会場 日本キリスト合同教会江戸川台教会 1階 使用テキスト:上田真而子訳「ハイジ」(岩波少年文庫)。 会の進め方:毎回1章ずつ読んできて、感想を話し合う。
第一回「ハイジを読む会」が開催されました。
とはいいましても総勢11人の小さな会でしたが、道路に面して全面ガラス張りの明るく開放的な部屋で、楽しいひと時がもてました。 (レースのカーテンがありましたので、落ち着ける部屋でもありました) 前日に同じ場所で上演された「ハイジの語り芝居」の出演者もおられます。 お茶とヤギのミルクでつくったロールケーキをいただきました。
戦前からのファンも含め、全体に年齢は高めで、男性は4人と少数派。
ハイジ第一章「アルムじいさんのところへ」を解説した後、アニメを数分見て、原作とアニメの違いとその意味など、多くの意見が出ました。
人生経験豊富な方々なので、ハイジの性格ずけ、これまでの生活など、多くのすばらしい読みときがなされました。
当時の貧しい子ども達やそうなる背景の病気の多さなど、原作やアニメも、それらが一見見えなくされても、ちゃんと現実にあった背景をふまえて作られていることがわかってきました。
これで全作を通してみると、意義あるハイジの作品論になると思われる質の高い時間でした。参加の皆様に感謝です。
ハイジを読む会(1) レジュメ 2007年5月27日
1 ごあいさつ(以下3〜4たかはしたけお) この会は「ハイジ」の原作を毎月1章ずつ読む(全23回)。
2 参加者の自己紹介
3 原作より第1章「アルムじいさんのところへ」アルムおんじは悪い人? 原作の始まりは、ハイジよりむしろアルムおんじに重点がある。アルプスの大自然が描かれる一方、一人の人間の暗い過去が語られる。 長く故郷を離れていて、帰ってきてからも山の上の小屋に一人住むアルムおんじのことを本当に知る人はいない。 4 アニメ「アルプスの少女ハイジ」第1話より:ハイジってどんな女の子? 原作第1章ではアルムおんじを中心に物語の背景が語られるので、まだハイジがどんな女の子かということは明確には語られていない。 アニメ「ハイジ」第1話の中でハイジがどんな女の子なのかをよく示しているシーンを見てみよう(DVD「アルプスの少女ハイジ」第1話から、ハイジがペーターやヤギたちと初めてアルムの山を登るシーンを見る)。ほぼ原作に忠実に製作されているが、一箇所原作とは異なる興味深い演出がなされている。それを見つけてみよう。 5 ディスカッション
6 ハイジ研究家による「ハイジ」参考資料の紹介(tshpによる説明) 資料内容 その他、 ひととおり、簡単な解説を加えて、そのあとお茶の時間となりました。 7 お茶の時間 ヤギのミルクを使ったロールケーキ(柏の百貨店地下で購入)と、お茶で楽しい会話がはずみました。 (以上) |
第2回「ハイジを読む会」が開催されました。13名出席されました。 ハイジを読む会(2) レジュメ 2007年6月24日(日)午後3〜5時 日本キリスト合同教会江戸川台教会1階 1 ハイジの讃美歌「お日様の歌」をうたう 2 原作より第2章「おじいさんのところで」:子どもと共に生きる 物語の初めのおじいさんとハイジの関係は、血のつながった祖父と孫の関係とは思われない。 アルムおんじは、ある時期から世界に対して自分で勝手に線を引いて、その外のことは知ろうともせず、関わることもなく、その線の内側だけで生きようと決めている。 おんじはこうして、誰にもけっして心を開くまいと決めており、それを押し通す自信もあった。 しかし、おんじが心を開いたのは、ハイジが血を分けた孫だったからではない。 3 アニメ「アルプスの少女ハイジ」第2話より:おじいさんの小屋の中は? 優れた児童文学の特徴の一つは、人間の心の問題をやさしく解き明かしつつ、それとともに、ある時代のある地域の特定の生活スタイルを克明に描き出していることである。 大人向けの優れた文学の特徴は、人間の心の問題を深く追求することにある。 このような意味において、「ハイジ」は児童文学としてきわめて成功した作品の一つである。 (2〜3高橋竹夫) 4 ts氏による「ハイジ」参考資料の紹介
(以上) |
山小屋の実際 私はスイスに行ったことがありませんので、もちろん実際の当時のスイスの山の中の家がどうだったか、わかりません。 古い本の挿絵や、絵本などを見て、また現地を旅行された高橋牧師や多くのファンのみなさんからの情報でおそらくこうではなかったかと思えることを少し話したいと思います。
アニメのハイジの山小屋は魅力的です。 明るく、清潔で、おじいさんが、きちんとしたことが好きなきれいずきというのがわかります。 実際の山小屋は、どうやら牧童の避難小屋として作られていたようです。 アニメのデザインは、実際の山小屋と、マルタ版の挿絵、そしてカリジェの絵本を参考に宮崎駿さんが設定したもので、実際に模型にしてみるといろいろと矛盾がでてきました。 現物を正確に描かれた古い本の挿絵をみると、ハイジの寝る屋根裏は、完全な二階ではなく、ロフトというべき乾草保管スペースです。 すぐよこにはおじいさんのベッドがあります。 おじいさんのベッドがあって、はしごがあって、とびらがあります。 このむこうはなんなのでしょう? 小屋の向って左の小屋は道具小屋とされてますが、これは当時ありませんでした。 原作のさしかけ小屋、母屋からはりだした道具小屋という表現は、するとアニメの右側のヤギ小屋の可能性が高いのではないでしょうか。これは古い挿絵にも出ています。
ハイジは、原作もアニメも魅力あふれる作品で、特にアニメの美しい描写は、一目でハイジの住むところへのあこがれをかきたてます。 これは、ヨーロッパの人たちにとっても同じように感じており、ドイツやスイスで放映されている日本アニメハイジの主題歌を紹介しておきます。 もともとの日本の歌とは曲も詩もまったく別のものにさしかえられています。 それは下記のこんなような歌詞になっていて、これが最大公約数的ハイジという物語の現代ヨーロッパでのとらえ方の代表と見ていいでしょう。 tshp
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Heidi, Heidi, deine Welt sind die Berge! Heidi, Heidi, denn hier oben bist du zu Haus'. Dunkle Tannen, gr?ne Wiesen im Sonnenschein, Heidi, Heidi, brauchst du zum Gl?cklichsein. ハイディ、ハイディ、君のすべては山にあるんだよ! ハイディ、ハイディ、だっておうちがこの上にあるんだもの 。 うっそうとしたモミの木に、お日様かがやく緑のまきば ハイディ、ハイディ、君は幸せでなくっちゃいけない! Heidi, Heidi, komm nach Haus', find dein Gl?ck, komm doch wieder zur?ck! ハイディ、ハイディ、 おうちへおかえり、君は幸せになるんだよ。 また戻っておいで! Dort in den hohen
lebt eine kleine Maid, gut Freund mit allen Tieren, ist gl?cklich alle Zeit, 山の高いところに住んでいて、 どうぶつたちは、みんなすてきなともだちの、 ひとりの小さな女の子は、 いつだって幸せなんだ。 im Winter wie im Sommer auch, wenn all die Herden zieh'n, am Morgen und im Abendschein, wenn rot die Alpen bl?hn. 冬だって夏だって 朝にはみんなが目をさまし、 夕がたにはアルプスがまっ赤になるよ 。 Heidi, Heidi, deine Welt sind die Berge! Heidi, Heidi, denn hier oben bist du zu Haus'. Dunkle Tannen, gr?ne Wiesen im Sonnenschein, Heidi, Heidi, brauchst du zum Gl?cklichsein. (繰り返し) Heidi, Heidi, komm doch Heim, find dein Gl?ck, komm doch wieder zur?ck! ハイディ、ハイディ、 おうちへおかえり、君は幸せになるんだよ。 また戻っておいで! |
参加者は10人ですが、かえって活発な意見の交換がおこなわれました。
皆さん慣れてきて、手持ちの絵本を持ち込んだり、スイスの資料を持参してくださったりと、ますます楽しいひと時となりました。
ハイジを読む会(3) レジュメ 1 ハイジの讃美歌「お日様の歌」をうたう 2 原作より第3章「牧場で」:ハイジの生き方、おじいさんの生き方 ハイジは父の顔も母の顔も知らず、肉親の愛情を知らない。 一方、アルムおんじは俗悪な世間を嫌い、一人山小屋に住み、アルムの山のタカのように孤高の生き方を貫こうとしている(同上p.77)。 ハイジとおんじは生き方が違う。 3 白黒映画「ハイディ」(1952年スイス)より:ハイジ初めて山へ この映画は西欧人に受け入れられるハイジとするために、原作とはかなりハイジの出で立ちが違う(おさげ髪)。 その後、付録にある同映画のオーディションで撮影された20名ほどとスイスの子どもたちの写真を見る。 (2〜3高橋竹夫) 4 ts氏による「ハイジ」参考資料の紹介 ハイジの山の景色で、よくスイスの紹介で使われるマッターホルンなどの人をよせつけない荘厳な自然とは違う、人間の生活環境としてのスイスの里山の表情です。 ・ 1910年代のボストン版ハイジ、それと同じ装丁の1930年代のトリッテンの続編。 ・ 1937年のシャーリー・テンプル主演の映画のビデオ・DVD,当時タイアップして映画の写真を挿絵にしたハイジの英訳本。 ・ アメリカでほぼ10年おきに作られてきた歴代のハイジ映画のビデオ数本。 ・ 1930年代のジェシー・スミスによる挿絵のハイジ英訳本。 ・ 1950年代から現在にいたる、各種アメリカでのハイジの絵本。 アメリカでのハイジは、シャーリー・テンプルとスミスに大きくイメージを固定化されており、またストーリの変更、キャラクターの通俗化が著しいのが見て取れます。
5 お茶の時間(ディスカッション) コクがあり、ヤギのくせはなくしてあります。出席者の方々に聞くと、半分以上の方が子どもの頃、ヤギを飼って乳をしぼったり、ヤギのミルクを飲んでいたりしていたそうで、日本とヤギのかかわりあいの意外な深さが実感できました。 これは牛でも同じ事で、大手乳業はそれでは困るので年中同じ配合飼料を与えて、品質を「安定」させているのです。 またヤギは頭がかたいので、おもしろがってよく子どもにつっかかり、つき倒したりします。 皆さん、楽しそうに見ましたが、この場面は、テンプルの自伝によれば、男の子が金髪のかつらをかぶって代わりにスタントしたそうです。 それを話すと「大スターのテンプルが押し倒されて、なにかあったら大変だものなあ。」と、感想が聞かれました。
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