妖華−女神館の住人達外伝
 
 
 
ドクトルシビウの闇カルテ:ツェザーレ
 
 
 
第七十五話:ミーア先生のお時間:前から後ろから(後)
 
 
 
 
「敵軍の歌姫のそのまた偽者、か。正確には影武者というかダミーだけどね」
 すらりと伸びた脚を軽く組み、ソファに腰を下ろした姿勢で、ふーっと宙に紫煙を吐き出した。
「悪臭を放ってるから近寄らないで」
 などとろくでもない事を言ってのける異世界人もいるが、こんな晩くらいはいいだろう。
 ミーア・キャンベルがこの艦にスパイとしてやって来た、つまり漂流を偽装して拾われた可能性はほぼゼロだが、ラクスの代わりに歌姫にヴィジュアル部分を担当していると言うことだけでも、決して地球軍や中立の立場にいない事は分かる。
 そんな娘が艦内をうろうろし、あまつさえ主戦力たるパイロット二人に一服盛り、艦長に悪戯を企んでいるなどと、重大任務を背負った正規軍の最新鋭艦とは到底思えない状況だが、そもそもヘリオポリスを出てからここへ来るまで、その道のりはおよそ常識の範囲外であった。
 奪取部隊に急襲され、何とか二機だけはおさえたかと思ったら、いきなり兵が三人炭化させられた。
 それも、このクラスの戦艦の運用に際しては、文字通り必要最少人数にギリギリの状況でだ。それを見た誰もが顔を青ざめさせたが、まさかその張本人が、戦力に比してあまりにも少ない被害でここまで来るとは誰も――多分本人も思っていなかったに違いない。
 常識では計り知れぬ強さを、自分の知る常識では考えられぬ強さを、この目で見てきたから――。
「これを飲み物に入れれば、一晩ぐっすりですわ。大丈夫、万一敵襲があったら碇さんが何とかしてくれます――MSを使わずとも。それに、後で碇さんに怒られる事は決してありませんわ」
 などと、軍法会議確定の台詞にも、つい頷いてしまったのだ。
「今頃は…艦長とやらしー勝負の最中かしらね。まあ…艦長もだいぶ心に余裕が出来てきたみたいだし、悪くはないでしょ」
 と、どこか他人事みたいに呟いたのは――無論、ミーアに頼まれてキラとステラに一服盛ったレコア・ロンドその人である。
 
 
 
 そこに確実な恋愛感情が存在しないとは言え、要は自分を取り合って女同士が淫らな闘いを繰り広げているのだが、それを眺めるシンジの視線も表情も、どう贔屓目に見てもこの場には不釣り合いだ。
 時が経てば経つほど、その表情が被検体を眺める科学者のそれに変わりつつある事に、マリューとミーアが気づいていなかったのは幸いだったろう。
「んんっ、ん、んくっ…」「じゅる…ぢゅうっ、んう…はぁむっ…」
(や、やっぱりきついわ…っ)
 最初はほぼ互角の形勢だったが、十分近くが経過して、徐々にマリューは押され始めていた。変化と言えば、マリューに生えている肉竿のサイズが変化し、ミーアの口にすっぽりとは入りきらなくなってきた。
 宿主の欲情度によって大きさも変わるらしい、とは気づいたが、今度はマリューと同様先端を集中して責めてきたから、快感が全体に拡散していたさっきの方がまだ楽だった。
 先端部分を口に含み、舌を這わせながら激しく顔を上下させ、ちゅぽんと抜き出してそれを下から舐めあげ、あるいは割れ目の部分を舌先でぐりぐりと刺激する。ほぼ同じやり方での責め合いだったが、徐々にマリューの方が吐息が荒く、唇を割って出る喘ぎも淫らなものへと変わってきた。
(こ、このままじゃ…まけちゃうっ…)
 マリューの脳裏に、対面座位でシンジに貫かれ、巨乳を揺らしながら喘ぐミーアの姿が浮かぶ。
(…悪く思わないでね)
 追いつめられたマリューの双眸に光が宿り、目をかっと見開いたマリューの手が動いた。ミーアの秘所に手を掛けて指先で左右に開き、ミーアの愛液で濡れた指を二本突き入れた。
「ひあ!?」
 予想外の攻撃に、ミーアが思わずマリューの肉竿から口を離して背中を反らす。
(おや?)
 だが、観戦というより観察モードに入っているシンジは、不意を突かれた筈のミーアが、口元に僅かな笑みを浮かべた事に気づいた。確かに――ミーアは笑ったのだ。
 しかも怪しい。
「んっ…マ、マリューさん、まんこ責めるなんて…ずるいですわっ」
「ごめんね…でも、どうしても負けられないのっ」
 謝ったマリューだがその手を止める事はなく、その膣口へ指だけでなく舌先までも差し込んでなぶり始めた。このまま一気にスパートをかけるつもりらしい。指を入れられて緩んだミーアの間隙を突くような責めに、さすがのミーアも幾分押され気味に見えたが、不意にぺろっと舌なめずりした。
「じゃあ、何でもありって事よね?」
「そ、そうよっ…あ、あなただってやればいいじゃないっ…」
 優位に立っている筈のマリューだが、言い返した言葉に僅かな動揺があるとシンジは見抜いた。
 無論ミーアとの手合わせは初めてのマリューだが、おそらく気づいているのだろう。
 自分はまだ優位に立ってはいない、という事に。
 そして――おそらくミーアがまだ本気を出していないということも。
「まんこを責め合うなら…んっ…先に責めた方が有利。そこまでは褒めたげるわ。でもね…」
 すう、とミーアの指があがった。これもマリューの愛液がねっとりとまとわりついている。
「こっちならどうかしらっ?」
「ふあぁんっ!!」
 指は一本だが、中指を根本近くまで、ぬぷっと突き入れたのはマリューのアヌスであった。マリューもミーアの反撃は予想していたが、それは明らかに性器への責めで、アヌスは想定外だったのが見て取れた。
「くはぁ…あう…」
 直腸まで抉られるような刺激で、しかも完全に裏をかかれた事でダメージは二乗になっており、指だけはなんとかミーアの肉竿を握っているものの、口を半開きにしたまま反撃など出来そうにないマリューと、マリューのアヌスに突き入れた指は動かそうともせず、悠々とマリューの肉竿を嬲りにかかったミーア。
 完全に勝負は決したかに見えたが…完璧そうで間が抜けているのもまた、ミーア・キャンベルという娘なのだ。
「ふふ、私がマリューさんとおまんこを責め合うと思った?そんな事する筈がないじゃない。マリューさんのおまんこは碇さん専よ…熱っ!?」
(しまったー!!)
 優位に立った事でこの室内、いや艦内に於ける第一級危険人物の事をすっかり忘れていたのだ。
「俺専用とは、初耳の学説だ。もう少し詳しく」
 足をゆったりと組んだまま、依然として瞳に欲情の色など微塵も見られないシンジの指が、微かな動きを見せる度に、ミーアの白い肌は痛みを帯びた熱に襲われた。
 ここは宇宙空間ではなく地上――五精使いのスペックが余すところなく発揮される場所なのだ。いくらミーアがマリューを上回っていても、これではマリューを責めるどころではない。
 たまらずマリューから手を離し、乳房と股間をおさえたミーアだが、
「ちょ、ちょっと待っ、そんな責め方は乱暴く…あっつういっ!!」
 ピッと飛んできたのは、ピンポン球ほどもある大きさの火球であり、さすがに直撃はしなかったものの、かすめただけでミーアは身をのけぞらせた。
(あ…)
 明らかに次の攻撃用意をしているシンジを見ながら、身構える事すら出来ないミーアだが、それを見逃すマリューではなかった。劣勢に立たされてこのまま押し切られるのかと、諦めかけていたところをミーアに思わぬ隙が出来た。
(シ、シンジ君ありがと…でも…)
 シンジ専用、の言葉がNGワードだったらしいが、つまりはシンジがそれを否定している事の証で、しかもどう見ても照れ隠しじゃないわと、マリューは内心で小さく口を尖らせた。
(私は嫌じゃないのに…っていうか当然と言ってくれても…って、わ、私は何を言って…っ!)
 快楽からくるそれとは違う色に頬を染めたマリューが、ごまかすように首を振り、隙だらけになったミーアの股間にむしゃぶりついた。膣だけで駄目なら後ろもと、二穴へ突き入れた指を中でぐりぐりと動かして襞を刺激する。
 ミーアが可愛く悲鳴をあげて淫らに身体を震わせるのを見たマリューが、
「シンジ君、もいいわ。ミーアさんのおまんこが焦げちゃったりしたら、かわいそうでしょ?」
「……」
(な、何を言うのよこの女はっ!?)
 それは、ミーアが初めてマリューに殺意を抱いた瞬間であった。
 マリューの言葉に裏がないのは分かっている。
 だが、それは是非見てみたい、とシンジの顔に大きく書いてあるのだ。明らかに、シンジはその気になっている。
 このままだと、かなりの高確率でミーアの大事な所は火傷で変色する事になりかねない。マリューに責められている秘所への刺激も、今のミーアには快感どころか、何かに触られている程度にしか感じない。
 心頭滅却すれば火もまた涼し、とは、或いはこういう心境に近いのかも知れない。
 だから、
「まあいい」
 シンジが座り直したのを見て、心から安堵したのだが、
「ふひゃっ!?」
 可愛く喘いで身を震わせた。安心したら、急に快感が押し寄せてきたのだ。
(……)
 前後の穴に指を入れ、肉竿の先端を口に含み舌で責め立てるマリューを見て、ミーアがふっと笑った。
「私と正面からやり合おうって言うの?いいわ、のったげようじゃない」
 シンジの脅威が去った事で、あっさりと復活したらしい。しかも、語尾にはまだ余裕がある。
 マリューと同様、その肉竿を口に含んだミーアが、頬をすぼめて顔を前後に動かしていく。マリューのそれとは比較にならない淫らさと激しさで、肉竿を激しく吸われたマリューが思わず呻いて腰を浮かせる。
「これが…牝ちんぽを噴かせるバキュームフェラ、なのよっ」
(あれって男用じゃなかったかな?)
 と、観察者に戻ったシンジはのんびり考えていたが、優位を確信していたマリューには予想外の反撃であり、淫らに濡れたその表情(かお)からも、こすれ合い絡み合い、仄かに染まる肢体からも完全に余裕は消えていた。
「ま、まだっ…まだよっ」
 ミーアに突き入れた指を必死に動かし、その体内で襞越しに指が擦れるとミーアの口から熱い吐息が漏れ、
「んんっ、じゃ…おかえしっ」
 マリューのぷっくりとふくらんだ恥丘が軽く摘まれ、顔を出した膣口を指の腹できゅむっと擦られると、今度はマリューが喘ぐ番になった。
 マリューはミーアの膣穴と尻穴、それに肉竿の三点を責める。ミーアの方はマリューの肉竿を勢いよく吸い立てながら、その膣口を指の腹で軽く擦り、微妙に身体を揺らしてその巨乳をマリューの身体へ押しつけていく。
 責められている箇所はミーアが多いが、女との淫闘を経験した事のないマリューにとっては、それぞれへの責めは浅くなり、ミーアはと言うとほぼ口腔性交だけに集中しているから、数分もしない内に優劣がはっきりしてきた。二人とも口元から胸元にかけて互いの愛液にまみれ、膣口からやや白い液が滴っている所までは一緒、口いっぱいに相手の肉竿をくわえて舌で責め合う姿も相似の二人だが、身を震わせて思わず肉竿から顔を離す回数は、明らかにマリューの方が増えてきた。
 さっき膣を責められたお返しに、マリューのアヌスへ指を突き入れたミーアだが、今は膣口を軽く刺激するだけで、その責めはほぼ肉竿に集中している。
 その責め方は深く、しかも上手い。それでも、ミーアがシンジに抱きかかえられて喘ぐ姿を思い浮かべ、それだけは阻止しようと必死にミーアを責めるマリューだったが、その時は遂に訪れた。
 すうっと下腹部が熱くなっていき、舌を這わせられている割れ目の辺りへ、排尿感に似た何かが急激に押し寄せてくる。
「も、そろそろかしら?」
 マリューの愛液にまみれた口元を、赤い舌でぺろっと舐め、妖しく笑ったミーアがぢゅうーっと、ひときわ強く吸った瞬間、マリューの身体が勢いよく反った。
「あぐうっ、ら、らめぇっ…で、出ちゃうぅっ、め、牝ちんぽから噴いちゃううぅっ!!」
 がくがくと刹那激しく身体を震わせ、ミーアの膣と尻に指を突っ込んだまま、マリューが四肢を突っ張らせた直後、その肉竿は白濁した愛液を勢いよく噴きだした。互い違いで相手の股間に顔を埋め合っている二人は、マリューが上になっており、顔面射精のような格好になったミーアは、顔に飛び散る濃厚な愛液を満足そうに受け止めた。
 肉竿の先端から滴だけが落ちるようになり、それが勢いを失っていくのを見てから、ミーアはゆっくりと起きあがった。ミーアは未だ放っておらず、その肉竿は凶悪に勃起したままだ。
「な、なに…」
 シンジに貫かれて達した時のような絶頂感はないものの、愛液とは言え初めて放った感覚はマリューの全身にまだ余韻を残しており、火照る身体をぐったりとシーツに沈めていたマリューの眼前に、ミーアの肉竿が突きつけられた。
「自分だけ出しちゃうなんてずるいですわ。マリューさん、私にもしてくださいな。あ、お口じゃなくて手でしてね」
「…手?…」
「お口でして、なんていいませんわ。マリューさんの白くて細い指でヌかれたら、あっという間にどぴゅどぴゅって、イッちゃいそぉだから」
(ていうか、マリュふぇらさせたらあたしがあの世にイかされそうだし)
 依然として観察モードのシンジを視界に捉えながら、ミーアは内心で呟いた。雰囲気も口調も淫らそのものになりながら、未だ理性の方が残っているのは、無論背後にいる危険な観察者のせいだ。
「ね、いいでしょぉ?」
 シンジを見ないようにして、マリューの耳元で囁くと、マリューは小さく頷いた。
(負けは負けだし…仕方ないわね…)
 マリューの白い手がミーアの肉竿に伸びて包み込んだ直後――
「いったーい!!」
 股間をおさえて飛び退いたミーアの姿は、端から見ると手術していないおかまである。
「あ、あら?」
「あら、じゃないっつーの!あたしの牝ちんぽを握り潰す気!?」
「ご、ごめんね、やった事がないから加減が分からなくて…」
「碇さんにしてるみたいにしてくれればいいのよ、まったくもう」
 ぶつくさぼやいているミーアは、その背後で危険な気が立ち上った事にまったく気づいていないが、マリューは気づいた。
 おさえて、とシンジを視線で制し、
「ミーア、言っておくけど、私はその…シンジ君にあの…て、手とか口で…し、した事ってないのよ?」
「…は?」
 昼間にはい出てきて追い回される、チャバネゴキブリでも見るような視線を向けたミーアが、
「ほんっとーに?」
「え、ええ」
「じゃ、パイズリは」
「?」
 真顔で首を傾げたマリューに、
「だ、だからその…お、おっぱいで男の…あ、あれを挟んで…」
 何故か赤くなるミーアを眺めたシンジが、
(耳年増)
 内心で冷たく呟いた。
「した事無いわよ。だいたいシンジ君のって…や、優しくて激しくて甘いから、す、すぐイきそうになっちゃうし…」
 今度はマリューが赤くなった。
「…まあいいわ。でも、やり方くらい知ってるでしょ?」
「知らない」
 間髪入れずに即答が返ってきた。
(もしかして…この年まで処女?この身体なら男が放って置かなさそうなのに…って、
あたしも人のこと言えないけど)
 “女は知っている”し、処女ではないミーアだが、男は未だに知らない身なのだ。
「と、とにかくマリューさん、約束は守ってもらいますわよ」
「ええ、分かってるわ」
 一応勝ったのはミーアの筈だが、二人を見ていると教師と生徒のそれに見える。
 どっちがどうかは、言うまでもあるまい。
「じゃ、じゃあもう一回…そんなに強くしないでそっと持って動かして…んっ、そう、いい感じだわ」
 ミーアに言われるまま、マリューの手がミーアの肉竿を包み込み、ゆっくりと動かしていく。
(シンジ君にだってした事無いのに…で、でも覚えちゃえば…)
 マリューの口元が、奇妙な形に歪んでいく。
 その脳裏に浮かんだ光景故か、或いはマリューの適性なのか、少しぎこちない指の動きはミーアの股間に尋常ならぬ快楽をもたらした。肉竿へ急激に快感が集中し、ミーアがぶるっと身を震わせる。
「くぅうん、す、すごい、なにこれっ…も、もうイキそっ…」
「感じてくれてるのかしら?ふふ、光栄ね」
 ついさっきミーアに敗北を喫したとは思えない、どころか妖艶にさえ見える笑みを浮かべるマリューを見た途端、ミーアの快感は限界を超えた。たまらずマリューの肩を掴み、きつく唇を噛んで何とか放つのを堪え、
「もうっ、もう駄目出るわっ…マリューの、マリューのやらしいおっぱいにかけていいっ?ね、いいでしょぉっ!?」
 腰を小刻みに震わせ、目許を赤く染めて迫るミーアに、マリューは一瞬驚いた表情を見せたがあっさりと頷いた。
「いいわ、許可してあげる。わたしのおっぱいでイキなさい」
 その言葉が終わらない内に、ミーアは放っていた。
「あはぁっ、で、出るぅっ、マリューの指でヌかれてやらしー液がっ…どぴゅどぴゅってぇっ、イクっ、イックうううっ!!」
 肉竿を手にして、その先端をマリューの乳房に向けたのが精一杯で、白濁した愛液が勢いよく迸り、マリューの胸から腰へたっぷりと降りかかる。
 腰をがくがくと震わせながらミーアが放つそれを、マリューは内心の窺えない表情で受け止めた。
 乳房にかかった白濁している液に指で触れながら、
「いっぱい出たわね。イっちゃったかしら?」
 訊ねた声は、それだけ聞けば、マリューが圧倒的優位にいるとしか思えない。
「もう…女に扱かれてこんなに出すなんて…ほんとにマリュ…」
 これが初めて?と言いかけて、慌てて止めた。ミーアの背後には、死の鎌を手入れしながら興奮の色合いを全く見せる事無く、冷徹に見物している奴がいるのだ。
「う、ううん、なんでもないわ」
「そ?じゃこれで、引き分けにしてくれる?」
「それはだーめ」
 腰に手を当てたミーアが、んべっと赤い舌を出した。
「それとこれとは別問題よ。まーったく、マリューさんはずるいんだから。でも、マリューさんの指がとっても気持ちよかったので、も一回チャンスあげます」
「チャンス?」
「ええ」
 頷いたミーアが、ずいっと顔を寄せてきた。
「おまんこに入れ合いしましょ?牝ちんぽをおまんこに入れ合って、ぱんぱんって突き合うの。先に出した方が負け。ただし、マリューさんは三回でいいわ。マリューさんが三回出しちゃう間に、私を一回出させられたらマリューさんの勝ち。それでどう?」
「で、でも出したばっかりだし…」
「大丈夫、私が大きくしてあげる。フェラでもパイズ…」
 言いかけたところへ、
「こら、そこのエロミーア」
「もー、折角いいところだったのに…なに?」
「今の所純粋培養だ」
「ハァン?」
「うちのマリューをあまりエロ開発しないでもらおう」
 後ろからクレームがついた。
「はいはい、分かったわよ。らぶらぶで良かったわ…ね?」
 ミーアが見たのは、一瞬にして思い切り勃起しているマリューの肉竿であった。
「…もしかして、うちのマリューって言われて感じちゃったわけ?」
 マリューが赤くなった顔を背け、それが答えであった。
(それ、なんてパブロフ?)
 ピクッと青筋がうねるのを何とかおさえ、
「準備オッケーって事ね。じゃ、始めましょ」
 自分のを勃たせる位なら造作もない。この程度の事は、エザリアから散々叩き込まれて来たのだ。
 ミーアが仰向けで横たわると肉竿が天を仰いだ。その脇へまたぐようにマリューが膝立ちになり、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「じゃ…いくわよ…」
「ええ」
 ミーアが指で自分の秘所を左右に開き、マリューもそれに倣う。肉竿の先端を互いの膣口に宛がい、挿れながら自分も挿れられるという奇妙な体位で、二人の肉竿は相手の膣内へ根本まで収まった。
「あふぅ…っ…」「んっ…」
 四つの乳房が重なって潰れ合い、白い乳肉が横にはみ出し、硬く尖った乳首同士が絡み合う。
 ミーアが舌を差し伸べ、マリューが応じる。
 拭われていない口元には、さっきの責め合いでついたお互いの愛液が、まだまとわりついている。
 舌が絡み合うと、唾液と愛液が混ざり合いひどく淫らで濃厚な味が、した。
(ミーアのお口の中って、とってもやらしい味がするわよ?)
(マ、マリューさんの方こそ、イきそうになったおまんこ舐めてるみたいで…すっごくやらしー味っ)
 二人とも、原因の半分は自分にあると分かっている。
 相手の愛液にまみれたままの唇を、正面から押しつけ合ったのだから。
 うっすらと目許を染めたマリューとミーアが、かくかくと腰を振り合うのをシンジはじっと眺めていた。
(むう、入れ合うとこうなるんだ…)
 やや脚は開き気味で、潤んで口を開いた秘所に挿れ合った肉竿が淫らな音を立てて、互いの膣内へ出たり入ったりしている光景に、シンジの視線は吸い寄せられている。
 ミーアはシンジを見てはいなかったが、自分とマリューの秘所にその視線が向いている事は身体で感じ取っていた。そして、その視線がさっきと比べて変化してきていることも。
(うふ、見てる見てる)
 既にマリューはミーアに膣内を突き上げられ、徐々に余裕が無くなりつつある。
 無論、最初から勝算を十二分に計算した上での提案であり、あとはマリューの膣襞の感触を楽しみながら、三度出させればそれで終わる。
(けど、このおっぱいとおまんこは…んっ…もう武器って感じよね。まんこの締まり良すぎよっ…)
 マリューは受け一方に回りつつあるが、重なっている乳房は妙な快感をミーアに伝えて来ていた。薬の影響もあり、二人の乳首は小指の先位まで大きくなって尖っており、それがぎゅむっと絡み合っている。
 ただ絡んでいるだけの筈なのに、ミーアの乳房は乳首を中心にしてじんじんと疼きっぱなしなのだ。そして何よりも、ミーアの肉竿を受け入れている膣内は、まるで別の生き物のようにぬるぬると蠢き、襞が肉竿に絡み付いてくる。
 ミーアが優位に立ちながらも、圧勝の気分がしないのはこのせいだ。
(牝ちんぽの挿れ合いで勝ってたって、まんこと乳で押されてたら実質負けじゃないのよ…ん?)
 ふとマリューの顔を見たミーアの表情が動いた。確かに目元を染めたまま、全身をうっすらと上気させて喘いでいるマリューだが、ミーアはそこに僅かな違和感を感じ取った。
(なにこの感じ…まさか?)
 ある事に気づいたミーアの表情が険しくなる。
 腰を沈めた時、つまりミーアを突いた時は官能の色が濃くなり、逆にミーアが突き上げた時はそれが薄れて見えるのだ。
(あたしにまんこ突かれたんじゃ感じないって訳ぇ!?)
 歪みそうな表情をなんとか抑え、
「マリューさん、あまり感じてないのぅ?」
 マリューを抱き寄せてその耳元に囁いた。
 耳朶に吐息をかけられたマリューが小さく身を震わせ、
「あんっ、そ、そんな事ないわ…ミーアのまんこが…あんっ、熱くて…とろとろで…私の牝ちんぽに絡みついて…いい感じだわっ…」
「でも、あたしにまんこ突かれてもそんなに感じてないで…しょっ」
 言いながらぐいと腰を突き上げると、マリューの唇から喘ぎが洩れたが、やはりミーアを突いている時程ではない。
(シ、シンジ君ので慣れちゃったからちょっとそれはあるかもだわ…ごめんねっ)
 囁いたマリューが、ミーアの首筋に軽く口づけした時、ミーアの中で何かが切れた。
 
 ぷちっ。
 
 大きく足を開き、アヌスを丸見えの状態にしたミーアが、
「見てるだけじゃつまらないでしょ?ミーアのお尻に挿れてみません?おまんこに二本差しでも大丈夫よ?」
 不意にシンジを誘ったのだ。
「え!?ちょ、ちょっとそれ話が違うじゃないっ」
 マリューが抗議するが、
「気が変わったのよ。大体、さっきの時点であたしが圧勝したでしょう」
 歯牙にも掛けず、自ら指をアヌスへ差し込んで見せた。
「きれーにしてあるし、よく締まるわよ。ね?」
 約束を破棄、どころか明らかにマリューへの挑発であり、マリューの切れ長な眉がすうっと上がった。
「だ、駄目よシンジ君っ、女に開発された使い古しになんか入れちゃ駄目ぇっ!私に…私にちょうだいっ、お尻でもおまんこでも、私が全部受け止めてあげるからあっ」
 元より、シンジを賭けての勝負であり、目の前でミーアに挿入される事など絶対に見過ごせないと、マリューもまた尻肉を左右に拡げ、尻穴をむき出しにしてシンジを誘う。
(女に開発された使い古し、か…)
 数秒考えていたシンジが、
(なんか燃える響きだ)
 却って惹かれていた事に、マリューは気付かない。
(でもまあここは…)
 立ち上がったシンジが、重なり合った女体へゆっくりと歩み寄った。
 互いの肉竿を受け入れた膣口からは間断なく愛液が湧き出し、ひくついているアヌスまで濡らしている。二人のアヌスへ、つぷっと指を入れた瞬間二人が嬌声を上げ、尻襞がきゅうっと収縮してシンジの指を締め付けた。
 色合いも形も違う二人の局部を眺めながら、
「姉御、いいの?」
「勿論よ。シンジ君のイイ方の穴に、ちょうだいっ」
 シンジが訊いたのはマリューの都合と言うよりも――ミーアの表情に邪悪なものを見てとったからだ。
 すなわち、最初からマリューに挿れさせるつもりらしい、と。
 が、マリューは気付いていないようだし、それはそれでとシンジも服を脱いだ。さすがに膣内へ二本差しするのは躊躇われ、マリューの尻穴にペニスの先を宛がう。
「いくよ」
「あぁん、来てぇっ」
 白い尻を振る姿には、明らかに自分が選ばれたという優越感がある。
 それを見たミーアは――何故かにっと笑った。
「やーっぱりマリューはおばかさぁん」
「!?」
 マリューがぴくっと反応するのと、シンジが深々と突き入れるのとが同時であった。
「ふあぁ…ひうぅっ!?」
 尻を突き出してシンジを受け入れたマリューだが、ミーアが腰を振った瞬間激しく身体を震わせた。ミーアに突かれ、さっきとは比べものにならない快感が子宮口へ押し寄せ、たまらずマリューは放っていた。
 勢いよく噴き出た愛液を胎内に受けながら、
「まずは一発目、ね。マリューさんのやらしー液が、あたしの中にいーっぱい出てるわよ?」
 マリューの首筋に腕を巻き付けたミーアが淫らに、そして冷たく囁く。膣内の締め付けはそのままに、肉竿は子宮を突かんばかりに激しく突き上げてくる。
 元より精液ではないし、二人ともゴムなど付けていない。愛液とはいえ、熱い迸りを胎内に受けてミーアもぶるっと腰を震わせたが、自分は出していないから余裕がある。
「次、いくわよ」
 放った余韻の残っているマリューの背に手を回し、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「ま、まだイったばかりでっ…ちょ、ちょっと休ませてっ」
「却下」
 あっさりと退けたミーアが強引に唇を吸い、重ねた乳房同士をぐにぐにとこね回しながら、シンジに一つウィンクしてみせた。
(ま、しようがないか)
 マリューが性体験について、あまり慣れていない事はシンジも分かっていた。理由はともあれ、そのマリューがいきなり二本差しを、しかも自分も挿れながら挿入されればどうなるかなど想像するのは容易な事だ。
 放ったばかりで敏感になっているマリューの肉竿を、ミーアの膣襞が生き物のように蠢いて絡みとる。強烈な刺激は、快感よりもむしろ苦痛でマリューの股間を疼かせる。
「ま、前も後ろもぅ…き、きつきつよぉっ…」
 切れ切れの息を吐き出すマリューに、
「碇さんにお尻抉られて、あたしに挿れてる牝ちんぽが大きくなったわよ。もう、お尻も開発済みみたいねっ」
「そ、そんな事…なっ、あぁんっ…」
 前から後ろから交互に突かれ、上体を反らして喘ぐマリューの乳房がたわわに揺れる。挿れ合っていても、もうミーアを責める余裕などなく、半開きになった唇からは涎が滴り落ち、その手はきつくシーツを握りしめている。
「くは…あぁ…ひうっ…」
 何となく危険域に達した気がしたシンジが、
「姉御、抜こうか?」
 軽く背をさすりながら訊くと、マリューは緩い動作ながら首を振った。
「だ、だめぇ、抜いちゃいや…抜くなら…あふっ…ミーアを…」
(ムカッ)
「あたしに抜けって言うの?残念ね、望む事の反対を行くのがミーアクオリティなのよっ!」
 ぐりっと膣内をこすられて、マリューの目が大きく見開かれる。
「ひぎぃっ!まんことお尻が抉られっ…な、中でごりごりってぇっ、ま、またイクッ、おまんことお尻ほじられてイくううぅっ!!」
「イイわっ、牝ちんぽとまんこから汁噴いて…おもいっきりイキなさいっ!」
 ミーアが下から突き上げると、マリューの両穴が激しく収縮し、挿れている二人を強く締め付ける。マリューの全身が刹那硬直し、ミーアが邪悪に笑った瞬間、
「お前もなー」
「!?」
 すう、とシンジの手が伸びてミーアのアヌスへ指を突き入れたのだ。
「うぐうぅっ、な、何をっ!?」
「放(い)ってよし」
 アヌスの中で指がにゅるっと蠢き、ミーアもまた限界を迎えた。
「だ、だめぇっ、あたしもっ、あたしも出ちゃうぅっ!!」
 マリューとミーアの膣襞が互いの肉竿を強烈に締め付け合い、声にならない叫び声をあげてマリューはミーアの中に出し、一瞬遅れてミーアもまた、マリューの膣内に放っていた。
 互いに中出しし合った二人の身体がぶるぶるっと震えると、そのまま弛緩して重なり合ったままシーツに沈む。その膣口からは白く濁った互いの愛液が溢れだし、そこだけ見ると膣内射精されたように見える。
「私がさん…かいの間に…ミーアが一回だったわよ、ね…」
 途切れ途切れに言葉を紡いだマリューは、二穴を突かれて全身を汗ばませ、髪の毛も額に張り付き文字通り息も絶え絶えではあったが、それでもどこか満足げに、にこっと微笑った。
「い、今のは碇さんがミーアのけつまんこに指入れたんだからずるよ…って、あら?」
 ミーアもまた、膣内に放出されて白い肢体を上気させていたが、抗議しかけたその表情がゆっくりと緩んでいく。
 勝利宣言で精根尽き果てたのか、くてっと弛緩した身体をミーアに預けたマリューからは、静かな吐息だけが聞こえてくる。
「あたしとハメ合いした上にお尻も抉られて、気持ち良すぎて失神しちゃったみたいね」
 ミーアが股間を離すと、もう肉竿はその姿を消しており、小淫唇がふくらんで少しはみ出したそこから、愛液が滴った。
 白濁し、所々泡立っているそれを指で拭ったミーアを見ながら、
「漸く理解したぞ」
 とシンジが呟いた。
「何を?」
「姉御に、けつまんことか言う単語を教えたのはエロミーアだな」
「ええ、そうよ。お尻でも、まんこみたいにきゅーっと絡み付いてくるからけつまんこ、合ってるでしょう?それより、そのエロミーアっていうのは褒め単語?」
「想像に任せる」
 どう考えても一種類の答えしか出ない口調で言うと、シンジはゆっくりと立ち上がった。
 出口へ歩いていくシンジに、
「どこへ?」
「シャワー」
「碇さんは満足してな…って、そういうレベルじゃないみたいね。あたしとマリューさんのまんこ見てもハメ合い見ても、全然反応してなかったし」
「奴のせいで」
 原因とされた美貌の女医がそれを聞けば、光栄ねとひっそり微笑ったろうか。
「まあいいわ。ところで、最後は失神KOになったんだけど、勝敗はどうなるの?」
「…判定五対三でミーアの勝ち」
 それを聞いたミーアが、全裸のまま腰に手を当ててふふんと笑った。何やら誇らしげである。
「じゃあ約束通り…と言いたいところだけど、あそこまで碇さんを渡したくなかった爆乳艦長さんに免じて、今回は見逃してあげるわ。その代わり――」
「その代わり?」
「私もシャワーに連れて行って?」
 シンジがつかつかとミーアに歩み寄り、乳房に手を伸ばしてもにゅっと揉んだ。
「あぅ!?」
 小さな声をあげて、ミーアがその場にふにゃふにゃと崩れ落ちる。
「俺と一緒に歩いていけるなら許可」
「…うーっ、い、いじわる…」
 それから五分後、
「色々言っても、碇さんて優しいから好き」
「うるさい」
 シンジの背に負われるミーアがいた。
 
 
 
「男共全員集合」
 シンジが召集令を掛けたのは、翌早朝の事であった。 
 
 
 
 
 
(第七十五話 了)

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