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「まえがき」(小室直樹)より

 ここで小室直樹は多くの断片的紹介をしています。列記してみます。

・日本は特殊な国である。

・日本人と外国人とは理解しあえない。(欧米人と中国・朝鮮の人の間では割合容易に理解可能)

・世界中にあるが、日本には「宗教」と「論理」がないからである。

・日本に「宗教」と「論理」がないのは、日本教という「ネガ宗教」があるからである。
 (宗教のかわりにネガ宗教が代わりにある)

・日本人はものを考えるときに、論理ではなくフィーリングで感じる。(数千年これが持続)

・日本人は日本が変則であることを理解していない。
 (裏返せば、世界の普通のシステムを理解していない 理解していないから相互理解できない) 

・そのため日本以外では絶対におきないことが、日本ではおきてしまう。

・日本人はキリスト教を理解できない。

・日本人クリスチャンは、日本教徒キリスト派である。 (クリスチャンではない !)

・日本は仏教国であり儒教国であるが、現在まで仏教や儒教が理解されたことはない。

・キリスト教・仏教・儒教は日本に入ったとたんに、日本教に変質してしまう。

・日本人はイデオロギーが理解できず、共産主義も日本教に変化させてしまう。

・日本人にはキリスト教徒・仏教徒・儒教徒・共産主義者がたくさんいるが、すべて日本教徒である。

 実に過激で意表をついた、真意を理解しかねる命題ばかりですが、小室直樹はこれらを科学的手法により、山本七平と共同作業で研究を試みたのだと主張しています。


(引用)
 科学の定石である分業と協同(デイヴイジョン・オヴ・レーバー・アンド・コオーデイネーション)にもとづく作業である。(中略)

 この作業をつうじて、誰にでも、社会を解析(アナライズ)する論理が分かるようにした。
 すなわち、現代社会学の中心理論である構造機能分析を理解できるようにした。
 構造機能分析は、マックス・ウェーバー、デュルケムから、アメリカの代表的社会学者タルコット・パーソンズにいたるまで、社会分析の中心理論(中略)

 ・・山本学(引用者注 山本七平の思想)こそ典型的な構造機能分析であり、山本学を理解するということは、同時に、社会学の中心理論である構造機能分析の理解ということにもなる。


 具体的にどうするかは、

・日本教の神学を整理して体系化して説明する

・キリスト教を理解するには「ドグマ、サクラメント、神義論(テオデイツエー)、ファンダメンタリズム」といった概念が重要だが、日本教にはすべてがない。

・日本教をキリスト教的組織神学で考えれば、上記の概念は存在できないからである。

・だから上記の概念を意味する日本語がなく、日本人は考えたことも理解したこともない。

・しかし日本教に上記概念と同じ「機能」をはたすものがある。

・キリスト教の各機能を、対応する日本教の同じ各機能と対置させて、同じ機能を果たしているのに、どれほど構造が違うか比較する。(トリの翼と、コウモリの翼。あるいは魚のヒレとイルカのヒレは同じ機能だが、構造がまったく違う)

・・とあります。
 面白いとは思いませんか?

 この試みが成功すれば、我々日本人が、自分自身をこれまでとは違った視点で、外部から眺めることが可能になるかもしれません。

 それは自分自身をよりよく知ることであり、自己分析して長所と短所を把握する一助となることでしょう。

 おまけとして、なにやらエタイのしれないところのあり、とても知りたいがうさんくさそうな「キリスト教」まで、理解可能になるかもしれません。

 これはナカナカお得な、知的冒険になりそうではありませんか (^-^;;)