イッショウケンメイ。 No.025 長月たならーもさん ------------------------------------------------------------------ ダイナモとエイリア。 一見、まるで噛み合わない二人だが、ミッション時には見事な連携で、多くの成果をあげていた。 ゼロの読み通り、二人の相性がこの上ない程良いというのは、それらの証明する所となった。 エイリアが指令室から適切な指示をとばし、現場のダイナモは確実にミッションをこなす。いつしか彼等はお互いにパートナーとして、ミッション時に完璧なコンビネーションを披露するようになっていた。 ダイナモがやはり最後には無茶をして、ベースに戻った時にエイリアからの雷を喰らうのも、日常茶飯事と言えるようになって久しい。 そんな時だった。ダイナモが、あるミッションにおいて大破するに至ってしまったのは。 ****** 「………エイリア?入るよ?」 自室の扉をノックする音と、その声に、エイリアは少し顔をあげた。 生活必需品以外は何も置いていない殺風景な部屋の中に、目の端がとらえたのは青い影。 「あら、エックス。どうしたの?持ち場を離れちゃダメでしょ。」 「今は非番だよ。」 「…ならいいけれど…。」 そう言って、再びエイリアは手元のキーボードをたたき始めた。そんな彼女の背中を、エックスは黙って見つめる。 「どうしたの?何か用かしら?」 エックスが背後から一向に動かない気配を察し、エイリアは作業を進めながら問いかけた。 「できるなら後にしてくれない?今ちょっと事後処理で忙しいのよ…。」 「…ダイナモのこと、気にならないの?」 しばらくの沈黙の後、いきなりのエックスの言葉に、エイリアは思わず手を止めた。 そして小さく溜息をついて、作業を再開させる。 今、彼女がしている事後処理というのは、紛れもなく先程のミッションのもの。ダイナモはミッション自体は無事に片付けたのだが、最後の最後、何故か現場からの脱出に失敗した。そして、イレギュラーの爆発に巻き込まれ、ボディの半分を失ってしまったのだ。 「ライフセーバーに聞いたわ。命に別状はないんでしょ?」 「…うん。あの状況では、奇跡だ、って。」 「まったく、本当に悪運が強いんだから。」 作業のきりが良かったのか、エイリアはエックスの方に向き直った。 「…まあ、自業自得よ。これでちょっとは懲りるんじゃなくて?」 「…そりゃあ、そうだけどさ…。いいの?側にいてあげないで。」 淡白な科白に、エックスはやや戸惑いながら返した。もう一度、エイリアの動きが止まる。 「…エックス?」 「ダイナモはさ、エイリアのパートナーなんだよ?…相棒、なんだよ…?」 俯いたまま、エックスは続ける。 ゼロという大切なパートナーを幾度か失いかけたエックスだからこそ、こういう事態の心境は手にとるようにわかるのかもしれない。 或いは、彼は、気付いたのだろうか。先程から、エイリアが頻繁にタイプミスを起こしていることに。普段の彼女からは考えられないような、単純なミスを。 自分では意識していないのかもしれない。でも、自分がダイナモの事を心の何処かで気にかけているのは、紛れもない事実で。 「行ってあげなよ、エイリア。こういう時はね、お互い、側にいるのが一番安心できるんだよ。誰よりも心を許せる人が側にいるのって、本当に心強いんだよ?」 「…エックス、あなた………。」 エイリアだって不安なんだろうと付け加え、エックスは処理は自分がやるからと、エイリアを部屋から連れ出した。 彼の言う事全てが的を射ており、言い返す言葉も見つからないエイリアは、素直にダイナモの元へと向かう事にした。 暗い廊下を急ぐと心無しか目頭が熱くなる、そんな気がした。 |