2007 ソウル

近くて遠い国「韓国」  
国境を接する国同士の関係は、世界中どこへ行っても複雑で難しい。
きっと国境問題や歴史認識問題を抱えていない国なんてないだろう…。そしてそれらは、つまるところ経済問題だ。
交流とはすべからく経済である、と言ったら言い過ぎだろうか?

人間同士仲良くすることなんて簡単にも思えるが、それがそうでもないこともまた自明。こじれているご近所だって沢山あるのだから…。
「村社会の掟」や「暗黙の了解」に縛られず、隣人と仲良くするためには、適度な距離もまた必要なのかも知れない。「村社会の掟」にしろ「暗黙の了解」にしろそれらは「文化」に他ならない。そして「適度な距離」とは、意識的と言う意味において「哲学」でさえあるだろう。

他国との関係に、「暗黙の了解」や「自分流の掟」が通用しないのは当然だ。それが「文化」、だからこその「文化交流」なんだから。
どんなに近く、文化的・経済的に依存していようと…。嫌、だからこそ「客観性」が求められる。感情的対立は愚の骨頂だ。

経済問題に行きつくと言ったが、資本主義の原則は「儲かればいい」では無いはずだ。「経済」には「哲学」がなければならない。
そのことが軽んじられている現況は悩ましい。”哲学無き経済”なんて、”傍若無人の越後屋と悪代官を野放しにする”ようなもの、「ベニスの商人」でさえ顔をしかめるだろう。「遠山の金さん」も「水戸黄門」も現実には存在し得ない。我々の理想を目指す思考として、「哲学」として提示される以外ないだろう。
とりわけ日本では、「意識的」「意図的」であることは嫌われる。「あるがまま」それが日本文化の本流とさえ言えるのかも知れない。それが現世利益優先、「儲かれば良い」だけに価値観が歪曲化される大きな原因でもあるだろう。そこをどう乗り越えるか?

「文化交流」だって錦の御旗では無い。経済と無縁では無いのだから…。いや経済そのものである場合のが多いかもしれない。つまりは、「チンドン屋」
私はそのことを逆手にとり、極力”儲け”とは離れた”草の根交流”や現地との直接交流を大切にしてきた。プロのチンドン屋として…。
その実践こそ、つまり交流の矛盾を意識的に引き受けていくことは、世界を知ることであり「平和を希求する交流への模索」と信じて…。

と偉そうなことを言っても、今回は仕事と割り切っている。
学校などでのワークショップも無いし、現地の人と継続的な関係を作れるような機会も少ないだろう。チンドン屋として、いかに場を盛り上げられるか?
そのことの結果として、次に繋がることを念じるばかり。

ソウル公演の経緯
「日韓交流おまつり」は、2005年から始まった。実行委員会形式の文化交流事業であり、日韓両国政府が旗振り役となり、多くの経済人、文化的著名人が名を連ねている大きなイベントだ。今年はソウル市も後援に入り、観客動員数はなんと10万〜20万人と想定されている。
2005年にも参加を要請されたが、話を進めるうちに完全自弁の参加であることが判り、断らざる得なかった。貧乏人集団の我々に、そんなことは不可能だ。

今年は、日本側事務局に応援していただいている近畿日本ツーリストさんが入り、また我々の海外公演を見たことがある外務省関係の方もいらしたようで、U-Stage に白羽の矢がたったと聞いている。
出演が決まったのは早かったが、具体的な詰めは大変。船頭さんの多い大きな所帯では、こちらの思惑が理解されにくいのは、当然。
出演時間などが決まったのは、渡航直前。しかもステージでは最長10分と言うことで、太鼓などの搬送を急遽止め、チンドンのみを実演することになった。

機内預け荷物 成田出発ロビー ソウルにチンドン屋写真

レセプションパーティー (ロッテホテル3Fサファイアルーム)

15:00 コリアナホテル着。公演場所のソウル市庁広場の直ぐ前と言う立地条件の高級ホテルだ。
直ぐに、荷物の振り分け。
16:00 ロッテホテルに向かう。徒歩10分もかからないが、荷物が多いのでタクシーで。
16:45 広場前のプラザホテルにて、明日以降の段取りを韓国側スタッフと打ち合わせ。
市庁前には沢山の登り旗が出ている。なんとそこにチンドン屋の大きな姿が…。知り合いのTさん、Oさんの写真だ。本人は知らないだろうな…?
17:10 ロッテホテルの出演者控え室で待機。
今日の打ち合わせをしたいが、「出演者が揃うまで待て」と待たされる。この時間を利用して韓国語の歌を必死におさらい。
18:15 開演15分前だと言うのに、一向に打ち合わせの気配は無い。痺れを切らして、こちらから登場の段取りときっかけ打ち合わを持ちかける。
どうも舞台進行になれた人はいないようだ。韓国側スタッフは単純に舞台裏から登場すると思いこんでいたようだ。
18:30 パーティー開始の時間だが、まだまだ押しそうだ。ワインを一杯。
19:00 やっと司会の挨拶が始まる。VIP 挨拶の後、代表者が舞台へ登壇することになっているが…。
19:40 直前に全員登壇してくれと連絡。U-Stage Tシャツ姿で全員舞台へ。
終了後、慌てて着替え。
20:15 今日の出演時間は、当初10分予定、それが出国前に5分と連絡され、現場を見て6〜7分での演目を構成した。
ところが、出の直前に韓国側スタッフから「10分ですね?」と言われ、急遽一曲足すことに…。
20:30 会場入り口から七福神で登場。
「竹雀」「千鳥」をワンフレーズづつ、それから今回のために仕込んだ「故郷の春」と言う韓国民謡をインストでワンコーラス。
ここから舞台に上がり、練習した歌を入れて。会場の方々も一緒に唱和してくれる。ばっちりだ。
華ちゃんに拍子木で刻みをいれてもらい、いつもの日本語と英語の口上。口上終わりに刻みを入れず、「ロックアラウンドザクロック」
最後のフレーズで降壇する予定を急遽止めて、「四丁目」で終了。〆て9分くらい。
大きな拍手。大成功だ。
共同通信記者から取材を受ける。
急いで着替え。会場で食事。多くの人から声をかけられる。
韓国の”人間文化財”の金さんから、しきりに来年の再訪を頼まれる。協力したいのは山々だけど、問題は経費だ。
21:50 荷物だけをタクシーに載せる。運転手の「私の車はトラックじゃ無い・・・。」と言うジョークに大笑い!
メンバーは歩いてホテルに。タクシーが正面玄関に同時についたのも面白い。歩いた方が早い、はこの距離なら本当だ。
私の部屋だけがシングルなので、荷物置き場にもなる。
何時ものことだが、トモコが今日の衣装片付けと明日の支度に追われている。
出演者登壇 入り口から いつもの七福神
20日へ