RCA & RCA Victor Red Seal Analog Discs

  RCA Victor 及び RCA の Analog Disc を年代順に区別するとおおよそ下記の通りになると思います。(私の手持ちの資料で分かっている範囲の情報ですので、誤りや網羅されていない情報も当然あると思います。これらの情報をお寄せいただければ幸いです。)


(1)1936-1942 (RCA Victor) - SP, EP & LP(Transfered from SP master)

  RCA Victor の古い録音は、Columbia の新しい録音やRCA自身のステレオ録音の陰に隠れて、なかなか日の目を見ることが無いと思われます。また、余程の ormandy/philadelphia ファンでない限りお奨めもできません。なんといっても SP(ワックス盤)へのディスク録音しか無いのですから。LPもSP原盤からダビングされたもになります。Gold Seal, CAMDEN ,Victrola 等の廉価盤レーベルからLP復刻されていると思います。 ただ、歴史的な録音もあるので、全く無視するわけにもいきません。Feuermann との Don Quixote とか Fragstad との Wagner、Rachmaninoff との 3番と4番の協奏曲などなど。でも、そういう有名なソリストとの録音は大抵 CD 化されています。
  この当時の録音については、当時 RCA Victor の A&R Director(1930-1944) を務めていた Charles O'Connell(1900-1962)がその殆どを担当していたと思われます。収録場所は恐らく Academy of Music が殆どだったと思われます。

(レコードの例)

・RCA Victor LM-8 Tchaikovsky:The Nutcracker Suite (10inch)
    
  この演奏、ポルタメントが多くかかっていて面白いです。ちなみにこの曲、この時期のRCAへの録音が1941年と1945年の二つあるはずなのですが、それを区別できるディスクが見当たらないといことで掲示板で話題になったことがあります。この盤は恐らく1941年ではないか・・・ということでしたが・・・

・RCA Victrola VIC-1517(C)1970 Immortal Performances(recorded 1937)
   FLAGSTAD sings Wagner,Beethoven,Weber with Eugene Ormandy and The Philadelphia Orchestra
  
  大歌手 Flagstad との歴史的な録音盤。ormandy/philadelphia を聴くよりも Flagstad を聴く演奏。

・RCA Victor LM126 Rachmaninoff Rahpsody on a theme of Paganini
    Fritz Reiner, William Kapell, Robin Food Dell Orchestra of Philadelphia
  
  philadelphia orchestra の別名、Robin Food Dell Orchestra of Philadelphia での録音。Reiner/Kapell という組み合わせの Rachmaninoff。(日BMGFnhouse BVCC-37346 Kapell plays Rachmaninoff にてCD化されました。2004.5.1追記)


・History - Maestro Brilliante(History 205236-303〜205240-303) The International Music Company AG, www.timcompany.com
  (philadelphia orchestra との録音は下記の通り。)
  Mussorgsky:Pictures at an Exhibition (1937)
  Tchaikovsky:Pathetique Symphony(1936/37)
  Brahms:Concerto for Violin and Cello, Heifetz,Feuermann(1939)
  Grieg:Piano Concerto no.1, Rubinstein(p) (1942)
  Griffes:The Pleasure Dome of Kubla Khan (1934)
  Rachmaninov:Piano Concertos no.1 & no.3 (1939 & 1940)
  R.Strauss:Don Quixote, Feuermann(Vc) (1940)
  Sibelius:Symphony no.1(1941), Leimminkainen's Return no.4(1940)
  Barber:Essay no.1 (1940)

  Ormandy の古い録音を集めた10枚組の激安CD(3千円足らずで購入可。販売元は 。国内Tower Recordsで販売されていますが、どうも Biddulph 等他のCDやLPからのコピーと思われる節あり)があり、このCDで RCA のモノラル期のかなりの録音が網羅されています。正直、あまりお勧めできるものではありませんが興味のある方はどうぞ。出来れば、Biddulph 等の出所がはっきりしている方のCDをお勧めいたしますが・・・。 




(2)1968-1980 (RCA) - Stereo LP(Analog,Digital Recording)


2004年時点のステレオ期録音のCD化状況

  いよいよRCAステレオ期の録音です。1999年〜2003年に ormady/philadelphia の100周年を記念して、BMG Funhouse(1999年当時は BMGJapan)より「Ormandy/Philadelphiaの芸術」として計55枚ものCD(限定盤  1期:15枚、2期:20枚、3期:20枚)が発売され、RCAステレオ期の録音の主要なものが殆どCD化されました。米国BMG、Sony Classical でも全然記念盤が発売されない状況において、日本だけがこのような快挙を成し遂げたことは特筆に値するでしょう。この他、Tedd Joselsonを除いて、Rubinstein,Cliburn,Jenson等の協奏曲の録音も別途CD化されていますので、RCAステレオ期の録音は殆どCDとして聴くことが出来ます。(2004.5.2追記修正)


ステレオ期のプロデューサーについて

  さて、RCAステレオ期の ormandy/philadelphia の録音ですが、RCA復帰直後から数年間の録音(1968-1972程度)については残念ながらあまり評判が良くありません。(演奏は良いのに音が悪いということです) 音に潤いが無い、硬い音がする、透明感が無い等など・・。正直、私も、1954-1960前半の質の良い Living Stereo の音質とは比較にならないと思います。ちなみに、RCAステレオ期の ormandy/philadelphia を担当した主な Recording Prducer は下記の4名になります。

   1968-1969 John Pfeiffer(1920-1966)
             彼の追悼盤として、下記CDが発売されている。英EMIの辣腕プロデューサーのWalter Legge についても
             仏EMI/Pathe Marconi より同様のアルバムが発売されているのは面白い。
               米RCA Victor Living Stereo 09026-68524-2 (P)1996, 2CD
               The Age of LIVING STEREO:A Tribute to John Pfeifer
   1969-1972 Peter Dellheim
   1970-1974 Max Wilcox
   1974-1980 Jay David Sax


録音会場について

  RCA の看板プロデューサーとも言える John Pfeiffer に録音を担当させ、セッションの場所もそれまで Columbia 使用していた Town Hall では無く Academy of Music に収録場所を移して行っていることから、RCA の期待の大きさが伺えます。しかし、 Academy of Music は残響が少なく、それを補うためステージの音をマイクで拾い、ステージの上階にある舞踏場をエコールームとして使用する(マイクで拾ったステージの音を舞踏場でスピーカー再生しそれをマイクで拾い、その音をステージの音とミックスする)方法が取られましたが、その結果は必ずしもうまくはいかなかったようで、マスコミの受けも悪かったそうです。

  担当が Pfeiffer から Dellheim に交代したときに、収録場所も Academy of Music から Scottish Rite Cathdral(所有者が変わったのに伴い、Town Hall の名前も変わった)になりました。(というか、戻った)しかし、このPeter Dellheim と Max Wilcox の時期の録音もどこか硬い音質で透明度不足の感じがあります。(特に、シリアスな作品はその傾向が強い。一方、この時期のChristmas Album や Tchaikovsky の 3大バレエ、そして Fantasic Philadelphians 等の収録曲は残響豊かで聴きやすい音に仕上がっているのは、作品の性格に応じて収録方法を変えていたのではないか?と思わせます。)

  この当時、 Scottish Rite Cathdral 以外に使える場所は無かったそうです。(Columbia 時代に使っていた Broadwood Hotelについては、RCA移籍の時点でオフィスビルに変わっており録音スタジオとしては使えなくなったそうです)Jay David Saks氏はこの場所について「・・・ウェットな音響効果をもつ大きな舞踏会場でした。ただ、大オーケストラの為にはやや小さく、オーケストラもお互いの音が聴きにくいなどと問題の多いホールでしたが。・・・」と語っています。また、Max Wilcox氏は次のように語っています。「・・・理想的ではありませんが、自然な響きがありました。ただ、冬場はホールが乾燥して響きがドライになるため、湿り気を保つために大きなドラム缶にお湯を入れたりして大変でしたが。・・・」

  一方、Academy of Music については1977-78年にかけて Unitel のビデオ収録が行われており、この時点でフリーのプロデューサーになっていた Wilcox氏が収録を担当しています。この時の収録曲では「惑星」がもっとも良い音で録音されていたと思いますが、残響の少ないアカデミーでどうしてこんな良い音で・・・と不思議に思いましたが、Wilcox氏のインタービューで合点がいきました。ここで彼は、「・・・複数の指向性マイクを客席に設置氏、それをステージではなく天井の方へ向けてセットし、個別にメイン・マイクの音にミックスするのです。天井に向けたマイクのバランスを上げすぎると締まりのない音になりますが、その効果は絶大でした。・・・」という手法を用いて残響の少なさを解決したわけです。

  この他、アカデミーの録音には最新機材を用いて1981年に米Delosへ録音した Tcahikovsky の Pathetique Symphony があります。(米Delos D/CD 3016) このLPを初めて聴いたとき、「これがあの philadelphia sound か?」とショックを受けました。Telarc の Organ Symphony(米Telarc CD-80051)を事前に聴いていたので、そのあまりのデッドな音に、そしてその違い(Organ Symphonyとの)に驚きました。(残響の多い教会とデッドなホールの録音ではそれは大違いですな)米Delos には "Old Met"(EMI/米Angelの録音会場)での Tcahikovsky の5番交響曲の録音もあり、こちらは適度な残響があります。この3枚はphiladelphia orchestra が音の良さで有名な二つの会社にそれぞれ異なる場所でディジタル録音での収録を行ったということで、会場によるオーケストラの響きの違いを確認するのには格好のディスクですし、晩年の ormandy/philadelphia の境地を示す貴重な録音でもあります。


マルチマイクとマルチトラックレコーディング

  1960年代後半から1970年代前半は、収録マイクの数を増やして録音テープも12ch,24ch,48chのマルチトラックで録音するマルチトラックレコーディングの手法が最も浸透し適応された時期と思われます。この方法は、

  ・音響効果の良くない場所での収録に効果を発揮する
  ・ともすれば他の楽器にかき消されてしまう音の小さな楽器の音も明瞭に拾える
  ・録音の後でアンサンブルのバランスを自由に変更することが出来る
  ・個々のパートのミスの修正(編集)が楽

という利点がありますが、欠点も当然存在します。

  ・音が濁りやすい
      個々の楽器の音が完全に分離されてそれぞれのマイクに収録されるわけでは無いので、
    それぞれのマイクの音をミックスしたとき位相の異なる同じ音が干渉等の悪影響を
    与える・・・等。
      多くの機器(ミキサー、リミッター、ノイズリダクション)を信号が通過するので
    それが音を劣化させる。(最近はディジタル信号で処理されるので、現在は
    問題にならないと思いますが)
  ・下手をすると現実のバランスとはかけ離れた音になる(それをわざと狙うことも有り)
  ・不自然な音になりやすい
    −眼前に金管の音が聞こえる
    −打楽器が左右に移動する
    −自然な奥行き間、ホールトーンの感じがない
    −ピアノの乾いた音と残響豊かなオーケストラの音という変てこりんな録音
    −低音不足の音になりやすい

  1970年代後半はこの行きすぎたマルチマイク・マルチトラックレコーディングの反省から、ワンポイントマイク、ペアマイク等の録音手法も見直されそれを売り物にするレコード会社も現れたのはみなさんもご存じのとおり。(米Telarc, 米Shefield Lab,その他マイナーレーベル等)

  どちらの手法にも一長一短があり、作品や録音会場及び演奏家やプロデューサーの考え方にふさわしい録音手法を取捨選択して行うべきことなので録音手法の良し悪しは状況次第です。また、完全なマルチトラックや完全なワンポイントというのは極少数であり、実際はこの二つの手法を組み合わせた中間的な方法がほとんどと思われます。

  ちょうど ormandy/philadelphia が RCAに移籍した当時、マルチマイク・マルチトラックレコーディングの手法が積極的に導入・適応されていこうとした時期と思われます。(勿論、それ以前にもこの手法は使われてはいるのですが、それを更に押し進めるという意味です)RCA に移籍する前の Columbia でも The Fabulous Philadelphia Sound Series にてわざわざレコードジャケットにマルチマイク録音手法を図解(マイクセッティングの図)し、

 
 "Columbia Materworks has captured this remarkable sound with 12 to 15 AKG microphones,
  a 15-channel transistorized custom-built console and four-track Ampex tape recorders"

と謳っています。(ただ、この時期のLPは低音不足で高音が強調された音作りで個人的には好きではありません。ただ、CD化されたものはかなり聴きやすくなりました。 Brahms の1番交響曲(米Sony Classical SB2K63287)とか Grofe の Grand Canyon(米Sony Classical SBK62402) がそうです) RCAでの1812年の録音の Max Wilcox のプロデューサーノート(日BMG/Funhouse BVCC-38126)でも使用機材が堂々と謳われていることからもそれが推察出来ます。また、ormandy 自身もRCA移籍直後の Roger Hall とのインタビューにて「・・・録音技術が今日では全く変わっています。・・・・今日レコードとして聴くことが出来るのは正にパフォーマンスなのです。・・・必要な編集によって融合され、一つの流れになった、真のパフォーマンスと言えるでしょう。・・・」(日BMGFunhouse BOCC-5 非売品の解説より)といっていることから、「演奏をそのままレコードにする」という考え方では無く、「現実の演奏では実現できない理想のパフォーマンスを新しい技術を駆使して作っていく」という考えが強く現れています。

  ただ残念なことに、ちょうどこの時期のマルチマイク・マルチトラックレコーディングの手法はそのノウハウを蓄積する過渡期であり、上記の欠点が強調される結果になったのでは・・・と思います。勿論、Producer や Engineer の腕というのもあると思いますが。Jay David Saks の担当する時期になって、厚みのある豊かな録音になっていったのは、彼の手腕に負うところもあると思いますが、マルチマイク・マルチトラックレコーディングの手法のノウハウが蓄積され安定してきた時期になったからではないか・・・と思います。(後述する Quadraphonic-4channel 録音の混乱もあったのではないかと思われますが・・・)

  「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」のCD解説に当時のフィラデルフィア管弦楽団団員の興味深いインタビューがありました。マルチマイク録音で各セクションの音の分離を良くするため、各セクション間を大きく離した配置で録音を行ったそうです。そのため、特にブラスセクションと指揮者が遠くなり、マエストロは「ブラス!遅い!」と言われたそうです。しかし、収録マイクは各セクション毎に設置されているので、マエストロの耳に到達する前にマイクが音を拾ってしまうわけで、プレイバックでは逆にブラスの音が先に聴こえてしまうという現象に遭遇してしまい、マエストロは実演に較べると慎重な指揮ぶりであったというお話です。確かに、CDのブックレットに収録されている写真を見るとかなりの距離を取っているのが分かります。(2004.5.1追記)

  また、この時期の RCA のレコード製造についても問題があったのでは?と思わせるところもあります。RCA Red Seal High Performance Series が発売されるときも、タワーレコードの広告に「(High Performance Series で復刻される)この時期のRCAのレコードには製造上の問題があり・・・」という記述がありましたし、Mahler の "Titan" や "Ressurrection"(※) もその LP の音は硬い傾向の音であり、最強音で音が割れてしまう問題があります。特に「復活」(※)は酷く、かなり強くリミッターを効かせているのではないか?と思わせます。いくらなんでもマスターテープ自体があの音とは考えにくいので、カッティング用のマスター製作の段階かラッカー盤へのカッティングの段階での不具合を疑いたくなります。アメリカ盤・イギリス盤とも同じような状況ですのでなおさら疑惑(?)が強くなるのです。

  Mahler の "Titan" については復刻盤(日BMGFunhouse BVCC-38119)でかなり聴きやすい音に仕上がっているので、 "Ressurrection" (※)もセッション時のマスターテープからのCD化を期待したいところです。名演なので、このまま埋もれさすには惜しいのです。この時期には他にも貴重な作品が収録されていますし。(Mendelssohn:Elijah, Shostakovich:Babi Yar(※), Penderecki:Utrenja(※)とか)

※「Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾」でCD化されました。なお、「復活」については今回のCD化にあたり米国BMGのオリジナル4chマスターテープに遡ってのリマスタリングが行われ、LPと比較して大幅な音質向上が図られております。但し、強音部の歪みは収録時にもともと発生しており、残念ながらそれの除去は不可能でした。惜しいことです。(2004.5.1追記)


レコード番号とディスクの例

 レコード番号
   LSC-XXXX(復帰第1弾の悲壮交響曲のLPがLSC-3058)
    ARL1-XXXX
    ARD1-XXXX (4channel LP, Quadraphonic)

    R*XXXX (*は枚数を示す)
    AGL1-XXXX (再発盤、廉価盤の Gold Seal Label)
    CRL*-XXXX (セット物、*が枚数を示す)

 ディスクの例(下線は未CD化)

   SP-33-555 Five Treasured Recordings from the Heritage of Greatness on RCA Red Seal
     Not for Sale(C)1969、プロモーション用LP。この当時の RCA の新譜に無料で配布された。
     1999年のBMGJapan の100周年記念盤(1期)の特典盤(BOCC-5)としてCD復刻された。(ただし、収録曲は一部異なる)
     
   (left:SP-33-555, right:BOCC-5)

   LSC-3055 Chopin:Piano Concerto no.2 & Grand Fantasy on Polish airs Rubinstein(p) (C)1969 
   LSC-3056 Schbert:Unfinished Symphony, Mozart:Jupiter Symphony (C)1969
   LSC-3057 "First Chair" Solists of the Orchestra (C)1969(Ormandy/Philadelphiaの芸術第3弾 特典CDとして復刻)
   LSC-3058 Tchaikovsky:Pathetique Symphony (C)1969
   LSC-3180 Penderecki:Utrenja,The Entombment of Christ (C)1971
   LSC-3246 Gliere:Ilya Muromets  (英RCA SB6859) (C)1972
   LSC-6190 Mendelssohn:Elijah (3LPs,(C)1970)
   LSC-7066 Mahler:Symphony no.2 "Resurrection"  (英RCA LSB4003/4) (C)1970
     

   LSC-3162 Shostakovich:Symphony no.13 "Babi Yar" (C)1970
   CRL3-1284 In Memoriam Dmitri Shostakovich, The Last Three Symphonies(3LPs,(C)1975)
     
   (left:Babi Yar, center:In Memoriam, right:Dmitri & Gene)

   LSC-3060 Ives:Symphony no.3"The Camp Meeting", Schman:New England Triptych (C)1969
   LSC-3212 William Schumann:Symphony no.9, Vincent Persichetti:Sinfonia "Janiculum"
   ARL1-0027(R114350) Tchaikovsky's Greatest Ballets vol.1:Excerpts from Nutcracker (C)1973
   ARD1-0028 Rimsky-Korsakov:Scherazade, (C)1973 Quadraphonic Disc
   ARL1-0030(R114351) Tchaikovsky's Greatest Ballets vol.2:Excerpts from The Swan Lake (C)1973
   ARL1-0169 Tchaikovsky's Greatest Ballets vol.3:Excerpts from The Sleeping Beauty (C)1974
   ARL1-0751 Tchaikovsky:Piano Concerto no.1 & Prokofieff:Piano Concerto no.2 (piano:Tedd Joselson) (C)1974
   ARL1-1249 Ives:Holiday Symphony (C)1975
   ARL1-1682 Ives:Three Places in New England, Harris:Symphony no.3 (C)1976
   ARD1/ARL1-0633 Ives:Symphony no.2 (Quadraphonic disc/Regular stereo)
   ARL1-1151 Prokofiev:Alexander Nevsky (C)1975
   ARL1-1869 Prokofiev:Symphony no.5(C)1977
   ARL1-2945 Tchaikovsky:Manfred Symphony
   ARL1-3063 Tchaikovsky:Symphony no.1 "Winter Dreams" (C)1979
   ARL1-3352 Tchaikovsky:Symphony no.2 "Little Russian" (C)1980
   ARL1-3640 Bizet:Symphony in C & L'arlesienne suite no.1 (C)1980
   ARL1-4121 Tchaikovsky:Symphony no.3 "Polish" (C)1981


   LSC-3326   The Greatest Hits of Christmas (A Christmas Spectacular)
   AGL1-4088  Chrstmas with Eugene Ormandy and The Philadelphia Orchestra
              (Gold Seal Label, LSC-3326 と同一内容、一部の曲はCD化)
   LSC-3327   A Christmas Spectacular(The Greatest Hits of Christmas)
              (一部の曲はCD化)


   ARL1/RCD1-7076 R.Strauss:Death and Transfiguration & Metamorphosen(LP/CD (C)1986)
       With this album RCA Records brings to a close its catalog of Recordings
       by Eugene Ormandy with The Philadelphia Orchestra. とジャケットに記された
       ormandy/philadelphia の RCA の新譜としての最後のディスク。
  





RCA のロゴとNipper君(His Master's Voice)の遍歴から考察(?)するレコードジャケット史(?)

  さて、RCA の中古LP は Columbiaの中古 に比べると数が少なくて、探すのに苦労します。やはり、Columbia 時代と違ってクラシックレコードビジネスというパイ自体が縮小しつつある状況で、ormandy/philadelphia といえどそう売り上げを伸ばすことが出来なかったということでしょうか・・・

  さて、ormandy/philadelphia が移籍するこの時期の RCA は ちょうど CI の真っ最中だったらしく、RCAのロゴもお馴染みの(今はそうでもありませんが)太い文字になり、レコードから "Victor" の文字が消えます。レコードラベルも "Victor" の文字とお馴染みのNipper君("His Master's Voice"のあの有名なトレードマークです)が消えるのですが、何故かニッパー君はレコードジャケットに残ることになります。

        
  RCA Red Seal LSC-3058 Tchikovsky's 6th Symphony.

  ちなみに、中古屋さん業界ではこの時期のラベルを "No Dog"(犬無し)と呼んで区別しています。CI する前の ラベルは "White Dog"(白犬)とか "Shaded Dog"(影犬)があるのでそれと区別しているようです。ちなみに、状態の良い "Living Stereo" の "Shaded Dog"だと物によってはウン万円〜10万円くらいで取引されるようです。(Reiner とか Munch とか・・・) ormandy/philadelphia の盤はそんな高額の物はありませんから、安心して購入できます。(ちょっと悲しいかも)

  さて、1970年代前半は今はもう知る人の少ない "4 channel" ブームが到来します。前に2チャンネル、後ろに2チャンネルのスピーカーを置いてコンサートの臨場感を出そうと目論んだ方式です。(と言っても、私が物心つく頃にはとっくにポシャっていた規格ですが、現在はDVDのマルチチャンネルに姿を変え(?)復活しつつあります。でも、RCA,Stokowski,Disney は Fantasia で 1941年にこれを実現していたのですから、60年後にようやくそれを楽しめる家庭環境が整ったことになります)
  Matrix 方式の SQ方式(Columbia,CBS Sony等)とQS方式(SQ と QS、冗談と思いきや本当にこの2つの方式があったのです) 、Discrete 方式の CD-4方式(RCA, Panasonic, 日本Victor, 山水、等)等さまざまな規格が乱立して規格統一がなされず、また再生技術上の問題(一つの溝にステレオの音を入れるだけでも Cross Talk(混話)や Interference(相互干渉)の問題があるのにさらに加えて2つの音を一つの溝に入れてしまうという無理をしたこと)もあり、さらに悪いことにソフトが揃わなかったということも重なり、結局4 channel という方式そのものが霧散消滅しまいました。その後も、Dolby Surround とか 音場創成 の試みは続き、電子回路の集積技術とディジタル信号処理の急速な発達により現在のDVDのマルチチャンネルが普及するまでに至った訳で、要は世に出るのが早すぎた・・・と。この大失敗とエルカセット(私は現物を見たことがありませんが・・・)の失敗を教訓に、CDは規格統一をしっかり行い世界的に普及したわけです・・・がまたDVDで同じことを繰り返しているようです。「歴史は繰り返す」ですか・・・。

  話を戻して、ormandy/philadelphia の盤にもこの 4channel Disc があります。(RCA は "Quadradisc" の名称で販売しています。レコードラベルには "Discrete 4Channel" と謳ってあります)でも、普通に従来の 2channel 再生も出来ますので、購入の際は全然気にする必要はありません。一応、どの方式の 4channel Disc も下位互換性を考えています。ただし、CD-4 の場合、後ろの 2channel 分は、50kHz まで再生できるカートリッジと de-modulator(復調器、当然今は売ってませんが・・・)が無ければ再生できません。当然、再生装置も 4channel分 必要です。

      
  Quadradisc Logos

    
  Quadradisc Label

  しかし、ormandy/philadelphia の録音が本当に 4channel で行われていたかどうかはよく分かりません。 2channel の従来録音を無理やり 4channel化してしまう例もあったそうなので。Columbia からも ormandy/philadelphia の 4channel ディスク(SQ方式)が発売されたようなので、その可能性は高いです。(1968年当時で本当に4channel 録音をしていたとは考えにくい)

  4Channelの話はここまでにして、話を戻しましょう。RCA は(恐らく)1972年ぐらいになってジャケットからニッパー君を無くしてしまいました。しかし、1975年代後半になって、今度はニッパー君をレコードラベルに復活させました。ニッパー君が右横に座っているので、"Sided Dog" と呼ばれているようです。(それにしても、中古屋さん業界は名前を付けるのが好きですね・・・)思うに、RCA はニッパー君と"Victor"という名前を持て余していたのではないか・・・と思うのです。RCA のレコード部門が BMG に買収されたとき、"RCA Victor"という名前とニッパー君はまたまた復帰しますが、最近はまたニッパー君と"Victor"の名前が無くなり、"RCA Red Seal"で統一されつつあるようです。(ニッパー君は世界的にトレードマークとしての姿を消しつつあります。EMI の Recording Angel も無くなりましたし)

    
  RCA Red Seal Sided Dog Label

  それにしても、この時期のRCAは、あの手この手の変わったLPを発売します。まず、大爆笑ジャケットの オルガン交響曲を。100周年記念盤のブックレットにこのジャケットが印刷されていたのでご存じの方も多いと思います。このジャケットをご覧になったマエストロの心境が思いやられます。これをぱっと見て曲名を当てることのできる方が果たしていらっしゃるでしょうか?
  
  RCA RED SEAL PROUDLY PRESENTS, A SUPER SOUND SPECTACULAR!
  THE GREATEST SOUND ON THE EARTH! (THE GREATEST SHOW ON THE EARTH! を意識して?)
  THE FANTASTIC PHILADELPHIA ORCHESTRA Conducted by THE GREAT MAESTRO EUGENE ORMANDY
  THE FABLOUS VIRGIL FOX in THE GRAND SYMPHONY No.3 FOR ORGAN AND ORCHESTRA
  105 MAGNIFICENT VIRTUOSOS
  THE ROGERS TOURING ORGAN 4000 lbs. 144 SPEAKERS 56 STOPS 
  (Touring Organ...可搬型のバラして運べる演奏旅行用のオルガンということでしょうか?)

  他の未CD化の演奏も早いところ "PROUDLY PRESENTS" して頂きたいと切に願います。それにしても、Sigh.....

  お次はお色付きのレコード。David Bowie を起用した"Peter & The Wolf" のLP は緑色のレコードです。これは、David Bowie の起用と共にかなり話題になったそうですが・・・。Bartok の "Concerto for Orchestra" は赤色のレコードです。しかし、普通クラシックではこういうことはやらないでしょう。なんとかセールスを伸ばそうとする、低迷傾向だった RCA の必死の努力を象徴するようなレコード・・・と言えるかも知れません。とはいえ、これらはコレクターズアイテムだそうです。

  
RCA Red Seal ARC1-3421 Bartok:Concerto for Orchestra

   
 RCA Red Seal ARL1-2743 Prokofiev's "Peter and the Wolf"

  RCA による、ormandy/philadelphia の最後の新譜は 1986年に(恐らく)追悼盤として発売された R.Strauss の 「死と浄化」と「変容」です。(1987年録音)これは、LP,CD 同時発売されています。 ormandy/philadelphia のRCA への最後の録音は Dylana Jenson をソリストに迎えたSibelius の Violin Concerto (1980年録音、RCA Victrola 7730-2-RV (C)1988 CD)になります。この他、収録されたのにもかかわらず世に出ていない録音 "Ice Box Recording" に Barber の Adagio があったりします。(これらの RCA の録音のリリースが遅くなった事情等は、 Ichikawaさんの Fantastic Philadelphians に詳しい情報がありますので、そちらをご覧下さい。)

  取り留めのない話になってしまいましたが、今後の ormandy/philadelphia のLP購入の参考になれば幸いです。


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2002.1.14(2004.5.1追記、2006.12.05, 2008.8.10修正)