妖華−女神館の住人達外伝
 
 
 
ドクトルシビウの闇カルテ:ツェザーレ
 
 
 
第五十四話:はじめてのおるすばん
 
 
 
 
 
「えーと、ちょっと点呼とりますよ。バーディ・シフォン」
「はい」
「トニヤ・マーム」
「はっ」
「フォンヌ・ウォークレイ」
「はい」
「カーテローゼ・フォン・黒い…」
「クロイツェルです」
「そうだった、カーテローゼ・フォン・クロイツェル」
「はい」
「法条まりな」
「はい」
「それにしても…」
 シンジは五人を見回し、
「単に洗濯係には勿体ない雰囲気だが…法条まりな」
「はい?」
「君は日ノ本の生まれ?」
「ええ、そうです」
「そっか」
 シンジの表情に刹那、懐旧の色に似たものが流れた。
 結局ハルバートンの遺産になってしまったが、エマの代わりに寄越した五人とやっと会ったのだ。
 名前と顔を確認していったシンジは、彼女たちがただの洗濯係には留まらない人材だとすぐに気づいていた。いずれも美人だしスタイルもいいのだが、シンジの評価には関係ない。
 戦士として訓練を受けた者しか帯びない気が、その全身から漂っていたのである。かつて世界最強とまで呼ばれ、彼女達が到底及ばぬ凄絶な気を放っている男をシンジは知っている。
「あの、私の出身がなにか?」
「何でもない。いい国だ」
 うっすらと微笑ったシンジが首を振ると、腰まで伸びた綺麗な黒髪がふわっと揺れた。
「あ、あの質問してもよろしいでしょうか?」
「別に構わないが、そもそも俺は艦内でえらい人じゃないから。別に敬語使わなくてもいい」
「『え?』」
 
「その位置は実質、艦長のラミアス大尉より上にある。彼が居る限り、アークエンジェルは墜ちんよ。頼りにはなるが、くれぐれも機嫌を損ねたりしないようにな」
 
 それがハルバートンの言葉であった。なのに目の前の青年は、自分はえらくもないと否定する。
 気を取り直して、
「碇シンジさんも、日本のご出身なのですか?」
「私のことは、おハルさんから何も?」
「お、おハルさん?」
「デュエイン・ハルバートン、通称おハルさん」
「あ…い、いえ」
 他の娘達が首を傾げる中、まりなだけはすぐに頷いた。日本生まれだから、シンジの発想は理解できるのだ。
「法条の出身地は私の知る、そして私の知らぬ日ノ本だ。ここではない世界――異世界にある帝都の住人だよ」
「では…異世界から来られたのですか?」
 訊いたのは、バーディ・シフォンであった。銀髪に赤のメッシュが入った大柄な娘である。
 この中では、最も白兵戦向きの体つきだ。
「否」
 首を振って、
「飛ばされたんだ。気づいたらヘリオポリスにいた」
「先の戦闘で砂漠の砂があり得ない動きをしていたのは…」
「私の仕業。あれ位なら出来る」
「で、出来るって普通は…」
「そう言う人種もいる、と言うこと。ところで、MAを操縦できる者は?」
 五人の手が一斉にあがった。
「白兵戦の経験があるのは?」
 全員の手があがったままだ。
「頼りになりそうだ。とは言え、いくら珠玉でもあのまま艦隊に残っていれば、活躍してもらう事は出来なかった。君らも…いい上司を持ったよな」
「『…はっ!』」
 直立不動の姿勢で挙手をした五人に、シンジは軽く頷いた。
「私の頼みでおハルさんに回してもらったのに、挨拶が遅れて済まなかった」
「いえそんな事は」
「お詫びと言ってはなんだが、今夜一晩温泉を貸しておくから」
「温泉?」
「先だって造っておいた。夕方少し改造しておくから、命もついでに洗濯してくるといい。それと今日一日は留守番の実験をするから、艦内は空けてもらう。姉…いや艦長から通達があると思うが、街へ行って買い物でも散策でも自由行動だ」
「『あ、ありがとうございます…』」
 一斉に頭は下げたが、言われたことを理解している者は一人もいなかった。
 そしてシンジも――改造までは出来るが貸し切りが急遽中止になることなど、知る由もなかったのである。
 
 
 
「え?全員不在に?艦長、お言葉ですがご自分で何を言っているのか…」
「シンジ君が一人で留守番の実験するのよ。シンジ君のトラップじゃ不足と、レコアの伝言をつたえておく?」
「か、艦長っ!」
 レコアは慌てて手を振った。
「そ、そんな事なら最初に言って下さい。まったく艦長も人が悪いんだから…」
 めっ、とマリューを睨み、
「でも無理ですよ。ヒキコモリもいますし、バジルールはそもそも行かないでしょう」
「そんな事分かってる。だからレコアに頼んだのよ」
「だから無理って…か、艦長もしかしてっ?」
「そ」
 マリューはにぱっと笑った。
「薬を用意して頂戴」
 先回の戦闘を見る限り、この艦にシンジ一人残しておけば、艦を空にして別段支障が無いようなな気がする。あれだけの脅威を見せつけられてなお、アークエンジェルの位置を探し当てて攻撃してくるなら、ある意味賞賛に値するかもしれない。
 だが、シンジ一人がいれば十分だからと言って、一人にしなくてはならないという事もあるまい。臨時休暇であって、艦内にバルサンを炊くから全員を出すわけではないのだ。
 レコアは、マリューの意図を読み取ったのである。
 すなわち――艦内にシンジと二人きり、と。
「ほんとにもう…」
 ぶつぶつ言いながら、
「一応物はあります。ただ、ミーアの物ほど完璧ではありませんよ。と言うより、ミーアには断られたんですか?」
「あー、その彼女にはね…」
 髪を指先で弄りながら、
「ちょっち白状させられちゃって…これ以上見抜かれるのはちょっとね…」
「全部見抜かれてると思いますが」
「そ、それを言っちゃおしまいよレコア」
「はいはい」
 何を白状させられたのかなど、訊かずとも分かる。
 そして――シンジがそれを知った場合、かなりの高確率でミーアが砂漠へ逆さに埋められるであろう事も、また。
「じゃ、お薬は処方しておきますから適当に飲ませて下さい」
「はーい」
 
 
 
「この街って結構大きいんだね。人口も多いみたいだし」
 マリューとレコアの悪巧みも知らず、娘達はバナディーヤの街を歩いていた。もしも二人の話を知ったら、絶対に艦から出なかったろう。
「華やかに見えるか?」
「違うの?」
 訊いたキラに、
「見た目はな。だが言ったろう、ここはザフトの本拠地なんだ。この街がザフトを大歓迎して、諸手を挙げて迎え入れたと思うか?一歩中に入れば、あちこち爆破された痕の真ん中に、豪勢なザフト基地が建ってるよ」
「それって間抜けなだけじゃない」
「…何だと」
 綾香の言葉にカガリが反応した。
「もしかして、誇りの為に精一杯戦った、とか言うんじゃないでしょうね。戦って勝てるかどうか、計算もしないで抗戦するのは馬鹿のやる事よ。勿論最後まで玉砕する手もあるし、それを批判はしないわ。でもね、街の住民が巻き込まれる事を考えれば、堪えて降参するのだって立派な戦法よ。彼我の戦力差を考えずに抗戦を決定した挙げ句、中途半端に降るのが一番間抜けなのよ」
「お前は…お前はそれを街の人達の前で言えるのかよ!」
「言えるわよ」
 綾香は即座に、そして冷たく跳ね返した。
「そういうあなたこそ街を攻撃され、家を失った人達の前で、勝算は度外視だけど誇りと意地の為に戦ったんだこれで良かったんだ、と言えるわけ?そんな事が言えるならホームラン級のバカね」
「くっ…だ、だがっ!」
「だが何よ?人間ってのは、生きて行かなきゃならないのよ。街全部が焼かれたならまだしも、自分の家だけ焼かれて抗戦を唱えた奴の家は無事だったら、恨みたくもなるのが普通でしょ。そんな事も分からないなんて、いったい何処のお嬢様かしらね」
「!」
 言葉に詰まって反論も出来ないところに、いきなり何処のお嬢様かと言われ、その肩がびくっと揺れた。
(綾香様もお人が悪い…)
 セリオは内心で呟いた。
 綾香もセリオも、既にカガリの正体など知っていたのである。
 重くなった空気を振り払うように、
「綾香さん、もういいでしょ?カガリだってきっと分かってるよ」
 キラが割って入った。
「キラは優しいからね」
 くすっと笑った綾香が、キラをよしよしと撫でる。甘いのね、と本当は言いたかったのだが、ステラ相手には言えてもキラには言えない。
 その後ろには――死神の影が見え隠れしているのだ。
「ところでカガリさん」
「な、なんだ」
「あたし達一応女の子なのよね」
「?」
「女の子だけで買い物に来ているのに、首狩り族の兵士みたいな人が、見え隠れに付いてきてるのはどういう事かしら」
「え…あっ、キサカ!?」
 言うまでもないが、ここはザフト軍の本拠地であり、カガリを少女同士だけの買い物になど、行かせるわけにはいかないのだ。
 が、そこはカガリである。
「キサカ、私のことはいいから放っておいてくれ。いざとなればキラが守ってくれるから」
(私が?どうして私がカガリを?)
 MSに乗っているならまだしも、今は生身なのだ。どうやって守るというのか。
 そもそも、自分は一命を賭して守るほど、カガリと深い仲ではない。
「しかしカガリ…」
「いいから!私がいいと言ってるんだ、さっさとあっち行け!」
「…分かった」
 いきなり大きな声を出されては、さすがにキサカもそれ以上は言えず、背を向けて遠ざかっていく。
「あの人彼氏?」
「そんな訳ないだろ!私にそんな趣味はない」
「ふうん?」
 カガリの顔を覗き込み、
「彼氏でもない人が、あんな熱心に護衛してくれるんだ?カガリさんて幸せ者ね」
「あぁっ、い、いやそれはっ…その…」
 墓穴を掘ってアワアワしているカガリを置いて、皆さっさと歩き出してしまい、
「あ、あれっ?ちょ、ちょっと待てよおまえらっ」
 置いてきぼりにされたカガリが、慌てて後を追った。
 
 
 
「そう言えば、艦内を案内してもらうのはこれが初めてだった」
「そっ、そうね…んっ…」
 アークエンジェルの通路を、シンジとマリューが歩いていた。シンジは飲み物を片手にてくてく歩くが、マリューの歩幅は明らかに異様であった。一歩進むたびにその歩みは左右にぶれ、その息は荒くなってくる。
 こんなのが車を運転していたら、悪徳警官ならずとも捕まえたくなるだろう。ややもすれば遅れがりになりながら、何とか付いていこうとするマリューに、
「まだ百メートルも歩いてない。もうギブアップ?」
 シンジが優しく訊いた。
 普段と比較して四割程その口調は甘く、それが余計にマリューの性感帯を刺激する。
「シ、シンジ君が…クリにふあぅっ!」
 ふにゃふにゃと崩れ落ちそうになるのを、シンジにしがみついてどうにかマリューが堪える。
 事の起こりは、三十分程前に遡る。
 シンジが五人に会った、と聞いたまでは良かったが、
「なかなかの逸材だった」
「ふうん?で、美人だった?」
 必要なのは能力であって容姿ではない。マリューにしては妙な事を訊く、と思ったシンジだが、マリューの心の内までは読めなかった。
「結構良い感じだったかな」
 と言った途端、
「…あっそう」
 むくれてしまったのだ。
 目をぱちくりさせたシンジが、
「何かまずかった?」
「私まだ会ってないんだけど」
(先走ったか)
 言うまでもなく、シンジにはマリューに取って代わる意志など微塵もないし、実際五人に対しても自分はえらくないから、とはっきり言ってはいるのだが、確かに艦長のマリューを差し置いた格好になったかも知れない。
 ちょっと後悔したシンジだが――無論マリューの内心は違う。
(私といるのに他の女を褒めるなんて…シンジ君のばか)
 と、シンジが聞いたら度肝を抜かれそうな事を考えていたのだが、無論口に出せる事ではない。
「ごめん」
「え?」
「他意があった訳じゃないが、艦長の指示無く勝手に会ったのは悪かっ…痛?」
「誰もそんな事言ってないわよ!シンジ君のばかっ!」
 いきなりつねられた上に、どうやら越権行為を咎められているのではないと知り、シンジの眉がぴくっと動いた。
「…つまる所嫉妬だな?」
「!」
 かーっとマリューの顔が赤くなり、
「な、な、何言ってるのよ!う、自惚れないでよねっ、シンジ君なんかあの五人といちゃいちゃしてればいいんだわっ!」
「…ハン?」
 朝起きたら、窓の外で火星人が阿波踊りを踊っているのを見たような顔になったシンジが、大きな?マークを浮かばせたのを見て、マリューは読みが外れたのと瞬時に知った。
「艦長として全権を把握しなきゃ気が済まないから、私が先行した事で狭量にも怒った――のかと思ったのだが…」
「な、なにっ…」
 顔を赤くして横を向いたマリューの耳元に、シンジが口を寄せた。
 はふっ。
「ひゃ!?」
 耳朶に吐息をかけられ、顔を真っ赤に染めたマリューが耳をおさえて座り込む。
「じゃ、そのままごゆっくり」
「ちょ、まっ、待ってシンジ君っ」
「何」
 シンジの防衛能力など、最初から試す気はない。そんな事の為に、わざわざレコアを引っ張り込んだ訳ではないのだ。
 ここで置き去りになどされたら、自分の存在価値が半減してしまう。
「ご、ごめんね…」
 迂闊と言えばあまりに迂闊であった。嫉妬だな、と図星を指されたせいで思わず口走ってしまったが、シンジの思考は自分達よりやや上を行くことは、既に分かっていたはずではなかったか。
 が、幸いな事にシンジは細かい詮索はせず、
「反省してる?」
「う、うん…」
「駄目、許してやんない」
(シンジ君…)
 悄然と項垂れたマリューに、
「要お仕置き」
「…え?」
 シンジの出した条件は簡単であった。自分を連れて艦内を案内してくれればいい、と。
「そ、それだけ?」
「そう。一つだけ装身具を着けて」
 それなら造作もないことだと、考えもせずに頷いたのが運の尽きであった。
「身を装う具なんだから間違ってないでしょ?」
 妖しく笑ったシンジが差し出したのはローターであり、今のマリューは――淫核にローターを押し当てながら歩くと、女がどうなるかという生きた見本になっている。
「膣内(なか)に押し込んでスイッチを強にするよりいいでしょ」
 スイッチは弱だが、マリューには未体験ゾーンなのだ。何とか歩こうとするものの、力は全て股間に吸い取られてしまい、身体はまったく前に進まない。しかも刺激で淫核が一層勃起しており、もう脳髄までもが快楽に侵されてしまったマリューのパンストは、太股まで愛液で濡れている。
「もう降参するか?」
「だ、大丈夫…ま、まだまだいける、わ…」
「イクの間違いではなくて?」
「はうぅ!」
 シンジの一言一言がマリューの肢体に絡み付き、快楽点を刺激する。その言葉に、媚薬の効を持った何かが含まれていると、マリューには分からない。危険な程の快楽に身悶えしながら、シンジに掴まって立っているのがやっとの状態だ。
「つまらん」
 呟いた声も聞こえないのか、マリューは反応を見せなかった。
「どうしても降参しない?」
「や、やだ…ひうっ、ぜ、ぜったいにらめっ…」
「殊勝な心がけだ。では」
「な、何をするのっ」
「場所を変える」
 さっさとマリューに目隠しをしたシンジが、その身体をひょいと抱き上げる。その拍子に、手にぬるりとした何かがついた。
「ぬるぬる?」
 シンジが首を傾げたと気配で気づき、マリューがきゅっと唇を噛む。唇を噛んで顔を背けたマリューの股間から、また愛液が滴って来たのを確認してから、シンジはゆっくりと歩き出した。
 程なくして、とある部屋の前に着いたのが、そこは医務室でも食堂でもなかった。無論、シンジやマリューの部屋でもない。かさかさと慣れた手つきで解錠にかかるシンジだが、プレートに書かれた文字をマリューが見たら、例え四肢が動かなくなっても地の果てまで逃げ出したろう。
 そこにはこう書かれていた。
 ナタル・バジルール、と。
「シ、シンジ君っ、ま、まだなの…」
「もう着く」
 室内に舞った一陣の風は、ナタルが完全に熟睡している事を伝えてきた。意識を覚醒させて身体だけを拘束する手もあるが、シンジの好みではない。テーブルの前にそっとマリューを下ろし、テーブルに手をつかせる。
「こ、ここどこ…」
「はいはい、今取ってやるから。足がふらついているから、手は離さない方がいいと思うぞ」
(だ、誰のせいだと思ってるのっ…シンジ君のばか!)
 それでもその表情に緊張感がないのは、ここが食堂辺りだと思っているからだ。
「もー、目隠しなんかしてくれちゃ…っ!?」
 甘い声でシンジを咎めたマリューの表情が、一瞬で凍り付く。一メートルも離れていない所にあったのは、ナタルの寝顔であった。
「ひっ…むぐー!」
 シンジが口をおさえなかったら、間違いなく悲鳴を上げていたろう。下着だけにとどまらず太股まで濡らしている姿を、眠っているとは言えいがみ合っている女の前に晒しているのだ。
「シンジ君っ、冗談は…な、なにをっ!?」
 振り解こうとした途端、するりとスカートが下ろされ、あっという間にマリューの白い尻があらわになった。羞恥と怒りで足に力は戻ったが、ぷにぷにと尻肉をつつかれ、身体から力が抜けていく。
「こんなに濡れてる」
 指先についた愛液を指の間で粘着かせながら、シンジが妖しい声で囁いた。
「見たい?」
「いっ、いいから…は、早くここから出してっ」
「ここでならしてあげるけど?」
「!!」
「でもマリューは気乗りしないみたいだし、解放してあげる。俺はゆっくり昼寝してくるから」
 依然として愛液は止まらず、刺激が淫核だけに集中したいせいで膣内はかき回したい位に疼いている。シンジに抱きかかえられた時に溢れてきた愛液は、尻穴まで濡らしているのだ。
(わ、私がこんなになってるのを知ってて意地悪っ…!)
 無理矢理犯すどころかマリューに丸投げしており、むしろ引き気味にすら見えるシンジに、マリューは泣きたくなってきた。
 だが、この広い艦内で実質二人きりになれる事など、文字通り千載一遇のチャンスで、これを逃せばまずあるまい。いくらマリューでも、そうそう全員に休暇など出せるものではない。
「ま、待って…」
「なに?」
「い、いっちゃやだ…ここでっ、し、してほし…あふぁっ!?」
 羞恥心を質入れする事にしたマリューが、か細い声でおねだりした途端、いきなりペニスが突き入れられた。バックから根本まで深々と突きこまれ、思わず声を上げたマリューが咄嗟に指を噛む。
「いい子だ」
 マリューの腰を抱えたシンジが、後ろから大きく突き上げる。腰と腰が音を立ててぶつかり、ぎゅっと唇を噛んで声をこらえたマリューが乳房へ手を伸ばし、自分で乳首に舌を這わせた瞬間、
「ひむぅっ…んっ」
 ぶるっと身体を震わせたマリューが、そのままテーブルに突っ伏した。濡れて火照った身体をペニスで突かれては、刺激が強すぎたらしい。荒い息を吐いているマリューの胸元では硬くしこった乳首がテーブルに擦れ、微量の電流みたいな快感を伝えてくる。
「ご、ごめん…イっちゃった…」
「…早すぎ」
「だ、だってシンジ君がクリにローター…あうっ」
「言い訳禁止」
 つぷ、と中指の差し込まれた先は尻穴であった。元々期待度が高かったので身体は綺麗にしておいたが、そうでなかったら恥ずかしさで座り込んでいたところだ。
「ほら、さっさと起きて。俺は全然満足してないんだから」
「う、うん…ふあ!」
 入れられたままなので、身を起こすと同時に膣内をこすられ、マリューが小さく声をあげてから、慌てて口元をおさえる。
「シンジ君、お、お願いがあるの…」
「なに?」
「い、一回抜いてくれない?このままちんぽ入れられてたら…あ、あたしのまんこがおかしくなっちゃう」
「却下」
「え…ちょ、ちょっと待っ、イ、イったばかりでそんなにさ…あうっ」
 達したばかり敏感になっている身体を貫かれ、たまらずマリューが腰を浮かせるが、
(あ、あれ?)
 さっき程のような激しさはなく、ゆっくりと突かれ、膣内がじわっと温かくなってきた。
(シンジ君…)
「あのっ、キス…して?」
 そっと唇を突きだしたマリューに、身体を前傾させたシンジが顔を寄せてくる。奥まで来るペニスの感触に、マリューは熱い吐息を漏らした。マリューの唇を柔く啄みながら、
「この間より濡れてる」
「そ、そう?」
「やっぱり見られてると感じる?」
「!?」
 反射的にナタルを見やった瞬間、マリューの膣内が強烈に収縮した。襞がまるで生き物のようにシンジのペニスに絡みつき、シンジがにっと笑う。
「ああんっ、み、見てないじゃな…う、嘘つ…つ、強く突きすぎようっ」
 寝ていると分かってはいても、どうしてもナタルの存在を意識から外せない。
「動いてないよ?びっしょりになったマリューのここが、締め付けてくるだけ。それにしても見られて感じるなんて、良い趣味してる」
「や、やだそんな事言わ…あっ、あんっ、ひふぅ…んんっ…」
 シンジの言葉に操られ、まるで見られているかのような錯覚に陥ったマリューの秘所は、絶える事無く愛液を湧き出させ、絡みつく襞はそのまま快感を反射させる。
「そっ…なにされ…あっ、あたしまたイっちゃうぅっ」
(ま、まだイきたくないのにぃっ)
 薬を使っていないのに、温泉の時より感じているのは、マリューも自分で分かっていた。そしてそれが、眠っているとは言え誰かのいる前でしているから来ている、と言う事も。
 が、止められない。
 止まらない。
 腰はシンジを求めて勝手に動いており、膣はペニスを求めて妖しく蠢いている。
「じゃ、その顔をバジルールに見てもらわないと」
「ひうっ!?むーむー、ふぬむぅーっ!!」
 叫びかけたところをシンジに口を塞がれ、その腕に歯を立てながらマリューは激しく腰を震わせた。
「噛まれながらって、何度目だったかな」
 その呟きが、一気に絶頂へ打ち上げられたマリューに聞こえなかったのは、幸いだったろう。
 絶頂と同時に吹き出した愛液が床を濡らしていく。
「もーっ…イ、イかせすぎ…」
 濡れた瞳で、マリューが恨めしげにシンジを睨む。
 マリューの膣からゆっくりとペニスを抜き出したシンジが、
「マリューはイき過ぎ。それとマリューの膣(なか)、えっち過ぎ。持ち主はすぐにイくくせにね?」
「し、知りません…っ」
 真っ赤な顔のマリューが、ぷいっとそっぽを向いた次の瞬間、
「え…きゃーっ!?」
 自分の愛液に足を取られたマリューがつるっと滑り、見事にお尻から着地した。
「い、いたたた…!?」
「……」
「……」
 マリューの悲鳴で起きたのだろう、寝ぼけ眼のナタルがじーっと見ていたのである。
「『いやあーっ!!』」
 室内に女二人の悲鳴が響き渡り、その寸前にシンジは耳をおさえていた。
 
 
 
「もう…シンジ君って本当に…」
 艦長室で髪を弄りながら、マリューはくすくす笑っていた。マリューもナタルもびっくりして――ナタルから見れば明らかに不法侵入である――お互いの顔を見て悲鳴をあげたのだが、シンジの動きは早かった。掌をナタルに向けた瞬間その身体は崩れ落ち、また寝息を立て始めていた。
「大きな声を出すなと言ったのにまったく」
「ご、ごめんね…」
 怒られたが、そのまま放置されることはなく、艦内を歩いてもらったのだ。なお、マリューは歩いていない――シンジと繋がったまま、抱きかかえられていたのである。
「あたしが七回…でもシンジ君も一回イってくれた…。初めてよね…」
 マリューの指が頬に触れ、妖しい手つきでなで回していく。
「き、綺麗に…なったかしら…?」
 心当たりがあるらしい。
 
 
 
「別に搾られた訳じゃないし、クオリティが下がる事もあるまい」
 スカイグラスパーでここまで飛んできたシンジだが、依然としてその飛び方は危なっかしく、端から見れば酩酊運転としか思うまい。
 つまり、辛うじて何とか飛んでいる状態なのである。
 男連中が酒を持ち込んでいたからだいぶ砂が乱れてはいるが、さすがに飲んだ物を放置していくような奴はいなかった。洗濯係の五人に約束したとおり、現在せっせと改造中である。
「温泉を弄ってくる」
 発とうとした時、ちょうどキラ達が戻ってきたのだが、シンジを見て目をぱちくりさせていた。ただ一人で出てきたから、一瞬で気配を見抜くことは出来なかったろう。
 ほぼ改造も終わり、
「さて、後はあの連中に開放してくるか」
 立ち上がった時、
「ん?」
 小さなつむじ風がシンジの足下で舞い――その表情が変わった。
 スカイグラスパーに飛び込んだシンジが、アークエンジェルのマリューを呼び出す。
 すぐに出た。
「何かあったの?」
「そっちに異常は」
「いえ、こちらは何も」
「サイーブに、こちらへ連絡を寄越すように言ってくれ。大至急だ」
 二分後、サイーブから通信回線が入ってきた。
「俺だが…何かあったのか?」
「どこだか知らんが、火の手が上がったぞ。それもかなりでかいのが」
「何っ!?おい、誰か――」
 言いかけた時、不意に笛が鳴り響いた。
「どうした!何…何だと!?」
「どした?」
「こちらでも確認した…タッシルの街の方角らしい…」
「失火か?」
「…違う。ザフトの…攻撃だ」
 
 
 
 
 
(第五十四話 了)

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