数について
数の基本は、同じものを見つけ、それを集めることから始まります。また具体物を順番に並べる
こともきちんと数を数えるためには重要です。同じものを一つひとつ分けて納めることも数の基
本です。「1、2、3、・・・・・・10」と数を唱えるのは順序を表すだけで数そのものがわかったこと
になりません。また得意そうに数字を読む子どもも数がわかるのではなく、リンゴやみかんとい
う単語の名前を知っているのと同じです。
一般的には、「ひとつ、ふたつ、みっつ、・・・・・・とお」は順序数より数そのものを表しています。
「ふたつちょうだい」と言います。英語でワン、ツウ、スリーは物の数を表します。順序はファー
スト、セカンド、サードで1番目、2番目と表現が変わります。言葉では違いますが、表記すると
きはアラビア数字の「1、2、3・・・」はどちらにも使います。順序を表すし数そのものを表します。
また数える場合、物によって呼び方が変わります。塊を数えるには「個」、薄い紙のような物、
「枚」、長い棒状のようなものを数える時は「本」、動物は「匹」、車は「台」と物によって言い方が
変わるのが日本語です。英語に比べずいぶん複雑です。数字につけるだけならまだ簡単です。
「1個、2個、3個・・・」と簡単ですが、「本」「匹」の場合は、数字によって言い方が、「ほん、
ぼん、ぽん」「ひき、びき、ぴき」と変わってしまいます。数そのものだけでなく、言葉としてもやや
こしく、小さい子供や障害のある子にとっては、混乱してしまいます。自然に覚えることは大変な
苦労をすることになります。闇雲にやるより順序立てて教えることが大切でしょう。聾学校では
数を数える基本として、「ひとつ、ふたつ、・・・ 」の数え方は後回しにして、「いち、に、さん、
・・・・・・・・」と数字の数え方を最初に教えます。
この時、指を出してまず言葉の代わりとして使っています。また手話特有の数の表現の仕方が
あります。親指を1本立てて、「5」、人差し指の先を曲げて「10」を表現します。言葉としてはい
いですが、数を理解するには、普通の数え方が良いでしょう。関西では数を数える時は、節を
つけて数えます。
「いち、にー、さん、しー、ごお、ろく、・・・・・」と子どもにとっては、歌を覚えるようで楽しいことと
思います。わかりませんが、関西の子供の方が数に興味をもつことが早いのでないかと思い
ます。おしゃべり好きが多いのも関西特有の環境の影響が大きいのでしょう。
C図形について
同じものを見つける力や違うものと理解できる力は、図形の認知力に関係します。服とズボンの
違い、前と後ろ、上と下、左右等衣服の着脱を毎日するだけで形を把握する力が伸びてきます。
はじめは脱いだり着たりするだけであった子どももたたんで片づけるようになるとさらに形を意
識しないときれいに片づけられません。端をそろえることで服やズボンが対称形であることを知
ります。毎日の衣服の着脱は図形認知力を高める時間となります。これを母親が全部手伝って
しまうとその機会を奪うことになります。しつけの面や目と手を連携させて動かせる器用さだけで
なく、知的な発達を促すものであると認識しましょう。
遊びの中で、折り紙は図形認知力を高めます。四角い紙も折り方で形が変わります。角と角を
合わせて折ることもはじめのうちは難しいです。白いところが見えたら重なっていないことを知り
ます。同じように折ろうと思っても初めはなかなか同じようには折れません。経験を積むとこうし
たらこうなると予測して折れますので、理解する力は早くなります。折り方の順番を覚えるように
なると、図形認知力を高め、図形の合同や相似の理解につながっていきます。また手先の器用
さをつけ大脳の発達を促し、、子供のイメージ力も高めて行きます。半分半分は分数の基本で
す。折ると同じ面積の同じ形がいくつも出来ることも知る機会となります。
折り紙の最初は、半分に折った三角を作って作る。チューリップや犬、猫が簡単で楽しいです。
また三角で葉っぱや体を作ってつなぐと子供たちは作りたくなります。
動物の場合は、子供たちは顔を描きぺープサートのように動かして遊びます。このように折り紙
の中には手先の器用さや算数の基礎、イメージ力を育てる要素がたくさん入っています。折り紙
は親子の会話を多くし、集中力と持続力をつけながら、子どもに作る喜びを感じさせる遊びです。
B時間について
時刻についての理解は数字が読め、時計の見方ができるようにならないとむずかしいです。
曜日と同じで子供の経験と関連づけて伝えます。「7時ですよ。起きるよ」「12時になったから
昼ご飯にしましょうね。」「3時ですよ。おやつにしましょうね。」「7時になったね。パパが帰ってく
るよ」こうして日頃から母親が話すことで時間に興味を持ち、自分でも言うようになります。時刻
は、時計の数字や短針と長針の形で理解していきます。いきなり何時何分といってもわかりませ
ん。はじめは大まかな時間を理解させましょう。デジタル時計よりアナログ時計の方が幼児に時
間の経過を理解させるのにはわかりやすいです。「長い針が6に来たら終わりだよ。」「短い針が
3に着たらおやつだよ。」というふうに伝えます。子どもが時間に興味を持ち、時計を見て行動し
たり、あそびをやめることを納得したりできるようになります。数字が難しければ、時計にマーク
やキャラクターのシールをはるのも方法です。
時間を理解させるためには、生活の中で規則正しく行動することが大切です。はじめは欲張ら
ないで、一つか二つぐらいにして様子を見ます。まずは子どもの理解力に合わせてします。出来
るようになってもしばらくは、子供が自信を持って行動でき十分楽しむまで次には行きません。
子供が自信を持ってやる時間は、次の課題がこなせる力を持つまでの充電期間です。この充電
期間が十分でないとすぐにあきらめたり、いやがるようになります。しっかり自分で判断して行動
できたことを誉めてやることが必要です。次々と食べ物を出して「早く食べろ」というより食べたら
次のものを出してあげるという姿勢があれば子供は落ち着いて課題をこなせるようになります。
Aカレンダー
明日、今日、昨日が理解できるには時間がかかります。聾学校では日めくりのカレンダーを使
って時間の経過を見せます。毎日カレンダをめくることで時の流れを感じさせ、次をめくることで
明日や明後日を表します。日めくりのカレンダーには、楽しみな遠足や自分の誕生日などめくっ
た時に今日の予定をわからせたり、あといくつで楽しいことがあるかを気がつくようにします。カ
レンダーに子供がわかるような簡単な絵やマークを描いて話をしてあげると、よく覚えてその日
を期待して待つようになります。聾学校では日めくり、出席ノート、横に長いカレンダーを使って
指導しています。 横長のカレンダーは予定も書いてあるので、新しくはる時は子供たちも楽し
みにして見ます。遠足に行くとかお誕生会があるとか、プールに入るとか、子供たちがわかる
簡単な絵を入れています。ひらがなが読めるようになると文字も書きます。カレンダーにお天
気も張らせると、今日がいつなのか日めくりと同時に見ることではっきりしてきます。1から31
までのカレンダーは数を覚えるのにはとてもいいものです。順番に並んだ数字を見慣れること
は、数字の覚えを早くします。幼児では数の概念は10までで、唱えるのはカレンダーの31位
読めればいいです。でも31まで読めるようになると100まで読める子どもが多いです。
カレンダーを毎日見る習慣は、数や言葉の獲得にとてもいいと思います。「5日(ごにち)には
遊びに行くよ。」(ついたち、ふつか・・・はまだ使いません。)という表現がわかるようになると、
時間の意識が高くなり、曜日や月、自分の歳等の数の意識が高くなってきます。ぜひ、子供た
ちとカレンダーを読んで、今日の予定や今度の計画について話してあげましょう。親子の楽し
い会話の一つになるはずです。
曜日の感覚は、楽しみなテレビの番組や毎曜日決まった楽しいことで覚えます。「水曜日には
ドラえもんがあるよ」「日曜日にはパパと遊びに行くよ」と言うふうに楽しいことと関連付けると
曜日の意識がついてきます。
@数え方
指を順番に出していきます。具体物と対応させて(指をあてるようにして)指を順番に出します。
数え終わった時がその数となります。数えたあとすぐに「いくつと?」尋ねます。具体物の数に
なることを知ります。これがわかるのに時間がかかります。初めのうちは「いくつ?」と聞かれ
ても思いついた数を言ってしまいます。また答えが正しいと言っても機械的に言っている段階
は数が本当にわかっているとはいえません。声だけでなく指でも表します。数の唱えがきちん
とできない間はしっかり指を出します。これがポイントです。日常の中で数を数える経験をたく
さんさせることが大切です。数えながら、指の分化もはかられます。3歳前後では「2」ができな
い場合があります。じゃんけんの「ちょき」がまだできません。手を添えてさせてみることも必要
です。日常的に「ちょき」をすることはないのですから、あわてることはありません。親子で数を
数える楽しさを感じることです。最初は3までです。次に5、そして10までと教えていきます。
「いくつが」わかるようになると、次は自分で数えて出すことが課題となります。「2つ、ちょうだ
い。」といってその数だけ出せるのか見ます。これができると本当に数がわかるようになりま
す。数がきちんと唱えられるようになると、一本指で具体物と対応させながら数えます。数は
数えられても具体物と対応させないと正しく数えられません。具体物に指をあてながら数える
ことが大切です。