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研究紹介 1


紹介したい資料(一部未収集のものがあります)

題名 近年のヨハンナ・シュピーリ研究の動向

著者:川島隆(京都大学非常勤講師)
掲載:研究報告19号 177-190頁 
出版:京都大学大学院独文研究室 発行:2005/12 価格:非売品

説明(参考画像)
「研究報告19号」に収録
ドイツ文学研究者により、2004年までの世界におけるハイジとシュピーリの代表的研究が的確に紹介されている。
日本でのハイジ研究において、画期的で記念すべき論文。

これでようやく日本のスピリ・ハイジ研究が国際水準に達するための道筋がつけられた。
今後、この論文を基点として、日本独自の研究がすすめられることが期待できる。


以下、上記論文をもとに整理しました。以下「川島論文」と略記 (論文の邦題および説明の多くは川島論文よりの引用です)
さらに 関係論文集として参照→リンク

題名 ヨハンナ・シュピーリ Johanna Spyri

著者:Bleuler-Waser, Hedwig ヘートヴィッヒ・ブロイラー=ヴァーザー
収録:Villiger-Keller, Gertrud (Hrsg.) : Die Schweizer Frau. Ein Familienbuch. [S.561-612]

発行:
1910 561-612

説明
伝記
・最初のまとまった量の評伝
・著者は20世紀初頭に活躍したスイスの文学研究者。社会問題に積極的に取り組んだことで知られる。(L)


題名 ヨハンナ・シュピーリ――その幼年時代の思い出

著者:Ulrich, Anna アンナ・ウルリッヒ
出版:Gotha : Perthes,

発行:
1920 [1919] 33頁

説明 
伝記
・著者はシュピーリの姪
・本人の親族の証言ということもあり、(シュピーリの姪の娘が書いた下の本と併せて)後世のシュピーリ像に大きな影響を与えた。(L)


題名 ヨハンナ・シュピーリ Johanna Spyri

著者:Paur-Ulrich, Marguerite マルゲリート・パウア=ウルリッヒ
出版:Zürich : Rascher

発行:
1940 [1927] 19頁

説明 
伝記
★特に上記二冊は、作品『ハイジ』から逆算して作者シュピーリ像を描こうとする傾向があった。
そのためシュピーリ作品の登場人物と作者本人の同一視が進み、『ハイジ』の作者は「幸福な幼年時代」を過ごした信心深い少女だった…というイメージが何十年ものあいだ固定された。
その点は現在、真実を歪めたとも批判されている。(L)


題名 自由への道 Der Weg ins Freie

著者:Siemsen, Anna アンナ・ジームゼン
出版:Frankfurt am Main : Büchergilde Gutenberg

発行:
1950 322頁


説明 
伝記
★1940年から1960年ごろに出た伝記は、もっぱらそれ以前の伝記に依拠して書かれている。
その結果、シュピーリに関する従来のイメージを拡大して流通させることにもなり、それは1970年代以降のフェミニズム全盛期、作家としてのシュピーリが人気を失う一因となった。(L)


題名 シュピーリとハイジ Johanna Spyri und ihr Heidi

著者:Georg Th
ürer ゲオルグ・チューラー教授
出版:Bern : Haupt
発行:1982 80頁

説明 
ヨハンナ・シュピーリの
伝記


題名 「いつかあなたに私の故郷を見てほしい」。
    ヨハンナ・シュピーリ略伝――『ハイジ』作者とヒルツェル在住の先祖たち
    “Ich möchte dir meine Heimat einmal zeigen“.
       Biographisches zu Johanna Spyri, Autorin des “Heidi“, und ihren Hirzler Vorfahren.


著者:
Winkler, Jürgユルク・ヴィンクラー
出版:
Hirzel 
発行:
1982: Winkler [Selbstverlag]

説明
(川島論文より引用)作家の生地ヒルツェルの郷土史家ユルク・ヴィンクラーが手がけた
伝記研究
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・シュピーリの生地ヒルツェルの郷土史研究家である著者が自家出版した伝記
・当地で暮らしたシュピーリの先祖の系譜も辿っているのが特徴。(L)


題名 ヨハンナ・シュピーリ――その人生の諸断面(をめぐる対話)
    
Johanna Spyri. Momente einer Biographie, ein Dialog.

著者:
Fröhlich, Roswitha ロスヴィータ・フレーリッヒ/Winkler, Jürgユルク・ヴィンクラー
出版:
Zürich  : Arche
発行:1986 144頁

説明 リンク
伝記 
(川島論文より引用)作家ゆかりの地の写真など図版を多数収録しており、ヴィジュアル性を重視した作りになっている。
-------------------------
・シュピーリ研究の専門家ヴィンクラーと児童文学者フレーリッヒによる対談形式で書かれている、一風変わった伝記(ただし実際の対談記録ではない)
・半ば伝説化したシュピーリ像を切り崩そうとするフレーリヒの「攻め」に対して、「守り」のヴィンクラー。この構図が緊張感を呼び、読みごたえがある。シュピーリの「幸福な幼年時代」神話に対する批判の口火を切った注目作。(L)


題名 ヨハンナ・シュピーリ ハイジの女性作家の生涯  (tshp題訳)
  
Johanna Spyri. Aus dem Leben der Heidi- Autorin.


著者:
Winkler, Jürg
出版:
Rüschlikon-Zürich : Müller 発行日:1986 184頁

説明 リンク
伝記 
・作家ゆかりの地の写真など図版を多数収録
・ヒルツェルという土地への著者ヴィンクラーの愛着が伝わってくる本。(L)


題名 ヨハンナ・シュピーリ ――その足跡を求めて 
  
Johanna Spyri, Spurensuche.

著者:
Regine Schindler レギーネ・シンドラー (キリスト教徒としての立場から作家活動を行う児童文学者)
出版:
Zürich: Pendo 発行:1997 354頁 2002再版

説明 リンク
(川島論文より引用)かろうじて現存するシュピーリ本人の書簡やその母メタ・ホイサーの手記など、ともすれば不足しがちな資料を丹念に読みこみ、かつ想像力を駆使してシュピーリの人物像の再構成を試みる。ところどころ「ヨハンナ」宛に親しく語りかけるという体裁をとった抒情的な文体には賛否両論あるだろうが、
伝記的側面からシュピーリ文学に迫ろうとする者には必須の文献であることは間違いない。
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・未公開の貴重な資料をふんだんに駆使した、シュピーリ研究の第一人者による伝記。(著者は児童文学者で、キリスト教関係の著作が多い)
・著者がシュピーリになりきって書いた箇所やシュピーリとの脳内対話など、想像力で資料不足を補っている随筆的/小説的なパートが含まれるのに注意。(L)


題名 架空の天空――ヨハンナ・シュピーリとその時代
  Der erschriebene Himmel, Johanna Spyri und ihre Zeit

著者:
Jean Villain ジャン・ヴィラン
出版:
Zürich/ Frauenfeld : Nagel & Kimche  発行:1997 382頁 2001再販

説明 リンク
(川島論文より引用)
こちらの伝記は、時代背景への豊富な目配りをその特色とする。ただ、それは必ずしもシュピーリ像を明瞭化するのに役立っていないとしても、彼女本人についての資料が量的にきわめて限られている以上、周辺的な事柄へと目を向けていくのは次善の策として妥当な手段と言えるかもしれない。いずれにせよ、ジャーナリスティックで読んで面白いものに仕上がっている本である。チューリヒに亡命していた作曲家リヒャルト・ヴァーグナーとシュピーリ夫妻の交友関係についても一章が割かれ、詳しく語られている。
-------------------------
・シュピーリ本人よりも、彼女が生きた激動の時代背景への目配りを特色とする伝記
・著者の本名はマルセル・ブルン(Marcel Brun)。チューリヒ生まれの政治ジャーナリストで、シュピーリの遠縁にあたる
・後世での『ハイジ』受容史・出版史にも一章を割き、数値データを挙げつつレポートしている。全体として、比較的平易な文体で読みやすい。(L)


★1980年代のヴィンクラー、90年代のシンドラーとヴィランの努力により、
シュピーリ伝記研究は高度な学問的水準にまで押し上げられた。
そこでは従来のシュピーリ像が「虚像」「神話」として退けられると同時に、新たな作家像が
(時代の要請に合った形で)描かれたと言える。(L)

題名 ヨハンナ・シュピーリ ――美化され、忘れ去られ、再発見された作家
  
Johanna Spyri verklärt, vergessen, neu entdeckt

著者:Georg Escher, Marie-Louise Strauss
出版:
Zürich : Neue Zürcher Zeitung  
発行:2001 128頁

説明 リンク
伝記
・「新チューリヒ新聞」社/チューリヒ大学/ヨハンナ・シュピーリ文書館が共催した展覧会の記録をもとに作成された本。(ほぼ全ページに図版資料)
・これまでに書かれた伝記作品の読み込みを通じて、時代によるシュピーリ像の変遷を追っているのが特徴。(L)


題名 我らの児童文学の貧困
   
Das Elend unserer Jungendliteratur

著者:H・ヴォルガスト 教育学者(1860-1920)
掲載:(下記 
Doderer ドーデラー論文参照 125頁) 
発行:1896

説明
(川島論文より引用) 社会学的な児童文学論。先駆的なシュピーリ批判。


題名 ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』――現実を美化した怪しげな道徳世界
  
Johanna Spyris ”Heidi”. Fragwürdige Tugendwelt in verklärter Wirklichkeit.

著者:Doderer, Klaus クラウス・ドーデラー
掲載:『児童書の古典――批判的考察』のうち一章 121-134頁
Klassische Kinder- und Jugendbücher. Kritische Betrachtungen.
出版:Weinheim/Basel 発行:1969

説明
(川島論文より引用) 『ハイジ』における教訓主義や「都会/田園」の単純な二項対立図式、さらに宗教的=教訓的テーマで社会問題が隠蔽されている点などへ批判を展開し、後の研究の叩き台となるべき視座を提供した。
[他に1960年代までの『ハイジ』批判史について、130-133頁に摘要あり]


題名 Landschaft Gottes. Zur Rolle der Verbzus?tze in Johanna Spzris"Heidi".

著者:Kiepe,Hansjürgen H・キーペ
掲載:Wirkendes Worts17(S,410-429.) 

発行:1967

説明
(川島論文より)シュピーリの文体を分析してアイヒェンドルフ文学になぞらえた。『ハイジ』の古典的価値を追認している。


題名 『ハイジ』を打倒せよ、『もじゃもじゃペーター』を打倒せよ、革命に万歳三唱
    ――西ドイツの新たな社会主義児童文学に向けて
  
Down with Heidi, Down with Struwwelpeter, Three Cheers for the Revolution.
   Toward a New Socialist Children’s Literature in West Germany .


著者:ジャック・ザイプス Zipes, Jack リンク
掲載:
Children's Literature 5  162-180頁
発行:1976

説明
(川島論文より引用)現在、グリム童話の社会学的研究によって日本でも知られているザイプスは、ここではシュピーリ作品を「幼児的・退行的なファンタジー」の産物と見なして断罪する。彼は作中で説かれるキリスト教道徳を体制順応主義として、自然賛美の要素を現実逃避としてそれぞれ指弾した上で、その混合が子ども読者にとって有害であると説くのである。
(中略)他にもH・ホフマン(1809-1894)の絵本『もじゃもじゃペーター』の暴力的かつ権威主義的な性格を俎上に載せ、『ハイジ』と並べて反面教師として扱っている。


題名 ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』連作における教育論――ある〈教養小説〉の文学史的座標
  
Pädagogik in Johanna Spyris 'Heidi'-Büchern.
   Literaturgeschichtliche Koordinaten eines “Bildungsromans“.

著者:
Müller, Heidy Margritハイディ・M・ミュラー
掲載:
Schweizer Monatshefte 69 (1989)921-932頁 後にFundevogel 96/97 (1992), S.13-17に再録
発行:1989

説明
(川島論文より引用)作品から読み取られる教育観を、ルソー、ペスタロッツィ、ゲーテの思想と具体的レベルで比較したものである。その比較から明らかになるシュピーリの立場は、自然礼賛一辺倒でも単なる啓蒙主義でもなく、その中間に位置づけられる。ただし敬虔主義的な宗教性が突出しているのが最大の特徴だとされる。このミュラーの論文は、それまでの研究の貧困状況へ一石を投じることを企図したもので、シュピーリの精神史的な位置についての基本的理解を示すことに成功している。

(その他1980年代までの先行研究については 同書S.929f, Anm.2を参照)

題名 解放されたミニョンの妹 Heidi, Mignons erlöste Schwester.

著者:
Hurrelmann, Bettina ベッティーナ・フレルマン
掲載:
Neue Sammlung 33 , 347-363頁 発行:1993
[後に
Hurrelmann, Bettina (Hrsg.): Klassiker der Kinder- und Jugendliteratur. 発行Frankfurt am Main 1995, S.191-215に再録] 

説明
(川島論文より引用)著者は、シュピーリ作品のうちで『ハイジ』が実のところ例外的なまでに教訓主義的・宗教的要素の少ない作であることを確認した上で、作中に描かれたハイジの心の病について、顕示的に描かれている宗教性のレベルとは必ずしも一致しない心理的なリアリティーの位相を指摘する。これをフレルマンは、自らの結婚生活において深刻な精神的危機にあったとされる作者シュピーリの体験が反映されたものと捉え、その真に迫った表現を高く評価するのである。そしてさらに、「ハイジ」像をゲーテの描いた「ミニョン」と詳細に比較することで、この論者は『ハイジ』のアンチ教養小説としての側面を大胆に強調してみせている。
(原作のもつ心理的な深みを欠いた無内容な代物として
日本製アニメを切って捨てている)


題名 『ハイジ』論 Johanna Spyri’s Heidi.

著者:
Skrine, Peter ピーター・スクライン
掲載:
Bulletin of the John Rylands University of Manchester 76, Nr.3  145-164頁
発行:1994

説明
(川島論文より引用)同作に関するさまざまな問題を包括的に論じて高い水準にあるが、ここにもジェンダー論的に興味深い指摘が見られる。スクラインは作品の主な源泉として、ドイツで19世紀中盤に流行した文学ジャンルである「村物語」(Dorfgeschichte)、特にベルトルト・アウエルバッハ(1812-82)の『裸足の子』(Barfüßele, 1856)を挙げ、そこで見られる類型的ハッピーエンドとしての「結婚」のモチーフがシュピーリ作品においては周到に回避されている点に、後者のラディカルな特徴を見て取っているのである。また、後世の亜流作品と比較した場合にも、恋愛・結婚をあくまで排除するシュピーリ作品の異色性は明らかとなるという。


題名 教育のための舞台背景としての自然――父の言葉で描かれた母たちの姿
  
Natur als Erziehungskulisse. Mutterbilder im Vaterwort.
   Psychoanalytische Deutungsversuche zu zwei Schweizer Kinderbuchklassikern.


著者:
Ulrich, Anna Katharina アンナ・カタリーナ・ウルリッヒ
掲載:
Nassen, Ulrich [et al.] (Hrsg.): Naturkind, Landkind, Stadtkind. Literarische Bilderwelten kindlicher Umwelt.
出版:
München 発行:1995  9-24頁

説明
(川島論文より引用)スイス児童文学の古典である『スイスの家族ロビンソン』および『ハイジ』を精神分析的に解釈したもの。細かな言語使用のレベルにまで目配りした、着想豊かな論文である。ウルリッヒはシュピーリ作品の女性像に関して、(老年以外の)成人女性がしばしば否定的に描かれており、「母」が存在しない点、その代わりに男性の登場人物たちへ「女性的・母性的な機能」が付与されている点を指摘している。


題名 Semiotik des Essens und Trinkens in Johanna Spyris Heidi.
   (ヨハンナ・シュピーリのハイジの飲食にあらわれる記号論)(tshp題訳)

著者:
Spinner,Kasper H. カスパー・シュピナー
掲載:
Herwig,Henriette[et al.] (Hrsg.): Lese-Zeichen. Semiotik und Hermeneutik im Raum und Zeit.
出版:
Tübingen 発行:1999  431-440頁

説明
(川島論文より引用)『ハイジ』第一部における「飲食」のモチーフの象徴的意味合いを分析することを通じ、作中では(ヤギの乳などを通じて表象される)「自然」が代替的に「母」の機能をも担っていると論じている。


題名 教育州としてのアルムの山――ヨハンナ・シュピーリの『ハイジ』試論
Die Alm als pädagogische Provinz. Oder: Versuch über Johanna Spyris Heidi.

著者:
Härle, Gerhard ゲルハルト・ヘルレ(トーマス・マンの研究で知られる)
掲載:
Rank, Bernhard (Hrsg.): Erfolgreiche Kinder- und Jugendbücher.  59-86頁
出版:
Hohengehren 発行:1999

説明
(川島論文より引用)『ハイジ』を反・教養小説と見るB・フレルマンHurrelmann (1993)の説に留保つきで依拠しつつ議論を展開した。(中略)市民階級の女性の教養プロセスの破綻を描いたものとして作品を読み解いている。また、作品表層に見えるキリスト教的テーマに対して、潜在的な信仰の危機の問題をヘルレは指摘している。
日本のアニメにたいしてフレルマンの見方に同調し、のみならず原作の映像化を押しなべて「通俗化」に他ならぬものとして扱っている)


題名 Vom “Verbrüderungs“-Konzept Johanna Spyris zur “Geistigen Landesverteidigung“.
  Schweizerisch-deutsche Kulturbeziehungen im Spiegel der Sprache schweizerischer Jugendbuchautorinenn.


著者:
Ris, Roland ローラント・リース
掲載:
Schweizerische Jugendbuch-Institut (Hrsg.):
  Horizonte und Grenzen. Standortbestimmung in der Kinderliteraturforschung.  
33-74頁
出版:
Zürich 発行:1994

説明
(川島論文より引用)19世紀後半からファシズム・第二次大戦期に至るまでのスイスとドイツの文化的な関係を、この期間のスイス児童文学作品を手がかりに考察した論文でシュピーリを扱っている。その分析によると、シュピーリには強く親ドイツ的な傾向があり、作品内で牧歌的なスイス像を描き出す一方、スイス特有の言葉遣いを周到に避けている。だからこそドイツの広範な読者層にアピールしたと考えられるという。(中略)このシュピーリの言語使用上の特徴は、スクラインも前掲論文で指摘している。


題名 スイス児童文学における自然と文明、または進歩と郷愁
    
Natur und Zivilisation oder Fortschritt und Heimweh in der Schweizer Kinder- und Jugendliteratur.

著者:
Rutschmann, Verenaヴェレーナ・ルッチュマン
出版:
Nassen  発行:1995 25-44頁

説明
(川島論文より引用)「アルプス」の像が歴史的にスイス国家のナショナリズムを支える「神話」として機能してきた経緯を踏まえつつ、児童文学作品に描かれたスイスの「自然」の像を、進歩主義と文明批判のあいだの緊張関係において捉えている。ルッチュマンが正しく指摘するように、シュピーリ作品においては文明批判的な方向性が際立っており、その一方で政治的な問題は直接的には回避されている。そして、むしろその点こそ、後世において「スイス」というイメージを固定するのに寄与することになったのである。


研究紹介 2

研究書 紹介 1


「川島論文」は、広大な世界への扉をひらいてくれる画期的な存在です。

 日本でも、海外にはいろいろな研究が存在しているのだと、多くの人がわかっていましたが、ここまで豊かに、具体的・総合的に体系づけて論じられたことはありませんでした。

 ここでの紹介はあくまでも、内容の一部を抜書きしただけであり、全体を考察したもっとも大切な部分が抜け落ちています。是非とも実際の論文に接していただきたいです。

「川島論文」が、児童文学・ハイジ・シュピーリ等に関心のある人々によって広く読まれることを強く願っています。

 川島隆様、本当にありがとうございます。m(_ _)m

2005/1/15