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 翻訳コーナー(2)

Und wer nur Gott zum Freunde hat,dem hilft er immer wieder
(お正月の豆歌手)1882

Johanna Spyri ヨハンナ・スピリ作

この訳は私的なもので営利目的ではありません。お気づきの点がありましたら、連絡をお願いいたします。
中間の単語の羅列は作業用の参考です。ウムラウトとエスツェットは変換されています。
ドイツ語現代文と原文を比較して訳しており、現代文はThe Project Gutenberg からの著作権フリー
データを使用しました。
原文はスピリ作品集より使用しています。 正確な現代文はこちらです  


コメント 「豆歌手」について (3-1) (3-2)  
 
訳 tshp    


現代文
原文
作業用単語
3. Kapitel     第三章
Eine ueberraschung nach der anderen Eine ueberraschung nach der anderen 一つの 予期せぬ出来事 の次に その 別の そのつぎに、おどろくこと
       
Die Mutter daheim war inzwischen ein paarmal halb erwacht,  Die Mutter daheim war unterdessen ein paarmal halb erwacht,  母は 自宅で だった その間に  2、3回 半分 意識が戻った  お母さんは夜になるまでに、二ど三どと目がさめそうになりました。
 でも、力がのこっていなくて、自分でおき上がることができません。
hatte aber nicht die Kraft gehabt aufzustehen.  hatte aber nicht die Kraft gehabt,  だった しかし 否定 その力は もっていた
  sich ganz zu erheben.  自分自身 すっかり 〜ための 立ち上がる
Immer wieder war sie zurueckgesunken  Immer war sie wieder
zurueckgesunken 
なんどもなんども だった 彼女は くずれるように後ろに倒れこむ  何度も力が抜けて、ぐらりと倒れこみます。
 何時間ものあいだ、どうしたことかすべてがぼんやりとしています。
und hatte mehrere Stunden in einer Art Betaeubung dagelegen. und hatte mehrere Stunden in einer Art Betaeubung dagelegen.  そして だった いくつかの 一時間 中に ある 性質の 意識不明の状態 置かれていた
       
Endlich aber erwachte sie.  Endlich aber erwachte sie.  やっと しかし 意識が戻った 彼女は  でも、なんとか目がさめてきました。
Die Daemmerung war schon hereingebrochen. Schon war die Daemmerung hereingebrochen.  すでに だった その 夕暮れは 急に始まった  もう、夕日が落ちて、どんどんと暗くなっていきます。
Ihre Kinder konnte sie nicht sehen,  Ihre Kinder konnte sie nicht sehen.  彼女の 子供たちを できた 彼女は 否定 見た  子供たちが見当たりません。
sie war aber so muede,  Sie war aber so muede,  彼女は だった しかし とても 疲れていた  でも体に力がなくて、すわりこんだまま動けません。
dass sie noch sitzen blieb. dass sie noch sitzen blieb.  その結果 彼女は まだ 座り込んだままです
       
>>Basti!<< rief sie nach einiger Zeit,  <<Basti! >> rief sie nach einiger Zeit,  バスチ、叫んだ 彼女は 〜あとで しばらくeinige Zeit 「バスチーッ」
 しばらくして子供たちをよびます。
 あたりが静まりかえって、物音一つしないのに気がついたのです。
 
als alles so still um sie her blieb.  als alles so still um sie her blieb.  〜のとき すべて とても 静か おいて 彼女 今まで とどまっている
>>Fraenzeli, wo seid ihr?<< <<Fraenzeli, wo seid ihr?>>  フランツェリ、どこに いる きみたち 「フランツェリー。どこなの、みんな」
       
Sie erhielt keine Antwort.  Sie erhielt keine Antwort.  彼女は 受け取った 否定 答え  返事がありません。
Da gab ihr die Angst ploutzlich Kraft.  Da gab ihr die Angst ploutzlich Kraft.  それは 与えた 彼女に その 不安・心配は 思いがけなく 力  そのしゅんかん、不安が体に力をくれました。
Sie stand schnell auf,  Sie stand schnell auf und trat vor das Haeuschen;  彼女は 立ちあがる すばやく、そして けった・歩む 〜の前へ 小さな家を   いそいで立ち上がると、小さな家の外へ出てみます。
trat vor das Haeuschen, aber da war niemand.  aber da war niemand -zur Geiss hinein,  しかし そこは いた だれも〜ない、〜に ヤギ 中に  だれもいません。
 ヤギのところへいっても、ぽつんと一匹でいるだけです。
Sie ging zur Geiss hinein, die war ganz allein,  die war ganz allein -,  そこは だった まったく 〜だけで
dann rund um das Haeuschen  dann ging sie rund um das Haeuschen  それから 行った 彼女は だいたい 〜のまわりを その 小さな家  それから家のまわりを回りながら、やすみなく、子供たちの名前を呼びつづけます。
 へんじがなく、静かなままです。
und rief dabei immer wieder die Namen der Kinder. und rief dabei immerfort der Kinder Namen - alles blieb still.  そして 呼んだ 同時に 絶えず(やや古語) 子供たちの名前を、すべて しつづける 静かに
Alles blieb still.       
Nur von unten herauf rauschte tosend der wilde Schaechenbach.  Nur von unten herauf toste der wilde Schaechenbach.  ただ〜だけ 〜から 下に 上へ 轟音をたてる その 荒々しい シェヒェン川  シェヒェン川が激しい音をたてているばかりでした。
Eine furchtbare Angst kam ueber die Mutter,  Eine furchtbare Angst kam ueber die Mutter,  ある 恐ろしい 不安 きた 〜の上に 母  ぞっとするような想像が、お母さんをおそいます。
kaum konnte sie sich auf den Fuessen halten.  kaum konnte sie sich auf den Fuessen halten.  かろうじて できた 彼女は 自身 〜のうえへ その 足を 持っている  立っているのがやっとです。
       
Sie faltete die Haende  Sie faltete die Haende,  彼女は 組んだ その 手を  手を組み、あらんかぎりの気持ちをこめて祈ります。
 恐ろしいがおきないように、すべてを救い主にお願いするのです。
und betete,  und inbruenstig flehte sie,  そして 熱烈に 嘆願した それらを
dass der liebe Gott ihr doch das Schwerste ersparen wolle.  der liebe Gott wolle ihr doch das Schwerste ersparen.  愛する神が 〜するつもりだ 彼女に やはり その 深刻 逃れさせる
Dann lief sie an den Fussweg  Dann lief sie an den Fussweg  それから 走った 彼女は 小道を  それから小道を走り出します。
 山をおりていこうとします。
und wollte den Berg hinuntersteigen.  und wollte den Berg hinunter.  そして 〜しようとした 山を 下って
Da sah sie von unten herauf einen ganzen Zug Leute kommen.  Da sah sie von unten herauf einen ganzen Zug Leute kommen.  そこに 見えた 彼女は 〜から 下に 上へ ある まったく 行列 人々 来る  そこへ下から大勢の人たちが行列をつくって、上にのぼってくるのが見えました。
Alle sprachen laut  Alle sprachen laut  みな 話した 大きい  みんなガヤガヤと熱心にしゃべっています。
 何人かがアフラの小さな家をステッキでさし示しています。
und eifrig miteinander,  und eifrig miteinander,  そして 熱心に お互いに
und es war gerade,  und es war gerade,  そして それは だった ちょうど
als ob die aufgehobenen Stoucke nach ihrem Huettchen zeigten. als ob die aufgehobenen Stoucke nach ihrem Haeuschen hinaufzeigten.  〜したときに 〜かどうか それ 持ち上げる  ステッキ(複) 〜へ 彼女の 小さな家 はっきり示す
       
>>Ach, Gott im Himmel!<< sagte sie im houchsten Schrecken.  <<Ach Gott im Himmel>>, sagte sie im houchsten Schrecken,  ため息 神 中にいる 天、言った 彼女は 中に このうえない  驚き 「ああ、天のお方(なんてことでしょう)」
 最悪の予感がして言いました。
>>Sollte es eine Nachricht fuer mich sein?<<  <<sollte es eine Botschaft fuer mich sein?>>  〜しようとしている それ(行列)は ある 公的知らせ 〜ために 私を ある 「あんな大勢が、私に何か知らせるために来たっていうの?」
Sie konnte keinen Schritt weitergehen,  Sie konnte keinen Schritt weiter tun,  彼女は できた 否定 歩み・一歩 これ以上 行なう  もう一歩も動けず、凍りついて立ちつくします。
sie stand wie gelaehmt da. sie stand wie gelaehmt.  彼女は 立った 〜のように 麻痺した
       
>>Mutter! Mutter!<< rief es auf einmal von unten herauf.  <<Mutter! Mutter! >> rief es auf einmal von unten herauf,  母、母」呼んだ それは 突然auf einmal 〜から 下から 上へ  「おかあさん。おかーさーん !」
 その時、下から呼びかける声がします。
>>Wir kommen schon,  <<wir kommen schon,  私たち 来た すぐに 「ぼくたち、すぐにそっちにいくよ。
 そしたら、何を持ってきたか見せてあげるー !
und du musst nur sehen, was wir bringen!  und du solltest nur sehen, was wir bringen!  そして 君は 〜する予定である およそ〜の限り 見る、何を 私達は 運んでいる 
Und die Herren kommen alle mit,  Und die Herren kommen alle mit,  そして 紳士たちは 来る みんな 一緒に  おじさんたちがいっしょだよ。
 フランツェリはお馬さんの後ろの車にのってるんだよー !」
und das Fraenzeli kommt in einem Wagen mit einem Pferd.<< und das Fraenzeli kommt in einer Kutsche mit einem Pferd.>> そして フランツェリは 来る 中に ひとつの 馬車 一緒に 一つの 馬
       
Und jetzt stuermte der Basti allen voraus  Und jetzt stuermte der Basti allen voraus  そして ちょうど 突進・殺到する バスチは みんな 先行して  バスチがみんなの先を走って、叫びながら、近づいてきます。
und rief immerfort und erzaehlte atemlos,  und rief immerfort und erzaehlte atemlos,  そして 叫んだ 絶えず(やや古語) 、そして 物語った 息を切らして  そしてゼイゼイ息をきらしながら、なにが起こったのか全部、お話ししようとします。
was alles geschehen war.  was alles geschehen war,  何が すべて 起こった あった  どんなことになったか、お母さんに知らせたくて、待ちきれないのです。
Denn er konnte es nicht erwarten,  denn er konnte kaum erwarten,  その結果 彼は (できた ほとんど〜ない 期待する)待ちきれない
dass die Mutter alles erfuhr. bis die Mutter alles erfuhr.  〜まで 母に すべて 知った
       
Und als er endlich oben war  Und als er endlich oben war  そして 〜したとき 彼は ついに てっぺん あった   バスチがやっと上までのぼりつめてとびつくと、お母さんがぎゅっと抱きしめました。

 心から空の彼方に「ありがとうございます」と感謝し、うれしくてうれしくて元気がわきだしてきます。
und auf die Mutter losstuerzte,  und auf die Mutter losstuerzte,  そして に対して 母は 〜にむかって襲いかかる
drueckte sie den Buben an sich  drueckte sie den Buben an sich  おしつけた 彼女は その 男の子を きわに 自身
und dankte Gott von ganzem Herzen. und dankte Gott von ganzem Herzen,  そして 感謝した 神に 〜から まったく 心
Vor Freude war sie neubelebt. und vor Freude war sie neu belebt.  そして 〜の前で 楽しみ だった 彼女は 新たに 元気付けた
       
Aber Erstaunen und Ueberraschung wuchsen mit jedem Augenblick,  Aber Erstaunen und
ueberraschung wuchsen mit jedem Augenblick, 
しかし 驚き そして 予期せぬ出来事は 増大した 一緒に どの 瞬間  でも、びっくりして驚くことは、まだまだいっぱいふえていくのです。
denn hinter ihrem Basti kam eine ganze Schar von Herren heran.  denn hinter ihrem Basti kam eine ganze Schar von Herren heran,  というのは 〜の後ろで 彼女の バスチ 近寄ってくる ある 多くの 集団 〜の 紳士たち  わが子のバスチのあとから、紳士たちが大勢やってきて、みんな古くからの友達のような親しさであいさつするのです。
Und alle begruessten sie freundlich wie eine alte Bekannte.  und alle gruessten sie
aufs freundlichste wie eine alte Bekannte. 
そして みな あいさつした 彼女に  〜の上で 親切に 〜のように ある 古い 知り合い
Zwei davon trugen auf zwei Stoucken, Zwei davon trugen auf zwei
Stoucken, 
ふたり それのうちの 運んだいる 上に 二つ 棒・ステッキ  ふたりの人が二本の棒を肩にわたして、その上にものすごく大きなカゴを乗せて運んできます。
die sie auf die Schultern gelegt hatten, die sie auf die Achseln gelegt hatten,  それで かれらは 上に それら肩に のせて いた
 einen ungeheuren Korb.  einen gewaltigen Korb,  ある きょだいな カゴ
Und zuletzt kam noch ein Herr,  und zuletzt kam noch ein Herr,  そして 最後に きた また ひとりの 紳士が  最後からやってくるのはフランツェリと手をつないだ男の人です。
der hielt das Fraenzeli an der Hand.  der hielt das Fraenzeli an der Hand,  彼は 持っていた フランツェリの きわに その手で
Das sonst so schuechterne Kind schien ihm so zu vertrauen,  und so vertraulich war das sonst so scheue Kind mit ihm,  そして とても 打ち解けた だった それを ふだんは とても 嫌がって嫌う 子供 一緒に 彼と  ふだんはとっても内気で、ひっこみじあんの女の子なのに、その人とは心が通じあって、すごく仲が良さそうです。
dass es nicht einmal seine Hand losliess,  dass es nicht einmal seine Hand losliess,  その結果 少女は 否定 一度も 彼の手を 離した  女の子はお母さんをみつけると、若者の手をつかんだまま、はなさないで、お母さんのところまで引っぱっていきました。
als es die Mutter sah,  als es die Mutter sah,  〜したとき 少女は 母を 見た
sondern ihn mit sich zu ihr heranzog. sondern ihn mit sich zu ihr heranzog.  そうではなく 彼を 一緒に 自身 彼女に 引っ張り出した
       
Die gute Afra wusste gar nicht,  Die gute Afra wusste gar nicht,  その 良いこと・善なる アフラは 知っていた 全然〜ない(否定)  心がきれいでとても良い人のアフラには、感謝の気持ちが大きすぎて、どうやってこの人たちに伝えたらいいかわからないほどです。
wo sie zu danken anfangen sollte.  wo sie zu danken anfangen sollte,  〜するところの 彼女は 〜に感謝する 始める すべきであった
Denn nach Bastis Erzaehlung hatte sie schnell begriffen,  denn aus Bastfis Reden hatte sie schnell begriffen,  というのは 〜中から バスチの  お話 だった 彼女は すばやく 理解した   バスチのお話から、すぐにピンときて、よくわかっていました。
dass die Herren den Kindern viel Gutes erwiesen hatten. dass die Herren den Kindern allerlei Gutes erwiesen hatten,  その結果 その 紳士たちは 子供たちを さまざまな 良いこと (好意などを)表す だった  この紳士たちが、子供たちをどんなに親切にむかえ、良いことをしてくれたのか。
 それに、こんなにたくさんの贈り物をつめこんだカゴまで目の前においてくれたのです。
Und der vollgepackte Korb zeugte auch davon. und der vollbepackte Korb zeugte auch davon.  そして 彼らは たくさんの荷を積んだ カゴを 示した また それについて
       
Sie wandte sich nun gleich an den Barbarossa.  Sie wandte sich nun gleich an Barbarossa.  彼女は 向きを変える 自身 今度は すぐに 〜において バルバロッサ  アフラは、バルバロッサの方に姿勢をととのえ、しゃんとして向き直りました。
Weil er der grousste von allen war,  Weil er der grousste von allen war,  〜であるから 彼は その 大きい 〜から すべて だった  この人が若者の中で、一番大きかったので、たぶんリーダーだろうと思ったのです。
so hielt sie ihn fuer eine Art von Anfuehrer  hielt sie ihn fuer eine Art von
Anfuehrer 
保っていた・思った 彼女は 彼を 〜とって ある 本質・種類 〜から 指導者
und dankte ihm mit so warmer Herzlichkeit,  und dankte ihm mit so warmer Herzlichkeit,  そして 感謝した 彼に 一緒に とても 暖かい 真心のこもった言動  温かく真心のこもった言葉とふるまいで感謝をのべます。
 バルバロッサは、アフラのそんな姿に心を動かされて、立派な人だ。と思います。
dass er ganz geruehrt war. dass er ganz begeistert wurde.  その結果 彼は まったく 感激する 〜にさせた
       
Nun kam es ihm ploutzlich in den Sinn, Nun kam es ihm ploutzlich in den Sinn,  今 来た それは 彼に 突然 なかに その 目的  いまバルバロッサがやってきたのは、 お母さんを医者として診察するためです。
dass er ihr ja auch einen aerztlichen Rat geben sollte,  dass er ihr ja auch einen aerztlichen Rat geben sollte,  その結果 彼は 彼女に 肯定 また ある 医者の 診察 あたえる しようとした
und er schlug ihr vor,  und er schlug ihr vor,  そして 彼は 提案した  そして、アフラに、家の中に入って、どこの具合が悪いのか話してくれませんか。と申し出ました。
mit ihm in die Huette zu gehen  mit ihm in die Huette zu treten  一緒に 彼に 中に その あばら屋 〜に 歩んだ
und ihm zu sagen, was ihr fehle. und ihm zu sagen, was ihr fehle.  そして 彼は 〜に 言った 、何か 彼女に 欠けている
       
Auch darueber war sie sehr froh,  Auch darueber war sie sehr froh,  また それ以上に だった 彼女は とても うれしかった  これも、アフラにはとてもありがたくかんじました。
und drinnen erklaerte sie ihm,  und drinnen erklaerte sie ihm,  そして 室内で 説明した 彼女は 彼に  そして家の中で、若者に説明します。
dass sie zwar keine Schmerzen habe,  dass sie zwar keine Schmerzen habe,  〜ということ 彼女は 確かに〜だが 否定 苦痛(副) 持っていた  痛いところなどはありません。
nur vor Schwaeche  sondern nur vor Schwaeche  だけでなく ただ〜だけ 〜前に 衰弱   だけど体がおとろえて、力が抜けてしまって、ふつうに立ったり歩いたりできなかったのです。
und Kraftlosigkeit kaum noch stehen  und Kraftlosigkeit kaum noch stehen  そして 力のないこと・弱弱しさ  ほんんど〜ない・かろうじて さらに 立った
und gehen kounne. und gehen kounne.  そして 行った できた
Er fragte nun,  Er fragte nun,  彼は 尋ねた 今度は  「どんなものを食べたりのんだりしていますか?」
 バルバロッサは聞きます。
 アフラはつつみかくさずすべてを話しました。
was sie esse und trinke,  was sie esse und trinke,  何か 彼女は 食べる そして 飲む
und sie sagte ihm genau alles.  und sie sagte ihm alles genau.  そして 彼女は 言った 彼に すべて 正確に
Nun trat Barbarossa vor die Huette hinaus  Nun trat Barbarossa vor die Huette hinaus  いま けった バルバロッサは 〜前に その小屋 外へ  若者は聞き終わると小さな家をとびだしました。
und rief mit lauter Stimme: und rief mit lauter Stimme:  そして 叫んだ 一緒に 騒がしい 声で  大声で騒ぎ立てます。
 >>Alle Flaschen her!<< <<Alle Flaschen her! >> すべて 瓶を こちらへ 「持ってるビンをみんな出せ !」
       
Er selbst lief eifrig hin und her,  Er selbst lief eifrig hin und her,  彼は 自身 走った 熱心に こちらにあちらに  自分であちらへこちらへと、けんめいに走って、集めてまわります。
um die Flaschen einzusammeln.  diese zu sammeln,  ここに 〜に 集めた
Endlich war der Tisch voullig bedeckt mit Flaschen,  und endlich war der Tisch voullig mit Flaschen bedeckt.  そして やっと だった 机は 満たした 一緒に ビンで 覆われた  とうとう、机はワインのビンでいっぱいになってしまいました。
einige sogar standen noch auf dem Boden,  Einige standen sogar noch auf dem Boden,  いくつかは 立った それどころか まだ 上に 床に  何本かは置ききれずに床の上に立ててあります。
 それから、口もきけないほどびっくりしているアフラに言いました。
und zu der sprachlos erstaunten Afra sagte er dann: und zu der sprachlos erstaunten Afra sagte er dann:  そして 〜に 口がきけないほどの驚きの アフラに 言った 彼は そのあとに
 >>Ihr seht, Frau, die Medizin haben wir schon mitgebracht.  <<Ihr seht, Frau, die Medizin haben wir schon mitgebracht.   貴方 聞け、婦人、薬を だった 私達は すでに もって来た  「どうぞ奥さん。お聞きください。
 私達はこのような薬をもってまいりました。
Jeden Tag ein rechtes Glas voll genommen,  Jeden Tag ein rechtes Glas voll genommen,  毎日 一つの 適切な・ぴったりの グラス 満ちた 利用する  毎日、グラスに一杯、たっぷりと服用するのです。
dann wird's besser.<< dann wird's besser.>>  それならば 〜になる よりよく  そうすれば体は良くなることでしょう」
       
>>Ach, mein guter Herr<<,  <<Ach, mein guter Herr>>,  感嘆 私の 優良な 殿方 「なんとご親切なことを」
konnte Afra endlich hervorbringen,  konnte Afra endlich hervorbringen,  できた アフラは やっと 声をだす  アフラは、やっとしぼりだすように言います。
>>ich habe wohl manchmal gedacht,  <<ich habe wohl manchmal gedacht,  「私は だった おそらく ときどき 思った 「ときどき私は、ほんの少しでもワインを飲むことができましたら、きっと体に良いものと思っておりました。
ein Troupfchen Wein kounnte mir gut tun,  ein Troupflein Wein kounnte mir guttun,  ひとつの 数滴+小さな ワイン できた 私に 良い効果を与える
wenn ich's bekommen kounnte.  wenn ich's bekommen kounnte.  〜したとき 私は 得る できる
Aber so viel, so viel!<< Aber soviel, soviel! >>  しかし なんと たくさん  それが、こんなにもたくさんあるなんて !」
       
>>Meine gute Frau<<, erwiderte Barbarossa, <<Meine gute Frau>>, erwiderte Barbarossa,  私の 優良な 婦人」返礼した バルバロッサは 「お礼にはおよびません」
 バルバロッサが答えます。
>>wenn ein Troupfchen gut tut,  <<wenn ein Troupflein guttut,  もし〜したとき ある 少ない+数滴の 良い効果 「ほんの少しのワインで、お体が良くなるなら、もう少し飲めばもっと良くなることでしょう。
so tun mehrere Troupfchen besser.  so tun mehrere Troupflein besser.  そのように する もういくつかの 少ない+数滴 よりよく
Und nun lebt mir wohl  Und nun lebt mir wohl  そして 今や 暮らして 私たちに 良く(さようなら・ごきげんよう)  それでは、おいとまいたしましよう。
 お子様たちにもよろしく」
und eure Kinder dazu!<<  und Eure Kinder dazu! >> そして 君たち 子供たちに それに加えて
Damit streckte er der Afra seine Hand hin. Damit streckte er der Afra seine Hand hin.  それでもって 差し出した 彼は アフラに 彼の腕を   握手しようと、アフラに手をさしだします。
       
Sie begleitete ihn hinaus  Sie begleitete ihn hinaus  彼女は 外まで送って出た 彼を  外にでて、お見送りします。
und nahm Abschied von all den Herren.  und nahm Abschied von all den Herren;  そして つかんだ 別れ 〜について すべての その紳士たちを (Abschied nehmen別れを告げる)  若者たちみんなに、お別れのあいさつをするのですが、とても感謝しきれるものではありません。
Aber sie konnte gar nicht fertig werden mit Danken.  aber sie konnte gar nicht fertig werden mit Danken.  しかし 彼女は できた けっして〜ない 充分に 〜になった を入れて 感謝
       
Auch das Fraenzeli dankte jetzt seinem Beschuetzer  Auch das Fraenzeli dankte jetzt seinem Beschuetzer,  また フランツェリは 感謝した 今 彼女の 保護者に  フランツェリはというと、自分を守ってくれたマクシミリアンに、たくさんたくさん「ありがとう」といいます。
 そして、「またきてね。すぐにね」とおねがいするのです。
  soviel es nur konnte,  いくら〜しても 少女が ただ〜だけ できる
und bat, er solle bald wiederkommen.  und bat, er solle nur bald wiederkommen.  そして 頼んだ、彼は 〜するように求めた (Komm nur bald!とにかく早くおいで!)とにかく早く ふたたびやってくる
Der Basti schoss mit seinen Danksagungen von einem zum anderen,  Der Basti schoss mit seinen Danksagungen von einem zum anderen,  バスチは 勢いよく動いた 一緒に 彼の 謝辞 〜から ひとり 〜に べつの人へ  バスチはかけまわって一人一人にお礼していきます。
und dann lief er auf die aeusserste Spitze des Felsvorsprungs  und dann lief er auf die aeusserste Spitze des Felsvorsprungs  そして それから 走った 彼は 上で その 最後ぎりぎりの 頂点 その Fels岩+vor前に+sprungとびあがり  最後になると走り出して、よく下が見える岩のでっぱりの上にとびのりました。
 そして、男の人たちがひとりも見えなくなるまで、のどをはりあげてせいいっぱいさけぶのです。
und schrie aus vollem Hals,  und schrie aus vollem Halse,  そして 叫んだ 〜から せいいっぱい のど
so lange er noch etwas von den Herren sehen konnte:  solange er noch etwas von den Herren sehen konnte:  〜の限りは 彼は まだ なにか 〜の その紳士たちを 見ることが できた
>>Vergelt's Gott, Barbarossa! Vergelt's Gott, Maximilian!<<  <<Vergelt's Gott, Barbarossa! Vergelt's Gott, Maximilian! >>  神がそのことであなたに報いを垂れたまわんことを(どうもありがとう)(南部) 「ありがとう、バルバロッサ !
 ありがとう、マクシミリアン !
(天の恵みが、あなたたちを幸せにしますように)」
 
Denn er hatte sich die Namen gut gemerkt. Denn er hatte sich die Namen wohl gemerkt.  というのは 彼は だった 自身 その 名前(副)を よく 覚えていた  バスチは名前をしっかり覚えてしまっています。
Als die Kinder dann aber drinnen im Huettchen bei der Mutter sassen,  Als die Kinder dann aber drinnen im Huettchen bei der Mutter sassen,  〜したとき 子供たちは それから 一方 屋内で 中に 小屋+小さい 〜そばで 母の 座った   それから子供たちは、ちいさなちいさな家の中で、お母さんのそばに座ります。
 なんといっぱいお話しすることがあったでしょうか。
hatten sie so viel zu erzaehlen,  hatten sie soviel zu erzaehlen,  だった 彼らは とてもおおく 〜ために 説明する
wie sich alles ereignet hatte,  wie alles sich ereignet hatte,  〜のように すべて じしん 生じた  いったいなにがおきたのか。
 どうして、きゅうに出かけてしまったのか。
wie sie schnell fortgegangen waren,  wie sie schnell fortgegangen waren,  〜のように 彼らは すばやく 出発した
um der Mutter ein wenig Brot zu ersingen, um der Mutter ein wenig Brot zu ersingen,  〜のために 母の ひとつの 少しの パンを 〜ために 計画を考え出した  お母さんが気をうしなって眠っている間に、すこしでもお母さんの食べ物をみつけようと考えたこと。
waehrend sie schlief.  waehrend sie schlief,  〜の間 彼女が 眠っている
Sie berichteten報告した, wie dann eines zum anderen gekommen war,  und wie sich dann eins aus dem anderen ergeben habe,  そして 〜のように じしん それから ひとつのこと 〜の中から その 別の 生じた   それあと、おきたこと。
 次から次へとまた別のことがおきたこと。
 そしてあの人たちを、車に馬をつけて案内するようになったこと。までです。
bis sie mit dem Wagen  bis sie mit der Kutsche  〜まで 彼らが 一緒に その 馬車 
und dem Pferd heimbegleitet worden waren.  und dem Pferd heimgeleitet worden waren,  そして その 馬 案内する 〜になった 
Das Fraenzeli konnte fast keine Worte finden,  und das Fraenzeli konnte fast keine Worte finden,  そして フランツェリは できた ほとんど 否定 言葉 見つけた  フランツェリのほうは、どんなにすばらしい気持ちがしたか、なかなかうまく説明できません。
 馬車にのって家まで乗ってきたことは、少女にとってキラキラとかがやくような思い出になるのです。
um die Herrlichkeit zu beschreiben,  um die Herrlichkeit zu beschreiben,  において その すばらしい・壮麗 〜に 説明する
die es erlebt hatte,  die es erlebt hatte,  それを 少女は 体験した 
so im Wagen nach Hause zu fahren. so im Wagen nach Hause zu fahren.  そのように 馬車で 〜へ 家 ドライブする
       
Dann wurde der grosse Korb ausgepackt.  Als nun aber der grosse Korb ausgepackt wurde  〜したとき いまや しかし その  大きな カゴから 取り出した 〜になった  それから、大きなカゴから中身をとりだそうとします。
Aus jedem Paket rollten wieder neue,  und aus einem jeden Paket wieder neue,  そして 〜の中から ある どの 包み ひたたび 新しく  どの包みも、ひらくたびに、ごちそうが飛び出してきます。
 一番下には、とっても大きな真っ白なパンが三つ見えてきました。
 若者たちが特別に心をこめて入れておいてくれたパンでした。
praechtige Esswaren heraus,  praechtige Esswaren herausrollten  すばらしい・華やかな たべものが 外へ 転がった
und zuletzt kamen unten noch drei ganze weisse Brote zum Vorschein,  und zuletzt unten noch drei ganze weisse Brote zum Vorschein kamen,  そして 最後に 下に まだ 三つ ほんとうに しろい パンが 姿をあらわした
die die Herren noch eigens bestellt hatten.  welche die Herren noch eigens bestellt hatten,  〜したところの 紳士たちは まだ ことさら・特に 注文して 持っていた
Da uebernahm die Freude den Basti so, da ueberkam die Freude den Basti so,  その 持っていた その うれしさ バスチを とても  そのパンを、バスチはうれしさのあまりかかえこみます。
 そのまま部屋じゅうをぴょんぴょん飛びはねて、またまた大きな声でお礼をいいました。
 そうしないでいられません。
dass er in hohen Saetzen in der Stube herumhuepfen  dass er in hohen Saetzen in der Stube herumhuepfen  というのは 彼は ~中に 高く 飛び上がり 中で 居間 あちこち+ぴょんぴょん飛び跳ねる
und noch einmal laut rufen musste:  und noch einmal laut rufen musste:  そして まだ 一度 さわがしく 叫んだ 〜しなければならなかった
>>Vergelt's Gott, Maximilian!  <<Vergelt's Gott, Maximilian!  祝福を マクシミリアン 「ありがとう、マクシミリアン !
Vergelt's Gott, Barbarossa!<< Vergelt's Gott, Barbarossa! >>  祝福を バルバロッサ  ありがとう、バルバロッサ !」
       
Die Mutter aber musste immer wieder sagen: Die Mutter aber musste immer wieder sagen:  母は しかし ~しなければならなかった 何度も 言った  お母さんはくりかえして、こういわずにはいられません。
>>Das hat der liebe Gott den jungen Herren ins Herz gegeben.  <<Das hat der liebe Gott den jungen Herren ins Herz gegeben.  それは だった 愛する神 それを 若い 紳士たち 中へ 心に あたえた 「これは、愛するお方が、あの若い人たちの心を通じて与えてくれたものです。
Wir wollen auch alle Tage fuer sie beten,  Wir wollen auch alle Tage fuer sie beten, Kinder,  私たちは 〜(ぜひ)しましょう また すべての 日々 ~のために 彼らの 祈る、子供たちや   お願いしましょう。
 これから私たちに、ずっと毎日、あの方たちの幸せをお祈りできますように。
 さあ子供たち。
Kinder, und es nie vergessen.<< und es nie vergessen.>>  そして それを けっして 忘れない  これを、けっしてわすれないようにしましょうね」
       
Inzwischen wanderten die Herren Studenten frouhlich nach Altorf hinunter.  Unterdessen zogen die Studenten in grosser Frouhlichkeit gegen Altdorf hinunter.  下に+それの 下って+ひいていく 大学生たち 中で 大きな 大はしゃぎ 行った アルトドルヘ   その下では大学生の一行が、楽しくおおさわぎしながらアルトドルフへおりていきました。
Nur Ritter Maximilian war eine Weile ganz still gewesen,  Nur Ritter Maximilian war eine Weile ganz still gewesen,  ただ~だけ 騎士 マクシミリアンは だった ある しばらくの間 まったく しずかに であった  ただひとり、勇者・マクシミリアンだけは、だまったままでいます。
dann ploutzlich sagte er. dann ploutzlich brach er in die Worte aus:  それから とつぜん 急におこした・壊して作った 彼は 中に その 言葉  それが、いきなり楽しい雰囲気をこわすように、大きな声で主張しはじめました。
>>Es ist doch nicht recht. <<Es ist doch nicht recht!  それは です やはり 否定 正しい 「ちがうぞ。これは。
Nein, es ist nicht recht. Nein, es ist nicht recht. 否定、それは です 否定 正しい  そうだ。やっぱり正しくない!
Nun haben wir die arme Frau  Nun haben wir die arme Frau いま 持った 私たちは その 貧乏 婦人  いま僕たちがやったことは、貧しい女性と子供たちを、飢え死にさせなかったことだ。

 それ以上は何一つとしてやっちゃいない。
und die Kinder nur gerade davor geschuetzt,  und die Kinder nur gerade davor geschuetzt,  そして その 子供たちを ただ〜だけ ちょうど その前 守った
dass sie nicht Hungers sterben, dass sie nicht Hungers sterben,  〜するため かれらを 否定 空腹の 死ぬ
und weiter gar nichts.  und weiter gar nichts.  そして これ以上 ぜんぜん まったくない
Was sollen sie da oben im Winter machen ohne warme Kleider,  Was sollen sie da oben im Winter machen ohne warme Kleider, 何を すべきである 彼らは それを 上に 中に 冬に する 〜なしで 暖かい 着物  あの人たちは、冬になったら暖かい衣類がない、食べ物がない、なにもかもが足りない。
 それなのに、いったいどうやって暮らせばいいんだ?
ohne Essen, ohne alles?  ohne Essen, ohne alles?  〜なしで 食料、〜なしで すべて
Das geht nicht, wir muessen eine Sammlung veranstalten,  Das geht nicht, wir muessen eine Sammlung veranstalten,  それは 良い 否定、私たちは 〜しなければならない ある 募金 行う  それではダメだ。
 僕たちは、すぐにでも力を合わせて必要なものを集め、代表者を通じて送ってあげなくてはならない。」
gleich heute noch,  gleich heute noch,  すぐに 今日 〜のうちに
der Wirt kann den Ertrag ueberbringen.<< der Wirt kann den Ertrag uebermitteln.>>  その 主催者は できる それ収益を 伝える 
       
>>Ritter Maximilian<<, entgegnete Barbarossa,  <<Ritter Maximilian>>, entgegnete Barbarossa,  騎士 マクシミリアン、言い返す バルバロッサ 「おまえは正義を求める男だな、マクシミリアン」
 バルバロッサが言い返します。
>>deine Gesinnung ist gut,  <<deine Gesinnung ist gut,  君の 考え方・心情は です 良い 「その考え方は立派である。
 だが君の提案は実際には役にはたたんぞ。
dein Vorschlag aber unpraktisch.  dein Vorschlag aber unpraktisch.  君の 提案・申し出は しかし 実用的でない
Du vergisst, dass wir auf der Reise sind,  Du vergisst, dass wir auf der Reise sind,  君は 忘れた、というのは 私たちは うえ 旅行の ある  私たちは旅行中だということを忘れてはいないか?
dass wir noch weit nach Hause haben  dass wir noch weit nach Hause haben  その結果 私たちは まだ 遠い 〜まで いえ 持っている  家から遠くはなれたところにいて、まだいくらも金が入用なのだ。
und noch einiges Geld brauchen.  und noch einiges bis dahin gebrauchen.  そして まだ いくらか 〜まで かなた 使う
Was bleibt da zu sammeln?  Was bleibt da zu sammeln? 何を 余っている そこで 〜に 集める  余裕があるか?
 ここで何を集めようというんだ?
Ich mache einen andern Vorschlag.  Ich mache einen anderen Vorschlag:  私は する 一つの べつの 提案を  私は別の提案をしよう。
Wir gruenden eine neue Verbindung, die Bastiania.  Wir gruenden einen neuen Verein, die Bastiania,  私たちは 創設する ひとつの 新しい 協会・団体・クラブ・結社・組合・連中・やつら  ここのみんなで一つのクラブを創設しよう。
 名前は「バスチアニア(バスチ協会)」だ。(バスチの共同体・バスチの国)
Jahresbeitrag vier Mark.  Jahresbeitrag vier Mark. 貢献する 4 マルク  寄付金は年間4マルク。
Zu Ehrenmitgliedern werden alle Muetter  Zu Ehrenmitgliedern werden alle Muetter  〜に 名誉+一緒+区分 〜になる すべての 母  名誉会員として、われわれすべての母と姉妹を任命しよう。
und Schwestern ernannt,  und Schwestern ernannt.  と 妹 任命する
die liefern uns die noutigen Kittel  Die liefern uns die noutigen Kittel  それらは 提供する 私たちに それらを せざるをえなくする ジャケット・上着  彼女らの提供により、バスチとマドンナちゃんのための上着とスカートをそろえてもらおう。
und Rouckchen fuer den Basti  und Rouckchen fuer den Basti  そして スカート+?? 〜のために バスチへ
und das Maedchen.  und das Madounnchen.  そして 小マドンナへ
Sobald wir nachhause kommen,  Sobald wir nach Hause kommen,  したらすぐに 私たちは 〜に 家に 帰る  まず緊急にやることは。
 私たちが家に帰ったら、一年分の援助を集める。
wird der Jahresbeitrag eingetrieben,  wird der Jahresbeitrag eingezogen,  〜になる その 年?+貢献する 徴収する 
die Ehrenmitglieder werden zur Mitwirkung ueberredet,  die Ehrenmitglieder werden zu liebreicher Mitwirkung gebeten, それら 名誉会員は 〜なる 〜に 愛情に満ちた(文語) 協力 頼む  名誉会員には、博愛に満ちた協力を求めよう。
und die erste Sendung der Bastiania geht ab.<<  und die erste Sendung der Bastiania geht ab.>>  そして それら 最初の 発送物を バスチアニアは 発送される  こうして、最初の援助物資を、バスチ協会は発送するのである。」
    バスチ+共同体(国)  
Dieser Vorschlag fand ungeheurenより巨大な Beifall.  Dieser Vorschlag fand einstimmigen, lauten Beifall.  これらの 提案は 得られた・見つけた 満場一致の、〜という内容である 拍手・喝采・同意  この提案は、全員の拍手とかっさいで、認められました。
In der frouhlichsten Stimmung zogen die Herren in Altorf wieder ein,  In der frouhlichsten Stimmung zogen die Herren in Altdorf wieder ein,  中で その 楽しげな 気分は 行進して入場する その紳士たちは 中に アルトドルフへ 再び  うきうきした気分につつまれて、紳士たちは、アルトドルフに戻るために行進していきます。
fanden ihren Tisch noch draussen stehen  fanden ihren Tisch noch draussen stehen,  見つけた 彼らの テーブルは まだ 外に 置いてある  彼らの持ち出したテーブルはまだそのままで、みんなでふたたび着席します。
und setzten sich gleich wieder daran.  setzten sich gleich wieder daran,  投入した 自身 すぐに 再び 
Hier im hellglaenzenden Mondschein wurde sofort die Bastiania gegruendet und besiegelt. und hier im hellglaenzenden Mondschein wurde sofort die Bastiania gegruendet und besiegelt. そして ここに 中に まったく+すばらしい 月明かり 〜になった ただちに その バスチアニアは 創立 そして 固める・確定する  月明かりの美しいなか、バスチ協会は、設立されて、みんなに承認されることになりました。
       
Wie musste aber die Afra sich wundern,  Wie musste aber die Afra sich wundern,  どのように 〜しなければならない しかし そのアフラに 自身 驚く  どんなにアフラはびっくりしたかわかりません。
als einige Wochen nachher der Postbote ein so maechtig grosses Paket zu ihr hinaufbrachte,  als einige Wochen danach der Postbote ein so maechtig grosses Paket zu ihr hinaufbrachte,  〜したとき いくつかの 週 そのあとの 郵便配達人 ひとつの とても ものすごい 大きい 包み 〜に 彼女に 上に運び上げた  何週間かして、なんだかものすごいでっかい荷物を、郵便配達がアフラの家まで運びあげました。
dass er es mit Gewalt durch die offene Tuer zwaengen musste. dass er es mit Gewalt durch die offene Tuer zwaengen musste.  その結果 彼は それを 一緒に 強力な力 〜を通して その 開いた 扉 無理やり押し込む 〜しなければならなかった。  あけっぱなしの戸口に、力いっぱい押し込まなければ入りません。
       
Dann warf er es auf den Boden,  Dann warf er es zu Boden und sagte,  それから 投げた 彼は それを 〜に 床 そして 言った  それから配達人は、疲れて床に荷物を投げ出すように置いて、おでこの汗をふきながら言いました。
trocknete sich die Stirn und sagte:  seine Stirn trocknend:  彼の 額は 乾かした
>>Es wundert mich nur, Afra,  <<Es wundert mich nur,  それ(荷物)は 驚いた 私を とにかく 「こんな荷物で、とにかくわたしゃ驚いたね。
was Sie fuer eine Bekanntschaft so weit oben in Deutschland haben. Afra, was Ihr fuer Bekanntschaft so weit oben in Deutschland habt.  アフラ、何が あなたは 〜にとって 知り合い そんな 遠い 上の方(地図の上・北のほう) 中に ドイツ 持つ  アフラさんや。
 どうしてあんた、こんな遠い北ドイツなんかに知り合いがいるんだい?
Auch der Postverwalter hat's nicht erraten kounnen,  Aber auch der Postverwalter hat's nicht erraten kounnen,  感嘆 また その 郵便+支配人 だった 否定 推測して当てる できる  まったくさぁ。
 郵便局の局長だって、そんな遠くで、あんたらを知ってる人がいる理由なんて、わかりゃしない。」
wer Sie so weit weg kennen kounnte.<< wer Euch in so weiter Ferne kennen mag.>>  だれが 君たちに 中に その それ以上 遠い 知っている 〜だろう
       
>>Ihr werdet wohl mit dem Paket an der falschen Stelle sein<<,  <<Ihr werdet wohl nicht am rechten Ort sein mit dem Paket>>,  きみたちは 〜になった 恐らく 否定 おいて 正しい 場所 一緒 その 荷物は 「あなたたち、きっと、荷物の届け先を、まちがえたんでしょう?」
erwiderte die Afra. erwiderte die Afra.  返事した アフラは  アフラは返事します。
>>Sie kounnen es lesen<<, あなたはそれを読むことができる。 <<Ihr kounnt's lesen>>,  あなたは できる+それを 読む 「あて名を読んでごらん」
gab der Bote zurueck und ging davon. gab der Bote zurueck und ging seiner Wege.  言い返した その 使いの者は、そして 行った 彼の 道を  そういい返して、郵便配達は帰っていきました。
       
Wirklich standen deutlich Afras Name  Wirklich stand deutlich der Name der Afra  ほんとうに 置いていた はっきりした その名前は アフラに  ほんとうです。
 あてなはアフラの名前で、上に書いてあるのはここの住所になっています。
und ihr Wohnort auf dem Paket.  und ihr Wohnort darauf.  そして 彼女の 住所 その上に
Sie louste nun die festvernaehten Ecken auf,  Sie louste nun die festvernaehten Ecken auf,  彼女は ひもを緩めた 今や その 固い+ 縫い合わせた 角(複)  彼女はさっそく、固くむすばれた包みの糸をほどきはじめます。
und immer lockerer wurde die ganze Naht. und immer lockerer wurde die ganze Naht.  そして どんどん ゆるんだ 〜になった その すべての 継ぎ目  どんどん、ゆるんで、継ぎ目がひらいていきます。
       
Die Kinder schauten gespannt auf den geheimnisvollen Gegenstand.  Die Kinder schauten mit Spannung auf den geheimnisvollen Gegenstand.  子供たちは 目を向ける 一緒に 期待感 上へ その なぞに満ちた 物体・対象を  子供たちがふしぎいっぱいで、ワクワクしながらのぞきこみます。
Jetzt auf einmal ging alles auseinander,  Jetzt auf einmal ging alles auseinander,  ちょうど 一度に 行った すべて 次から次へと  それから一度に次から次へととびだしました。
 シャツに上着、布地に長靴にクツ下。
 思いもつかないほど、たくさんでてきます。
 そして一番奥に埋め込むように、ぐるぐるに包まれた重たいものが一つありました。中にはたくさんのマルク銀貨がつまっています。
und heraus rollten Kittel  und heraus rollten Kittel  そして 外へ 転がる シャツ
und Jaeckchen und Tuecher und Stiefel und Struempfe,  und Jaeckchen und Tuecher und Stiefel und Struempfe,  そして 上着 そして 布・生地 そして 長靴 そして くつした
zum Erstaunen viel.  zum Erstaunen viele,  〜に 驚き たくさんの
Und mitten heraus fiel eine schwere Rolle,  und mitten heraus fiel eine schwere Rolle, そして 真中に 外へ 落ちる 一つ 重たい 巻いたもの
darin waren viele, viele Silberstuecke. darin waren viele, viele Silberstuecke.  その中に あった たくさん たくさん 銀+かけら・硬貨
       
Die Mutter schlug die Haende zusammen  Die Mutter schlug die Haende zusammen  母は 打った その 手を 一緒に  お母さんは、両手を叩きながら、ただ驚きの声をあげつづけます。
und rief nur immer:  und rief nur immer:  そして 叫んだ ただ〜だけ 絶えず
>>Aber woher!  <<Aber woher auch? 感嘆・驚嘆 どこから また 「ええ? どこからこんな!
Woher ein solcher Segen?<< Woher nur ein solcher Segen?>>  どこから せめて ひとつの このような 幸運  こんな贈り物が、いったいどこからきたの?」
       
Da brachte ihr das Fraenzeli ein Blatt Papier,  Da brachte ihr das Fraenzeli ein Blatt Papier,  そこに 持っていった 彼女に フランツェリは ひとつの 枚 紙を  そんなアフラのところにフランツェリが紙を一枚もってきます。
das aus den Sachen herausgefallen war.  das aus den Sachen herausgefallen war.  それは 〜の中から その 物 中から外へ+落ちた  荷物の中から外に落ちていて、そこにはこんな言葉が書いてありました。
Darauf standen die Worte: Darauf standen die Worte: そこには 書いてある そのような 言葉
       
>>Und wer nur Gott zum Freunde hat, <<Und wer nur Gott zum Freunde hat,     ほんとの希望が ともだちなら
 だれでも どこでも ささえてくれる
Dem hilft er immer wieder.<< dem hilft er allerwegen.>>  
       
Da rief der Basti sofort:  Da rief der Basti sofort:  そこに 叫んだ バスチは すぐに  するとバスチがすぐに大声をあげます。
>>Das steht im Lied, das kommt von den Herren!<< <<Das steht im Lied, das kommt von den Herren! >>  それは 載っていた 中に 歌の、それは 来た 〜から その紳士たちに 「それ歌の言葉だよ。
 この荷物、おじさんたちのところから来たんだ!」
       
Ja, das musste so sein.  Ja, das musste so sein; 肯定、それは ちがいない そんなふうに ある  そうです。そうにちがいありません。
Jetzt war es auch der Mutter klar,   jetzt war es auch der Mutter klar,  ちょうど だった それは また その母に はっきりした  それはお母さんにもはっきりわかりました。
dass die Sendung von niemandem sonst als von ihren Wohltaetern kommen kounnte.  dass die reiche Sendung von niemand sonst als von ihren
Wohltaetern aus Deutschland herkommen kounnte. 
というのは その 豊かな 発送物は 〜から だれも〜ない そのほかに 〜として 〜から 彼ら ありがたいもの・慈善・恵み 〜から ドイツ こちらに来る できる  だって、こんなすごい贈り物をとどけてくれるなんて、ドイツのあの親切な人たち以外に、だれも思いつかないのです。
Aber welcher unaussprechliche Dank erfuellte jetzt ihr Herz,  Aber welcher unaussprechliche Dank erfuellte jetzt ihr Herz,  しかし どのような 口では言い表せない(文語) 感謝 願いをみたす ちょうど 彼女の 心を  そして、どんなに言い表そうとしてもできないほど、深い感謝の気持ちが心にわきあがってきます。
da sie auf einmal ganz  da sie auf einmal ganz  それは 彼女の 〜上で+一回(突然) まったく  これまでずっと、「子供たちと離れ離れになるかもしれない・・。」、そんな不安が心に重くのしかかっていたのです。
 それが、いきなり、かきけすように、なくなってしまいました。
und gar von der grossen Angst befreit war,  und gar von der grossen Angst befreit war,  そして それどころか 〜から その 大きな 不安 開放する だった
dass sie von ihren Kindern getrennt werde.  dass sie von ihren Kindern getrennt werden kounnte.  というのは 彼女は 〜から 彼女の 子供たち 別れる 〜になる できる
Nun hatte sie ja eine so reiche Unterstuetzung,  Nun hatte sie ja eine so reiche Unterstuetzung,  今や だった 彼女は 驚き ある とても 金持ちの 援助  いまアフラには、ありそうにもないような、とてもありがたい救いの手がさしのべられたのです。
dass sie den kommenden Winter ohne Sorge leben konnte.  dass sie den kommenden Winter ohne Sorge leben konnte,  その結果 彼女は それを 次の 冬 〜なしで 心配 暮らす できる  これで、次の冬を心配しないで暮らせます。
Und dazu war sie von dem staerkenden Wein wieder ganz kraeftig  und dazu war sie von dem
staerkenden Wein wieder ganz kraeftig 
そして それにあわせて だった 彼女は 〜から その 元気づける ワイン 再び まったく 力強く  それに血のめぐりをよくするワインで、お母さんは前のように元気になります。
 体によいことだったのです。
und gesund geworden. und gesund geworden.  そして 健康な 〜になった
       
Wie wird aber die Afra erst staunen,  Wie wird aber die Afra erst staunen,  どのように 〜になる(未来) しかし アフラは さらに おどろいた  でも、アフラは、そのうちもっと驚くことになるでしょう。
wenn naechstes Jahr wieder eine solche Sendung kommt  wenn naechstes Jahr wieder eine solche Sendung kommt  〜するときに 次の 年 ふたたび ひとつの このような 発送物 来る  次の年、またまた同じような荷物が届くのです。
und jedes Jahr aufs neue?  und jedes Jahr aufs neue;  そして どの 年も 〜の上に 新しく  毎年、それが続いていきます。
Denn die Bastiania besteht als eine solide Verbindung fort,  denn die Bastiania besteht als Verein fort,  というのは バスチアニアは 存続継続する 〜として 協会・団体・クラブ  だって、「バスチ協会」は、クラブとしてずっと続いていたのです。
und die Ehrenmitglieder denken bei jedem ausgewachsenen Kleidchen  und die Ehrenmitglieder denken bei jedem zu klein gewordenen Kleidchen  そして、その名誉会員(複)は 思い浮かべる 〜の近くに いずれの〜も 〜に 小さな ナミニなる 着物+小さな(子供の)  名誉会員になっている若者たちのお母さんや姉妹は、着物や上着が自分たちの子供には小さくなると、思い出します。
und Kittelchen ihrer Kinder an die kleinen Neujahrssaenger,  und Kittelchen ihrer Kinder an die kleinen Neujahrssaenger,  そして 上着+小さな 彼らの 子供たち きわに その 小さな 新年の歌手たち  息子や兄が、スイス旅行から帰ったときに聞かせてくれたお話を。
 幼い子供たちが、新しい世界をお祝いして歌ったことが、まるで目の前にうかぶような気持ちがするのです。
 
die ihnen von den Souhnen  die ihnen von den Souhnen  それら 彼らの 〜から 息子たち
und Bruedern bei der Rueckkehr von der Schweizerreise in so lebendigen Farben geschildert worden sind. und Bruedern bei der Rueckkehr von der Schweizerreise in so lebendigen Farben geschildert worden sind.  そして 兄・弟たち 〜の近くに  帰還 〜から その スイス+旅行 中で とても 生きつづけている 生き生きと 目にうつるように 〜になる ある
       
Die Afra aber hat als bleibende Gedenktafel in ihrer Stube das Blatt aufgehaengt,  Die Afra aber hat als bleibendes Andenken in ihrer Stube das Blatt aufgehaengt,  アフラは ところで だった 〜として 変わることなく 思い出・記念 中に 彼らの だんろ その 一枚  つるした  さてアフラは、このことを忘れないように、家のだんろに一枚の紙を、これからずっとかかげることにしました。
das die Herren ihrer Sendung beigelegt hatten,  das die Herren ihrer Sendung beigelegt hatten,  それは あの紳士たちが 彼らの 発送物に 添えた  それは若者たちが、贈り物の中に入れておいたもので、あの言葉がしるされています。
und worauf die Worte stehen: worauf die Worte stehen: その上には その言葉 書かれている
       
>>Und wer nur Gott zum Freunde hat, <<Und wer nur Gott zum Freunde hat,     ほんとの希望が ともだちなら
Dem hilft er immer wieder.<< dem hilft er allerwegen.>>    だれでも どこでも ささえてくれる
      2005/1/24

おわり


 お正月の豆歌手 について(3)

 コメント3-1 背景としてのウィリアム・テルとスイス

 ウィリアム・テルには生まれ故郷、死んだ場所などがあって、スイスの建国の英雄とされていますが、これが全部つくり話であった・・としたら、どのように思われるでしょうか?
 

「なんだって、バカにするな」と、怒る人もいるかもしれません。
 日本でいえば今年のNHK大河ドラマ主人公・源の義経が架空の人物であったといわれるようなものです。


 小さな国の田舎の英雄「ウィリアム・テル」の名が世界にひろまったのは、シラーの書いた戯曲によってです。
 シラーは当時の信頼のおけるとされた資料をあたって、作家として脚色し、創作部分をつけくわえはするものの、史実をベースとして現実に存在した人物としてテルを描きました。

 しかし、テルとそっくりの民話がドイツの北にあるデンマークから報告され、何度も詳細な検討がなされた結果、数十年後の19世紀中盤までにテル物語はこの民話がスイスにコピーされたもので、架空の人物であったと結論がでてしまいました。

 シラーはテルを書き上げた翌年亡くなりましたから、このどんでんがえしを見ることなく幸運だったのかもしれません。

 悪代官ゲスラーの存在した資料もなく、ハプスブルグ家がスイスを過酷に扱っていたという証拠もないそうです。



 リュトリの草原でスイス最初の三州が同盟を誓ったのは史実です(1291年)。
 そしてテル戯曲に登場するさまざまな事件がおきたのが1306-8年ころ。戯曲ではこのへん時間と順序がまちまちです。(これはシラーの作劇上の都合で、当然のことです)

 そしてシュヴィーツ州のモルガンテンでの戦いで、スイス三州農民軍がハプスブルグに大勝したのが1315年です。
(王がじきじきに指揮する1万1千の騎士軍団に、1300人のよせあつめスイス農民軍が圧勝したのです! ) 

 リュトリの盟約は半ば伝説ですし、名目上のスイスの支配者であった神聖ローマ帝国から完全に分離するのはまだまだ後の話ですが、この戦いが事実上独立を決定付けたように私は思います。
 この戦いで成人したテルの息子が戦死し、老いた父の前に遺体が運ばれるという小説もありまして・・小説家というか、フィクションを作る人はなんとも人騒がせです。

 それから、どうやらジャンヌ・ダルクや聖徳太子や、ブッダ(お釈迦さま)、ナザレのイエス(キリスト)といった方々も、実在を客観的に証明する信頼できる一次資料がなくて、架空の存在である可能性があるそうです。もうなにをかいわんやです。
 また先週、一応メジャーな新聞の一角の産経新聞で「南京大虐殺はなかった」(まさかいまさら完全にデマでもなかろう)とか連載があってギョっとしました。
 イラクの大量破壊兵器がなかったなんてのもあったし、いったいなんなんでしょう。もう何が何やら。

 おいらにゃわかんねえ。
 
・・フランクフルトの年くったバスチ(セバスチャン)の気分ですよ。テルの作り話など物の数ではないのかもしれません。
 (でも、ハイジは架空と最初からわかってるので、その分気が楽だわ♪)

 ・・ついでに言いわけしますが、上にあげた例について、わたしは自分の体験したことではないので、あるともないとも断定はできません。
 あったとかなかったとか、不十分な証拠しかないのに一方的に断定して言う人を、どちらもすぐに信用しないだけですが、双方を主張する人がいて、それが何らかの事実・あるいは必要性において発言されているのだという事実は認識いたします。

 

 では、なぜ「ウィリアム・テル 伝 説 」があるのでしょう。

 いいかえれば、なぜ神話としてテルが必要なのか、なぜスイスというテル神話が必要な国があって、存在できてきたのか。ということです。

 ここで問題は「おとぎばなし」から離れて、地理的問題、物流的問題、政治的問題、ヨーロッパの戦略的問題にまで拡大(脱線)できます。

 


 

 豆歌手に出てくる若者たちは、北ドイツに住んでいて、この夏の日の1〜2週間後に家に戻ります。それから荷物をまとめて、アフラのところに送りだします。

 その前に若者たちが、どこにいたかははっきり書かれていません。しかし「長い道のりを歩いてきた」とあります。
 アルトドルフはフィアウィルトシュテーテ湖(ルツェルン湖)の南にあり、湖はすぐ大きく西に曲がっていますので、旅行のルートとして北と西からなら船できた可能性が高いので除外できそうです。

 東は峠の山道ですが、シェヒェン川の流れくだる細い渓谷ぞいの道で、わざわざテルの足跡をたずねて川を見に行く必要があるなら、絶対に東からきたのではありません。

 ですから消去法で、陸路をやってきたのでしたら南から旅してきたと考えてまちがいないと思います。

 アルトドルフの南、約30キロにある峠はザンクト・ゴッドハルト(ドイツ語読み)です。

 ここは東西に長く伸びる二つのアルプス山脈が中央部で十字に交差する唯一の場所で、南北を結ぶ最も重要な峠道です。他の場所では、山越えが二回必要になるからです。
 そして十字に交差するため、東西のフランスとオーストリアを結ぶ峠の一つにもあたります。

 おそらく若者たちは数日前にイタリアのミラノを出発して、けわしいアルプスの峠をこえて宿場町ヴァッセンで一泊し、この日の朝に出発。
 約20キロ離れたアルトドルフまでくだってきたもの。と私は推測しています。


 若者たちは夕方でも陽気で元気いっぱいで、夜にバスチの家まで行ってみようとする勢いがあります。

 この日に、一気にイタリアから峠をこえてアルトドルフまできたなら、いくら体力自慢の大男たちでも、へとへとになりますから、まず無理でしょう。

 前日に大仕事をこなして一休みし、今日は難所を越えた気楽さで下り道をのんびりと歩いてきた。ような気がします。

 翌日、若者たちは、アルトドルフのすぐ隣の湖畔の町フリュエリンから船にのり、湖をわたってルツェルンなどへいくのでしょう。
 そしてチューリッヒ、バーゼルなど(?)を経由して、ライン川を下って北ドイツへ向かっていくのでしょう。ルツェルンからは鉄道を使うこともできます。


 ドイツとイタリアの連絡を中継する最重要ラインであり、オーストリアやフランスを結ぶ道です。
 アルトドルフは、北からは峠へと向かう出発地であり、南からは陸路から船に乗り換える地点でもあります。




 

 もしもこの地点が、どこかの国に占領されたらどうなるでしょう。
 ヨーロッパ全体の交通・物流、ひいては経済・政治に影響を与えることができるのです。

 ヨーロッパは中国大陸と違って、地形上・気候上の特徴から、すべての土地を統一した圧倒的な超大国は出現しにくく、地方ごとに違った文化をもった封建制度が発達してきました。

 同時に多様性をもちつつも平坦な地形がおおいために、交通は活発で、相互に依存しあう関係が続いてきました。

 峠が開通する前は、とるにたらない山村にすぎなかったアルトドルフは、そんなヨーロッパの中で、まことに絶妙な場所にあります。
 どこかの国が独占すると、多くの国を刺激することになります。

 軍事上の重要ポイントでもありますから、どこの国も欲しいし、他の国に占有されて自国が利用できなくなると大変なので、そんな国があったら妨害しなければなりません。

 しかしいったん自国が手に入れると、同じ理由によってすべての諸国から干渉をまねき、下手をすると永久に戦乱からまぬがれなくなる「運命の」土地なのです。


 スイスという国自体が、ヨーロッパの中央部にあって、いくつもの峠を抱える交通の中継地という性格を持っています。

 それが特に顕著なのがこの地域です。いわばスイスを象徴しているといえましょう。

 経済的には取るに足らない(支配しても利益がない)小さな土地で、それ自体の経済的価値はほとんどなく、また地形が険しいのでゲリラ化すれば制圧が難しいです。

 所有するにはコストがかかる場所なのです。
 かえってどこの国にも属さずに独立して中立し、すべての国と関係を保った方が、どの大国にとっても好都合になります。

 そして中立し、どこの国とも等距離の関係をきずくとなると、この土地を自治する人々は、完全な中立であることをすべての国からも望まれます。
 また、私利私欲で旅行者・流通物資にあんまりアコギな通行税などをかけることもできないでしょう。

 あらゆる国の王侯貴族から庶民の商人まで、この土地を通過して利用します。
 変なことをするとたちまち悪評はひろがります。

 いつも誠実で清潔で、街も野原も美しい「イメージ」であることが自らの安全にも結びつくのでしょうか ?

 現代のスイスは、まことに美しい国のようです。
 野山は言うにおよばず、家にペンキを塗り、窓辺に花をかざる町並みに、旅行者は目を細めますが、なかなか背景は複雑です。

 多くの旅行者が、なるべく快適に平和に利用してもらうことが、スイスという国の安全保障になりえます。

 すると、テルが必要な理由もなんとなくわかるような気がします。

 自由で、自立し、勇敢で、素朴な英雄。
 いつもは寡黙で、平和を愛するが、理不尽な命令には屈服せず、山野に隠れて抵抗し、峠をふさいで自治を守る。

 スイス人は「テルのようでいる」ことで誇りをもてるし、諸外国もテルのようなスイス人であるかぎり、自立と中立を認めようということで、どちらにとっても都合の良い幻想になる。と私は解釈しました。


 男は60歳まで軍に動員可能で、どの家にも軍服と銃があり、国民には年間数週間の軍事訓練が義務づけられている国民皆兵の国。と聞くとギョッとしますが、これでようやく平和なイメージの背後の実態・実質が見えてきます。重武装中立のスイスはテルの姿そのままです。

 テルは「活躍」しつづけます。
 第二次世界大戦で、フランス降伏後、スイスは社会体制が違い、国力に圧倒的差のある悪意をもった国々に、すべての国境をとりかこまれるという絶望的非常事態を迎えます。

 このときスイス軍首脳は建国の地・リュトリの草原にあつまり、「テル」をとりあげて、侵略があった場合の決意を表明します。
 峠のトンネルを爆破して物流を遮断し、アルプスにたてこもり、徹底的持久戦をいどむ・・。のです。 たとえどんな相手でも、理不尽に屈服するつもりは一つもないのです。
 
 近代スイスは食料もエネルギーも自給できません。
 支配してもコストがかかることは昔よりも極端になっています。
 スイスの価値は、やはりヨーロッパの峠としての物流にあり、峠のトンネルが爆破されてはスイス侵攻の利益が消滅してしまいます。
 
 下手に手を出して「中立」であるがゆえに「すべての国に開かれている峠」をふさぐより、「後でゆっくり料理すればいい」と思わせたのです。

 これはドイツ・イタリアの枢軸国に対してだけではなく、連合国側へのメッセージでもあります。
 手薄なドイツ南部から攻撃するため連合国(ソ連)が首脳会議でスイスに侵攻することを提案したことさえあったのです。(極悪)
 
 
 結局、想像を絶した流血のヨーロッパのど真ん中にあって、奇跡的に(見えてしまう)スイスはほぼ無傷で、平和のうちに「戦後」を迎えます。
 デタラメな戦争をして、結局は、国民を守れなかった政府をもった国の一人として、心底うらやましいです。
 
 いろいろとカゲの部分もあったようですが、この国のあり方は、細心の注意と高い知性と強靭な精神力が必要です。
 そして、スイスという国をつくった「峠の国」という地政学的特性は、現代にあっても機能したわけです。
 
 
 そしてこの地政学的特性を活かしていく精神システムとして、「テル」はいまでも生きているのです。

 すべて神話とは、客観的事実ではないが、人々の心の中にあって現実に人々の心を動かして、機能させていくものなのです。
 そして「ハイジ」も自然と人間との関係を考えるさいに、我々を動かす小さな「神話」でありましょう。



 ザンクト・ゴッドハルト峠は、ヨーロッパで最も重要な峠の一つですが、地形がけわしく、開通は最も後になりました。
 
 南の明るく豊かなイタリアへいきたいと、主にウーリ州の名もない人々によって渓谷に道が作られ、橋がかけられ、旅人が通れるようになったのは1200年代です。

 スイス建国は、その直後の時代にあたり、この峠がひとつの国を作った。少なくとも作る大きなきっかけになり、同時に峠の存在が、この小さな国を守ってきたのは間違いないでしょう。


 ちなみにそれ以前のドイツとイタリアをむすぶ主要な峠は東のサンベルディーノ峠です。
 ローマ時代から使われていて、街道の町クールがスイス最古の都市といわれるのもこのせいです。
 経由でライン川をくだっていくルートで、ハイジの舞台マイエンフェルトもその街道筋になりますが、ゴットハルトの開通で重要性はさがってさびれてしまうのでした。


 それから、1882年、「豆歌手」が出版された、まさにその年、ゴッドハルト峠を貫通する全長16.2キロの当時世界最長の鉄道トンネルが完成します。

 旅人が歩いて峠をこえることはなくなり、アルトドルフは単なる通過地点になります。

 この小さなお話が発表されたときに、バルバロッサたちの旅はすでに過去のできごとになってしまったわけで、ここにもささやかな歴史を感じます。

2005/3/21


ずいぶん時間がたってしまいましたが、よけいなコメントをつけておきます。
いろいろ資料をみていくとどんどん面白くなってきます。
あいかわらず下手の横好きのお勉強記録ですが、もし何かのお役にたてば幸いです。

それからこの峠のトンネルのさらに下を掘り抜いて、
新トンネル「ゴッタルドベース・トンネル」が2011年完成予定だそうで、
なんとこれが全長57キロ
現在世界最長の青函トンネル53.8キロがもうすこしで抜かれそうです〜!