妖華−女神館の住人達外伝
 
 
 
ドクトルシビウの闇カルテ:ツェザーレ
 
 
 
第六話:失敬≠徴収
 
 
 
 
 
「時空転移か何かは知らないが…普通は大ショックで起きる筈だが」
 キラとステラの寝顔を見ながら、シンジは呟いた。状況は何となく分かったが、理由が分からない。
 ここがどういう世界にしても、自分がこんな所へ飛ばされる原因がさっぱり不明なのだ。異国の地で、フェンリルの背に乗って降魔を片づけていた最中、と言うのなら納得も行くのだが。
 勿論、こんな所に長居する気はないし、とっとと元の世界へ帰りたいのは言うまでもない。
 ただ、最低でも原因と思しき事由が判明するまでは、帰ろうにも手だての見当すら付かない。
 困ったモンだ、と――まるで他人事みたいにシンジが呟いた時、
「トリィ!」
「ん?」
 キラの服の内側から、ひょっこりと小鳥が顔を出した。緑色の小鳥がバサバサと飛び立ち、ストライクの周辺を一周してから戻ってきた。
「……」
 シンジが手を出すと、小鳥はその手にとまった。
「ブラの中で保湿の役目でもしていたか?」
 普通の鳥にしてはかなり頑丈だと、下から見上げたシンジが、数度眼を瞬かせる。
「うん?」
 ふと感じた違和感に、鳥の体をぺたぺた触る。
「機械人形と来た。コーディネーターは随分と器用なものを作るのだな」
 感心して呟いたその眼に、起きあがったマリューが映った。
 
 
 
「かっこいいよな、この機体。でも何でこれ灰色なんだよ」
「電源が切れたんだろ。ほら、なんとか装甲って言ってただろ。えーと、なんだったかな」
 ミリアリアはマリューについており、カズイとトールが、内部を楽しそうにいじりまわしている。
 無論、バッテリーが切れているので動きはしないが、この手のものに興味がある少年達に取っては、これ以上ない玩具だ。
「まったく…お前らあまり弄りまわ――」
 サイが言いかけた時、
「機体から離れなさい!」
「『え?』」
 二人が振り向いた所へ、いきなり銃弾が飛んできた。
 慌てて身を縮めるカズイとトール。
 無論、その光景はシンジからも見えている。
「銃は没収すべきだったかな?」
 やれやれと肩を竦めたところへ、キラとステラが跳ね起きた。
「シンジさ…!?」
 キラの眼に映ったのは、銃口を向けられている仲間達であった。
「止めて下さいっ」
 シンジが制止する間があればこそ、あっという間に走り出したキラが、マリューの前に立ちふさがった。
「失神している貴女を降ろしたのは、彼らなんですよっ」
 それを見ながら、
「ステラ・ルーシェ、どう見る」
「どうって?」
「マリューの姉御が銃口下ろすと思うか?」
「小娘一人の制止で下ろすなら、最初から向けないでしょ」
「思考が合いそうだ」
 ふむっと笑った二人の読み通り、マリューは銃口をキラに向けた。
「助けてもらった事は感謝するわ。でもあれは軍の重要機密、子供が弄っていい玩具じゃないのよ」
(どうするのかしら)
 ちらっと上を見上げたが、シンジは動く気配がない。黒髪を風に揺らせたまま、黙って見つめている。
(男の人なのに…随分綺麗な髪してるのね)
 不意にシンジがステラを見た。慌てて視線を逸らそうとしたが間に合わず、二人の視線が絡み合う。
「どうした?」
「いっ、いえ別にっ…」
「この格好は珍しいかな」
「いえそういう意味では」
「そう」
 それ以上は訊かず、シンジはアブナイ軍人に視線を戻した。
 確かに重要機密ではあろうが、このストライクが工場内にあるところへ、ガキンチョ共が忍び込んで触っているわけではない。
 ガキンチョ共がぞろぞろとやってきて、
「なんだよ、さっき操縦してたのはキラじゃんか」
 トールが当然のツッコミを入れた途端、銃口がその顔をポイントし、慌てて両手を上げた。
「皆、こっちへ」
 銃口の先で方向を示し、羊追いみたいにガキンチョ共を並ばせる。
「一人ずつなま――!?」
 名前を言わせるつもりだったのだろうが、最後まで言う事は出来なかった。強烈な衝撃が手首を襲い、銃が手から落ちたのだ。
 全員の視線が一斉にある方向を向く。そこには、ステラの頭を膝に載せたまま、こちらへ向けて手の平を開いているシンジの姿があった。
「声は同じでも、中身は随分と違うと見える。前後を省みぬ上に忘恩の徒と来たか」
 冷ややかに言ったシンジが、ゆっくりと立ち上がった。ステラの頭を軽く撫でて横たえたが、慌ててステラも起きあがる。
(い…今の何!?)
 ステラはキラ達と違い、シンジの力は知らないのだ。
「ろくに操縦する事も出来ず、民間人に助けてもらった上、重要機密だから触るなと銃を向けるとは、この世界の軍人はよほど低能が揃っていると見える。無抵抗の相手に銃を向けるなと教わらなかったか、マリュー・ラミアス?」
 一転して、その口調はひどく穏やかであった。
 だが次の瞬間、マリューの身体は後ろに十メートル近くも吹っ飛ばされていた。機体へ背中から激突し、呻き声をあげる事も出来ないマリューの前に、死の翼を帯びた五精使いが立ち塞がった。
「同じ声でも、姉貴とは雲泥の差がある。戻った折、生かしておいたと告げれば赫怒されるのは明白。次はもう少しまともな軍人に生まれてくるがいい」
 人差し指がマリューに向けられる。火か水か風か、いずれにしても一瞬で幽冥境を異にするのは間違いあるまい。
 しかしその指が、一撃を繰り出す事は遂になかった。
「碇シンジさん、待って」
 背後からの声はステラの物であった。
「ステラ・ルーシェ?」
「ここでラミアス大尉を殺しても意味はないでしょう。それに、その後どうするんですか」
「どうする?」
「あなたはいいけど、彼らは無力な民間人です。少なくとも、どこかへ送り届ける必要があるし、それには軍の力が必要だと思います」
「…ちょっと待て」
「はい?」
「それ以前に、このガキンチョ共は銃を向けられていた訳だが」
「そ、それは…」
「そういうのを偏向って言うんだ。さては軍人だな?」
「べ、別に私は…」
「まあいい」
 くるりと振り向いたシンジが、
「ガーゴイル」
「は、はい」
「お前はコーディネーターか?」
「いえ、違います」
「じゃ、ナチュラルだな。ヤマトはコーディネーターという事だが、なぜナチュラルとコーディネーターが一緒にいる?」
「そ、それは…」
 ちらっとマリューを見て、
「ここはヘリオポリス、オーブ連合首長国の所属なんです。オーブは中立で、ナチュラルもコーディネーターも受け入れますから」
「つまり中立の筈のそこで地球連合軍が、ガシガシと兵器を製造していて、しかもザフトがそれを奪取しに来たせいで、お前達は巻き込まれた訳だな」
「え、ええ…」
「どう聞いてもやっぱり死刑だ」
 一転して強硬派になったシンジに、もうマリューは生きた心地もしなくなっている。どう見ても余命は一日もなさそうに見えたが、
「あの、シンジさん…」
 キラが遠慮がちにシンジを呼んだ。
「どうした?」
「その…確かにさっきはシンジさんに助けてもらって私が操縦出来ましたけど…でも、最初にマリューさんに乗せてもらわなかったら、それも出来なかったから…もう、許してあげて下さい」
「……」
 シンジにじっと見つめられ、キラが視線を逸らす。シンジが、つかつかとキラの前に歩み寄り、仲間達が一瞬身構えたが、何かを抗えるわけでもない。
 ぽむ、と軽くキラの肩を叩いたシンジが、
「ヤマトは優しい娘だな。それが――いずれ致命傷にならなければいいがな」
 無論シンジとて、何か論拠があった訳でも、ヴィジョンが見えたわけでもない。ただそう思ったから口にしただけだが、それが現実になるとは、キラは勿論口にしたシンジの方も分かってはいない。
「ヤマトがそうまで言うのなら、消失させるのは止めておこう」
 シンジの言葉に、マリューはほっと安堵の息をついた。
「しかし、事情通がいるのなら今は邪魔だ。ネンネしていてもらうとしよう」
「へ?」
 次の瞬間、一斉に伸びてきた蔓がマリューの足に絡みつき、あっという間に逆さ吊りにされてしまった。しかも、そこへ落ちてきた太い枝が頭部を直撃し、マリューは声もなく昏倒した。
「さて、お前達は作戦タイムだ」
 手招きして呼び寄せられたガキンチョ共が、シンジを中心にして輪を作る。
「とりあえず状況から把握しておこう。既に知っているとは思うが、私は碇シンジ、この世界の住人ではない。ナチュラルもコーディネーターも、モビルスーツも存在しない世界の人間だが、気が付いたら工場の中にいた。現況の概略はヤマトに聞いたが、ヤマトは軍関係者ではないからな。ステラ・ルーシェ」
「はい?」
「さっきの連中は、工場で作っていたネコ耳…いやガンダムの奪取に来たと言う事だが、こちらには一機残っている。また襲来すると思うか」
「必ず来ます」
 断言したステラが頷いた。
「分かった。ところで、ステラ・ルーシェの乗っていたえーと…」
「ZGMF-X88S、ガイアガンダムです」
「そのガイアと言うのは、奪取対象になっていなかったのか?」
「あれは元々ザフトで建造予定だった機体です。ですが、建造直前になって資料一式がオーブの手に渡りました。ただ、建造直後にオーブでも資料を消失してしまった為、追加建造は不可能ですが」
「知らなかった、と言う事か」
「ええ。オーブでも完全に機密事項です」
「ガーゴイルにも訊いたが、オーブと言うのは地球連合側ではないな?」
「ええ、中立です」
「…その中立国の出島で、地球軍のモビルスーツを造っていた、と?」
「ええ、それは…」
「まあいい。政治様相はどうでもいい事だ。そうすると、敵がもう一回来る前に、さっさとどこかに避難するのがベストだが…」
「だが?」
「ストライクは放置するとしても、ガイアはそうも行くまい。政治的背景も何やらありそうだし、放置も出来ないからな。いい案がある者はいるか?」
 見回したが、即座に案が浮かぶ筈もない。
 静まりかえった中で、やはり手を挙げたのはステラであった。
「今、このモルゲンレーテでは、新型の宇宙戦闘艦を建造中です。そこと交信を試みるのが一番かと思いますが」
「ふむ。しかし、ヤマトやガーゴイル達は、軍を好んではいないようだ。戦争になど関わりたくないからここにいるようだが?」
 サイ達が、一斉にこくこくと頷く。
「分かっています。ですが、おそらくもうシェルターへの避難は無理です。さっきの戦闘で、警戒レベルは最高度に上がっているはずです。そうなればもう、避難する先は残されていません。座して死を待つよりは…」
「分かった、それで行こう。ガイアとストライク、それぞれの電源はあるのか?」
「トレーラーに搭載してあります。誰か運転出来る人は」
「一応…出来ると思うけど」
 名乗りを上げたのはサイであった。
「では、ガーゴイルはステラ・ルーシェの指示に従って電源の搭載を。ケーニヒは恋人の保護だ。ウロウロして怪我などさせるなよ」
「了解」
「あの、自分は?」
「亀頭は、あそこの工場に侵入してこい」
「モルゲンレーテへ?」
「作業すると喉も渇くしお腹も空く。今は無人だから、食料を徴収してくるんだ。いいな、失敬じゃなくて徴収だぞ」
「わ、分かりました」
「さてヤマト」
 シンジはキラに向き直った。
「聞いた通りだが、どうする?気乗りがしなければ、ステラ・ルーシェの機体だけ保護しても構わん。私もヤマトも関係者ではないし、ましてヤマトは戦争など関わりたくないのだろう?」
「シンジさんは…どうされるんですか?」
「お前達、六人の避難が最優先だ。異世界で出会った民間人を、たかが六人程度もみすみす死なせたとあっては、戻ったらフェンリルに何を言われるかわかったものではないからな」
 民間人程度も守れなかったんですか?と、そう言って自分の株を暴落させそうな心当たりはあるのだが、ふと浮かんだ奇妙なヘアスタイルを、シンジは頭を振って追い払った。
「で、でもシンジさんも行く当てがある訳じゃないんでしょう?」
「さっき来たばかりだと言ったろう?世界構成すら分かっていない所さ」
「じゃ、じゃあ一緒に乗って下さい!」
「一緒に?」
「好き嫌いよりも前に、私はまだ初めてだし、上手く行く自信はないけれど…でもシンジさんが一緒に来てくれるならきっと出来ます。さっきもそうだったでしょう」
「……」
 シンジにしてみれば実感はないし、正直キラの勘違いのような気もしている。ただ、実際に操縦桿を握っていたのはキラだし、そのキラがここまで言い切るのを、打ち消す根拠を持っていないのもまた事実だ。
「分かった」
 シンジは軽く頷いた。
「自信はないが、ヤマトがそこまで言うのなら多少の力にはなるのだろう。同乗させてもらうとするよ」
「はいっ!」
 何故か嬉しそうに頷いたキラに、シンジは内心で首を傾げた。
(嬉しがる事でもないと思うが…俺が触れてそんなに威力が変わったのか?)
「ステラ・ルーシェ」
「はい?」
「さっきの連中がまた来るようだと、武装もあった方がいい。何かあるか」
「ストライク用の装備は、トレーラーに搭載されています」
「何とかなりそうだな」
 十分後、慣れない素人達が苦労しながらも、ステラの指示の元、両機に電源を積み込んだ。とりあえず、逃げる事までは出来るようになった。
 オーブ所有のガイアは、森の中に隠してある。事情はよく分からないが、地球軍に味方するのはまずかろうと、ステラに移動させたのだ。
 その一方で、アークエンジェルと通信を試みるも、こちらは全く繋がる気配がない。
「この辺で休憩にしよう。皆、よくやってくれた」
 カズイの方は、カサカサと建物内に侵入して食料確保に成功してきた。
「とりあえず安全は確保出来た事だし、無事に生きてた事を祝って」
「『乾杯』」
 チン、と缶ジュースを触れ合わせる。
「ところでガーゴイル」
「はい?」
「出ている避難命令は、一回出ると一日位解除されないのか?」
「いえ、そんな事は無いはずですけど…」
「けど?」
「今まで、戦闘で避難命令が出た事はありませんでしたから」
「そうか。ご両親はここに?」
「ええ…」
「無事だと良いな。そういえば…」
 ふとシンジは、ステラの言葉を思いだした。どこかへ送り届ける、とステラは言っていたが、警報が解除されれば無用の筈だ。
「奪取が目的、とさっき言ったでしょう。連中がまた戻ってくれば戦闘になるし、解除されるのは難しいと思いましたから」
 ステラに訊こうとした時、先にステラが口を開いた。
「考え読んだ?」
 ステラはくすっと笑った。さっき、ジンをいとも簡単に蹴散らした少女とは思えない、あどけない笑みであった。
「なんとなく、です。それよりも、さっきの変わった力は?」
「力?ああ、精(ジン)の事か。見た事無いのか?」
「生まれてから一度も」
「コーディネーターなら使えても良さそうな気もするが、世界構成が違うのだな」
「もう一回やってみてくれませんか?」
「は?」
「見たいんです。駄目ですか?」
「手品じゃないし、別に見ても楽しいとは思えんが…どうしても?」
「はい」
 ステラは即座に頷いた。結構はっきりした娘らしい。
「とは言っても破壊して良さそうな物が…」
 周囲を見回したシンジの眼に、さっきステラが撃退したジンの破片が映った。これならば、文句は来るまい。
「大した威力はないから、過剰な期待はしないように」
 立ち上がったシンジが腕に向けて、ゆっくりと手の平を開く。足を軽く八双に開き、大地と接する地面に意識を集中させる。
(大地の精は使える。精の流れを集めて…)
 十秒、二十秒と経ち、やがてシンジの全身を青白い光が包んだが、精を認識出来ない彼らには分からない。
「劫火!」
 放たれた火が、みるみる内に凄まじい火球となって、ジンの腕に激突する。思わず目を閉じた少年達が、もう一度目を開けた時、そこにあった機体の破片は、跡形もなくなっていた。
「『あっ!』」
 思わず声が上がったが、びっくりしているのは当人も同じである。ここまで出来るとは思わなかったのだ。
「偶然にしては大したもんだ」
「偶然って…すごいじゃないですか!ジンまで消滅させるなんて!」
「しかしガーゴイル、あれは破片だし、いつでも効果保証出来る訳じゃないさ。それに、普段は旅行中に使うもんだ」
「旅行中?」
「砂漠で湯を湧かして温泉に入ったりとか、水がない時に飲料代わりにしたりとか。基本的には生活用だよ」
「便利なんですねえ」
「かなり便利だ」
 うむ、と頷いたシンジに、
「碇シンジさん」
「うん?」
「そろそろ用意された方が。時間的にも、来襲する頃です」
「分かった。ヤマト、いい?」
「はい」
 ストライクのところへてくてく歩いていったキラが、上を見上げている。
「どうした?」
「あ、いえあの…」
「?」
 一瞬宙を見上げてから、気が付いた。
「私も乗るのだったな。さ、行くか」
 キラをひょいと抱き上げた。
「あ、あぅ…」
「ああ、紐伝いの方が良かったか。今おろすから」
 下ろそうとした途端、シンジの首に腕が巻き付いた。見ると、ふるふると首を振っているキラがいる。
「いいのか?」
 黙って、こくんと頷いた。
「しっかり掴まって…そうだ」
 地を蹴ろうとしたその足が止まる。
「ステラ・ルーシェ」
 振り向いてステラを呼んだ。
「はい?」
「あれ、下ろして意識戻しておいて」
「ラミアス大尉ですね」
「ん」
「分かりました。それと、私の事はステラで構いませんから」
「そう?じゃ、ステラ頼ん…痛!?」
 抓られたような気がした――気のせいかも知れない。
「何かした?」
「いいえ!」
「じゃ、気のせいだな」
 キラを抱えたまま飛翔し、もう一度ストライクに乗り込む。
「武器を装備したと聞いた。使える物である事を期待しよう。ヤマト、起動は任せた」
「はい」
 シンジに抱きかかえられていた間に、心境の変化があったかどうかは定かでない。
「シンジさん、ストライク起動します」
「ん」
 フェイズシフトのボタンに手を掛けたその時、不意に上空で爆発音が鳴り響いた。
「『ん?』」
 見上げると、空中の建物が爆発し、その中から灰色の機体が飛び出してきた。
「来たか」
 シンジが呟いた直後、オレンジ色の飛行物体が後を追うように姿を見せた。
「護衛付きか。ご丁寧な事だな」
「あの、シンジさん」
「あ?」
「あれはその、護衛ではないかと…」
「違うのか?」
「多分…」
 キラが頷くのと、敵機の目らしき物がこちらを見るのとが同時であった。
「俺には護衛に見え…いかん!」
「シンジさん?」
「ヤマト、外部へのスピーカーは?」
「こ、これです」
 反射的にシンジの指がボタンに伸びた。
「ガーゴイル、他のガキンチョ共をトレーラーの下へ、急げ!」
「え…は、はいっ」
 一瞬遅れたが、それでも何とかトレーラーの下へ潜り込もうとしたそこへ敵機が飛来し、凄まじい爆風が辺りを覆った。
 
 
 
 
 
(第六話 了)

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