RCA & RCA Victor Recordings-3

<Table of Contents>

・The Blue Danube
・The Enchanted World of Johann Strauss
・Crown Jewels of the Waltz King
・Long-lost original second movement "BLUMINE"
・Rachmaninoff:Piano Concerto no.3
・Shostakovich : Symphony no.14
  & Britten:Four Interludes & Passacaglia from "Peter Grims"
・Prokofieff:Alexander Nevsky
・ようやく陽の目を見る Brahms の Hungarian Dances
・"...the void of the Universe, the mystery of eternity."
・Tchaikovsky:Piano Concerto no.1 & Prokofieff : Piano Concerto no.2
  "A pianist of rare poise and thunderous technique".-The Philadelphia Inquirer


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The Blue Danube
米RCA Red Seal LSC-3250 (LP, No Dog, (C)1972)
 J.Strauss Jr
  Side1:The Blue Danube(*), Vienna Blood(*), Emperor Waltz
  Side2:Voices of Spring(*), Morning Papers, Tales from Vienna Woods
  
Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
Zither Solo:Toni Noichl
recorded 1968-1971

 Crown Jewels of the Waltz King(米RCA Red Seal LSC-3149)の第2弾でしょうが、(*)の3曲以外は Crown Jewels... と同じ音源なのです。前回のアルバムではピッチが狂っていた Emperor Waltz, Morning Papers の2曲ですが、このアルバムでは正しいピッチに修正されています。それにしても、なんとまあ豊麗に響くシュトラウスでしょうか。
 ちなみに、第3弾は"The Emperor Waltz"(米RCA Red Seal ARL1-2266, 1974年頃)と思われますが、残念ながらこのLPは手元にありません。
  
でも、BMG/Funhouse による復刻第2弾の "Favorits Vienna Walztes and Polkas"(BVCC-38115 (C)2001)のジャケットデザインに使われているのを見ることは出来ます。このLPアルバムについては、RCA の Recent Releases に "An all new recording ..."と紹介されており、過去のレコーディングと明確な差別化を意図していたようです。(2005.9.2)



The Enchanted World of Johann Strauss
 米RCA Red Seal R214475 (2LPs, Sided Dog Label, (C)1977)
 J.Strauss Jr
  Side1:Tales from Vienna Woods, Artist's Life, Auf der Jaged Polka
  Side2:Vienna Blood, Tritsch Tratsch Polka, The Blue Danube, Thunder and Lightning Polka
  Side3:Voices of Spring, Where the Citrons Bloom, Annen Polka, Treasure Waltz
  Side4:Emperor Waltz, Roses from the South, Perpetual Motion 
  
Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
Zither Solo:Toni Noichl

 シングルジャケットに2枚のLPを詰め込んだお徳盤(?)。紙のインナースリーヴが普通だからこういう発想になるのかな?日本では恐らくあり得ない商品仕様のような気がしますが。オートチェンジャーでの再生を意識しているのか、Side1+Side4, Side2+Side3 というプレスになっています。1968-1974年録音の集大成というところでしょうか。「蝙蝠」序曲は入っていませんがね。演奏については今まで書いたことと同じですが、ただ、トリッチ・トラッチ・ポルカと「雷鳴と電光」ポルカは正直いまひとつの演奏。推進力に欠けるというのか・・・残念ながら私の好みではありません。もっと活発な演奏が好きなんですなあ。(2005.9.2)



Crown Jewels of the Waltz King
米RCA Red Seal LSC-3149 (LP, No Dog, (C)1970)
 J.Strauss Jr
  Side1:Schatz-Waltzer, Morgenblatter,Kaiserwaltzer
  Side2:Geschichten aus dem Wienerwald, Wo die Zitronen Bluhn, Kunstlerleben
米RCA Classics/BMG Classical Navigator 74321 24205 2 (CD,(C)1995 (P)1998)
  上記LP収録曲にさらに2曲(An der Schonen Blauen Donau, Wiener Blut)追加収録 
  
Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
Zither Solo:Toni Noichl
recorded 1968-1971

 Ormandy/Philadelphia によるワルツ王シュトラウス2世のワルツ曲集です。まあ、ウィーン・フィル以外の演奏だと「本場物ではない」とか「アメリカの楽団らしい派手な演奏」とか分かったような分からないような妙な評論をする御仁もいらっしゃいますが、そういうのはとりあえず忘却の彼方ということにしておいて、我々はこのコンビの見事な演奏を楽しむことにしましょうか。それにしても、フィードラーとボストンポップス、ライナーとシカゴ響による似たような曲集が沢山出ているようですから、アメリカでの需要はかなり大きかったんでしょうね。
 ところで、このLPはかなりの「珍品」でもあります。というのは、Side1の3曲はピッチが異様に高いのです。LPプレイヤーのスピードコントロールで-6%に落としてもまだ高い。10%は狂っていると思われます。片面だけおかしいので、恐らくカッティング時にスピードを間違えたのでしょう。CDの方は正しいピッチに修正されていますが・・・(2005.8.30)



Long-lost original second movement "BLUMINE"
  Originally released as 米RCA Red Seal LSC-3107 (C)1969 (LP)
  Also available on 日BMG Funhouse BVCC-38119(CD, coupled with "Der Rosenkavalier Suite" )
  
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
  "Blumine" Trumpet solo:Gilbert Johnson
  recorded : May 21,1969,at Academy of Music,Philadelphia

 「花の章」付きのレコードということでLP時代に購入された方も多いのではないだろうか。私の場合は高校時代に先輩からこのレコードを教えてもらい、その演奏に驚愕してレコードを購入した。しかし、すでにマエストロが世を去ったばかりの頃で、RVC株式会社から発売された追悼盤「オーマンディ・フェアウェル1800」(RCA Gold Seal RCL-2507 (P)1985)が、私が購入したレコードであった。

 このレコードを初めて聴いたとき、そのあまりの見事な演奏に唖然としてしまった。特に1楽章のクライマックス前のホルンの三連符の咆哮にはたまげた。切れが良くて音の粒が揃ったこの見事なアンサンブルは一体何者?という衝撃があった。終楽章の念を押すようなクライマックスの持っていき方といい(終楽章最後のティンパニの追加にも驚いたが)、他の演奏とは一味も二味も違うこの演奏には強烈な印象を植えつけられた。ただ、Solti/CSOの劇的壮絶演奏の最新録音CDを聴いた後では、当時のブラバン小僧としてはそちらに流れてしまい、長らくこの演奏を聴くことはなかった。LPしかなかったし、強音でのノイズ(ビビリ音)もマイナスではあった。しかし、今回のCD化で音質が劇的に向上し、強音のビビリ音も殆ど無く聴きやすくなり、改めてこの名演を聴き直して、やはり名演だなあ・・・という認識を新たにした。

 この演奏はColumbiaからRCA復帰直後の録音で、しかも録音会場は Academy of Music 。それでも残響が豊かなのは、プロデューサーの John Pfeiffer氏 によるエコー付加の効果だろう。(Max Wilcox氏 によると、アカデミーの舞踏会場をエコー・ルームと利用したようで、オーケストラの収録音をそのエコー・ルームで再生してマイクで拾い、収録音とミックスしたという・・・)RCA後期の録音には電源ノイズ(50〜60Hzの交流電源周波数とその高調波)が聞き取れるのが多く、この録音もそうだ。しかも、エコー付加用の再生ラインに接触不良が原因と思われるハム音が混入して、そのハム音のエコーが明瞭に聞き取れ(トラック3の5:50あたり、ヘッドホンなら明瞭に聞き取れる)当時の苦労が偲ばれる(?)仕上がりになっている。また、静かにティンパニやバスドラムが鳴る箇所は、恐らく当時のスピーカーの低音再生能力を上回る低周波がスピーカーに入り、スピーカーコーン紙(あるいは、エッジ・ダンパーかもしれないが)のバタツキ音らしき音も聞こえる。(トラック4の最初と最後)まあ、そういう箇所もあるにはあるが、この録音はその手法が比較的成功した例ではないだろうか。ただ、LPではどうも仕上がりがイマイチだったようで、あの Living Stereo LPを出したメーカーとは思えない音作りではあるのが不思議と言えば不思議。

 まあ、録音上の問題点は些細なことです。今回、スコアを見ながらこの演奏を聴きました。マエストロならではの改訂(補強)も実に効果的(よ〜く聴かないとわからない程度のことですが、その効果は絶大なものがあります)ですし、「花の章」の見事なトランペット・ソロも含めて聴き応え十分のこの演奏を聴くにつけ、このコンビがマーラーの他の曲(「復活」「大地の歌」と10番以外)を録音しなかったのが悔やまれます。(2005.4.29)



Rachmaninoff:Piano Concerto no.3
  米RCA Red Seal ARL1-1324 (C)1976 (LP), recorded 1973
  Also available on 日BMG Funhouse BVCC-38297(CD, coupled with "Yellow River Concerto")
  
  Vladimir Ashkenazy, Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra

  名フィルの定期で新進気鋭の広瀬悦子さんがこの曲を弾いたのを聴いて、久しぶりにレビューを書く気になりました。実演で聴くと本当に興奮しますよ、これは。「ピアノは格闘技だ!」と実感しました。

  さて、AshkenazyとOrmandyのこの演奏、以前米BMG/RCA Victorから"Rachmaninoff in Hollywood"(09026-68874-2,(C)1977)というタイトルでCD化されていました。これは、"America's Best-Selling Music Series"というもので、恐らく映画「シャイン」のヒットを受けて制作されたCDでしょう。この曲の他に他の演奏家によるものの寄せ集めの、妙なイラストが焼きついています。

  それはさておき、Ormnady/Philadelphia によるこの曲の唯一のステレオ録音という貴重なもの。Columbia では1・4番と「パガニーニの主題による変奏曲」を Entremont とステレオ録音しています。肝心の2・3番は Columbia の A&R の方針のせいか、Bernstein/NYP と録音しているようで(うろ覚えの記憶なので・・・どなたかご存じの方、教えてください)、優遇されていた彼らのワリをくった(一説には、Bernsteinは自分の録音したい物を好きに録音できるという契約を交わしていたとのこと)ということかもしれません。RCAに於いては、Rubinsteinと2番を、Cliburnと「パガニーニの主題による変奏曲」を、そしてHorowitzとNYPとで3番をステレオ録音しているのはご存じの通り。

  さてこの演奏、猪突猛進とは程遠い、実に落ち着いた、細部まで注意を払った演奏ではないでしょうか。ピアノもオーケストラもじっくり鳴らす・・・そういう演奏と言えるでしょう。ただ、この時Ashkenazyはまだ20代、後年のHaitink/Amsterdam(この演奏は好きですよ)との演奏に較べると、テンポを揺らしているのがぎこちなかったりあまり効果を上げているとは思えないような部分が散見されます。しかし、それにぴったり離れず伴奏しているOrmandy/Philadelphiaは流石というところ。軽やかなブラスはphiladelphiaならではでしょう。他の演奏ではぱっとしないブラスもこの演奏では素晴らしく聴こえます。

  Jay David Saksによれば、この録音は日で仕上げたとのこと。独奏者もオーケストラも指揮者も一流でなければ出来ないことで、本当に驚きですね。(2004.4.24)



Shostakovich : Symphony no.14,
Britten:Four Interludes & Passacaglia from "Peter Grims"
  日BMGFunhouse/RCA Red Seal BVCC-38299 (P)2003
  Originally released as ;
    Shostakovich: 米RCA Red Seal LSC-3206 (C)1971 LP, Britten: 米RCA Red Seal ARL1-2744 (C)1978 LP

  Shostakovich : Symphony no.14
   I.De Profundis II.Malaguena III.Lorelei IV.The Suicide V.On Watch  VI. Madam, Look! 
   VII.In Prison VIII.The Zaporozhian Cossack's Answer to the Sultan of Constantinople
   IX.O Delvig,Delvig! X.The Death of the Poet XI.Conclusion
  Britten : from "Peter Grimes"
    Four Sea Interludes Op.33a : I.Dawn II.Sunday Morning III.Moonlight IV.Storm
    Passacaglia Op.33b
    
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
  Phyllis Curtin(s), Simon Estes(b)

  1971年元日に Academy of Music にて Ormandy/Philadelphia により ショスタコービッチの「死者の歌」(といっても「死者の歌」という題はどうも日本のみで通用するようで、英語ではそのような標記は無い。)が米国初演された。確かに、解説でIchikawaさんが指摘されていたとおり「新年に演奏する曲としては、これ以上相応しくない曲はないと思われる・・・」と言える陰々滅々の曲だ。この10年前にアメリカの秘密部隊がベトナムに派遣され、'63年ケネディー暗殺、'64年トンキン湾事件によりアメリカのベトナム介入が本格化、翌年北爆開始、'68ソンミ村虐殺事件、'69アメリカ国内企業連続爆破事件(何とRCAもその標的にされた)・R.M.ニクソン大統領就任(ormandy/philadelphia は彼のお気に入り。ウォーター・ゲート事件で失脚したが、この人、ベトナム戦争集結や中国との国交樹立等イメージに比して結構平和的な実績をあげている。逆に人気のあるケネディーこそ史上もっとも危険な大統領だったという見方もあるので、歴史の事実は一筋縄では行かないようだ)、'73米軍撤退という歴史の中で、アメリカ国内に暗い影が覆っていたことは否めまい。それを敏感に感じとってこの曲を取り上げたのかも・・・・知れませんが、さて、どうでしょうか?(手塚治虫氏の「雨のコンダクター」にも通じる話ですな。あの中のマエストロは気の毒な役回りでしたが・・・)

  今回ポケットスコア片手に初めてこの曲を聴きましたが、歌の雰囲気がなんとなくグレゴリオ聖歌のように響くように感じるのは私だけでしょうか?全く以てユニークな曲です。録音も結構優秀でヘッドホンで聴くと周囲の車のエンジン音まで聴き取れます。小編成だからマイクセッティングやミキシングがシンプルなのが良い結果を生んだのでしょうか?(あくまで推測です)何にせよ、歴史的な演奏であり、録音も良く、しかも Ormandy/philadelphia の優秀な弦楽セクションの室内楽的で精緻な演奏を堪能できるという希有なCDではないでしょうか。カーティンとエステスのソロも素晴らしい出来だと思います。

  カップリングの「ピーター=グライムズ」もこれまた新年に相応しくない非常に暗い物語ですが、ここで聴くことの出来る演奏は非常に颯爽とした爽やかなもので、あまりおどろおどろしさを感じることはありません。選曲がそうなのかもしれませんが。この曲も Ormandy/Philadelphia の実力の程を十分堪能できます。ブリテンには歌劇「グロリアーナ」というもっと明るい劇もありその田園曲(Country Dances)など思わず口ずさみたくなるような愉快な曲なので、その曲もこのコンビで聴いてみたかった。(2003.12.31)




Prokofieff:Alexander Nevsky
  米RCA Red Seal ARL1-1151 (C)1975 (LP), Also available on 日BMG Funhouse BVCC-38296(CD)
    Prokofieff:Alexander Nevsky(Sung in Russia)
     I.Russia under the Mongolian Yoke, II.Song about Alexander Nevsky,III.The Crusaders in Pskov
     IV.Aries,Ye Russian People, V.The Battle on the Ice, VI.The field of the dead VII.Alexander's Entry into Pskov
   
   Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
   Betty Allen(mezzo soprano), The Mendelssohn Club of Philadelphia(R.Page,Director)

  Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾(BVCC-38296)にて今回初めてCD化される、プロコフィエフの「アレクサンドル=ネフスキー」です。このジャケットの作曲家の表記は"Prokofieff"で他のレコードでは"Prokofiev"になっています。ロシア人のアルファベット表記はその出典などで微妙に異なるので、少々注意が必要なようです。

  1939年にこのカンタータの形にまとめられてロシアで初演され、アメリカでは1943年に Leopold Stokowski/NBC SO によりラジオ放送による初演(?)が行われ、その2年後に ormandy/philadelphia によるコンサート初演と世界初録音(米Columbia ML4247, Jennie Tourel,The Westminster Choir, sung in English)が行われました。その30年後の1974-75年の録音がこのレコードとなるわけで、歴史の重みが感じられるではありませんか。なお、この演奏はロシア語で歌われています・・・が、ロシア語の歌詞は掲載されておらず英語の歌詞のみが記載されており、せっかくのロシア語がよく分からないという不満もあります。しょうがないので、Abbado/LSOのDGG盤の対訳を見ながら聴きました。

  13世紀中頃の英雄"Alexander Nevsky"の名前は1240年のネヴァ河の戦い(スウェーデン人の侵攻に対する戦い?)の勝利により「ネヴァ河のアレクサンドル」という名が付いたようですが、Grand Duke Alexander Yaroslavich of Vladimir(ウラディミール大公 アレクサンドル=ヤロスラヴィッチ)という名が示すとおりロシア大貴族の家系です。La Noblesse de Russie(「ロシア貴族」ロシア貴族連合系譜協会会長 ニコライ=イコニコフ編)等の資料で彼の家系を現代まで降りていくと面白い歴史が見れるかもしれませんね。

  冒頭の「モンゴル圧制下のロシア」は高弦の悲壮な音で始まります。これは面白い音の効果で、プロコフィエフのユニークさが最初から現れていますね。「ネフスキーの歌」はいかにもロシア風と言いたくなるような雄大な歌で、Paul Krzywicki による Tubaの見事な演奏が聴き物。彼の音が曲をぐいと引き締めています。「プスコフの十字軍」の抑圧された重苦しさから一転して「立ち上がれ、ロシア人民よ」で荒々しい合唱とともに重量感のあるオーケストラが迫ってきます。もっとも長いセクションの「氷上の戦い」では全てが総動員されて一つのクライマックスが築き上げられ、戦いの勝利を示す聖歌が静かに歌い上げられます。その後、「死の荒野」でベティ=アレンが逞しい声で戦争の後の惨状を歌い上げます。これはなかなか感動的ですよ。最後の「プスコフの入場」はネフスキーのテーマが高らかに歌い上げられ、勝利と母なるロシアの大地の祝福の歌で幕が閉じられます。

  録音は映画音楽ということが意識されているのか、他の曲の録音とはかなり異なるバランスで録音されているようです。オンマイクでかなりバランス操作しているようです。合唱の声も荒れ気味ですが、それが逆に迫力を生み出している面もあります。CD化でどの程度音質が改善されるか興味深いですが、いずれにせよ、ormandy/philadelphia のスケールの大きな名演に圧倒されます。(2003.11.22)



ようやく陽の目を見る Brahms の Hungarian Dances
  米RCA Read Seal XRC1-3624(C)1980 -The World of Red Seal Digital-
   
  Jame Levine/The Philadelphia Orchestra : 1st mov. Schumann from "Spring" Symphony
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
   Mendelssohn Hebridges Overture (CD Released as 日BMG/RCA BVCC-38112)
   Brahms 6 Hungarian Dances nos.11-16
  Eduardo Mata/Dallas Symphony Orchestra
   1st mov.(excerpt) from Mozart No.20 Piano Concerto (Emanuel Ax ,piano)
   Stravinsky : Suite no.1&2

  BMGファンハウスさんの ormandy/philadelphia の芸術第3弾の特典盤という形で、ormandy/philadelphiaによるブラームスのハンガリー舞曲6曲がCD化されることになりました。RCA Red Seal の Digital Recording Samplar Disc に収録されていた音源です。
  Digital Recording の最初期のRCA Red Seal に共通したジャケットデザインは懐かしいですね。Text Character のみによる作曲家の絵がいかにもディジタルという印象を強くしました。この当時、各レコード会社は Digital Recording を前面に押し出しており、その時代の特徴が良く現れています。解説は John Pfeiffer でタイトルが Quality by the Numbers というこれまた電子音楽まで作っていた人らしい技術的なお話です。それにしても、このレコードで取り上げられている4人で現役なのは Ax と Levine の2人で、Ormandy と Mata(惜しくも数年前に飛行機事故死)は既にこの世の人ではありません。私も年を取ったもんです。

  Ormandy/Philadelphia によるフィンガルの洞窟の演奏は第2弾でCD化されていますが、これは Digital Master では無く Analog Master からのCD化とのこと。もう、再生できるレコーダーが無かったのでしょうか? いくら Digital Master とはいえテープの劣化は進行するし、再生出来るレコーダーも無くなってしまうので、早いうちにフォーマット変換をしておかないと貴重な音源が無くなってしまうので、今回のCD化は快挙といえるでしょう。といっても、この当時は同時に  Analog Master も回しているでしょうから、そちらの音源になるかもしれませんが・・・。ちなみにこのディスクに収録されている音源は、 Techinics(Panasonic)とSonyのレコーダーで録音されたとのこと。ormandy/philadelphia のははTechinics(Panasonic) で録音されています。「英雄」交響曲は Sound Stream社 のレコーダーで録音されていましたし、この当時は新しい録音技術であるディジタル録音について色々試行錯誤していたのでしょうね。

  さて、肝心の曲の方ですが、横田さんのオーマンディー ディスコグラフィに記載されている Ormandy/Philadelphia によるハンガリー舞曲集の録音は下記の通り。

   No.5 [M] 45/06/02 (C)
   No.5 [S] 57/04/13 (C) - CD released(仏Sony Masterworks L'Essentiel Volume3 / Brahms SMK53099(C)1994)
   No.5(arr.Harris) [S] 67/12/12 (C) - CD released(米CBS Masterworks / Classical Jukebox Vol.1 MLK45736(C)1989 (P)1972)
   No.5 [S] 72/06/12 (R) - CD released   No.6 [S] 57/04/13 (C)(日BMG/RCA BVCC-38128)
   Nos.11-16 [D] 79/04/21 (R) <-今回これがCD化される
   Nos.17-21 [S] 57/04/13 (C) - CD released (米Sony Classical Essential Classics SBK46534(C)1991)
   ※[D]-Digital Recording,[S]-Stereo, [M]Monaural, (C)-Columbia, (R)-RCA

  結局、録音されたのは Columbia での 5,6,17-21 と RCA での 11-16 のみ。恐らく「ハンガリー舞曲集(全曲)」のアルバムを出すつもりがあったと思われますが、計画が途中で頓挫したのか・・・中途半端な録音として遺されてしまったようです・・・惜しい。まあ、それはともかくこの6曲、ormandy/philadelphia の円熟した悠然とした演奏で楽しめます。珍しさも含めて一聴の価値はあります。(2003.10.12)



"...the void of the Universe, the mystery of eternity."
  米RCA LSC-7066(2) (C)1970, 英RCA LSB-4003/4 (C)1970 2LP Set, Also Available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38283/4 (C)2003
  Mahler Symphony no.2 "Resurrection"
    
  Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra
  Brigit Finnaila(Contralto), Evelyn Mandac(s), Singing City Chorus directed by Elaine Brown

  5月の大植英次/大阪フィルの「復活」公演に触発されて、Ormandy/Philadelphia の録音の中でも特にCD化が切望されるこの曲を取り上げます。正直、Mahlerの曲でこの「復活」と「夜の歌」は敬遠してあまり聴いていなかったのです。曲が長大ということもありますが、「復活」は合唱が入る大仰な曲で、「夜の歌」はタイトル通り陰々滅々の曲だ・・・というイメージがそうさせていたのです。しかし、大植英次/大阪フィルの「復活」の実演に触れ、「なんて面白くて感動的な曲なんだ!」と私の持つイメージががらっと変わってしまいました。

  確か、この「復活」しか振らないと言う程この曲に惚れ込んでいる Gilbert Kaplan という人が、ついには想いが高じて London Symphony とこの曲を録音して、詳細な解説(Mahlerの書簡など)とこの「復活」の楽譜(CDのbookletサイズ)とMahlerのアルバム(Interactive CD-ROM)をセットにしたCDを発売(Conifer 75605 51277 2)していました。昔は「物好きな人がいるなあ」と思ってこのCDを購入したのですが、今は「そこまで入れ込むのも解るなあ」と考えがひっくり返ってしまいました。

  それにしても、Mahler の "Titan" から "Resurrection" 間の長足の進歩には驚かされます。"Titan"は言うなれば「青春美曲」ですが、"Resurrection" はいきなりスケールがでかくなり、しかも黄昏(3楽章など厭世的な雰囲気がちらほら)まで垣間見てしまう程です。一体この間に何があったのでしょうね?あと、「夜の歌」は今度名フィルが沼尻さんの指揮で定期にて取り上げるので、今から楽しみにしています。

  さて、Ormandy/Philadelphia の Resurrection のLPですが、IchikawaさんがWeekend Reviewで取り上げなければその存在すら知りませんでした。私が所有しているのは、アメリカ盤とイギリス盤の2種類。どちらも ebay のオークションで入手したものです。大曲で発売数も少ないのか、殆どお目にかかることがありません。アメリカ盤は入手したとき、ジャケットはぼろぼろ、肝心のレコードも埃だらけ、おまけにスリーブも無い状態(それでも、Good Conditon! と堂々とのたまうアメリカ人の大らかさ)でしたが、殆ど針通ししていないようでかなり良い状態で聴けます。イギリス盤は、盤のプレス自体アメリカ盤より質が良く(厚くて重い)、ジャケットも保存状態が良くかなり綺麗です。アメリカ盤は1枚目が Side1,4 2枚目がside2,3 となっており、恐らくオートチェンジャーを意識した構成なのでしょう。イギリス盤は素直に1枚目が Side1,2 2枚目がside3,4 となっています。ジャケットは、William Smith による曲の詳細な解説が記載されています。

  肝心の音ですが、これはどうもアメリカ盤に軍配が上がるようです。盤面を良く見ると、アメリカ盤の方が内周までカッティングされており、カッティングレベルが高く溝と溝の間隔を広くとっているからと思われます。また、イギリス盤は高音が少々丸くなっている気がします。もしかしたら、イギリス盤のカッティング用マスターはアメリカのカッティングマスターのコピーかもしれません。(これはあくまで推測ですが・・・)

  この盤の問題は、フォルティッシモで音が歪む(割れる)事でしょう。いくら何でも、大元の Recording Session 時の Multi Track Master の音が歪んでいるとは考えにくいのです。それであれば playback で解ることですから。恐らく、Trackdown して 2ch の Cutting 用Master Tape を製作の際、或いはカッティングの時点で音が歪んだと思われます。(というか、そう思いたいのです。元から駄目であれば「復活」できませんから。そういうことで、Ichikawaさんの Memorandom での「噂」が気にはなります)このフォルティッシモの音の歪みは別々にスタンパーを製作しているアメリカ・イギリス両方の盤で同じように発生してます。イギリス盤はジャケットのオレンジ色の部分に(写真のオレンジ色の四角の部分、ここはタイトルですが)

   "...This is a magnificent perfomance of the work; and the recording is a spacious, full-blooded one..."
   Deryck Cooke, The Gramophone

とありますが、演奏はともかく録音にについては「ほんまかいな」という気がします。もしかしたら、Cooke Version の mahler 10番を録音してくれたormandy/philadelphia に好意的だったのかもしれませんが・・・・

  肝心の演奏ですが、これは確かにOrmandy/Philadelphia の録音のなかでも筆頭に上げるべきものです。悠然たるスケールの大きさやフォルティッシモの強烈さは他に類を見ないのではないでしょうか?録音に問題のあることが悔やまれますが、これだけのスケールの大きい演奏が果たして録りきれたかどうか・・・。4楽章・5楽章のフォルティッシモは凄まじく、philadelphia の Brass Section をこれ程突出させた演奏はあまり無いかもしれません。しかし、そこはやはり Maestro 、他の演奏と聴き比べると、やはりホルンの音などかなり押さえ込んでブレンドさせて部分があります。G. Jhonson のトランペットも特筆に値します。フォルティッシモの部分も勿論ですが、例えば3楽章の桃源郷とも思える甘いメロディーを奏でる音色はたとえようもありません。終楽章の「光明」の合唱はその情熱に目頭が熱くなります。これ程の名演奏がCD化されずに埋もれているのは惜しい。ぜひ、オリジナルの録音セッションのテープからのリマスタリングを希望するや切実なものがあります。本当ですよ。(2003.5.25)

※「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」でCD化されました。日BMG Funhouse BVCC-38283/4 (C)2003 (2003.12.17)
  なお、今回のCD化にあたり米国BMGのオリジナル4chマスターテープに遡ってのリマスタリングが行われ、LPと比較して大幅な音質向上が図られております。但し、強音部の歪みは収録時にもともと発生しており、残念ながらそれの除去は不可能でした。惜しいことです。


Tchaikovsky : Piano Concerto no.1 & Prokofieff : Piano Concerto no.2
"A pianist of rare poise and thunderous technique".-The Philadelphia Inquirer
  米RCA Red SealARL1-0751(LP (C)1974)
    Tchaikovsky:Concerto No.1 in B-flat Minor, Op.23 (Producer:Jay David Saks)※1
    Prokofieff:Concerto No.2 in G Minor, Op.16(Producer:Max Wilcox)※2
    
  Tedd Joselson, Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra (recorded 1974)
  ※1 also available on Towerrecords TWCL-1013 (released 2004.12)
  ※2 also available on Towerrecords TWCL-2022 (released 2005.06)
  ※Tower Records RCA Precious Selection 1000 第1期と第2期でCD化されました。(2006.12.15追記)

  Tchaikovsky の Piano Concerto を実演で聴いて、Ormandy/Philadelphia の演奏を聴きたくなったので・・・。
  Tedd Joselson(1954年生)のデビュー盤でもあり(恐らく)最後のレコーディングともなってしまったこの演奏。(注:この後もレコーディングありとご指摘頂きました)Ormandy/Philadelphia によるこの曲の演奏は他に Levant(1947,米Columbia CL-740,ML盤もありますが、Grieg の Piano Concerto とカップリングされているCL盤がお買い得)とIstomin(1959,米Columbia ML5399,これはステレオ収録されていてCDも出ていたようですが、残念ながら私の手元にあるのはモノラルのML盤のみ)があります。1970年代のRCA Red Seal は気の毒にも新人アーティストについては全くついておらず、Joselson もこの後録音が無く、1988年当時において「大手マネジャーのどこにも所属していない」状況であり、2003年の現在はどうされているのでしょうか・・・・・。
  さて、演奏ですが3種の Piano Concerto の録音で一番どっしりとして安定している演奏ではないでしょうか。Joselson のピアノは(良くも悪くも)手堅く、Ormandy/Philadelphia の重厚なサポートもあり安心して曲に浸れます。片面35分の詰め込みカッティングでカッティングレベルは小さめですが、豊かな Ormandy/Philadelphia Sound を堪能できます。ところで、2楽章の中間部が終わった後でオーボエによる美しいソロがあるのですが、このソロのクライマックスともいえる上昇音型の部分で、他者の演奏ではスラーで演奏される部分がこの演奏では明確に音を切って演奏されているのは「おや?」と思いました。この演奏は de Lancie でしょうが、Levant(Tabuteau),Istomin(de Lancie)との演奏でもスラーではなく音を切って演奏しているので、これは Tabuteau 以来の伝統のようなものでしょう。楽譜を見たわけではありませんが、楽譜には(恐らく)スラーは書かれていないのではないでしょうか?(推測ばっかりで申し訳ありませんが)何はともあれ、この曲の演奏が Ormandy/Philadelphia の良好な録音で聴けるのは有り難いことです。
  カップリングの Prokofieff については正直私好みの曲ではなく、一応聴いてはみたのですが・・・・う〜ん。サウンドの傾向は Tchaikovsky とそう変わらないようです。プロデューサーは Max Wilcox と Jay David Saks とまたがっており、RCA Red Seal が丁度政変でドタバタしているころに2曲が録音されていたのかもしれませんが。使用されているピアノは Baldwin のようです。(ジャケット裏の Recording Session の写真に写っているピアノに Baldwin のロゴがありました)。当時の philadelphia orchestra の Official Piano が Baldwin だったのでしょう。(2003.3.30)


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