妖華−女神館の住人達外伝
 
 
 
ドクトルシビウの闇カルテ:ツェザーレ
 
 
 
第四十三話:エザリアの艶笑み
 
 
 
 
 
「『ただいま戻りました』」
 素っ裸で敬礼したイザークとルナマリアは、まだ自分達が裸だと気付いていない。エザリアの声が、完全に二人を妖縛していたのだ。匂い立つような魅力に引き寄せられ、二人がふらふらと近づいていく。
 婉然と笑ったエザリアが指を鳴らした次の瞬間、二人の表情がすうっと元に戻っていく。目をパチクリさせた途端、二人の顔がかーっと赤くなった。
 全裸のエザリアに気付いたのだ。それでも妖しく揺れるその乳房に、刹那見とれたルナマリアだったが、一瞬遅れてから自分達の格好に気が付いた。
「は、母上っ!?」
 隣にいるのは異性であり、自分達は全裸なのだ。イザークが慌てて前を手で隠し、
「キャ…モゴっ!?」
 悲鳴をあげかけたルナマリアは、エザリアに片手であっさりと引き寄せられていた。しかも、その唇をエザリアの唇が塞いでいたのである。
「あっ、あ…」
 言うまでもなくエザリアはミーアを仕組んだ黒幕だが、イザークはそんな事を知らない。母と寝た事は幾度もあるが、常にイザークは受け身であり、少し攻めに回ったような気がしても、最後は母の白い指や艶やかな唇に翻弄され、それ自体が生き物のように絡みついてくる膣内へ射精させられてしまうのだ。
 自分が母に遠く及ばないのは分かっていた。
 だが、まさか女相手でも強気攻めだとは。エザリアの乳房は、イザークの手にも収まらぬ大きさだが、ルナマリアの乳房は年相応だ。最初は逃れようとしていたルナマリアだが、早くも陥落させてしまったのか、下肢をもじもじさせながらエザリアのキスに応えている。エザリアの乳がルナマリアの乳を包み込むようにして、二人の胸が重なり合い、押し合い、むにむにと形を変えていく様を見て、イザークは慌ててそっぽを向いた。
 股間がストレートに反応したのである。
 重なり合った唇の端から、混ざり合った唾液がとろとろと滴り落ち、妖しく潰れ合う乳房を伝い落ち、下腹部まで達した頃漸くエザリアは唇を離した。
「エザリア…様…」
 とろんと蕩けた瞳で見つめてくるルナマリアに、エザリアは妖しく微笑んだ。
「ハマーンから聞きました。ぼんやりしていたイザークを、ルナマリアが助けてくれたと。これはそのお礼です」
「い、いえあたしなんて何も出来なくて咄嗟に…」
 ふるふると首を振ったが、その双眸は以前として蕩けたままだ。完全にエザリアの術中に堕ちたらしい。
 その顔を見て、エザリアがふふっと微笑った。
 確かに微笑ったのだ。
 だがそれを見た瞬間、痛い程に張りつめていたイザークのペニスが急速に萎えていく。イザークは、美母のこの笑みが何を意味するか知っていたのだ。
「イザークが危機に陥る前、二人は敵を前にして悠々と口論していたとか。何が議題になったのか、是非私も知りたいものです」
「『!?』」
 一瞬にして、二人の顔から血の気が退いていく。マザコンとでぶが議題になったなどと、口が裂けても言える事ではない。
(だ、だめよルナマリア。ここは危険だわ。逃げなきゃ…早く…)
 依然としてエザリアの笑みは崩れない。微笑を浮かべたまま、その双眸がルナマリアを見つめている。危険だと、逃げなければと本能は促しているのだが、身体が言う事を聞かないのだ。
 なおこの時ルナマリアは、
「青大将に魅入られた牛蛙状態」
 と言う言葉を知らなかった。
「二人には、お仕置きが必要と見える」
 艶母としてではなく、プラント最高評議会議員としての声で告げたエザリアの笑みが、ひときわ深くなった。 
 
 
 
「評議会は案の定大騒ぎだった。連中はストライクのパイロットがナチュラルだと思いこんでいる。そのナチュラルが操る同時期開発機一機に、赤服がまるで赤子のように嬲られたのだからな」
 仮面の下で、クルーゼはくっくっと笑った。その赤服はクルーゼの配下達なのだが、こうまで完敗すると、もう笑うしかなくなってくる。
 操っているのがコーディネーターで、もう一人は異世界人だという、それだけでも信じられないような事実だがそれはまだいい。
 だが、一体何をどうしたらここまで完膚無きまでに敗れるのか。
「尤も、さすがに現時点で手抜き説を唱えられる者はいなかったがね。おかげで私も出番が無くて済んだ」
「貴様の出番など、あっても無くても大して変わらん。私が知りたいのは、パトリックの今後の出方だ。息子など駒としか思っていない男だが、その内心では妻の復讐だけが渦巻いている。無論、クラインのような和睦など微塵も思っているまい。クルーゼ、その位は調べたのだろうな」
 そう言って、クルーゼを見たハマーンの視線は、ひどく冷ややかな物であった。クルーゼへの評価は、依然として大暴落したままらしい。
「戦艦のせいなのかMSのせいなのか、或いはパイロットが我らの常識を遙かに凌駕した所にあるのか――。議長は既に、異世界人については理解しておられる。だが、それが何故ああまで強さを発揮するのかは分からない。なので全てを揃える事にされたようだ」
「全て、だと?」
「そう、全てだよ。パイロットだけはそうもいかないがね。もっとも、彼我の一番の差はパイロットにある。とは言え――」
 クルーゼがハマーンに渡したのは、分厚い書類であった。受け取ったハマーンが、高速で紙をめくっていく。
 流し読み、どころか字を認識すら出来ていないと思える速さだが、その鋭い視線は隅々まで余すところなく読んでいる。
「ミネルバ、か。つまりアークエンジェルもどきだな。戦艦だけ真似してどうしようというのか」
「新型機の情報は読んだかね」
「無駄な事だ」
 興味も失せたかのように、ハマーンは書類を放り出した。
「地球の連中も、いずれは同じ物を造ってくる。それに、機体の性能差で勝てるなら、少なくとも四機でかかれば小傷位は与えられるだろうが。目指すべきは機体でも戦艦でもなく、あの二人が組んだストライクと互角位に戦えるパイロットの発掘だ。所詮、パトリックもその程度の男だったか」
 さっさと出口に向かったハマーンだが、その足が出口で止まった。
「タリア・グラディスとか言ったな。クルーゼ、貴様の知り合いか」
「そうだ。現場からの叩き上げではないがね、なかなか優秀な――」
 言い終わらぬうちに、既にハマーンの姿はドアの向こうへ消えていた。
「やれやれ、せっかちな事だな」
 ふっと苦笑したクルーゼだが、その表情が不意に変わった。
「君の理想は理解出来る。だが、異世界人はともかくパイロットの娘は素人なのだ。我らが優位に立ちつつある今、そんな素人相手にこれだけかき回されて、平然としている訳にはいかんよ。理解を超えた存在など、そうそう見つかる筈もあるまい。ならば劣勢は火力で補う――いや、補わねばならぬ状況なのだよ、ハマーン」
 外された仮面が、クルーゼの手の中で小さな音を立てて握りつぶされた。
 
 
 
「お仕置き、と言ったでしょう?」
 何とか我に返り、身を翻して逃げ出そうとしたルナマリアだが、あっさりとエザリアに捕まった。そればかりか抱きかかえられ、岩を積み上げて作った壁の上に、おむつを替えられる幼児のような格好で載せられてしまったのだ。腕を押さえられては、乳房はおろか未だ幼さを残す秘所さえも隠せない。
 薄い淫毛の下に息づく女性器が、その入り口をぱっくりと開けているのだ。
「お、お願いです…エ、エザリア様、許してください…」
「駄目。許したらお仕置きにならないでしょう。二度とあんな醜態を晒さぬようにと、ハマーンから言われてしまったのよ。敵前で口論とは、赤服隊も随分と地に落ちたものね」
 エザリアが、ルナマリアの股間に顔を近づけて口をすぼめる。そのまま、淫毛へはふうっと息を吹きかけたのだ。
「ひゃっ!?あぁっ…あうんっ」
 身悶えするルナマリアの割れ目から、とろっと愛液が流れ出してきたが、淫唇を両手で左右に開かれている時点で、既に手はおさえられていない。が、ルナマリアにはそれに気付く余裕は無かった。
 きゅっと目を閉じて身悶えするルナマリアを、エザリアはじっと見ていたが、やがて口を開いた。
「この反応…まさか処女ではないわよね?」
 びくっ!
 空き巣を物色中、警官に肩を叩かれたらこんな風に反応するかも知れない。真っ赤な顔を必死に背けたルナマリアに、
「別に恥ずかしがる事はない。訓練過程に、処女の卒業は含まれていないのだ。とは言えルナマリア・ホーク」
「は、はい…」
 男を知らぬ身だとあっさりと、それもイザークの前で見抜かれてしまい、もう消え入りたいような思いのルナマリアだったが、エザリアの口調は評議委員のそれに戻っている。
「あなたの処女は私がもらってあげる。それとも処女の膣(なか)に挿れる事しか考えない男に、無理矢理貫かれたい?」
 ルナマリアを見据えたエザリアが、不意に艶母の声で囁いた。知性を帯びた瞳から一瞬にして、たっぷりと艶を含んで濡れた瞳に変わる。二つの色はかけ離れているのに、エザリアの双眸の色は一瞬にしてくるくると変わるのだ。
 そしてルナマリアは、そんな妖しい人妻に抗えるだけの精神(こころ)は、持っていなかった。
「エ、エザリア様に…」
「私に?」
「だ…だ、抱かれたい…です…」
 消え入りそうな声で言ったルナマリアの双眸から、一筋の涙が伝い落ちる。それをエザリアが、赤い舌で妖しく舐め取った。
「男は知らないけれど、でも独りでしてるでしょう?さっきのは、何も知らない子の反応ではなかったわ」
「し、知りませんっ」
 耳元で囁いてくるエザリアに、ルナマリアは反射的に否定したが、その表情が裏切っている。
「女の子の弄り方、教えてあげる」
「え…んむぅっ!?」
 もう一度唇が重ねられ、ルナマリアの歯列を柔く割ってエザリアが舌を差し入れてきた。軽くルナマリアの舌先を突いてはまた戻り、はむはむと唇を啄む。舌先だけを触れ合わせ、あっさりと引いて唇を啄んでくるエザリアに、とうとうルナマリアがじれた。
 入り込んできた舌に、ぎこちない動きながらも自分の舌を絡めていく。が、するりと逃げられた。後を追い、ルナマリアの舌がエザリアの口内に入り込んだ途端、つるりと絡め取られてしまった。ただ、さっきまでのようにエザリアが主体になって攻める事はせず、誘うように舌先や裏側へ軽く触れてくる。
(誘われ…てる?)
 そっと舌を絡めてみると、柔らかい舌が吸い付いてきた。ルナマリアも吸い返す。
 少し大胆になったルナマリアが、エザリアの腰に手を回してみた。手の平に触れる肌は弾力があり、すべすべしたその感触はとてもイザークのような息子がいるとは思えない。指先でつうっとなぞった途端、エザリアの身体がぴくっと震えた。が、それがいけなかったらしい。
(良い感じよ、ルナマリア。でも調子に乗りすぎ)
(エ、エザリア様…ああんっ)
 あっという間に舌を絡め取られ、しかもエザリアの手が乳房に伸びてきた。もう片方の手はルナマリアの髪に触れている。しなやかな指先で髪を梳かれ、硬くしこった乳首をこりこりと弾かれた上に、舌を絡め取られて好きなように嬲られては、もうルナマリアに抗う術は無かった。
 解放された時エザリアが支えなかったら、湯船の中にぺたんと座り込んでいたところだ。口内を責められた上に乳首と髪を弄ばれ、既にルナマリアの秘所はぐしょぐしょになっていた。
「エザリア様ぁ…」
 とろん、と蕩けた瞳で見上げるルナマリアだが、
「駄目」
 エザリアは冷たく突き放した。
「そ、そんな…」
「調子に乗って私を責めようなんてしたお仕置きよ。あなたはそこで待っていなさい」
 身体中の快楽点に着火され、股間どころか全身がむずむずと疼いているのに、あっさりと放り出されてしまった。自分でするより何倍も気持ちよかったのに、こんなにしておいて放置なんて酷すぎる。
 が、エザリアはもうルナマリアの事など忘れたかのように、イザークに向き直った。
「もう、待ちきれなくなってしまったの?相変わらず悪い子ね、あなたは」
「は、母上お願いですっ、は、早く…」
 さっきから射精感に襲われているのを、イザークは必死に堪えていたのだ。元からマザコンで、童貞卒業の相手もその後抱かれるのも母以外におらず、そんな母がルナマリアと舌を絡め合い、乳房を擦り合わせているのを見て、既に限界近くなっていた。
「どうしようかな?」
 ちょこんと小首を傾げ、すぐには手を伸ばそうとしないエザリアだが、その眼にルナマリアとキスしていた時とは違う、妖しい光が宿っている事にイザークは気付かなかった。そんな事に気の回る余裕はなかったのだ。
「本当はお仕置きだけれど…他で出さなかったご褒美をあげないと、ね」
 痛い位に張りつめている股間を、何とかおさえているイザークの前にエザリアがかがみ込んだ。
(何…するんだろ)
 こちらも、疼く身体を持て余し気味ながら、自分で弄った途端に冷めると分かっているから、太股に爪を食い込ませて我慢していたルナマリアが見つめる前で、エザリアは躊躇うことなく我が子のペニスを手にして口に含んだ。
「うああっ…」「ええーっ!?」
 イザークが喘ぎに近い声を洩らすのと、ルナマリアが素っ頓狂な声を上げるのとがほぼ同時であった。マザコンの噂が囁かれるイザークだし、キス位はするかもと思ったが、まさかペニスを口に含むとは思っていなかった。しかもこの二人、血の繋がった親子なのだ。
 根本を白魚みたいな指で柔くおさえ、一旦亀頭を口に含んで唾液まみれにしてから出す。評議会での凛とした姿を知るだけに、目許を染めたエザリアが淫らな音を立てながら、それも息子のペニスをしゃぶる姿を見ているだけで、ルナマリアはたまらなくなってきた。
 自分もしたいとは思わないし、無論自分がされている訳ではないのだが、エザリアの白い裸身とその淫らな行為が、一気に欲情の渦へと巻き込んだ。エザリアは頬をすぼめて思い切り吸い上げ、亀頭から竿にかけてねっとりと舌を絡ませてからゆっくりと出していく。その母の髪を掴んで何とか堪えているイザークと、もう我慢できずに脚を大きく開き、左手でクリトリスを剥き出しにして指の腹でそれをぐりぐりと擦るルナマリアが、ちらちらとお互いを見やる。
 実母にフェラされるイザークとあられもない格好で自慰を始めたルナマリア、お互いが因子となってあっという間に昂ぶっていく。
「は、母上もうっ…」
 腰の辺りが覚束無くなってきたイザークだが、エザリアはまだ駄目と言うように陰嚢を指できゅっと挟んだ。しかもディープスロートは止めて、亀頭だけに専念し始めたのだ。口の中で転がして嬲り、或いは出して舌先で割れ目をくすぐる。元から受け息子なのに、こんな事をされてはたまらない。イザークの顔がみるみる歪んできた。
(もう達しそうなのね…)
 男が達する所など見た事はないが、ルナマリアにはよく分かる――自分も似たような状況だからだ。
「母上、も、もう限界…マ、ママっ!」
(ママ!?)
 びっくりして一瞬手が止まったルナマリアに、エザリアが気付いたかは不明だが、不意にその手が止まった。
 すっと顔を離し、
「出してもいいわ。それと――」
 くるりと振り返り、
「ルナマリアも、イキそうでしょう?思い切りえっちにイッてもいいのよ?」
「『!!』」
 赤い舌で唇をぺろりと舐め、ひどく淫らな顔で微笑ったエザリアを見た途端、二人の中で何かが弾けた。声にならない叫びを同時に上げた二人の身体が、激しく痙攣する。一瞬腰を引いた直後、勢いよく迸った精液はエザリアの綺麗な髪から顔へ、そして乳房へとたっぷり降りかかり、その顔と肢体を妖しい白色で染めていく。そしてルナマリアもまた、初めて人前で見せた自慰の終わりを、股間から噴き上げた愛液で床を濡らしながら迎えていた。無論、他人の前で自慰行為をするのも初めてなら、性器から愛液を噴き出させて達するのも初体験である。
(こんな、こんな事を…でも…今までで一番気持ち良かった…)
 余韻が抜けぬまま、視線の端でちらっとイザークを見ると、これも射精し終えたペニスをエザリアに舐め取ってもらいながら、母にうっとりと身を任せている。
(あれが射精…)
 勿論一通りの性教育は受けているが、射精を見たり受けたりした事はない。別に男が嫌いでもないが、まさか初めて見るそれが母親に顔射するところになるとは、思いもしなかった。
「たくさん出たわね。一度も出していなかったの?」
 顔を赤らめて小さく頷くイザークからは、プライドが高くて扱いにくい普段の姿など到底想像できない。
「私はあの子と遊んでくるから、少し待っていて。いっぱい出したから、すぐには戻らないでしょ?」
「は、はい母上…」
 その頬を軽くつついたエザリアが、シャワーを浴びて戻ってきた。達した余韻でまた淫唇をひくつかせているルナマリアに、
「普段よりも感じちゃった、かしら?」
 耳元で妖しく囁かれ、顔を真っ赤に染めたルナマリアが小さく頷く。
「い、今までで一番…か、感じちゃいました…あっ!?」
 頬を染めてもじもじしていた所を、ころんとひっくり返されてしまった。充血して固くなっているクリトリスはおろか、尿道口から膣口までがすべて丸見えにされてしまい、じたばたともがくルナマリアだが、その身体はびくともしない。
「エザリア様、お、お願いですから…っ」
「あまり、膣(なか)ではしてないみたいね」
「え…?」
「ここ、処女の子にしては少し大きいのよ。弄りすぎかしら?」
 クリトリスへふーっと息を吹きかけられ、柔らかい肢体を震わせたルナマリアの秘所からは、また愛液が滲み出てきた。
「自慰はむしろ膣を主体にした方が気持ちいいのだけれど、処女だとちょっと痛いかもね。ここまでで止めておく?無理強いはしないわ」
 訊ねたエザリアの指は、抱え込んだルナマリアのお尻をぷにぷにとつついている。
 首を振ればあっさり解放するだろう、とルナマリアは思った。でもここはそう言っていないわ?とか言いながら、責めては来るまい。
 今ならまだ引き返せる。
 が、ルナマリアの唇を割ったのは、
「お、お願いします…」
 と言う言葉であった。女同士のキスも乳房が乳房で包まれる快感も、いずれも未体験ゾーンだったが、その快楽をルナマリアは知ってしまったのだ。それは、引き返すにはあまりにも甘美な誘惑であった。
 頷いたエザリアが指を鳴らすと、壁の一部が割れた。取り出したのは、両側にペニスが付いたような代物で、女同士が繋がる時に使うものだとルナマリアも知っていた。前に、一度だけ見た記憶がある。が、ルナマリアが目を奪われたのは、その片方の先端であった。
 やけに造りが精巧なのだ。まるで、本物のペニスを移植したかのような感さえある。
 その視線にエザリアが気付いた。
「とても精巧でしょう?私の大切なものを模してあるのよ」
「大切なものって…まさか」「ん?」
 エザリアとルナマリアの視線が一点を向く。すなわち、イザークの股間を。二対の視線を受けて、イザークが慌てて股間をおさえた。
「か、母様まさかっ」
「当然でしょう。それとも、誰か違う男のものを象ったとでも思ったのですか」
「い、いえ…」
 どうやら、イザークのそれを模した物だったらしい。砂浜で、素足でクラゲの死体を踏んだような微妙な顔でイザークが横を向く。こういう時の正しい反応は、かなり難易度が高い。
 先端を愛しげに撫でているエザリアに、
「あ、あのエザリア様…」
「なに?」
「その…む、胸に…さ、触っても良いでしょうか」
「気になる?」
「はい…」
 ルナマリアも貧乳ではない。と言うより年相応なのだが、片乳だけでルナマリアの両手に余りそうなエザリアの巨乳は、さっきから気になって仕方がなかったのだ。乳房が触れ合った時、とても気持ち良かったのも気になる。
「いいわ、いらっしゃい」
「し、失礼します」
 おずおずと乳房に触れると、柔らかいのに弾力のある肌が吸い付いてきた。そっと撫で回し、手の平で包んでみるとやっぱりルナマリアの手には余る。手でむにむにと弄りながら、顔を赤らめているのはエザリアではなくルナマリアの方だ。
(エザリア様のおっぱいって…触ってるだけで気持ちいい)
 乳房の感触を愉しんでいたルナマリアだが、ふとその眼が僅かに隆起した乳首に止まった。美味しそう、と刹那浮かんだ思いを慌てて振り払うが、もう脳内に定着して離れない。無論、エザリアはすぐに気付いた。欲情というより物欲しげな表情に変わり、しかも自分の乳首から視線が離れなければ普通は気付く。
「吸ってみたい?」
「えぇっ!?わ、私は別にそんな…はい…」
 顔を赤くして頷くと、
「いいわ、許可します」
 あっさり許可が出た。乳首にそっと唇を付けて口に含む。美少女に熟れた乳房を揉みしだかれ、その乳首を一心不乱に吸われている艶母の姿はひどく倒錯して見える。んっ、とエザリアの口から時折小さな声が洩れるが、吸っているルナマリアの方もうっとりした表情で、時折自分の乳房に手を伸ばしている。
 ちゅぽん、と音を立ててルナマリアが口を離した時、エザリアの乳首は妖しく勃っていた。
「美味しかった?」
「はいっ」
「そう。でもほら」
 たわわな乳房を持ち上げて見せ、
「えっちな赤ちゃんが淫らに吸うから乳首が硬くなっちゃったのよ?」
 微笑ったエザリアに、かーっと赤くなったルナマリアもまた、痛い位に乳首は張りつめている。
「でも吸い方はお上手よ。そんな子にはご褒美をあげないとね。そこへ横になって」
「はい」
 言われるまま床へ仰向けで横たわり、僅かに脚を開いた。シリコン製のディルドーの先端を性器に宛がったエザリアが、妖しい吐息を洩らして膣内に押し込んでいく。ちょうど半分位を押し込んだ姿は、エザリアの股間からペニスが生えているように見える。
「いい?」
 きゅっと目を閉じたルナマリアが小さく頷いた。その膣口を左右に開いたエザリアが、ディルドーの先を押し当てると一気に押し込んだ。こう言う時、一番痛みのないやり方は既に経験で知っている。
「んっ…」「あうぅっ!」
 ルナマリアの口から苦痛の呻きが上がり、両手をきつく握りしめたが、十秒も経たないうちにその表情は和らいできた。エザリアの腰使いもあるが、ディルドーの先端にはエザリアが自ら調合した媚薬が塗ってあるのだ。
「痛くはない?」
「え、ええ大丈夫で…きゃふ!?」
 ルナマリアの肩が小さく揺れる。エザリアが、硬く尖った乳首同士を摺り合わせたのだ。吸われたのはエザリアだが、吸ったルナマリアも妙な興奮から乳首を尖らせた。二人の乳首がこりこりと擦れ合い、互いに吸い付き、或いは弾き合う。
「ほら、ルナマリアも乳首こりこりさせて?」
「は、はい」
 最初は違和感と苦痛があったが、何故か急速に和らいできたところへ乳首に電流のような甘い快感が流れ、ルナマリアは言われるまま乳房を揺すり、エザリアと乳首を擦り合わせた。乳首を摺り合わせながら、初めはエザリアに貫かれるだけだったルナマリアも、徐々に腰を動かすようになってきた。交互に腰を振る動きが重なると、ディルドーはその姿を二人の膣内に消し、エザリアの赤い唇からも甘い喘ぎが洩れる。
 人体実験を何度か繰り返して、媚薬の効果はほぼ分かっている。ぎこちないながらも、ルナマリアが下から腰を突き上げて来たのを知り、エザリアは後方に目をやった。
 イザークの股間が回復しているのを見たエザリアの口許に、嬉しそうな笑みが浮かぶ。それは、母性と淫蕩が混ざり合ったものであった。
「イザーク、おいでなさい」
 招いたエザリアは、両手で尻を左右に開いた。
「か、母様…」
 膣に二本差し、ではあるまい。が、アヌスに挿れるのは初めてなのだ。どんなに危険な日でも、後ろは一度も許した事のないエザリアである。
「よ、良いのですかっ?」
「前に二本も挿れられたら、壊れちゃうでしょう?イザークがそんなにちんぽをおっきくしてるのに」
「『ーっ!?』」
 赤面したのはエザリアに非ず、イザークとルナマリアであった。
「でもルナマリアも――」
「え?」
「私がお尻に挿れられたら、まんこはきゅーっと締まっちゃうわよ?」
「エ、エザリア様…っ」
 普段、議員服に身を包んでいるエザリアからは、到底想像出来ぬ淫らな表情と卑猥な言葉に、顔を赤くしてもじもじしているルナマリアだったが、
「か、母様そのようなお言葉はあまり…」
 口ではそう言いながらも、明らかにさっきより大きくなっているペニスを、エザリアの尻穴に突き入れた瞬間、嬌声を上げたエザリアの膣内は強烈に収縮し、繋がっているルナマリアもまたぐっと突き上げられて可愛く喘いだ。
 最初に崩れたのは、その体内で膣内のディルドーとアヌスのペニスが擦れ合い、前後から突かれたエザリアであった。甲高い嬌声をあげて腰を振りながら乳房を揉みしだき、ルナマリアの口腔を犯していく。触発されたルナマリアも、エザリアの乳首に自分の乳首を押しつけながら、あられもない声を上げて身悶えし、何かに取り憑かれたように腰を振って喘ぐ。ディルドーで繋がった二人が腰を振り合っているところへ、アヌスへ突っ込んだイザークが自分のペースで責められる筈もなく、あっという間に絶頂へと追い込まれた。
「母様そんなにし、締め付けないでっ、も、もう出るっ…」
「い、いいわ出してっ、ママのお尻に思い切り中出ししていいからっ」
 そのエザリアはルナマリアと舌を絡め合い、熟女と美少女は上下の口を互いの唾液と愛液でべとべとにして抱き合っている。
「ふあっ、エ、エザリア様そんなに締め付けたら、わ、私もうっ…」
「イっ、イイのよイッても。お、思いっきりイッておしまいなさいっ」
 母と息子の尻と腰が激しくぶつかり、呻いたイザークが母の直腸内に思い切り精液を叩きつけ、体内に熱い迸りを受けたエザリアが、一際高く啼いてから愛液を噴きだして四肢を突っ張らせた。女性器同士が密着しているから逃げ場がなく、過敏になったクリトリスへエザリアの愛液が勢いよく掛かったルナマリアが、泣き声のような声を上げてエザリアにきつくしがみついてから、ぐったりと肢体を弛緩させる。
 ほぼ同時に達した三人は、暫く荒い息を吐いて肩を上下させたまま何も言わなかったが、最初に回復したのはやはりエザリアであった。破瓜の後、いきなり未体験の快楽で絶頂へと強引に押し上げられ、秘所をひくつかせながら涙を流しているルナマリアの頬に軽く口づけし、
「少しやり過ぎちゃったかしら?」
「い、いえ…」
 ルナマリアは、泣き笑いの顔で首を振った。
「あたし、初めてなのに感じ過ぎちゃって、自分が変になるんじゃないかって…。でも、とても気持ち良かったです…」
「じゃ、もっと気持ち良くなってみる?」
「も、もっと?」
「今の私のように二本差ししてあげる。お尻も気持ちいいものよ?」
「だ、駄目ですっ」
 勢いよく首を振ってから、エザリアの耳元に口を寄せて、
(あ、あたしその…ま、まんこがおかしくなっちゃいますっ)
 エザリアの影響を受けたらしい。
「それもそうね。また、続きをしましょう」
「はいっ」
 ゆっくりと身を起こしたエザリアが、秘所からディルドーを抜き出す。にゅぷ、と淫らな音を立てて二人の股間から抜き出されたそれは、白く濁った愛液にまみれていたが、片方にはほんの少しだけ赤が混ざっていた。
「今日は疲れたでしょう。部屋を用意させるから、泊まっていきなさい」
 告げた声は、もういつもの物に戻っていた。
「じゃあお言葉に甘えて…」
 ルナマリアが蹌踉と出て行った後、エザリアはイザークの手を取って引き寄せた。
「お尻も良いけど、やっぱり膣(なか)出ししてもらわないと、ね。後四回はいけるでしょう」
 エザリアが、毅然と淫乱が同居したようなこの表情になったらもう止まらない。
 抗うだけ無駄だし――
「さ、来て?」
 妖しく濡れており、しかも充血してぷっくりと膨らんだ秘所をくぱっと左右に開かれては、母以外に女を知らぬイザークにとって、抗えぬ誘惑であった。出したばかりだというのに、イザークのペニスは早くも回復の兆しを見せていた。責める気はないが、ルナマリアと繋がって腰を振る姿を見て、少し妬心に近い気持ちを抱いた事もあり――初めて母の尻に挿れられたから割には合ったが――イザークは勢いよく母に飛びついた。
 
 翌朝、まだ昨夜の事が信じられないような面持ちで、何となく顔を合わせづらいイザークとルナマリアが朝食を摂っているところへ、エザリアが姿を見せた。二人はガウン姿だったが、エザリアは既に議員服に着替えている。
「『お、おはようございます…』」
 エザリアの乳房の感触を思いだしたルナマリアは無論、結局抜かぬままに五度、母の中に出してしまったイザークも顔を赤らめたが、
「おはよう」
 エザリアの声に、昨夜の余韻は微塵もなかった。
「ハマーンから、異世界人なる者の報告は受けました。イザーク、あなたが傷を癒されて戻された事も」
「は、はい…」
「たった一機でG四機に加え、ジン数十機までも寄せ付けぬとは正直信じがたい部分もありますが、事実は受け入れなければなりません。ルナマリア」
「は、はいっ」
「何を考えているのか、少々分からない所もありますが、やはり一番当てになるのはハマーンです。おそらく、あなた達はハマーンに付けられる事でしょう。彼女のシグーを、強化した上であなたに回します。何としても一度捕らえたい、とハマーンは言っていました。生かせば禍根になるのに討とうとせず、しかも傷まで癒して帰すような者が何者なのか、私も興味はあります。イザークを補佐して、その者を捕らえる事に全力を尽くすように」
「りょ、了解しました」
「二人とも、敵前で痴話喧嘩などという醜態は二度と許しませんよ」
「『は…はいっ』」
 ガタッと慌てて二人が立ち上がる。エザリアが表情を変えぬままイザークに近づき、
「でも、あなたが無事で良かった。その顔に傷でも付いたら母はどうしようかと」
「母上…」
 その頬に軽く口づけしてから、
「次はお尻を開発してあげる。今度は女同士、水入らずで愉しみましょう」
 耳元で囁かれ、かーっと赤くなったルナマリアの髪を優しく撫でたエザリアが、身を翻して出て行く。
 もう、いいように弄ばれた感じの二人が、糸の切れたマリオネットみたいにぺたんと座り込んだが、昨晩二人がここへ来る前から、
「エザリア様はいつもよりご機嫌みたいね」
 と、メイド達が囁き合っていた事を二人は知らなかった。
 スタイルが良くて巨乳の持ち主で、しかも床上手なエザリアだが、女である前にイザークの母親なのだ。息子と寝る時、余人を交えた事など一度もないエザリアが他人を、それも生娘など入れる気になったのは、何はともあれ息子が無事に戻ってきた事で、ひっそりとご機嫌になっていた為だ。
 ただこの艶母は、感情を全面的に出す事はほとんど無いので――ベッドの中を除く――その機嫌の位置を知るのは難しい。イザークでさえも、完全には掴みきれないでいるのだ。
「き、昨日は…す、すごかったね…」
「あ、ああ…」
 申し合わせたかのように、二人の顔がすうっと赤くなる。
「でも、イザークが羨ましいな」
「俺が?」
「単に溺愛されてるだけじゃなくて、軍人としての息子の事も考えてくれていて…。あんなお母さん、そうそういないわよ」
「そ、そんな事は分かってる。母上には、いつも本当に感謝している。俺がもっとしっかりして、母上を安心させなければならないと思っている。本当だぞ!」
「ふうん…」
 イザークの顔をまじまじと眺めたルナマリアが、
「それは分かったけど、じゃあ安心させたらどうなるの」
「何?」
「イザークはもう大人だから、母が付いている必要は無いでしょう。今度母は再婚する事にしましたって言われたら?」
「そ、そんなやつは俺がこの手で射殺…あ…き、貴様俺を釣ったなっ」
「やっぱりマザコン。それも重度ね」
「お前こそ母上と繋がってあんなに喘いでいたくせに。本当に処女だったのか?」
「な、何ですってっ!」
「何だ!」
 性懲りもなく、またぞろ口論を始めた二人だが、宇宙の時に比べて殺伐の度合いは三割位に落ちていた。
 どうやら、美母との3Pが功を奏したらしかった。
 
 
 
 
 
(第四十三話 了)

TOP><NEXT