円盤干支せとら

レコーディングやディスクに関するエッセイ(?)です。
その1、その2

《項目》

・蘇るMERCURY LIVING PRESENCE その2(2008.8.28記)
・蘇るMERCURY LIVING PRESENCE その1(2008.8.27記)

《内容》

蘇るMERCURY LIVING PRESENCE その2(2008.8.28記)

 昨日書いたMERCURY LIVING PRESENCE について、ちょっとウェッブ散策をすると、結構出てくるもんです。探す入り口は英語の Wikipedia が良いようで、mercury records で検索するとMercury Records が出てくるので、これを読めばある程度のことが分かります。また外部リンク"External Links"には当時のプロデューサーであるウィルマ=コザート=ファイン女史のインタビュー記事が紹介されており、これは非常に興味深い内容だ。Wilma Cozart Fine is Mercury とか、The  Recording  Producer Wilma  Cozart  Fine. A  Conversation  with  Bruce  Duffie. などは一読の価値有り。

 さて、私が気になるのは、あのマーキュリーレコードの


Mercury Living Presence LP inner sleeve

この仮面の男?のような人物は一体誰であろうか?と疑問に思い、ネットを調べたがこの「謎の男」についての記述は見あたらなかった。(捜し方が悪い?)で、レーベル名の"Mercury"を広辞苑で調べてみたら、

マーキュリー【Mercury】
 ローマ神話の商売の神。ギリシアのヘルメスと同一視された。メルクリウス。
 〔天〕水星。
 (mercury)水銀。

とアッサリ出た。なるほど、回答は目の前にあったのね・・・商売の神様だったんかね、アンタ。確かに、日本の女性にはヘルメス(フランス語読みだとエルメスか)は良く売れてるし、昔サントリーは「ヘルメス・ジン」を売ってたな。ヘルメス、ヘルメス、ヘルメス、ジン〜 なんてコマソンもあったっけ。日本には世界に誇る?セーラー・マーキュリーという綺麗なおねーさんもいるこったし・・・(昔セーラームーンにハマってた姪ももう大学生である。時の流れを感じますなあ・・・)



蘇るMERCURY LIVING PRESENCE その1(2008.8.27記)

 MERCURY LIVING PRESENCE (最近は Universal の DECCA レーベルから出てるんですな)といえば、1950年代からポップスやジャズを手がけていたMercuryがクラシック音楽に進出して出したクラシック部門の有名なレーベル。1990年代にはそのオリジナル3chマスターテープを、これまた当時録音に使用していた録音機(Ampex 3-track 1/2" tape machine, Vacuum-tube Westrex 35mm film recorder)をレストアしてディジタル・マスタリングを行い、さらに当時ディレクターであったウィルマ=コザート=ファイン女史を担ぎ出してCD化を行うという徹底ぶり。

 録音当時の機械を引っ張り出して再生するのが良いか?最新技術を用いた現在のテープレコーダーで再生するのが良いか?という哲学論争に発展しかねない問題はさておき、これだけ手をかけたCD化は功を奏し、1950年代後半から1960年代前半にかけて行われた同社の録音が驚異的な音質でCD化されたのは御存知の通り。

 ただ、最近同社の録音は一部SACDでも発売されており、こちらは再生機器に現在の最新機器を投入しているので、CDとは音質が微妙に異なる。再生するテープレコーダーそのものが別物なので、CDとSACDの差というより再生機器の差がはるかに大きく、私の節穴耳でもその違いが分かるくらいである。

 それはさておき、Mercury Living Presence のステレオLPは愛好家に珍重されているようで、中古市場ではとんでもない高値がついているが、そんな高額なLPに手を出さなくてもCDで十分楽しめる。当時のLP製作技術や電子回路技術の発展を考えれば、マスターテープの劣化を考慮してもCDの方が当時のLPよりはるかに良い音質だと思うが、聴き較べたことはないので断言は出来ない。(Mercury Record Collection というサイトがあるくらいなので、このレーベルが好きな人が多いと改めて感心した次第)

 ただ残念なことに、1990年代にCD化されたこれらの演奏の多くは、現在市場から姿を消している。惜しいことだなあ・・・と思っていたら、日曜日にふと寄ったHMVで MERCURY LIVING PRESENCE 1200 と国内盤で再発されているのを知った。数は少ないが、パレー/デトロイト響のラヴェルとドビュッシーの名演奏も再発されているではないか!これ、オークションやアマゾンの中古を結構探して入手した思い入れのあるCDなんだけど、これが\1,200で簡単に入手できるとはねえ・・・音源も1990年当時のマスタリング音源を使っているというので安心できる。

 MERCURY LIVING PRESENCE の国内盤CDには、日本のコピーマスターからCD化されたものもあり、残念ながらそれはアメリカ本国のCDと比較して音質が劣る。以前、フェネルとイーストマン・ウィンド・アンサンブルの演奏が多数国内でCD化されて発売されたが、米国CDに較べると一枚ベールを被ったような音質でがっかりしたことがある。ただ、元の音質が優れているので聴き較べない限り、かなり良い音質と感心できるくらいなので一概にこれを批判するのもどうかという気はしているが・・・

 MERCURY LIVING PRESENCE(この当時は PolyGram の Philips Classics) がそのアーカイヴを積極的にCD化し始めた頃、Mercury Living Presence 紹介用のサンプラー盤が発売された。156Pの分厚いブックレットがついていて、同社の歴史やカタログ(しかも歴史的な演奏家のプロフィール付き)という汁だく内容で、値段も千円そこそこというお買い得盤であったと記憶している。
 

Mercury Living Presence "YOU ARE THERE!" CD 442-541-2

 現在、この内容の一部はMERCURY LIVING PRESENCE にてPDFファイルとして公開されているので内容を見ることは出来る。このCDは買っておいて良かったなあと今でも思う。もう、現在ではこういう贅沢なサンプラーは作ることは出来ないだろうから・・・ ある意味、RCA Red Seal の RCA LIVING STEREO と双璧のレーベルと言える・・・かな。


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