顎関節症
顎関節症は顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音(開閉口時に耳の前でする音:カクカク、ガクガク、ザラザラ、ミシミシなど)、開口障害または顎運動異常(口が開かない、開きにくい、開けるときに顎がずれる)を主要症候とする疾患です。
顎関節症に関連する症状は肩・頚部のこりや痛み・頭痛・耳や目の症状など様々です。勿論それらの症状が関連する医科で原因となる疾患がないことを確認することが必要です。
顎関節
顎関節は身体他部の関節では見られない特殊な動きをします。すなわち左右の二つの関節が協調して動き(一方が動けば必ず反対側も動く)、滑走運動(関節結節を下顎頭が前方や側方に滑るように動きます。その結果大きく口を開けると耳の前がへこみ、へこんだ前方に下顎頭を触れることができます)と云う、右図のレントゲン写真(左:開口時、右:閉口時)のように一見すると脱臼しているような位置まで下顎頭が動ます。
(画像にマウスを合わせてください。下顎頭が前方へ移動しているのが確認していただけます)
滑走運動をスムーズに行うためには関節結節と下顎頭の間に位置する関節円板が下顎頭とともに協調して動く必要があります。右のMRI(左:開口時、右:閉口時)では前方に滑走した下顎頭と関節結節の間にやや黒っぽく細長い部分として関節円板が見られます。(画像にマウスを合わせてください。下顎頭と関節窩(黄色の概形線)の間にある関節円板(赤の概形線)が下顎頭ともに前方へ移動しているのが確認していただけます)
(関節円板は軟組織ですのでレントゲンには写りません。MRIは水分子に振動を与え、その動きを捕らえて画像化したものですので、軟組織も見ることができます。骨の表面は水分が少ないので黒く写ります。)
顎関節症の原因
明確な原因は解かっていませんが、心理的要因に顎関節を構成する骨・筋肉・靭帯などの組織に負荷のかかる様々な事柄(咬み合わせの不調和・習癖・食物・趣味など)が誘因として複合的に絡み合い、その人の適応の範囲を超えたり、適応力が低下した場合に発症すると言われています。
クローズドロック
クローズドロック
右図のMRI(左:開口時、右:閉口時)では開口しようとすると前方に転位した関節円板に下顎頭が引っ掛かり、開口障害が生じています。(画像にマウスを合わせてください。下顎頭(黄色の概形線)の前方にある関節円板(赤の概形線)が二つ折れになったようになり下顎頭の前方滑走運動を妨げているのが確認していただけます)
顎関節症の治療
一般に開業歯科医での治療は保存的治療が主体となります。
本院では問診・診査の上、顎関節症の症型・病態に応じて薬物療法、スプリント療法、マニュピュレーション(徒手的円板整位術)、咬合治療、円板整位運動訓練、経過観察を組み合わせて行います。
スプリント療法
スプリント療法では下顎を最もリラックスした位置に安定させるために透明な樹脂で作製した歯のカバーを睡眠時に上顎に装着していただきます。1〜2週間に1回来院していただき調整を行いながら経過観察します。
スプリント療法で下顎の位置が安定し、臨床症状が改善した時点で、かみ合わせの不調和を調整したり、臼歯部に右図のような金属製のスプリント(原則的に歯は削らずに型を取り作製します)をセメントで装着したりします。
上の樹脂製スプリントが睡眠時のみ装着するのに対して、このスプリントは取り外しができません。装着したままで食事が可能な機能的なもので、経過に問題がなければ、接着性セメントでより取れにくいようにかみ合わせの面に装着します。