GOD SAVE THE SHINJI!
 
 
 
 
 
第四話:オヤビン捕食さる――自業自得!自己責任!!
 
 
 
 
 ナタルがシャワーを浴びに行ったのは、意識しての事ではない。股間には生理用品が貼り付いており、それはたっぷりと経血を吸っている。そのままシンジに覆い被さらなかったのは、女としての本能だったろうか。
 下着を脱ぎ、貼り付いているナプキンを引きはがすと、重たげな音を立てて床に落ちた。普段よりだいぶ多いのだが、本人にそれを自覚出来る感覚はなく、無論体調に影響が出るようなヘマをするほど、シンジの仲魔達は間抜けではない。
 股間に当てられた熱いシャワーが、肌についた血を洗い流していく。
 二分ほどでナタルは出てきた。雀の行水より短いような時間と軽く水気を拭っただけの身体、何よりも依然として意志が殆ど感じられない双眸は、普段のナタル・バジルールなら決してあり得ない事だ。
 シンジが失神しているとはいえ、ナタルは前を隠そうともせずに、まっすぐシンジへと歩み寄った。二人分の重みで、ベッドがギシ、と音を立てた。
 するすると下着を引き下ろす。姿を見せたペニスは、当然のように睡眠中だ。
「これが…」
 その後に、何と続くのかは分からなかったが、ナタルは白魚のような手にそっとペニスを包み込んだ。
「とても熱い…」
 ほっそりとした指をゆっくりと上下させ、竿の部分をさすり始めた。一分、二分と作業が続く中、眠っていたペニスに変化が表れ始めた。ほんの少し、上向いてきたのだ。
 それを見たナタルの顔に妖艶な、ただ少し恥じらったような笑みが浮かんだ。そのまま愛撫を続けたが、それ以上大きくなる兆しはない。元より、持ち主が眠っている状態なのだから、仕方ないと言えば仕方ない。
 もうこれまでと見たのか、ナタルが小さく唇を開けた。そのままペニスに顔を近づけていく。ただし、すぐには唇を付けなかった。欲情に身も心も支配されている状態であっても、羞恥心の欠片は残っているのだろうか。
 数回深呼吸した。
 次にナタルが取った行動は、斜め上のものであった――赤い唇でいきなりペニスを加えたのだ。ぴく、と一瞬シンジの身体が震えた。快感を身体が察知したのだろう。
 男が放ち、女が受ける。この図式は太古から変わらない。それを女だけが不利などと小賢しく叫ぶのは、歪んだ性根故に誰一人として男に振り向いてもらえなかった女の逆ギレで、普通はそれを負け犬の遠吠えと言う。
 やる事が決まっている以上、別段誰に教わらなくてもいいのだ。それぞれの役割は、本能が覚えている。ただ、ナタルの場合には男という物にまったく縁が無かった。男を研究する暇があるなら、戦術を研究した方が良いというのが持論であり、そのまま今日まで来ている。舐めるのを通り越していきなりくわえたナタルだが、目的は性器を勃起させる事にあり、その為には爪のある指より舌や唇が良いだろうという、ある意味ナタルらしい発想から来る行動であった。
 拙い動きながらも、頬をすぼめて吸い上げ、舌で懸命に亀頭を刺激する。片方の手はペニスの根元を弄っていたが、もう片方は自分の股間に伸びていた。かつてない程に濡れているそこを指が這う度に、淫らな水音がする。
「んっ、んむっ…ちゅむっ…くちゅっ…」
 ナタルの読みは当たった。半分寝ていたペニスが、口の中でみるみるうちに大きくなってきたのだ。ぷは、とナタルが思わず吐き出した時、居眠り状態だったそれは完全に目覚めており、上を向いて反り返っていた。
「お、大きくなった…」
 あふ、と熱い吐息と共に呟いた時、身体の内部が熱く疼いた。子宮が疼いたのだと知るのは、しばらく経ってからだ。
 ナタルの目にあった欲情の光が、ひときわ強くなった。初めて目にする男性器だが、それが欲しい、それと一つになりたいという事しかナタルの脳裏には無い。シンジの上に跨ったナタルが、少し腰を上げて秘所を左右にぱっくりと開く。未だ男を知らぬそこは、古から伝わる女のみが知る快感に妖しくひくついていた。
 すう、と息を吸い込んだナタルが、ペニスの先に手を添えて一気に腰を下ろす。
「んっ…」
 男を知らず、持ち主にも殆ど開発してもらっていなかったそこは、すんなりとペニスを受け入れた。異物を排そうとするかのように、きゅうっと締め付けてはくるが痛みはまったくない。根元まで受け入れたナタルが、ちらっと股間を見た。
 ほんの少し血が滲んでいる。
 まだ異物感の方が強いのか、表情に変化はない。すう、と深呼吸したナタルがゆっくりと腰を動かし始めた。上下ではなく、前後左右へ腰を振るようにしてペニスを刺激していく。
 最初はぎこちなかったが、段々動きがリズミカルになってきた。感覚が掴めてきたのだ。
 目を閉じて、初めての快楽に身を任せていたナタルだが、不意にその目が開いた。
「あふぅっ!?」
 身体が少し後ろへ倒れた拍子に、いい角度で刺激されたらしい。
 
 
 
 
 
「まだシンジ君は見つからないの」
 本部で待つマリューとミサトは、何とか自分を抑えていた。一応、チルドレン達の監督権が自分達に任せられている以上、ここでキレる訳にはいかない。
 使徒が再度侵攻してくるまで、後二時間足らずだと報告が来ている。シンジがあっさり乗ってくれる、という都合の良い前提でも、シンジに合わせてコアを書き換えなくてはならないし、最低三十分はいる。
 もしもシンジが駄々をこねた場合、そんな息子しか呼べなかったゲンドウを簀巻きにするのは後回しで、アスランかキラを乗せて出さなくてはならない。どのみち、コアは書き換えなくてはならないのだ。
 いくらミサトでも、レイをもう一度出す気はない。今のレイでは、アスラン達の半分以下の動きしか出来まい。もう一度探しに行くと言うキラ達を、強引に待機させているのはその為だ。
 とそこへ、
「シンジ君達、まだ街中ですよ」
 姿を見せたのは長髪のギター男、もといオペレーターの一人青葉シゲルであった。
「青葉君?持ち場を離れて…ってなんでそんな事が分かるの」
「ちょっと調べました」
 シゲルは事も無げに言った。
「とにかく、バジルール少尉も碇シンジ君も、まだ街中にいます。それは間違いありません。ただ…」
「『ただっ?』」
 急き込むようにして訊いた二人に、
「その前に、バジルール少尉の携帯は鳴ってますか?」
「電波が入っていないのよ」
「バジルール少尉の性格からして、自分で勝手に電源を切るような事はないでしょう」
 
 
 無論、ナタルが切る訳はない。
「フロスト、これあの娘の携帯じゃない?なんか反応してるわよ」
「凍結させとこう。オヤビンの妨げだ。それと、絶対に鳴らない程度に中身もな」
「そうだね」
 
 
「鳴っているならともかく、鳴ってすらいないと言う事は、バジルール少尉の手元にないと考えた方がいいでしょう。車で出たのにもかかわらず携帯が手元になく、しかもここへ連絡出来る場所まで行く事も出来ない。おまけに本人の現在位置すら掴めないとなると、事故の可能性がかなり高いでしょう。それも二人揃って」
「二人って、碇シンジ君とっ?」
 ええ、とシゲルは頷いた。既に独自のルートから、シンジ達が第三新東京市から出ていない事は分かっていた。だとしたら街の中だが、実はマリュー達に告げた事と、シゲルの本心は異なっていたのだ。
 確かに不慮の事態ではあるが、シゲルはナタルを過小評価してはいなかった。サバイバル的な能力を別とすれば、想定される不測事態への対応能力はマリュー達よりも遙かに高いだろう。余程の事がない限り、この緊急時に連絡すら取れぬ失態など、しでかすようなナタルではない。
(あまり考えたくはないが少年が…碇シンジ君が絡んでるんだろうなあ…)
 内心で呟いたシゲルに、
「青葉君」
「あ、はい」
「現時点で最善の策は」
 オペレーターに訊くような内容ではないのだが、なぜかシゲルの方が自分達より色々掴んでいるらしい以上、下策でもあるまい。
「アスラン・ザラの出撃を前提として、キラ・ヤマトをもう一度探しに行かせることです。従兄弟同士なら、妙な所で繋がってるかもしれない。それと、お二人の内どちらかも一緒に行って下さい。事態が掴めない以上、一人で行かせるのは危険です。銃の携帯も忘れないで下さい」
 一瞬顔を見合わせたマリューとミサトだが、すぐに頷いた。
「分かりました。マリュー、アスラン君にはマリューから伝えておいて。私はキラ君と出るから」
「ええ。気をつけてね」
「分かってる」
 ミサトが小走りに出て行った後、マリューがシゲルを見た。
「あなた、ずっとオペレーター席にいた筈なのに、どうしてそんな情報が分かったのかしら?それも、副司令にさえ届いていない情報を」
 ゲンドウは総司令、つまりネルフの代表なのだが、実際に実務を取り仕切っているのは冬月だ。別にゲンドウが役立たずなのではなく、企業でもある程度以上の大きさになれば、社長が末端の事まで関知しないのと一緒である。但し、冬月はあくまでも報告をすべて受けるだけであって、その後は必要な部署に回す。報告を受けて処理まで兼ねるほど、冬月は間抜けではない。つまりシゲルの知っていると思しき情報が、自分達をすっ飛ばして冬月に届いたとしても、すぐに降りてくるはずなのだ――冬月が、何らかの理由で自分達だけ仲間外れにしなければ。
 しかしこの緊急時にそんな可能性は低い。そして自分達が知らない以上冬月も知らない、つまり正規ルートで得られた情報ではないという事になる。
「マリュー・ラミアス少佐」
 シゲルが改まってマリューを見た。
「青葉シゲル二尉何か」
 ミサトと違い、マリューはさっきから懐疑の視線でシゲルを見ている。
「ネルフ(ここ)へ入る時、自分の履歴書には書いておきました」
「え?」
 何を言うのかと、怪訝な視線を向けたマリューに、
「自分は不可能を可能にする男です、とね。では任務があるのでこれで」
 ビシッと敬礼して、さっさと身を翻したシゲルの後を、マリューは追わなかった。無論、そんな奇跡のような話など信じるマリューではない。
 ただ、今回の事は自分達にとってプラスになっている。それだけの事だ。
「不可能を可能にする、か…ばっかみたい。そんな事が出来るなら、碇シンジ君とバジルール少尉をさっさとこの場に連れてきなさいよ」
 マリューは小さく呟いた。
 確かにその通りだ――半分位は合っている。
 
 
 
 
 
(んん…)
 シンジの意識が戻ったのは、唐突であった。ナタルと繋がっている――ナタルに捕食されたと言った方が正確か――事から来る身体の感覚ではなく、単に時間が来たから目覚めたと、そんな感じであった。
(ん!?)
 下腹部の異様な快感に慌てて目を開けようとした刹那、
(オヤビンちょっと待った)
 脳裏でフロストの声がした。
(フロスト?これどういうこと!?)
(ある意味オヤビンの自業自得だな。この小娘に薬打ち込んだまではいいが、ラグノスぶっ放したろ。狭い室内で撃つ時は多くても五発以内と教えたじゃねーか!)
(あ、ごめん。それでどうなったの?)
(ああ、オイラ達にも分からなかったが、この小娘処女でな。すっかり淫乱になっちまったところへ、オヤビンが失神中だったもんだから今食われてる)
(えー!?)
(えー、じゃないよ。オヤビンが言う事聞かなかったんだから、自己責任だろ。ちゃんと人の言う事は聞くもんだ)
(今度から気をつける。で、どうすればいいの?)
(しようって言ったんだから、望み通りだろ。そっと目を開けると、この娘が左側の乳を自分で揉んでるから、右側に手を伸ばすんだ。それで名前を呼んでみな)
(どうなるの?)
(後はあれだ、何とかなるなる)
 そう言うと、フロストの気配は一方的に消えた。
(え、えーと…)
 ほんの少し目を開けてみる――淫らそのものと化したナタルが居た。頬を染めて喘ぐその顔に、最初シンジを詰問した時の物はまったくなく、もう慣れてきたのか腰を上下に振りたくっており、その股間からシンジのペニスが出入りしている。
(す、すご…あっ)
 この時点では、快感よりも驚きの方が強く、いきなり射精感に襲われるような事はなかったから、冷静に見る事の出来たシンジだが、度肝を抜かれたのはナタルの胸であった。自分の左胸を自分で揉んでいる、とフロストは言ったがそれ以上であった。
(自分で自分の…乳首舐めてる…)
 右手は床に付けて身体を支え、左手は乳房を揉みしだきながら、硬く尖ったその先端を赤い舌で舐めている。
 思わず伸びた手は、意識してのものではなかった。にゅうと伸びた両手で空いている乳房に触れる。
「ひゃんっ!?」
 ふにふにっと乳房を揉まれ、ナタルの動きが止まった。欲情に濡れた女の目と、少年の目が合った。
「あの、バジルール、さん…」
 
 
 覚醒。
 
 
 シンジと目が合った次の瞬間、自らを見失った中で極限までふくらんだ欲情は、一瞬にして消し飛んだ。
 ナタルの双眸の光が、瞬時にしていつもの物に戻った。状況把握――などするまでもない。混濁した意識の中でも、自分のした事は朧気に分かっている。
 身柄の確保を一刻も早くと急がれる少年の服を脱がせ――会って数十分の少年だ。
 性器に舌を這わせ――馬乗りになって自分の女性器と結合させ――。
「い、いやあああっ」
 絶叫ではなく、絹を裂くような悲鳴であった。男性経験、と言うより文字通り男性と付き合った事すらないナタルに取って、自分のした事は決して許せない事であった。
「許して…」
「え」
 ナタルの双眸から、つうっと涙が滴り落ちる。
 慌ただしく周囲を見回す。
 それは都合良く、手の届く所に落ちていた。
「バジルーっ」
 シンジが言い終わる前に、ナタルはそれを拾い上げていた。ずっと慣れ親しんできた愛銃の扱いを間違える筈がない。
 カチャ…ターン。
 
 
 
 
   
「探しに行けるのは嬉しいけど…」
「どうしたのキラ君?」
「葛城少佐、変だと思いませんか?」
「情報ルートが妙だって事でしょ。分かってるわよ」
 任せて、という風にミサトが胸を叩いた。ぼよん、と手を跳ね返した胸に、キラがほんの少し赤くなって顔を逸らした。
「ただね、今必要なのは彼の素性の詮索じゃないのよ。一番必要なのは使徒を殲滅する事で、その前にシンジ君を見つけ出す事よ。ところでキラ君」
「はい」
「シンジ君にはネルフの事、どれ位話してあるの?機密漏洩上等って感じ?」
「か、葛城少佐…」
「君の責任を問うてる訳じゃないの。答えて」
「ぜ、全部じゃありません。ただ大体の事は…」
「ここに来れば、エヴァに乗ってもらうってことは?」
「いいえ、そもそもその事は知りませんでしたから」
「そうね…」
 ミサトの表情が少し険しくなった。
「キラ君、本当はね…従兄弟同士だから引き合うんじゃないか、なんてのは建前の理由なのよ」
「はい?」
「碇司令の個人的な事だけど…シンジ君がね、喜び勇んでここに来るんじゃないような気がしているの」
 その通りだ。しかも、仲魔達は既に対碇ゲンドウ用の主砲まで用意しているのだ。
「キラ君には、シンジ君の説得をお願いしたいのよ。ネルフに着いてからでも良いけれど、道中の方が早いでしょう。ごめんね、こんな事頼んで」
「ああ、それなら大丈夫ですよ」
「え?」
 キラの返事は、ミサトが思わず拍子抜けしたほどのものであった。
「僕も最初からそのつもりでいましたし。力尽くで乗せる訳にはいかないんだから、お願いするしかないし、従兄弟の僕の方が向いているでしょう。それより葛城少佐」
「なに?」
「本部に帰ったら、総司令の身の安全を確保して下さい」
「分かったわ」
 勿論ミサトは、使徒の再侵攻に備えての事だと思って頷いたのだが、キラの言葉はミサトを仰天させるものであった。
「会った瞬間、シンジ君に凍り漬けにされかねないですから」
「な、なんです…って?」
 
 
 
 
 
 出発前に弾倉は確認した。無論、シンジに発砲などしていないから弾は十五発全弾残っているはずだ。
 それなのに、愛銃が伝えてきたのは、撃鉄の戻る冷たい音だけであった。
「そ、そんな…」
「最近の小娘は短絡で困る。オヤビンの前で拳銃自殺などさせると思ったか?」
 宙から、文字通り冷ややかな声が降ってきた。声に冷気まで伴っているような気がする。
 浮遊しているジャックフロストが、
「お前がこんな行動に出るのは分かっていた。予め弾は抜かせてもらったよ」
 バラバラと手から落ちてきた弾だが、さすがのナタルも手は出せなかった――弾は全て氷の中に封印されており、雪玉ならぬ氷玉となっていたのだ。
「初めてでありながら自ら腰を振るような女とはいえ、目の前で自殺されたらオヤビンの心に何が残るか、それさえも分からぬような女とはな。一つ言っておくが、欲情を引き出す薬だろうが、行為自体はお前の範囲内だ。つまり、お前の心の奥底にない行為をさせる事は出来ない」
 冷ややかそのものの口調が一転して、
「あ、そーだオヤビン」
「何?」
「デガブツが来るまで、後一時間半はある。んじゃ、またね」
「あ、ありがと」
(?)
 シンジが少し赤くなったかに見えた理由など、ナタルには分からない。と言うより、察する能力も無くなっていたのだ。
 ぎゅっと涙を拭ったナタルが、
「その、済まな…もご?」
 言葉は途中で止まった。シンジが指で唇を塞いだのである。
「最初にしよって言ったのは僕の方だし。それに何て言うか…嬉しかったから」
「嬉しかった?」
「フロストが言ってたでしょ、本心から嫌がる事はさせられないって」
「本心から…なっ!?」
 ナタルがかーっと赤くなった。違うあれは薬の所為だと否定しようとしたのだが、諦めた。どう考えても、この状況では説得力がない。
「嬉しいっていうか、不感症だったり心からそういう事嫌いだったらどうしようかと、ちょっと心配だったから」
 さらっとろくでもない事を言いのけてから、
「ところで一つ訊いていい?」
「な、何だ」
「バジルールさん、まだイってないでしょ?」
「イってない?」
「最後まで…ほらその、えーと…もうイクって感じの…」
「……」
「……」
 数秒後、二人揃って赤くなった。ナタルが意味を解するのに少し時間が掛かり、釣られてシンジが赤くなったのだ。
「まだだよね。じゃ、も一回しよ。僕も未だだもの」
「そ、そんな事を言ってる時間はっ…」
「後一時間半あるって。情報収集能力は、人間が作った機械より余程正確」
 シンジが手を伸ばして、ナタルの胸に触れた。乳首はまだ硬くなったままだ。
「あぅっ…な、何をっ」
「いいでしょ?」
 シンジの瞳がじっと見上げてくる。
(こ、ここで怒らせてエヴァに乗らないなどと言われたら…)
 強引にでも乗せる、と最初に思っていた事は浮かばなかった。いや、浮かんだが無理矢理押し込めたのだ。
「わ、分かった…」
「そうじゃなくて」
「え?」
「も少し普通に言ってくれると…萌えるんだけど」
 萌え、と言われても分からないが、前半部分は何となく分かる。
 すうと息を吸い込み、
「いいよ、しよう」
 にこっと笑う。
 女らしい、綺麗な笑みであった。
 ナタル・バジルールの生涯の中で、女としての部分が初めて動作した瞬間だったかも知れない。
「うんっ」
(この少年は…綺麗な目をしているのだな…)
 よく見ると、顔立ちも中性的だし、肌も白くて柔らかそうだ。そう気付いた時、ナタルの下腹部の奥で、何かがじわっと拡がった。
「その、もう一度シャワーを」
「うん」
 シンジの上から降りようとした途端、ナタルの顔から血の気が引いた。
 一瞬遅れてシンジの顔からも。
 抜けるはずのペニスが抜けず、代わりに痛みが走ったのだ。
「ぬ、抜けない…」
「……ふえ?」
 
 
 
 
 
(つづく)

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