンジの出番がないまま、降魔の群が全滅したのは数分後の事であった。
「三分三十秒」
 シビウがシンジの手を取って、そこにある時計を見た。
「こんなものかな」
 シンジの声と同時に、シビウとフェンリルが動いた。
 シビウが指を鳴らすと、猛虎たちは皆針金へと戻り、フェンリルの軽いタップに合わせるかのように、蔓達もまた戻っていった。
 後に残されたのは、降魔の残骸とその体液のみ。
「さて、片づいたわ」
「終わったよ、マスター」
 動く必要は無かったかも知れない。
 それだけで、妖艶な美女同士の戦闘がそこに展開した事は想像に難くない。
 沈黙、それこそが十二分に開始の合図となりうる。
 シビウとフェンリル、この両者が対峙した時、それがいかなる結果を生み出すのか、想像するのも難しい。
 だが。
「御苑が、いやこの帝都が違う原因で滅んでも困る」
 ゆっくりとした声で言うと、シンジはシビウを見た。
 その手がシビウの顔にかかり、すっと持ち上げた時、なぜかその双眸は閉じられていた。
「足りない、事がないでもないわ」
 微妙な言い回しに、シンジの顔がそれへ近づいた。
 シビウに、次いでフェンリルに。
 二つの頬がかすかな音を立てた。
「一つ言い忘れてた事がある。俺ってば、独占されるのやなんだよね」
 降魔を前にしてこの台詞である。もっとも、これが住人達の会話なら噴飯物だが、このメンバーなら別に違和感もない。
 次の瞬間、フェンリルとシビウの肢体がびくりと揺れた。
 寄せた頬に、ふうっとシンジが息を吹きかけたのだ。
 さては二人まとめての痴情に移行か、と思われたが、
「電話を忘れた、貸してくれ」
 今の事など忘れたかのように言うと、シビウに手を出した。
 かすかな溜息と共に受け取り、携帯のボタンを押して耳に当てる。
 二回鳴ってすぐに出た。
「はい」
「エヴァはどこへ向かった?」
「今戸山町に向けたわ。行ってやってくれる?」
「分かった」
 電話を切って持ち主に返し、
「来る?」
「お邪魔するわ」
「戸山公園だ。フェンリル、乗せていって」
「はいな」
 白狼と姿を変えたその背にシンジがひらりと乗ると、大きく地を蹴って走り出した。
「先行ってるよ」
 みるみる遠くなっていくそれを見ながら、
「やはり、空中移動は必要ね」
 真面目な顔で呟いた時、サイレンの音が聞こえてきた。
   
 
 
 
 
「うーん、ちょ、ちょっと…これはきっついかなあ」
 今また一体を吹き飛ばしながら、レイが小さく洩らした。
 無論、後ろのアスカには聞こえないように。
 アスカがかなり疲労しているので、現在レイが後ろ手にかばっているのだ。
「大丈夫よ、まだ出来るわ」
 アスカはそう言ったが、既に疲労度は危険度に達しており、
「いいからちょっとだけ休んでなよ」
 と、強引に休ませたのだ。
 とは言え、実際脇侍を相手に孤軍奮闘となると、かなり疲れると知った。
「このブレスレットもらってなかったら…」
 レイはぶるぶると首を振った。
 怖いとはまた別の感覚、力の差をレイは実感していた。
 自分とアスカの力量はさして変わらない事を、レイは分かっていた。
 そして今の自分の力はきっと、いや間違いなくこのブレスレットのおかげに違いないという事も。
 だが次の瞬間、同時に襲ってきたそれをレイはかわし損ねた。
 一体は吹っ飛ばしたのだが、もう片方を避けようとして足を取られたのだ。
「レイっ!」
 咄嗟に火球を放とうとして…撃てない!?
 火球の一つを放つ力すら、今のアスカには残っていなかったのだ。
 跳んでも到底間に合わない。
 アスカの顔から血の気が引き、レイが思わず目を閉じたその瞬間。
「斬」
 機械仕掛けの手が落ちてくる事はなく、かわりに何かがどっと崩れ落ちる音がした。
 何の気負いもない静かな声に、レイはその主を知った。
「マユミっ」
 アスカの声に、レイがおそるおそる目を開けると、愛刀『水月』を鞘に収めたマユミが立っていた。
「レイちゃん、無事?」
「マ、マユミどうしてここへ…」
 訊ねたアスカに、
「碇さんに言われたの、レイちゃん達を助けるようにって」
「シンちゃんに?そっか」
 ふう、と息を吐き出したレイに、
「ここは私が引き受けるから、少し休んでいるといいわ」
「で、でも…」
「大丈夫よ」
 ふふっと笑ったマユミだが、その表情には絶対の意思が感じられた。
「じゃ、じゃあ少しだけね」
 と言ったものの、レイもかなり疲労しており、最高のタイミングであった。
「そうだマユちゃん、これ着けておいて」
 外したブレスレットをマユミに差し出した。
「これは?」
「シンちゃんにさっき借りたの」
「碇さんに?」
「大丈夫よ、変なものじゃないから。それにこれ、すごい力が出るんだよ」
 ちょっと訝しげな顔になったが、レイの確信を持った口調に、言われるままそれを着けてみた。
「な!?」
 着けた途端、マユミの顔が真っ赤になった。
 その箇所から、凄まじい量の気が流れ込んできたのだ。
 文字通り、身体が火照るようなそれが。
「マ、マユちゃんどしたの?」
 マユミはそれには答えず、
「ちょ、ちょっと運動してくるわ」
 水月を鞘から抜きざま、鞘をレイに放り出して、
「持っていてっ」
 レイの返事も聞かずに、脇侍の群へ飛び込んでいく。
 軽く、ほんの軽く振っただけに見えたのに、次の瞬間脇侍は真っ二つに裂かれ、しかもその分かれた胴は吹っ飛んでいったのだ。
「さっすがあ」
 唖然としてそれを見ながら、渡された鞘を持ち上げた。
 普段、自分の身体よりもそれを大事にしているマユミにしては、珍しいこともあるなと思いながら。
 そこへ、
「ちょっとレイ、あんな物があるんだったらさっさとあたしに貸しなさいよ」
「だってあれシンちゃんのだよ」
「あいつの?うー…」
「ここはマユちゃんに任せて、ボク達は見物してようよ」
 何か言いたげだったが、楽しそうに脇侍を斬りまくっているマユミを見て、
「そうね、そうしようか」
 アスカとレイは、人斬り包丁と化したようなマユミを、並んで見物していた。
 これなら、あっさり片が付くなと確信しながら。
 
 
 
 
 
 新宿区内、十カ所の地点で一斉に湧き出した降魔達。
 だがその流れも、今や二カ所へと集結していた。
 一点はマユミが参戦した、レイ達のいるこの中央公園裏であり、もう一点はエヴァチームの向かった戸山町である。
 その戸山町では−
「あれね」
 あやめとかえでの視界に、黒服の男達が映った。
 それと、その回りに積まれている脇侍の残骸とが。
 黒服の正体が吸血鬼である事と、彼らがどうして積極的に討ってでないのか、二人には分かっていた。
 すなわち、彼らが守っているのは帝都では無いのだということを。
 彼らが守らんとしているのはただ一つ、長老の屋敷であることも。
 普段は静謐な眠りについている長老は、厳重な棺に収められて屋敷の地下に眠っている筈だが、その屋敷は男達の後ろ百メートルの所にある。
「姉さん、加勢する?」
「いえ、公園にまっすぐ向けて。ミサトさんは、そこに敵の大将がいるって言われたから。ミサトさんを信じましょう」
「そうね」
 タイヤをきしませて、そのまま公園へと向けた。
 そして公園へ着いた時。
 いた!
「あれは…銀角…」
 脇侍よりも数段上の魔装機兵を、彼らは銀角と呼んでいた。
 降魔戦争の時もいたのだが、あくまで散見されるだけであり、その数は脇侍に比べて圧倒的に少数であった。
 だが今、二人の視界に見えるのは、ずらりと並んだ銀角の群であり、それはちょうど向かい合う形で列を作っていた。
 そしてその遙か向こうに見えるのは。
「姉さん、見える?」
 双眼鏡を当てたあやめにかえでが聞くと、
「女みたいね…」
「女?」
「取りあえず、エヴァ二体を出しましょう」
 選び抜かれた対降魔邀撃部隊、その彼らを持ってしても大苦戦を強いられた銀角。
 実戦が初めてのエヴァに、どこまで出来るか不安はあったものの、ここまで来てはそんな事も言っていられない。
 さくらが搭乗する初号機、アイリスの操る参号機。
 零号機、弐号機のパイロットは現在日本におらず、すみれの搭乗する四号機はパイロットの不調で本部待機。
 戦力としてはかなり不足しているが、ここはやむを得ない。
「アイリス、さくら、準備はいいかしら」
「行けます、あやめさん」
「アイリスも大丈夫」
 その声に、後部ハッチの開閉ボタンをおしたが、二人とも気付いていなかった。
 すなわち、アイリスの声にどこか悲壮な物があったことに。
 シンジに怒られたと思っていることで、その精神状態が大きく揺れていることに。
 ハッチが開いた瞬間、
「アイリス出ます」
 機銃を構えた参号機が、真っ先に飛び出した。
「ア、アイリスっ」
 慌ててさくらの初号機が、太刀を引っさげて後を追った。
 一瞬唖然として見ていた二人だが、
「かえで、後は任せるわ」
「ね、姉さん?」
「かつての対降魔迎撃部隊隊員、それが見物している訳には行かないでしょう」
 言うなり、大型拳銃を手にしたあやめが降りた。
 安全装置(セーフティ)を外して走り出した途端、公園内に銃声が鳴り響いた。
 
 
 
 
 
(つづく)

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