真実(ほんとう)の心
No.014 栗留さん
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「悲劇の始まり」




ダイナモがハンター本部に居座るようになってから2週間が過ぎた・・・。
「ダイナモー!」
ダイナモの後姿を見たエイリアは、彼の後を追う。
「ん?どうしたエイリア?」
エイリアの声に気づいたダイナモが嬉しそうに振り向いた。
「あのね・・・パイ焼いたんだけど、食べてくれる?今回は上手くいったのよ。」
そう言ってエイリアはピンクのリボンでラッピングされた包みをダイナモに差し出した。
「え!?マジ?」
ダイナモはエイリアから包みを受け取り、中身を開けた。中にはこんがり焼けたブルーベリーパイが入っている。ダイナモは早速それを口にした。
「・・・どう?」
心配そうにエイリアはダイナモを見る。
「・・・大分上達してきたな。美味いぜコレ!」
「本当!?よかった・・・。」
エイリアは安心してダイナモを見た。その時、数人のハンターが2人の前を通過した。
「あいつか?コロニー衝突事件に関わってた奴って。」
「こんな奴を置いとくなんて、ハンターも落ちたもんだな。」
「もしかしたらスパイかもしれないぜ・・・。」
そんな会話を聞いたエイリアは彼等に何かを言おうとしたが、ダイナモに肩を掴まれた。
「エイリア、気にすんな。」
穏かな声でダイナモはエイリアに言う。
「でも・・・あなたの悪口を聞くなんて、耐えられない・・・。」
「いいって。慣れてるからさ。」
ダイナモが首を横に振り、エイリアをなだめた。

その日の午後、ダイナモはエイリアの部屋でアルファとカードゲームで遊んでいた。
「ほい、俺の勝ち。」
「もう一回勝負して!」
「え〜?何回やっても同じだぜ?」
「そんな事ないー!!」
そんな彼等のやり取りを見ながらエイリアは笑った。
「どうぞ。」
エイリアは2人に紅茶を差し出す。アルファはお礼を言って、紅茶を口にした。しばらくしてエイリアがアルファに話し掛けた。
「・・・ありがとう。」
「へ?何が?」
一体どうしたんだと思いながらアルファはエイリアに返事をした。
「ダイナモの事・・・あなたはいつも仲間として接してくれて・・・よかった。あなたみたいな人がいてくれて・・・。」
紅茶を飲む手を止め、アルファは照れながら言った。
「まあ・・・過去は過去、今は今だし・・・それにエックスやケイン爺さんだって、ダイナモ受け入れたじゃない。」
「お前って可愛いよなあ〜。」
ニヤニヤしながらダイナモはアルファに言った。
「誉めたって何もでないよー。」
アルファも笑いながら答える。その時、誰かがドアをノックした。
「アルー。」
エックスの声を聞いたアルファは、すぐにドアに駆け寄り、ロックを解除した。
「エックス!どうしたの?」
「どうしたのじゃない!!休み時間とっくに過ぎているんだぞ!!」
むすっとした表情でエックスはアルファを叱りつけた。
「うそっ!?もうそんな時間?2人共またね!」
そう言ってアルファはエックスと一緒に部屋を出て行った。楽しそうに会話をする2人をエイリアは見送り、溜め息をついた。
(私もあんな風に堂々と付き合えたら・・・。)

翌日、ダイナモはハンター司令部に呼ばれた。
「副総監が俺に何の用だい?」
ダイナモを読んだ男は、ハンター副総監でシグナスの側近、バッファーだった。バッファーは腕を組みながら話し始める。
「今日君を呼んだのはある任務を与える為だ。これから、ポイントM3670に赴きそこに潜むイレギュラーを処分してもらいたい。」
「何故俺を?」
眉をひそめるダイナモ。
「君の実力は他のハンターと比べてもずば抜けている・・・あのエックスよりも。私は君の実力を買っている。今回のイレギュラーは生半可なハンターでは務まらない・・・だから君を任命した。」
「ふーん・・・ところでシグナスは?」
ダイナモはやる気の無さそうな声を出し、総監の名前を言った。
「総監は急用で今朝からいないのだよ。だから私が伝言する形になった訳だ。任務にはパートナーとして、リークをつける。頼んだぞ。」
「・・・・了解。」
バッファーは司令部を去るダイナモを見送り、含み笑いをする。
「フッ・・・貴様の命も今日で最後だ。」


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