RCA & RCA Victor Recordings - 1

<Table of Contents>

・Bizet : Symphony in C, L'arlesienne Suite no.1
・Sheer Sonic Sorcery! THE FANTASTIC PHILADELPHIANS. A Dazzling Dance Spectacular.
・魅惑の La Valse
・派手なピアノパートと泣かせる旋律の入り交じった傑作「河協奏曲」を
  Ormandy/Philadelphiaでどうぞ
・Highlights from Tchaikovsky's Greatest Ballets
・CD化が待ち望まれるチャイコフスキーの初期交響曲集
・The Music of Ornette Coleman
・Russia's epic folk hero lives again in a melodic spectacular...
  blazingly performed and magnificently recorded!
・Maestro Ormandy が語る「愛のうた」
・20世紀最高のオーケストラ芸術 「死と浄化」・「変容」



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Bizet : Symphony in C, L'arlesienne Suite no.1
  米RCA ARL1-3640 (C)1980 (LP)
  Bizet : Symphony in C(recorded 1974) , L'arlesienne Suite no.1(recorded 1975,1976)
  
  The Philadelphia Orchestra/Eugene Ormandy

  正直、ビゼーというと「カルメン」か「アルルの女組曲」以外の曲は聴いたことが無い。このハ調の交響曲はそんなビゼーのまだ比較的知られている作品だと思う。導入部はまるでベートーベンの曲のようだ。
  さて、相変わらず ormandy/philadelphia は素晴らしい演奏を聴かせてくれが、この曲の終楽章については Producer の Max Wilcox が面白い話を披露している。(BMG Funhouse BVCC-38128 The Fantastic Philadelphians に掲載)・・・このセッションで、終楽章が明らかに遅いと思った彼は、Panitz と他のメンバー数人とを伴い、ormandy に対して「終楽章をもっと早く演奏してほしい」と穏やかに頼んだところ、「それは無理だ、オーケストラはこれ以上速く演奏できない。」とやんわり断られた。勿論、技術的な問題などあるはずもなく、そのテンポこそが ormandy が希望するテンポだった・・・ という話です。私には、このテンポで特に違和感は無いのですが・・・そんなに遅いかな?この演奏がCD化されていないのは残念。それにしても、このジャケットデザインは意味不明。(最近になって、バランシンが振り付けした名曲でもあったということを知りました。お恥ずかしい限り。ヤレヤレ・・・2008.6.23追記)(2001.10.21)
  ※Symphony in C は「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」の特典盤という形でCD化されました。(2003.12.17)
  ※Tower Records RCA Precious Selection 1000 第3期の TWCL-3012(2006/2/10発売) にて商用リリースされました。(2006.12.16)



Sheer Sonic Sorcery! THE FANTASTIC PHILADELPHIANS. A Dazzling Dance Spectacular.
  日BMG/Funhouse BVCC-38128(P)1969,1972,1973,1975,1976
   Smetana : Music from The Batered Bride , Saint-Seans : Bacchanale from Samson and Delilah , Ponchielli : Dance of the Hours
   Khachaturian : Saber Dance , Brahms : Hungarian Dance no.5 , Grieg : Anitra's Dance , Kabalevsky : Galop
   Gliere : Russian Sailor's Dance , Falla : Ritual Fire Dance , R.Korsakov : The Flight of the Bumblebee
   J.Strauss Jr. : Perpetuum Mobile , Tritch Tratch Polka , L.Anderson : Sleigh Ride , Tchaikovsky : Polonaise from Evgeny Onegin
  
  The Philadelphia Orchestra/Eugene Ormandy

  「私はポップス指揮者じゃないぞ!」とマエストロを怒らせた P.マンヴィス氏企画のこの1枚。Those Fabulous Philadelphians と同様に Fantastic Philadelphians と韻をふんだネーミングも売れ筋を意識してのしてことでしょう。しかし、この種の音楽がもたらす快感に抗しきれない人間として、マエストロには申し訳ありませんが P.マンヴィス氏に感謝しなければいけないかもしれません。(笑)
  それはさておき、ここには最もわかりやすい形で ormandy/philadelphia コンビの美点が凝縮されています。うねりをもって包み込むような弦セクション・黄金のブラスセクション・魅惑の木管セクション・そしてメロディックなパーカッション等、最早この世に存在しない超越演奏のオンパレードです。「売られた花嫁」の最初の3曲や J.シュトラウスの曲など録音がイマイチのものもありますが、録音は概ね適度な残響を伴った聴きやすい仕上がりになっています。
  サムソンとデリラのフィナーレの迫力、時の踊り・ハンガリアン舞曲・カバレフスキーのギャロップの波のようにうねる弦セクション、ゴージャスな仕上がりの「そり滑り」、黄金のブラスを実感できるエフゲニー=オネーギンの「ポロネーズ」(最後の方の tuba に絶句、「時の踊り」も同様)等、オーケストラ音楽の楽しさを満喫するのに格好の演奏ぞろいです。フォルテッシモにおいてもまだまだ十分な余力を残しているので力みというものが無く、リスナーは何の心配も無く音楽そのものに没頭出来ます。さらりとして平然とこういう演奏をしてしまう彼らには技術的な限界があったのだろうか?とそら恐ろしい気分にもさせられます。本当に「なにもかも桁違いに優れている」と納得の1枚です。(2001.10.18)



魅惑の La Valse
  RCA Victor Special Products DPL3-0123 (3LPs (C)1975)
   The Phladelphia Orchestra European Tour 1975.
   To Commemorate the 125th Anniversary of PENNWALT Corporation, The 75th Anniversary of the Orchestra
   and The 75th birthday of Eugene Ormandy.
   
  Mahler:Symphony no.1, Stavinsky:The Firebird, Wagner:Tannhauser (Overture and Venusberg Music)
  Ravel:La Valse, Moussorgsky:Pictures at an Exhibition.

  一月前に ebay のオークションで競り落としたもの。例の事件の影響もあってか、日本への到着がかなり遅れたようだった。
 さて、European Tour 1975 とあったので、てっきりヨーロッパツアーのライブ録音と思ったけどそうではなく、 Philadelphia Orchestra の有力なスポンサー(現在はどうか知りません)である Pennwalt社(製薬会社かな?)の125周年記念と Orchstra と Ormandy の75周年記念 と 1975年の European Tour とを記念したLPであり、収録曲はRCAのスタジオ録音を集めたもの。期待外れでがっかりしたが、ICE BOX Recording の La Valse があり予期せぬ収穫にびっくり。早速クリーニングして聴いてみた。
  これは素晴らしい録音と演奏だ。Columbia の録音よりスピード感は後退しているものの、優美さと鳴りっぷりの良さが同居した希有な快演だと思う。第3期のCD化にはこれも是非とも加えて欲しい。(2001.10.14)
  ※La Valse は「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」の特典盤という形でCD化されました。(2003.12.17)
  ※La Valse は、Tower Records RCA Precious Selection 1000 第2期 TWCL-2015にて商用リリースされました。(2005.7.17追記)



派手なピアノパートと泣かせる旋律の入り交じった傑作「河協奏曲」をOrmandy/Philadelphiaでどうぞ
  日ビクター/RCA Red Seal R4C-2032(米RCA Red Seal ARD1-0415) (P)1974 (Quadraphonic LP)
    労農行進曲(San Pei), Stars ans Stripes forever, Pini di Rome
    Eugene Ormandy/The Philadelphia Orchestra, Daniel Epstein(p), Myrray Panitz(竹笛・Bamboo Flute), Hauman Lee(琵琶・Pipa)
     
  photo, center:Eugene Ormandy and Madame MAO, right:Daniel Epstein

  河協奏曲」中央楽団集団創作 
   Yellow River Concerto ,Composed by Yin Chengzong, Chu Wanhua, Sheng Lihong, Liu Zhuang
     河船夫曲 Prelude:The Song of the Yellow River Boatmen
     河頌 Ode to the Yellow River
     河怨 The Yellow River in Anger
     保衛 Defend the Yellow River

  「河大合唱」(Yellow River Cantata)をピアノ協奏曲に編曲したのがこの「河協奏曲」。1970年代当時は作曲者は明らかにされず、「中央楽団集団創作」による作曲とされていた。しかし、10年前に発売されたNaxos盤では複数の作曲者が明記されている。原曲である「河大合唱」は1938〜1940の間に 光未然の詩に星海が曲を付けたものであり、当然のことながら「反日・抗日」「愛国心」の精神が強烈に刻まれており、恐らく日本では今後も殆ど演奏されないと思う。原曲は7曲だが、協奏曲は4曲にまとめられており、原曲に加え「東方紅」と「國際歌」も引用されている。「河大合唱」は発想記号的に「抗日進軍」とか「毛澤東万歳!」というフレーズがちりばめられているということだが、楽譜がないのでどこがそうなっているかはよく分からない。

  「河協奏曲」は、中国情緒と派手なピアノ技巧が盛り込まれた聞きごたえのあるもので、時々苦笑的な展開はあるものの、2曲目の「河頌」や3曲目の「河怨」などのメロディーは胸にぐっと来るものがあり、親しみやすさと感動的な面において傑作だと思う。「反日・抗日」の曲だからといって聴かないのはもったいない。すばらしいメロディーの曲として予備知識がなくても十分楽しめる。しかし、どうせなら歴史的背景を知ってから聴く方がより感動できると思う。

  さて、このD.Epstein のormandy/philadelphia盤、中古LPでしか入手出来ないのが残念だがこの曲の最高演奏と言える。4曲目の颯爽とした快速テンポによる気持ち良さは他の演奏の到底及ぶところでは無い。 これは「河協奏曲」ファンなら是非入手したい逸品。ormandy/philadelphia は1973年に西側のオーケストラとして初めて中国への演奏旅行を行っており、この演奏はその帰国後に録音されたもの。ormandy と 紅青との写真は歴史の重みを感じさせる。その後の紅青の運命を考えると・・・。(2001.10.14)

<追記>
  労農行進曲(San Pei)と Stars ans Stripes forever は日BMG Funhouse BVCC-38129 "Spectacular Marches" (C)2001にてCD化されています。また、黄河協奏曲は香港HK 8.240158 (C)1986 にて既にCD化されていたようですが、Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」にてCD化されます。(日BMG Funhouse BVCC-38297 (C)2003) (2003.12.17)
  香港HK盤



Highlights from Tchaikovsky's Greatest Ballets
 The Nutcracker 米RCA Red Seal R114350 LP(C)1973 (recorded 1972)
  Also Available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38117(with "Romeo & Juliet") (C)2001
 The Swan Lake 米RCA Red Seal R114351 LP(C)1973 (recorded 1972) , Also Available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38292 (C)2003
 The Sleeping Beauty 米RCA Red Seal ARL1-0169 LP(C) 1974 (recorded 1973) , Also Available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38293 (C)2003
 The Sleeping Beauty & The Swan Lake 米RCA Papillon Collection 6537-2-RG (C)1987

     
  希代のメロディーメーカーであるチャイコフスキーの3大バレエを ormandy/philadelphia の演奏で聴けるというのは何と贅沢なことだろうか。ハイライト盤であり全曲盤ではないのが残念だが。
  「くるみ割り人形」は12曲の「組曲」が良く聴かれるが、魅惑的なメロディーはその組曲以外の部分の方が多い。「冬の情景」「雪片のワルツ」そして Pas de deux のコーダ(ドシラソファミレドの下降音階を感動的な曲に仕立て上げてしまったチャイコフスキーに脱帽!)など美味しい部分は組曲からごっそり抜けている。国内盤でハイライト盤がCD化されたので、是非聴いていただきたいと思う。「白鳥の湖」「眠れる森の美女」も輸入盤や国内盤にてCD化されているが、現在入手は困難だしLPの収録曲数より少ないので、一度きちんとCD化して欲しい。BMG Funhouse さん、(※)第3弾はこれをお願いしますよ。(2001.9.15)
  ※「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」でCD化されました。(2003.12.17)

<くるみ割り人形について>
  ルドルフ=ヌレーエフが目印のこのレコード、これまで「組曲版」でしかCD化されていませんでしたが、「Ormandy/Philadelphiaの芸術」で目出度く「全曲抜粋版」がCD化されました。良かった良かった。
  「くるみ割り人形」は12曲の「組曲」が良く聴かれますが、魅惑的なメロディーはその組曲以外の部分の方が多い。「冬の情景」「雪片のワルツ」そして Pas de deux のコーダ(ドシラソファミレドの下降音階を感動的な曲に仕立て上げてしまったチャイコフスキーに脱帽!)など肝心の美味しい部分は組曲からごっそり抜けている。この部分を聴かずして「くるみ割り人形」を聴いたことにはならないと声を大にして言いたい。(言いすぎ?)
 「冬の情景」など、最初のハープが導いて弦が入るところなどこの世の物とは思えない美しさで満ちている。チャイコフスキーとオーマンディ/フィラデルフィアでしかあり得ない音の世界がここにある。彼らが3大バレエの抜粋を遺してくれて本当に良かった。(2006.12.19追記)


CD化が待ち望まれるチャイコフスキーの初期交響曲集
  Symphony no.1 "Winter Dreams" 米RCA Red Seal ARL1-3063 LP(C)1979 (recorded 1976) 
  Symphony no.2 "Littele Russian" 米RCA Red Seal ARL1-3352 LP(C)1980 (recorded 1976)
  Symphony no.3 "Polish" 米RCA Red Seal ARL1-4121 LP(C) 1981 (recorded 1974)
      
  3 Symphonies also available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38288/38289 (C)2003

  CD化が待ち望まれる、(一般に)知られざるチャイコフスキー初期交響曲の超絶名演がこの3枚。スケールの大きい老練かつダイナミックで若々しい(矛盾に満ちた表現ですが他にうまい形容が見つからないので)、他では実現不可能な演奏がここに。昔高校の吹奏学部で「冬の日の幻想」の4楽章を演奏したことがあるので、この曲には特に想い入れがありますが、夢見るような3楽章や和音の大音響で閉じるド迫力の終楽章は本当に「すごい」の一言。「小ロシア」・「ポーランド」もいずれ劣らぬ名演揃い。BMG Funhouse さん、(※)第3弾は是非これをお願いしますよ。ホント、こんな超絶名演が今まで埋もれていたなんて勿体ない。(2001.9.15)
  「小ロシア」を久しぶりに聴いたが、やはりこれは凄い演奏だ。フォルティッシモの和音の開始から怒濤の迫力のフィナーレまで驚愕の連続の名演が展開される。曲が習作の域を出ていないので未熟な演奏では正直聴くのがつらいが、ormandy/philadelphiaにより曲そのもの魅力が数段高くなったようにさえ感じる。怒濤のフィナーレは「冬の日の幻想」を上回る出来であり、「美しさ」と「豪胆」というお互い反発するような要素が見事なまでに融合している。メロディックなティンパニは本当に驚異的だ。こんなの聴いたら他のが聴けなくなってしまう。(2001.10.20)
  ※「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」でCD化されました。(2003.12.17)



The Music of Ornette Coleman
 米RCA Victor Red Seal LSC-2982
  Ornette Coleman : Music for Winds and Strings 
   Forms and Sounds, recorded live, by The Philadelphia Woodwind Quintet
   (members of The Philadelphia Orchestra) with Trumpet Interludes by Ornette Coleman. 
   Saints and Soldiers and Space Flight, both performed by The Chamber Symphony of Philadelphia Quartet (string quartet). 
  
  残念ながら、ebayのauction で落札しそこなった痛恨のLP。Colemanについては下記のとおり。
 The biogaphical notes on Ornette Coleman in The New Grove Dictionary of Jazz (New York: St. Martin's Press, 1994) are by Gunther Schuller, one of Coleman's most ardent advocates. Schuller is the distinguished jazz and classical composer, historian, and former president of the New England Conservatory of Music. Schuller coined the term "Third Stream Music" to describe the combination of the essential elements of Western Music, from classical to jazz.(2001.9.15)



Russia's epic folk hero lives again in a melodic spectacular...
blazingly performed and magnificently recorded!
  米RCA LSC-3246 (C)1972, 英RCA SB-6859 (C)1972 Also Available on CD 日BMG Funhouse BVCC-38294 (C)2003
    Gliere : Symphony no.3 "Ilya Murometz" ,  Producer : Max Wilcox , Engineer : Paul Goodman
  
  ある方にこのLPをお譲りする為、一度針通しを行いました。それがこの曲の初体験なのですが、これは素晴らしい!2楽章の何ともいえない濃厚さ、そしてそれを完璧に演奏するormandy/philadelphia。正直、Gliere は食わず嫌いというかあまり聴きたいとは思っていなかった作曲家ですが、認識がコロッとひっくり返ってしまいました。これは、是非(※)CD化してもらわなくては・・・・。(2001.8.16)
  ※「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」でCD化されました。(2003.12.17)



Maestro Ormandy が語る「愛のうた」
  米RCA LSC-3210 (C)1971 (LP),米RCA Victor 09026-60965-2 Movie Love Songs (C)1992 (P)1973 (CD)
  BMGファンハウス BVCC-37324 「イエスタデイ〜オーケストラが奏でる愛のテーマ」(CD)
   Love Story, Andante from Concerto no.21(Mozart), Yesterday,The Windmills of Your Mind, Romeo & Juliet 
   The Heart is a Lonely Hunter ,West Side Story, Tristan und Isolde , Romeo & Juliet(Tchaikovsky)
    
  正直、Maestro が見たら激怒しそうなジャケットだと思う。オルガン交響曲のジャケットもそうだけどあれを一目見て「クラシック音楽のレコード」と思う人は少ないだろう。「動物の謝肉祭」という曲をサン=サーンスが書いていなかったら全くもって「理解不能」なジャケットだ。(それでも疑問氷解とはいえず) Maestroが「私はポップス指揮者じゃないぞ!」と激怒したのは有名(?)な話ですが、考えてみればそれはポップス指揮者とポップスに対して失礼な気もします。(I'm sorry , Maestro .)
  前置きはともかく、RCAのマーケティングから生まれたこのアルバム、売れ行きはどうだったか知りませんが、やはりormandy/philadelphia の素晴らしい演奏で堪能できます。Maestro に怒られるかもしれませんが、「未知との遭遇」とかの Jhon Williams の音楽をやってくれたらすごいアルバムが出来たのでは?と勝手に思っております。(2001.8.13)



20世紀最高のオーケストラ芸術 「死と浄化」・「変容」
  米RCA Red Seal RCD1-7076(CD), ARL1-7076(LP) (C)1986
     Richard Strauss
     Tod und Verklarung (Also Available on 日BMG Funhouse BVCC-38121)
     Metamorphosen(Studie fur 23 Solo-Streichinstrumente)  (Also Available on 日BMG Funhouse BVCC-38120)
  

  「20世紀最高のオーケストラ芸術」とは何かと問われたら、私は黙ってこのアルバム差し出すだろう。正直、これ以上の演奏は「想像」すら出来ない。この演奏が国内で再度CD化されたことは意義深い。ormandy/philadelphia のもうひとつの頂点の演奏の一つと言える。「死と浄化」の重量感のある深い呼吸の演奏、そして「変容」のぞくぞくするような弦の美しさ。この「変容」を聴いて、strauss が付けた副題「23人の独奏弦楽器の為の習作」という意味がようやく理解できた。
  2曲ともフィナーレは(色々な意味で)泣けます。ormandy は strauss より「自分のオーケストラで演奏しないか?」と誘われたそうですが、「恋人がいるから」と断ったという。接点がなさそうで実はあるという不思議な縁なのかも知れません。

  この曲を聴く度、strauss が辿った悲惨な運命を考えずにはいられない。1933年からナチスの名誉職である「全国音楽院総裁」を引き受け、「シリアス音楽家」の著作権の拡大に貢献(というよりこれが目的だったらしい。でも、オペレッタや娯楽音楽の権利を制限するというのはやりすぎだと思う。結局現代と同じでポピュラー音楽の作曲者の方が儲かっていたということか・・・)したのはいいけれど、友人の手紙でうっかり「不愉快な名誉職」と書いたのがゲシュタポにバレ、1935年に解任される破目に。その後、ナチスのご機嫌を取るために「祝典序曲」や「紀元二千六百年祝典音楽」等を作曲している。これは、息子の嫁がユダヤ人だったこともあり、シュトラウスは可能な 限り彼女の親類を救おうと奔走し、彼らが収容されたテレジンの絶滅収容所まで懇願に行ったらしい。・・・が彼女の係累の26人は帰らぬ人となったそうな。(以上、「第3帝国と音楽家たち」ー長木誠司著、音楽之友社より引用)

  身内の不幸に加え、自分がこれまでかかわり築き上げてきたオペラ文化も含めたヨーロッパの文化というものが文字どおり廃墟と化して行くさまを目撃し続けていた彼がどのような気持ちで Garmisch の家で過ごしていたかは想像も出来ない。戦後になっても戦前の「全国音楽院総裁」職が災いして活動に制限が加わるし(窮状を救おうと、イギリスのSir Thomas Beecham がStrauss Festival を開催し、歴史上の人物と思っていた Strauss が老齢とはいえ元気でいることにイギリス人は驚いたそうな。)対立せざるを得なかった音楽家(Bruno Walter , Otto Klempeler , Toscanini)との断絶もあったろう。そんな時期に生み出された作品が、「変容」・「四つの最後の歌」なのだから・・・。ちなみに、「死と浄化」は1889年の作品だが、strauss が臨終を迎えたある時、看病していた息子の嫁(だったと記憶している)に「まるで自分が作曲した「死と浄化」のような体験だ」と語ったらしい。不謹慎だが、臨終とはどんなものかこの曲で想像するのも一興かも。

  ormandy が strauss の "Eine Alpen Symphonie" , "Vier Lezten Lieder" を録音しなかったのは残念だが、この「死と浄化」と「変容」をこの時期に録音してくれて本当に良かった。(2001.8.13,2003.10.12加筆修正)

<追記>
  最近このLPを入手しました。LPの番号は ARL1-7076 で、CDが RCD1-7076 であり、 LP と CD が同時に発売されていたことをうかがわせる。LPジャケット前面には、"FIRST RELEASE DIGITALLY MATERED ANALOG RECORDING" と謳ってあり、CDと同じカッティング用のマスターテープから LP が制作されていることがわかる。(2001.10.13)


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