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ハイジ関連 音楽・詩3 高畑ハイジ編 その2 挿入歌

ドイツ語ヒアリングで「シャレースイスミニ」様には大変お世話になりました。おかげさまでいくつもの曲を特定することができました。ありがとうございました。


紹介したい資料(一部未収集のものがあります)


五月はすべてが新しい
パウル・ハイ絵


題名  ちょうちょ(蝶々) Haenschen Klein(ハンスちゃんは小さいよ) クララのおばあさんのグラス演奏

作詞 : 一番:野村秋足(あきたり)国文学者/二番:稲垣千頴(ちかい)(原詩は「胡蝶」)  
選曲 : 伊沢修二(原曲 不明)  


説明  (参考)  (歌詞リンク) 
原詩は「胡蝶」。江戸時代から日本各地で歌われていたわらべ歌。1875年(明治8年)愛知県で採られた詩が、今もほとんどそのまま使われている。当時の曲は現在では不明になっている。海外の曲に日本独自の詩をつける「唱歌」の最初期の成功曲の一つ。戦前は愛国的表現が入っていたが、戦後改作されている。

曲はスペイン民謡とされることが多いが、あまりはっきりしない。明治に伊沢修二がアメリカ留学中にメーソンの所持していたドイツの唱歌集から採用して、1881年(明治14年)に
「蛍」「むすんでひらいて」などと同時に発表された。つまりハイジ原作第二部と同じ年の誕生である。

ドイツ起源の可能性は強いが、現在ドイツ語では二種類の詩で歌われている。
(1)
 Haenschen Klein(ハンスちゃんは小さいよ 1807)と、
(2) Alles neu, macht der Mai(五月はすべてが新しい(春が来た) 1818) である。どちらも歌詞がハイジの物語と関連しそう。

アニメ・高畑ハイジでは、第27話「おばあさま」で、クララのおばあさんが食卓でグラスに水をそそいで、スプーンで叩いて演奏して、クララやハイジを大喜びさせる。
ドイツ語でのアニメ吹き替えも当然同じ「ちょうちょ」の曲である。(作画が決まっているので変えようがない) 
ここで、クララが「
Haenschen Kleinね」と言っている。しかし、「ハンスちゃん」は故郷を懐かしむ歌であり。せっかく花を咲かせたのだから、ここは「この曲「春が来た」なのね。」と、クララは言ってほしかった。「ハンスちゃん」だと、ハイジが山が恋しくなって泣き出してしまうかもしれません。クララが無神経にみえてしまいます。

ちなみに水中花は、江戸時代の日本の発明。あれは日本からの輸出品?


題名 不明 ヨーデル

作詞 :    
作曲 : 


説明 
数曲のヨーデルが使用されているが、ヒアリング不能で歌詞が特定できません。
探索には専門家のご協力をお願いしたいです。よろしくお願いいたします。



題名 ディヴェルトメント 第一番ニ長調 KV136 Divertimento B-dur KV136 125a   挿入曲

作曲 : 
Wolfgang Amadeus Mozart ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 1756-1791 1772/1-3作曲  

説明
ディヴェルトメントとは、イタリア語で「娯楽」で、音楽は「嬉遊曲」とされる。当時は、娯楽や祝い事などの機会の音楽と、室内楽全般について意味したという。
モーツァルトのこのディヴェルトメントは136(第一)から138(第三)までの三連作。
娯楽用というよりかなりシリアスで、交響曲に近いものらしい。作曲の意図は不明で多くの謎につつまれているという。
K136は急緩急の3つの楽章構成のソナタ。
(ソナタとは多楽章構成器楽曲の一形式のこと)

第一楽章 Allegro  約4分 イタリア的な明るさをもつ。
高畑ハイジ第23話「大騒動」猫達が勉強部屋をとびはねる場面のBGM
第二楽章 Andante 約6分 イタリア・オペラのアリアを思わせる優美で叙情的な旋律
高畑ハイジ第19話「フランクフルトへ」ハイジたちがフランクフルトに到着時のナレーションのBGM
高畑ハイジ第26話「ゼーゼマンさんのお帰り」冒頭でのBGM
第三楽章 Presto 約3分  躍動的なフィナーレ(使用されていません)

 「映画を作りながら考えたこと」高畑勲著のP129紹介あり。

高畑監督より直接お聞きしたところによると、この曲は渡辺岳夫さんがハイジ用の音楽ストックとして事前に準備しておいた曲だそうです。監督本人もよく知っていて好きな曲ですが、有名だけあって視聴者の印象に残りやすいため、どこに使用するか注意深く考えたそうです。


題名 うるわし春よ Wie scho:n ist es im Freien  劇中歌

日本語作詞 : 丹治汪   編曲 : 三木鶏郎(アニメ・ジャングル大帝主題歌作曲者)
作曲 : Friedrich Silcher 

説明 リンク
高畑ハイジ第29話 「ふたつの心」でクララのおばあ様といっしょにクララとハイジが森に行った帰りに三人で歌った歌

ドイツの輪唱曲Canonで、短い曲をずらしながら三人で歌う。日本の詩はほぼ原曲と同じ意味。
三木鶏郎が主導して、日本語にした。

ドイツ語版では、この場面でHoch auf dem gelben Wagen 黄色い馬車の上 という軽快な曲に差し替えられている。(
作詞 Rudolf Baumbach 作曲 Heinz Ho:hne)


題名 五月に寄せて An den Mai   クララのおばあさんのグラス演奏

作詞 :  日本語訳詩 : 青柳善吾(赤木健介の別の歌詞もある 著作権切れ)  
作曲 : 
モーツァルト 1756-1791   

説明 参考
日本の小学校高学年の唱歌として歌われていた。
作曲はモーツァルト。享年の
1791年1月に、最後のピアノ協奏曲K. 595の主題を基に、子供の為に分かり易く作曲されたもの。

第31話「さよならおばあさま」でクララのおばあさんがグラスを叩いて演奏する曲。
いよいよおばあさんが帰ってしまうというので、ハイジもクララもノリが悪い。
「ちょうちょ」の原曲が「Alles neu macht der Mai 5月はすべてが新しい(春が来た)」で、「5月」でつながっていますので、おばあさんは前の曲の続きとして盛り上げようとしたのですが…。 
ドイツ語版でも、同じ曲が使われているのは「ちょうちょ」と同じ。


題名 五月がやってきた Der Mai ist gekommen 手回しオルガン曲

作詞 : Emmanuel Geibel (エマニュエル・ガイベル)1841作
作曲 : Justus W . Lyra (ヤステス・リラ) 1843作

説明 リンク
五月がやってきて、楽しく晴れ晴れとした、外に飛び出さずにいられない気持ちを表した曲。
Wandershaft(さすらい)という題もある。

高畑ハイジ第22話「遠いアルム」で、ハイジとオルガン弾きの少年初めて出会うときに手回しオルガンで演奏している曲。可愛く品がある、すこし物悲しい曲と、少年の世すれた態度の対比がリアルだった。
五月に出会ったさすらいの少年という意味が含まれているのですね。
2007/10/31原曲確認できましたが、ドイツ語版では別の曲にさしかえられている。

追記 2007/10/27マサヤン様からMIDIファイルをご提供いただきました。ありがとうございます。


題名 いとしのアウグスチン O, du lieber Augustin 手回しオルガン曲

作詞 : マックス・アウグスチン? 1678没  
作曲 : 
ボヘミア起源の“ワルツの歌” 1800年ころ
( その他作詞 : 「おほしがひかる」由木康(ゆうき・こう) こどもさんびか
22番旧版、77番改訂版 )

説明 リンク リンク2
17世紀にウィーンの街角で時事風俗を歌うベルゲンゼンガー(辻歌い)が流行し、その一人のマックス・アウグスチンの逸話が元になっているとされる。多くの歌詞が知られている。
曲は1800年ころ歌われていた、ボヘミア起源の“ワルツの歌”といわれる。

日本のドイツ語教材では、Eia popeia,was raschelt im Stroh ? (ねんねんころり、わらの中でかさこそするのはなあに?)という、ナンセンスソングの歌詞が掲載されていた。

また、日本の「こどもさんびか」で「おほしがひかる」
由木康(ゆうき・こう)作詞でまったくのオリジナルの歌詞でクリスマスソングにもなって、長い年月、幼児達の間で歌い継がれている。

高畑ハイジでは、オルガン弾きの少年が手回しオルガンで演奏している。第31話のクララの結婚式ごっこなど。
手回しオルガンは内部の穴がたくさん開いた円盤状の厚紙を取り替えることで違う曲を演奏できる。


題名 クララの結婚式の歌 劇中歌

作詞 : 高畑勲 (監督ご本人から直接確認できました)
作曲 : モーツァルト フィガロの結婚 より

説明 
第三幕 14曲目 合唱「お受け取り下さい、奥様方」(Coro:"Ricevete,o padroncina")の曲に、高畑監督が独自の歌詞をつけた。
原曲の歌詞の意味は「お受け取り下さい、奥様。このバラとお花を 今朝私たちが摘んできました。私たちの愛をこめてささげます。農家の娘で貧乏ですが、わずかながら心からのささげものです。」

クララのおばあさんとクララ、ハイジが、街でぐうぜん結婚式の場面に出会う。子ども達がうれしそうだったため、おばあさんの思いつきで、ゼーゼマン家にサーカスの人たちを招いて「結婚式ごっこ」をしたときの音楽。

この歌で花嫁衣裳のクララが広間に登場し、かりそめの祝福を受ける。
楽しそうなクララだが、この直前の身支度をする場面のとき、クララはハイジにだけ「自分は本当はお嫁さんになれない」と淡々と落ち着いて口にしている。
歩けない少女の心の傷と絶望の深さが垣間見えてしまった。


題名 踊ろう楽しいポーレチケ クララの結婚式のワルツ 劇中曲

作曲 : シゲチンスキー踊ろう楽しいポーレチケ」/ポーランド民謡「Polka Tramblanka」(ポルカ・トランプランカ)より採譜して編曲。
(日本語作詞 : 
小林幹浩 NHK「みんなのうた」で1962年11月初放送)

説明 
上記の歌に続いて、全員で踊るときに演奏された音楽。

いつもはしかめっつらのチネッテが楽しそうだったりと、面白い場面のはずだが、にぎやかな最中におばあさんが子ども達を置き去りにして旅立ち、ハイジとクララを泣かせてしまう。
ハイジのフランクフルトでの生活の、決定的いきづまりを見せつける場面となる。

オルガニストのK様からの情報提供をいただき、
ポーランド民謡(たのしきワルツ)と判明。2006/7/23
研究者のちば様より連絡をいただきました。これで最終解決です。2008/9/3


題名 陽気なヤギかい  劇中歌

作詞 : 高畑勲が改作して使用 (訳詩・劇団とちのみ)
作曲 : スイス民謡(おいらは百姓の次男坊)   

説明 
原曲は、スイス東部・オーストリアチロル地方の民謡。日本では歌声喫茶のレパートリーとなっている。さらに日本とスイスの友好を歌う歌詞もつけられている。

べつの歌詞としては1968年に「NHKみんなのうた」で「みどりいろの翼」作詞 井田誠一、編曲 溝上日出夫で放送されているが、高畑ハイジで使用している歌詞は、高畑監督のオリジナルである。リンク(ハイジ大百科様)
第46話「クララのしあわせ」、第52話「また会う日まで」で使用されている。
高畑ハイジの劇中歌の中では、もっとも印象深く、楽しい曲

ちなみに、ドイツ語版高畑ハイジでは、使用されておらず、Der Mond ist aufgegangen(お月様でたよ)とWeisst du wieviel Sternlein stehen(お星様いくつ)に、差し替えられている。


題名 野ばら Heidenröslein (野なかの薔薇) 劇中歌

作詞 : 
Johann Wolfgang von Goethe ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 1749-1832  1771作詞
作曲 : Heinrich Wernerハインリッヒ・ウェルナー1800-1833 1829作曲 訳詩 : 近藤朔風 
作曲2 : Franz Peter Schubert シューベルト  1797-1828 1815作曲 訳詩 : 近藤朔風(ウェルナー曲とは内容が違う)
その他多くの作曲家が曲をつけ、150曲以上あるという

説明 リンク
とくに説明の必要のない名詩・名曲。大人でも子どもでも味わえる。
若き日のゲーテが純真素朴な村娘フリデリケ・ブリオンと愛しあい、離れていった体験が強く反映している。
ゲーテはこの思い出を、心の痛みをもって生涯持ち続け、ブリオンを「ファウスト」のグレートヒェンのモデルとしたのは有名。

曲としては、ウェルナーが歌いやすく普及している。音楽教師で合唱指揮者とのこと。この一曲しか知られていない。
訳詩の近藤朔風はローレライなども訳詩した。
高畑ハイジ第49話「ひとつの誓い」で冬の家でのパーティのあと、この曲をクララ主導で村の子ども達と一緒に合唱している。
ドイツ語版高畑ハイジでは、使用されておらず、「Guter Mond, du gehst so stille(月は静かに)」に差し替えられている。

シューベルト版はウェルナーの曲の原型となったらしい。シューベルトのゲーテへの敬愛は深かったが、ゲーテ自身はシューベルトを評価しなかった。シューベルトの死後、ゲーテは自分の誤りに気がつき後悔したという。


題名 Heidi ドイツ版主題歌 

作詞 : W. Weinzierl, A. Wagner 1977発表
作曲 : Christian Bruhn (Komponist)    歌 : Gitti & Erika

説明 リンク 
Gitti & Erika
ドイツ語版高畑ハイジの主題歌。エンディングにも使用されている。
日本では紹介されていないが、作品世界をよく表現した佳作となっていて、ヨーロッパではフランス語、イタリア語に訳されてそれぞれ広く普及している。
ヨーロッパではハイジの主題歌はスペインをのぞいて、この曲となっているようである。

歌手の女性デュオ
Gitti & ErikaのCDはおすすめ。

その他のドイツ版オリジナルのBGMの作曲は
Gert Wilden 参考CDサウンドトラック



ハイジ関連 音楽・詩3 高畑ハイジ編 その2


 ここでは、アニメ・高畑ハイジで使われた、渡辺岳夫作曲のオリジナル曲以外を集めてみました。まさに高畑監督の音楽センスがもっとも良く出ている部分でしょう。

 アニメ・高畑ハイジは英語圏を除く、世界各地で繰り返し放映されて高い人気をもっていますが、それぞれの地域でさまざまな変形が見られます。

 音楽も、いろいろです。
 ドイツ語バージョンでは、まったく別の主題歌となり、挿入歌もすべてまったく違う曲がつけられています。それなりに作品となじんでいます。

 スペインでは、日本語の「おしえて」「まっててごらん」がそのまま意味も翻訳されて使用され、挿入歌もそのままです。

 フランス・イタリアでは、主題歌はドイツ語の翻訳版が使われてそれぞれフランス語・イタリア語で歌われていますが、BGMは渡辺岳夫の日本版を使用するという不思議なことになっています。

 台湾でも、70年代の放映当時は別の主題歌が使われていますが、挿入歌はそのままのようです。
 香港・中国版は日本語版の翻訳で、韓国版は未確認ですがどうやら日本語の翻訳そのまま「らしい」です。

 アニメ・高畑ハイジは日本国内でも権利関係の経緯がややこしいのですが、海外にいくとさらに複雑怪奇のようです。
 だれか教えてくれないでしょうか? アニメ界のアンタッチャブルともいわれている「らしい」という「うわさ」です。

でも、どの版でも共通するのは、クララのおばあさんの「ちょうちょ」かも知れません(^ ^;)

 2005/12/23



 雑記です。

 「おほしがひかる」とのであい


 日本を大寒波が襲っておりますが、今年もクリスマスがやってまいります。

 由木康(ゆうき・こう)は、「きよしこの夜」の訳詞者として有名です。この歌を知らない人は絶対にいないでしょう。

 この日本屈指の讃美歌作者は「愛しのアウグスティン」の日本語版、「おほしがひかる」の作詞者(まったくオリジナルですから)、でもあります。

 これを知ったのは、なんと5歳の女の子・幼稚園児のKちゃんが12/18にクリスマスのリハーサルで、私の目の前でピアノを人差し指一本で演奏しながら歌ってくれたときのことです。

「え、これ「愛しのアウグスティン」じゃないか?!」
「ずいぶん昔からの歌ですよ」と、Kちゃんのおばあさん。
「へー、日本語版もやっぱりあったんだ。簡単で楽しい曲だからきっとあると思ってました。でも今朝もこの歌について調べてましたが、日本で歌われているかどうかわからなかったんです」
「そうなの。でもみんなも歌集にはドイツ民謡としか書かれてないから元がどんな歌なのか知らないのよ。」

 そんな会話をしているとおじいさんが、会話に参加され、
「由木康さんには昔、何回か会ったことがありますよ。東中野の教会にいらっしゃいました」とコメントしてくださりました。

 なんとまあ、思いがけないことに由木康さんが、「知り合いの知り合い」になってしまいました。
 世間は狭いものです。v(^-^)

 調べてはみたけれど日本語版はないのかなー。
 と思いはじめてからほんの数時間後のことですから、こんなタイミングのいい話もありません。
 いつのまにかクリスマス・ソングになっていたのです。

「おしえてくれてありがと。とっても役にたったよ」
 と、あとからKちゃんに言うと、ニコニコっとして、とてもうれしそうにしてくれました。

 Kちゃんは髪型が「ほとんどハイジ」で、「似ている」のです。
 そして先々週、テレビ版の高畑ハイジのDVD を1〜5巻まで「見てみますか?」とKちゃんのお母様に託したばかりでもあります。

 250年前にウィーンの街角で歌われていた曲が、いつのまにかワルツの曲となり、120年まえにはフランクフルトで少年がオルガンで演奏しました(?)。

 そして、さまざまなバリエーションを生みだして世界中にひろがり、数十年前からは日本でクリスマスソングになり、すでに長い年月、代々の幼児たちが、楽しげに歌っているのです。

 すっかり忘れてしまいましたが、ひょっとして私自身も幼稚園児の時に歌っていたかもしれません。

 これは私にとって、すてきなクリスマス・プレゼントになりました。

 すべての人が幸せなひとときをもてますように・・・


 2005/12/23