GOD SAVE THE SHINJI!
 
 
 
 
 
第二十五話:みるくおぷしょん――大きさと重さと柔らかさと
 
 
 
 
 
 ナタルに取って母乳とは、母親が子供に与えるものであって、少なくとも妊娠中から出るようになるのが正常な筈だ。
 だが、自分が妊娠する事などあり得ない。
 仮に先日の初体験で妊娠したとして、二日でいきなり妊娠して母乳が出るようになった例など、聞いた事はない。
 ホルモンバランスの崩れ…乳腺症…脳腫瘍…。
 ナタルの脳裏を嫌な単語が過ぎり、段々ろくでもない方向に流れていく。
 青ざめた表情でぺたんと座り込んだナタルに、シンジの方が焦った。
「ちょ、ちょっとナタルどうしたのっ!?」
「シンジ…」
 見上げた双眸には涙が溜まっている。
「ナ、ナタル!?」
「私は…私は病気なのか?妊娠もしていないのに母乳が出るなどとこんな…こんな事が…」
 当然と言えば当然だが、萌え材料になるという思考はないらしい。
 シンジは何も言わずにナタルの乳房に触れ、あたたかいミルクを指にすくい取ってナタルの口許へ持って行った。
「え?」
「……」
 頷いたシンジに、ナタルの赤い舌がその指先を舐める。
「甘い…糖でも出てるのか…」
 確かに母乳は、母体が健康ならうっすらと甘かったりするが、飲みやすいほどではない。
 しかし、やや甘い味がするからと言って、なぜ糖が出ているという結論になるのか。
 まるで自分だけこの世の終焉を迎えたような顔をしているナタルを見て、シンジはある事を思いだした。
(そっか、この子想定外の事態には結構弱いんだ)
 予想された事態の上下左右までは対処出来るが、ある一定のライン――斜め上とか――を超えるとがくっと対処能力が落ちるのだ。
(もうしようがないな)
 床に腰を下ろしたシンジが、ナタルを抱き寄せて、膝の上に頭を乗せた。
「シ、シンジ?」
「大丈夫、大丈夫だから。糖じゃないし、ナタルは病気なんかじゃないよ」
「…ほんとうに?」
 普段の凛とした面影は微塵もなく、すっかり弱気になっている。
「大丈夫だよ。さっきナタルが飲んだ薬は、元から避妊薬として作られた物じゃないし、それにオプションがどうとか言ってたからそれだと思う」
「さっき避妊薬って…言っていなかった?」
「人間がタマネギを食べても問題ないけど、犬にあげると貧血や溶血を起こしたりするでしょ。あれと一緒。例えば妖精には睡眠薬でも、人間にとっては避妊薬になるっていう事。だから大丈夫、ナタルには全然異常ないから」
「シンジが…そう言うのなら…」
「大丈夫」
 もう一度念を押してよしよしと頭を撫でると、やっと落ち着いたらしく、強張っていた身体から力が抜けていく。
 どちらが年上(おとな)だか分からない。
(シンジの手…落ち着く…)
 しばらくシンジの手に委ねていたナタルが、上を向いた。
「なに?」
「その…せ、せっかく出たのだから…シ、シンジも…」
「ん?」
 一瞬首を傾げたシンジが、うっすらと笑った。
「吸ってほしい?」
「う…うん」
「いいよ」
 乳首に唇を寄せたシンジが、白い液にまみれたそこをぺろっと舐める。
「ふひゃっ!?」
 甘い喘ぎに、シンジがナタルの顔を見た。
「もしもしナタルさん?」
「だ、大丈夫。ちょ、ちょっとびっくりしただけで…つ、続けてっ」
(ちょっと舐められただけでこんなに気持ちいいなんて…こ、これで吸われたら…)
 シンジも同じような事を考えていたのだが、自分が快感を我慢する訳じゃないしと、甘いミルクの出る乳首に吸い付いた。
(本当に甘くて美味しい)
 少し乳首の根元を舌で押すようにしてやると、間断なくミルクが出てくる。牛の乳を搾るみたいにして、乳房全体を搾り気味にして飲んでいたシンジの眉が、不意に寄る。
(痛!?)
 声を我慢しているナタルが、シンジの背中に爪を立てたのだ。裸になっていないからいいようなものの、裸だったら結構なダメージだ。
「シンジっ、んっ…上手っ…あぁっ」
 やや強めに、ちゅーっと吸い上げた途端、ナタルの口から声がもれた。堪える限界を超えたらしい。
 肩を震わせながら喘ぐナタルの手が、シンジの頭に回った。
「そっ、そんなに強く吸ったらっ、お、おかし…なるっ、だめっ」
 言葉とは裏腹に、シンジの頭をかき抱き、ぎゅっと胸に押しつけてくる。その間も、母乳は止まる気配がなく、吸えば吸うだけ出てくる。
 最初はそれでも良かったが、徐々に嚥下速度が追いつかなくなってきた。しかも、ナタルはもっとと言うように頭をかき抱いてくる。
 ようやくシンジが解放された時、その唇からはミルクが一条の筋となって滴り落ちていた。口許を指でおさえ、口内に溜まったミルクをこくんと飲み干す。
 熱烈過ぎたとナタルも気付いたか、
「ご、ごめん無理させてしまったな…大丈夫か?」
「一応大丈夫。でも」
「でも?」
「今度はナタルが飲んで」
「ど、どうやって?」
 ナタルの乳房を手で持ち上げたシンジが、
「自分でこうやって持ち上げて…あれ?」
「なにか変?」
「なんか、大きくなってない?」
「大きく?そんな急に大きくなれ…ば?」
「ほらね?」
 
 ふにふに…ふにふに。
 
 二人の手が、包み込むようにナタルの乳房を揉みしだく。
「ほら、ちょっと大きくなってる」
「そ、そうだな…」
 自分の乳房を指でむにむにと押しながら、ナタルがちらっとシンジを見た。
「なに?ナタル」
「ど、どうかな」
「どうって?」
「そ、その…ほら、良いとか悪いとか…」
 ん?とシンジは首を傾げた。そんな事は訊かれても困る。そもそも、何を以て良いとか悪いとか判断するのか。
「訊かれても困るけど…ナタルが決めればいいと思うよ」
「え?」
「だって、胸がちっちゃくても困らない人もいるし、胸がおっきすぎて肩こりに年中悩まされる人もいるし。ナタルが良いと思えば…あれ?」
 ぷいっ。
 乳房からミルクを滴らせたまま、ナタルが横を向いてしまった。
「あの…ナタル?」
「知らない!」
 つんと拗ねた顔も結構いい、とか思ったシンジだが、その格好は乳房と股間が剥き出しになったボディタイツで、しかも乳首からはミルクを滴らせてサイズアップしているのだ。
(……)
 丸投げしておいて怒らなくてもいいのに、と思ったシンジだが、ふと気付いたようにぽむっと手を打った。
「ナタル」
「…何」
「ちょっと耳貸して」
 誰も聞く者はいないが、ナタルの耳元に口を寄せ、
「ナタルかわいいよナタル」
 囁かれた直後、ぼむっとその首筋までが一気に赤くなった。
「ほ、本当にそう思う?」
「うん」
「そっ…か」
 表情を見る限り、ご機嫌は直ったらしい。
「シンジ、さっき私に自分で飲むように言ったな?」
「ん」
「こ、こうか?」
 ちょっと躊躇いながらも片乳を手で持ち上げたナタルに、
「ナタル、おっぱい少し重くなってない」
「え…そ、そうか?」
「大きさだけじゃなくて重量も増えてるみたい」
「そうか」
 ふっと笑ったナタルが、持ち上げた乳房の先をぺろりと舐めた。赤い舌が乳首にちょっと触れてから、ねっとりと這い始めた。
 硬く尖った自分の乳首をたっぷりと舐め回してから、ちゅぽんと吸い込む。吸ったミルクを飲む時、音を立てているのは無論わざとだ。
(ナタルって…こんなにえっちだったっけ?)
 ごくっと音がした時、それが自分のものだと気が付いた。
(ちょ、ちょっと待て僕!完全に魅入られ…くっ!)
 ナタルの肢体から、その挙動から完全に目が離せなくなっている。
(なんかおかしい…ん?)
 そう言えば、先だってもこのような事があった。その時は完全に発情モードのナタルが覆い被さってきたのだと思いだした時、呪縛は解けた。
 
(シンジ卿も世話が焼けるわね。まったくこの程度で魅入られるなんて)
 同時刻、どこかで冷ややかな声がした事を、シンジは無論知らない。
 
「シンジも…んっ…いっしょに…ね?」
 乳首をくわえたまま、少し上目使い気味に見上げてその瞳には、間違いなく人を妖縛するだけの光があった。
 だがシンジが反応しないのを見て、
「私は私だよ?」
 うっすらと笑った。
「ナタル?」
「少し高揚しているが、自分を見失ってはいないつもりだ。それとも私に淫らは似合わない…か?」
 萌え萌えになってはいても、一応自分は残っているらしい。シンジが、ちょっと考えてから取った行動は、むちゅっと口づけする事であった。
「……」
「ん」
 二人の唇が同時に乳首に吸い付く。余計な言葉は要らなかった。分け合うようにして乳首を吸い、或いはその表面に舌を這わせる。シンジが、或いはナタルが吸い上げたミルクをお互いの口に流し込み、いつしか二人は吸うのを止めて、舌で愛撫し合っていた。元はあっさりしていた液体が、二人の唾液と混ざり合い、濃厚なそれに変わっていく。
 と、不意にシンジが唇を離した。
「あっ…」
 口移しで餌をもらっている途中、親鳥が離れてしまった雛みたいな表情で、ナタルがシンジを見た。
 顔を両手で挟んで上を向かせ、
「ナタル、口開けて」
「上?」
 言われるままナタルが口を開けると、シンジは真上に自分の顔を持ってきた。たっぷりと濃厚になったミルクを、舌伝いにとろりと垂らす。
 垂らされたそれを、ナタルはこくんと音を立てて飲み込んだ。
「どんな味?」
「そうだな…」
 ちょっと考えてから、
「シンジの味がした」
「僕…の?」
「……」
「……」
 ナタルが、次いでシンジがかーっと赤くなる。この辺り、この二人の精神構造はよく分からない。
 けほっと咳払いしたナタルが、
「そ、その…さっき思ったんだけど」
「な、なに?」
「こ、これなら出来そうだ」
「何が?」
 それには答えず、ナタルが給湯ボタンを押した。排水口が閉まり、お湯が張られていく。
「私はその、もう脱いでるようなものだから…シンジも脱げ」
「は?」
「ぬ、脱いでと言ってるんだ早くっ!」
「ナ、ナタルちょっと待っ、あぅっ」
 抵抗空しく、十秒程の間に浴室からシンジの衣服が全て放り出された。なお、シンジが自ら脱いだ物は一枚もない。
「お、お願い乱暴にしないで」
 別に乳房があるわけでもないのに、きゅっと胸をかき抱いて壁に身を寄せているシンジを見て、ナタルの喉がごくっと鳴った――妖しすぎるのだ。
 思わず襲いかかりそうになった自分を何とか押さえて、
「別に乱暴な事をする気はないよ。そこに、寝てくれるか?」
「う、うん」
 狂信者となってしまった父に、神への捧げ物として祭壇に寝かされてしまったとある若者みたいな表情で、シンジがおずおずと横になる。
「ま、前に一度どこかで見たのだ…け、決していつかやろうと思っていた訳ではなくてっ」
(い、一体何を?)
 こんな前振りがあると却って緊張する。何をされるのかとドキドキしているシンジの上に、ゆっくりとナタルが覆い被さってきた――が、股間で止まった。
「あれナタ…はぅっ!?」
 見知らぬ快感に、シンジの顔がぎこちなく動いて自分の股間を見る。
「もう、こんなになっているぞ?」
 妖艶に笑ったナタルが、ミルクにまみれた乳房の間に、思い切り張りつめたシンジのペニスを挟み込んでいたのだ。
「わ、私ので…してあげるから」
「う、うん」
 両方とも初めてだが、する方よりもされる方が赤くなるという、ちょっと逆転気味の空気の中で、ペニスを胸で挟み込んだナタルがゆっくりと動かし始めた。
 搗いたばかりのお餅みたいな感触の乳房が、ペニスを柔らかく包み込んでくる。襞の一つ一つが絡みついてくるような、ナタルの膣内とはまた違った快感がじわじわと押し寄せてくるのを、眉根を寄せて堪えていたシンジが、
(やっぱり…感触が違ってる?)
 内心で呟いた。
 最初に触った時は、ここまで吸い付いてくるような感触ではなかった。少なくとも、つきたての餅と間違えるような妖しい魅力は持ち合わせていなかった筈だ。
 こんなに変わるんだと、妙な事に感心している間にも、ナタルの乳房が甘く、そして容赦なく責めてくる。
(まずい…結構きつくなって…きた)
 がしかし、ナタルから見れば少し面白くない。いくら責めても、表情が切なげになるだけで喘ぐ事がないのだ。
(……)
 両胸に挟み込んだ体勢で、
「私では…だめ?」
 上目遣いに見上げた視線は、決して意識してのものではなかったが、シンジとナタルの視線が合った瞬間、シンジの身体がびくっと震えた。
(?)
 確かに目が合った時、シンジは反応した。特段変わった事はしていない筈だ。
 もう一度やってみる事にした。
「私では…だめなのか?」
「そんな事はないよ」
 答えはすぐにあった。しかも、元に戻っているとナタルは気が付いた。かすかな寂寥を感じたナタルだが、その辺は経験の差だから仕方あるまい。
「シンジのここ、おっきくなってる」
 とか言って亀頭をそっと舐められでもしていたら、その瞬間にシンジは放っていただろう。今頃は、ナタルの美貌を白濁に染めていた筈だ。
 だが堪えた。
 無論、ナタルの詰めが甘い故と言う事は分かっているが、ともかくあっさり陥落する事は逃れたのだ。
「ねえナタル」
「なに?」
「この体勢だとさ、ちょっと窮屈でしょ。姿勢変えない?」
 いくら浴室内が広いとはいえ、二人を縦に並べて余る程の幅はない。二人とも少し身を縮めるような格好になっていたのだ。
「姿勢を変える?」
「そ。ナタルがこっちにお尻向けて。そしたら一人分のスペースでいいでしょう?ナタルもちょっと窮屈そうだったから」
(シンジ…)
 自分の事を気遣ってくれたのかと、ちょっと胸が熱くなったナタルだが、この時点で自分が罠に足を踏み入れ掛けている事に気付いていない。
「僕が下になるから、ナタルが上になって」
「で、でもそれだとシンジに私の体重が…」
「僕が、体重を受け止められないからと変わらなきゃならないほど、ナタルってデブなの?」
「そ、そんな事はない…」
 と思う…、そう続けた言葉は胸の内にしまいこんだ。シンジの基準が分からなかったからだ。
「じゃあ、大丈夫。ほら、こっちに来て」
 優しげな声で促され、ナタルも覚悟を決めた。シンジがもし重そうだったら、すぐに変わればいいのだ。
 シンジの身体を跨ぐようにして身体の向きを変える。
 まだ重みは掛けない。
「シンジ、重かったらすぐに言っ…ふぁっ!?」
「ちゃんと重み掛けないとだめ」
 つうっと太股の内側をなぞられ、ナタルの唇から思わず甘い声がもれる。
 がしかし――シンジの表情を見ていたら、間髪入れずに飛び退いたに違いない。
 
 にへら〜。
 
 まさしく、そんな単語が似合うような顔をしていたのである。
 ゆっくりとナタルが身体を落とし、体重が掛かってきたがさして重くはない。無論シンジの方が軽いのだが、目的の前にはそんな事など些細な事だ。
 身体を前にずらしてナタルが、再度乳房にペニスを挟み込んだ。熱く、硬くなっているそれを挟み、上下左右に乳房を揺すりながら刺激する。
(さっきより…硬くなっている?)
 一度乳房を離してもう一度挟んでみると、間違いなくさっきよりも勃起している。乳房で挟んだ時、はみだす部分が増えているのだ。
(ちょっとは…感じてくれたのかな)
 少し自惚れかとも思うが、自分以外にシンジが萌える要素はあるまいと、ちょっと嬉しくなったナタルが手に力を入れた次の瞬間、
「ふはあぁんっ!?」
 一瞬お尻がつんと上を向き、ついでぺしゃっとくずおれた。シンジが秘所に息を吹きかけたのだ。
「シ、シンジ何をっ!?」
「僕だけしてもらうのって不公平でしょう?」
 その声を聞いた時ナタルは初めて、自分が陥穽に嵌ったことを知った。
「ナタルのここってほんとにきれい。自分でしたりすることって全然無いでしょ?」
 言いながら、シンジが軽く歯を立てたのは白い尻肉であった。
「そっ、そんな事言わな…うあっ」
 他人はおろか、自分でさえも洗う以外に用のないそこが軽く噛まれたり、唇が吸い付いて吸われたりすると、もうナタルの身体からは力が抜けてしまい、完全に攻守が入れ替わった形でふにゃふにゃとシンジに身を預けた。
 尻肉は好きなように楽しんでいるシンジだが、その中心には触れようとしない。触らずとも、十分に手応えは引き出せる。
「ねえナタル」
 尻に四つ目のキスマークを付けたシンジが、ナタルを呼んだ。
「な…に?」
「ナタルって、一人でした事ないでしょ?」
「一人で?」
「胸とか股間いじったりとか」
「じ、自慰行為のことか?」
(ジイコウイ?)
 漢字に変換出来るまで数秒掛かった。
「そう、それ」
 ナタルの頬がうっすらと赤くなる。当然皆無だと思っていたシンジにはちょっと意外だったが、語彙に反応したのだろうと思っていた。
 がしかし。
「と、時々は…ちょ、ちょっとだけ…」
(ふえ?)
 ナタルの反応は意外なものであった。
 皆無に決まっているだろう!と、即座に返されるとばかり思っていたのだ。
「……」
 いきなりシナリオが覆され、何を言おうかと再構築中のシンジに、
「私は…しないと思っていたか?」
 ナタルの声が、少し寂しそうに聞こえたのは気のせいか。
「うん。でも性格じゃないよ」
「え?」
 シンジの口許に、妙な笑みが浮かんだ。またぞろ、何やら考えついたらしい。
 ぴったりと閉じ合わさった大淫唇に指をかけて左右に開き、
「自分でしてる割には全然使われた感じがなくて…え?」
 くぱっと開いてそっと息でも吹きかけてみようと思ったのだが、開いた方が驚いた。透明な液体が、それもかなり溜まっていたと見えて、シンジの上にとろりと滴り落ちてきたのだ。
「み、見ないでぇっ!」
 ナタルが女の声で叫んだ時にはもう遅く、愛液が一条の筋となってシンジの頬を伝っていた。
「ナタルももうモエモエだった?」
「う、う、うるさいっ!」
 がしかし、既に力は抜けてしまっており、言い返しても全然迫力がない。
「ナタル」
「な、何だ」
「ナタルも準備いいみたいだし、そろそろしよっか?」
「……」
 赤い顔のナタルがそっと振り向いた。二人の視線が絡まり、シンジが頷く。
「う、うん」
 こくっと頷いたナタルが、身体の向きを変えてシンジの横に来た。相手の身体に手を回し、裸の肌と肌が擦れ合った。
 二人は少しの間動かなかった。お互いの肌の温もりを、その肌が伝えてくる鼓動を感じ合っていたのだ。
「その…シンジ?」
「ん?」
「さっき私の、を見てどう思った?そっ、そのほら、使った感じがないと言ったでしょう?」
 シンジはくすっと笑って、
(ナタルのここ可愛いよ、ナタル)
 囁きながら、柔らかな淫毛を軽く撫でる。
(ば、ばか…ふあ!)
 予想外の衝撃に、肩をびくびくっと震わせたナタルが、
「も、もう…するぞっ!」
 さっきから喘がされっぱなしの自分を振り切るように、がばっと起きあがった。
「いいよ、僕がマグロで」
「マグロ…?」
 首を傾げたナタルが、
「そう言えば、マグロ女がどうとか言っていたな。あれはどういう意味だ?」
「後で教えてあげる。さ、どうするの?」
 ナタルの秘所はもうびっしょりだし、シンジのペニスは上を向いている。お互いに身体はもう十分用意出来ているが、シンジに丸投げされたナタルの勢いが止まった。
「ど、どうってその…」
 自分からする、と言う事にはナタルも慣れていない。ぺたんと座って膝に手を置いたまま、もじもじしている。
「ねえ早くぅ」
 普通なら逆のおねだりだが、ナタルの方が年齢は完全に上だし、世間的には大人なのだ。自分がリードしなくては、と思うが身体が動かない。
 
<淫ら過剰防止センサー> 
 
 ナタル・バジルールの脳内には、ろくでもないセンサーが備わっているらしい。
 ただ、それを口にするにはプライドが邪魔をする。
「そっ、そのシンジに…」
「僕?」
「シンジに…し、してほしいっ」
(何で?)
 何か企んでいるのかとも思ったのだが、首筋まで赤く染めているナタルを見て思いだした――先日処女を失ったばかりで、まだ二回目なのだと。
「いいよ、僕がしたげるから」
 むくっと起きあがったシンジに、
「その…不勉強でごめん…」
「変な事気にしないの。じゃ、そこに手を…」
 言いかけてからある事に気付いた。
(いいアイディア)
「雨…降ってきた?」
「雨?いや、私は特に感じないけど…」
「そんな気がする。ちょっと見に行ってくる」
 さっさと歩き出したシンジに、
「ま、待って私もっ」
 敵が来ている、とか思った訳ではない。いますぐシンジの身に危険が迫る事は無いし、そもそも自分よりシンジの仲魔達の方が遙かに役立つ事はナタルも分かっている。
 ただなんとなく――シンジの影が薄いような気がして、ナタルは慌てて後を追った。
 
 
 
 
 
(つづく)

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