「疑問」




エイリアは一人の少年型レプリロイドと報告書をまとめていた。その時、少年がぼそりと呟く。
「・・・本気なのか?」
少年はエイリアに話し掛けた。
「どうしたのニート。」
ニートと呼ばれた少年は、エイリアに冷ややかな視線を向ける。
「あんた、敵・・・ダイナモを本部に入れたらしいな。そんなにあの男が気になるか?」
「・・・・。」
黙り込み、ニートの視線を逸らすエイリア。
「あいつは俺達を殺そうとしたんだぞ?地球を滅ぼそうとしたんだぞ?あいつが本部に居座るようになったせいで、ハンター達は面倒なイザコザを起こしているんだ。」
キッとニートを睨みつけ、エイリアは叫んだ。
「あなた、さっきから何よ!?そんな事ばかり言って何様のつもりなの!?」
驚きの表情を浮かべながらニートは続けた。
「あんた・・・あいつと付き合っていいことなんてあったのか?幸せになれたのか?あんたも・・・あいつも。」
「えっ・・・?」
ニートの言葉にエイリアは思わず声を詰まらせた。
彼は正式なハンターとして受け入れられず、いつも内部のハンター達に悪口を言われ、非難された。
彼の事を理解してくれる人はいたのだろうか?
そう言えばこんな事があった。
三日前、ダイナモが復旧作業現場にいた時の事だった。
ガンッ!
ダイナモの頭部に金属片がぶつかり、彼は頭部から血を流した。犯人は仲間のハンターだった。
「お前のせいだぞ!お前さえいなければ、俺の仲間が死なずに済んだんだ!!どうしてくれるんだよ!!」
ハンターはダイナモにそう叫んだ。彼が言った仲間は、ダイナモがハンターベースを襲撃した時、それに巻き込まれて死んだという。
しかし、ダイナモは何も言わず無抵抗でその場に立ち尽くしていた。
「なんで何も言わないんだよ!!」
叫び続けるハンター。その時、もう一人のハンターが彼にこう言った。
「あいつ、抵抗できない身分なんだぜ。もし俺らに逆らったらすぐ処分されっからな・・・・おいみんな、この際だ。やっちまおうぜ!」
もう一人のハンターの呼びかけに応え周囲のハンター達が彼に群がった。
「貴様のせいだぞ!!」
「悪魔の手先め!!」
ハンター達のリンチを喰らったにも関わらず、ダイナモは全く手を出す事は無かった。この後、エックスやアルファのお陰ですぐに静まったが、ダイナモは完治するのにかなりの時間を要した。
(・・・本当に彼はあれでよかったのかしら?)
沈痛な面持ちで考え込むエイリア。ニートは席を離れる。
「あいつは俺たちの敵だったんだ。それを忘れるな。」
そう言って司令部を後にした。

一方ダイナモはエイリアの部屋で出撃の準備をしていた。そこにエイリアが入って来る。
「ダイナモ・・・どこへ行くの?」
エイリアの声に気づいたダイナモが、彼女の方に振り向く。
「任務だとさ。これから現場に向かうとこ。」
いつもの笑顔で応えるダイナモ。暫く黙っていたが、再び口を開いた。
「・・・本当に良かったのか?」
「・・・え?」
ダイナモの言っている事が分からず、エイリアは戸惑った。ダイナモは言葉を続ける。
「本当に俺はここにいて良かったのかって聞いているんだ。」
エイリアは笑いながら応えた。
「何を言ってるの?よかったに決まっているじゃない・・・。」
「でも・・・そのお陰で君は傷ついている・・・知っているんだ。君が周囲から外されているのを。」
「・・・・・!」
エイリアは言葉を失った。敵であるダイナモを庇った彼女を、本部内の仲間は目の敵にしていた。しかし、エイリアはダイナモにそんな素振りを見せる事は無かった。ダイナモも、そんな彼女を気遣い知らない振りをしていた。ダイナモが再び話し出す。
「俺・・・もしかしたら君を傷つけているのかもしれないな。ただ好きだって言ってるだけで、何もしてあげられない・・・いっそ俺はいなくなった方が・・・。」
そう言って、部屋の出口に向かった。
「ダイナモ!・・・」
待ってと言おうとしたエイリアを遮るようにダイナモはちらりと彼女のを見る。
「俺、任務があるから。」
そう言って部屋を後にした。一人取り残されたエイリアはその場で座り込み、泣き出した。
「どうして・・・?どうしてなの・・・・?」


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