★天体撮影システム紹介★


天体撮影は一般に微弱な光を捉えるために、長時間の露光を行います。
そのため通常問題にはならない、機材の微妙なたわみやガタなどが撮影の正否を左右します。
ここでは、主にガイド鏡まわりの補強について、私のシステムを紹介します。

この記事はSKY WATCHER誌に掲載された私の記事から抜粋したものです。
本文中で、意味の分からない点や、質問のある方は以下のアドレスにメールにてお問い合わせ下さい。
tsu@ac.mbn.or.jp


エキスパートたちのシステム展開

 

天体写真の中でも望遠鏡にカメラを直接取りつけた直焦点撮影は、むずかしいものである。 メーカー製品で一式をそろえ、撮影に挑んだとしても、毎回素晴らしい作品が得られるわけではない。 そこでその道のエキスパートたちは、赤道儀や望遠鏡の精度、強度、使い勝手など、さまざまな点で自分の機材のが最高の性能を出せるように、工夫しているのである。
メーカー製や望遠鏡販売店のセット売り機材に、はじめから100%満足しているわけではない。数あるメーカー製品のなかから、自分のシステムにぴったり合ったパーツを探し出し組み上げていく。 さらに、メーカー製品にないものはさまざまなものを流用し、加工し、自分のシステムを完成させている。 ここでは、そんなエキスパートたちのアイデアをまとめて紹介してみよう。これから撮影を始めようとしている人、どうしてもうまくいかない人は、ぜひとも参考にしよう。

エキスパートたちのシステム展開

榎本さんの機材は、宇治天体精機のスカイマックスV型架台に、SR223鏡筒である。 ガイド鏡はタカハシ76mmフローライトだが、ガイドマウントはタカハシ製のものを接眼側に、自由雲台2つを組み合わせた自作の支持脚を対物側に配した2点支持型にして、ガイド鏡のたわみを防止している。 また見晴らしのよい駐車場での撮影が撮影が多いので、ヘッドライト避けの変形フードを筒先に取り付けている。これらを全て愛車のトレノに積んで移動撮影。

以上、SKY WATCHER誌に掲載された私の記事から抜粋。


筆者補足

 

ガイド鏡支持方法

 私はガイド鏡に高橋製作所のFC−76フローライト鏡筒を、ガイドマウントに同社製の中型ガイドマウントを使っています。 これらは、5−10分の短時間露光では何の問題もないのですが、天体の深い階調を捉えるための長時間露光(通常60−90分)を行うと、わずかなたわみ等で、撮影の成功率が極端に低下します。 そこで、たわみの防止と風などによる振動防止を目的とした、ガイド鏡2点支持化の改造を行ってみました。
 一般的に、ガイド鏡の支持方法を2点支持にすると、安定性は増すものの、操作性が犠牲になる事が多いものです。 そこで、操作性を損なわない事を前提にいろいろ考察した結果、自由雲台を2つ組み合わせた、支持脚を製作してみました。(上記の画像参照)
使用方法は、まず通常の中型ガイドマウントを使用して、ガイド星を導入し、クランプを閉めます。 次に2組の自由雲台のクランプを締め、最後にプレート側の自由雲台に取り付けられた、支持脚の固定クランプ(すりわり)を閉じます。以上で全てです。
 この方法で、ガイド鏡(マウント)のたわみや、風による振動をほぼ抑えることができます。材料も簡単で、製作も比較的容易ですのでぜひ、お試しください。

筒先フード


 私の望遠鏡は、口径223mm、焦点距離1302mmのニュートン式反射で約φ40mmの像をブローニーフィルム上に結びます。 視角になおすと約1.8゚です。 そこで、自分の望遠鏡は設計上100%の光量を 得られる視角はどのくらいあるのか。また、どこがケラレの原因になっているのか、いろいろ考察してみることにしました。 前述の機材は宇治天体精機製のSR−223・ニュートン式反射で、200mm用の鏡筒に223mmの主鏡を収めた、いわば、‘コンパクト化’をコンセプトとした設計であることをお断りしておきます。 皆さんの機材はどうでしょうか。興味のあるところです。
 カメラ・レンズ等に取り付けるフードが細すぎたり、長すぎたりすると視界にケラレが生じることは、みなさんご存知の通りですが、ニュートン式反射望遠鏡では主鏡が鏡筒の奥に位置しているので(当たり前)、鏡筒の長さ分のフードがあることになります。 これではケラレないわけがありません。
 それにもまして、ニュートン反射は接眼部が、筒先近くにある関係で(これも当然)、新たにフードを取り付けられる方が多いようですが、どうやらケラレのことを考えて長さと、口径を設計したほうが良さそうです。 ちなみに、私のSR−223では鏡筒のケラレにより光量100%の視角は、なんと約0.85゚です。 斜鏡・ドローチューブ等の影響を無視してもです。
 必要とする視角をθとすると(もちろんケラレのない)最低限必要な鏡筒径dは、主鏡口径をD、鏡筒長をTとすると、d=D+T・tanθとなります。
 次にフードですが、私の作成したものは下図の寸法ですので鏡筒と組み合わせても視角0.9゚となり、鏡筒自身の視角0.85゚を上回っているので、影響はないようです。 しかし、フードは自作は難しいもののテーパーのかかったものの方が(ポリバケツは格好が悪いのでケラレより見栄えを尊重、故にバツ)安心といえば安心です。 フードの取り付け時のズレにも寛容のようです。
 0.85゚の光束を100%フィルム上へ導くには、最低短径φ62mmの斜鏡が必要ですが、SR−223の場合は短径φ58mmしかありません。 この時の有効な写角は0.64゚となってしまい、ここでまた25%近く視角が減少してしまいました。
 最後に接眼部周りですが、これは実際にカメラ胴も含めた作図によって調べてみました。(ペンタックス・マウントRZホルダー)、結果はトータルで考えて100%の光量が確保できる写角は約0.5゚強となることがわかりました。 これでは周辺減光が目立つわけです。 がっかりしたのも事実ですが、気になっていた鏡筒の細さによるケラレは思った程ではないことがわかりました。 それよりも、斜鏡の大きさによるケラレや、カメラマウントによるケラレの方が影響が大きいようです。 私は、光学等の知識は皆目無いので、断言はできませんが、ε−200等は、確かに鏡筒径(十分に太い)だけを考えるとイメージサークルを満たす光量が得られることになりますが、斜鏡短径がφ64mmと小さいので実際は相当な周辺減光があると思われます。


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