円盤干支せとら - 2

レコーディングやディスクに関するエッセイ(?)です。

《項目》

・LP創世記のレコード針事情(2008.8.30記)
SHM-CD(Super High Material CD) (2008.8.21記)
・オーディオトラブル(2008.1.1記)
・オーディオ更新その4(LD,CD,DVD)(2007.10.24記)
・オーディオ更新その3(台所ステレオ)(2007.10.24記)
・オーディオ更新その2(カートリッジ)(2007.10.24記)
・オーディオ更新その1(ヘッドフォン)(2007.10.23記)
・LIVING STEREO(台所ステレオ計画) (2006.1.28、2007.10.24追記)
・「音聴箱」台所に降臨 (2006.1.28)
・相次ぐオーディオ・ファイル向けMMカートリッジの生産完了 (2005.8.28)

《内容》

LP創世記のレコード針事情(2008.8.30記)

 LP創世記のレコード盤ジャケットやインナースリーブには「レコード針に関する注意」が記されていることが多く、当時のレコード針事情を垣間見る事が出来る。これは米コロムビアレコードに記載されていた例。

  

 どうやらこの「永久針」と言うヤツはSP時代からあるらしく、「永久に使えます」という誇大広告はLP時代でも後を絶たなかったらしい。「”永久針”はLPに取り返しのつかないキズを付けてしまいます」と、コロムビア・レコードは自社のLPに警告を出している。ま、コロムビア自身、レコードプレーヤー・カートリッジを販売していたから、ちゃっかりその下に自社のCMをさりげなく打っているのが微笑ましい。

 ちなみにこの当時、レコード針は、「ダイヤモンド」「サファイヤ」「オスミウム」の3種類が主流だったみたい。

  

 「ダイヤモンド」「サファイヤ」針は僕にもなじみ深いが、「オスミウム」は知らなかった。「一番安いが15時間程度しか持たないから頻繁に取り替えるように」と書いてある。お勧めは「ダイヤモンド」で、「最も良い針で、高価だが千時間は持つので、ランニングを考えればこれが一番安い」とある。なるほどねえ。



SHM-CD(Super High Material CD) (2008.8.21記)

 HMVのサイトを見ると、BMGジャパンからオーマンディ指揮のSHM-CDが3枚、10月に発売されるそうな。最近目にする、このSHM-CD(Super High Material CD)とはなんぞや?思っていたらちゃんと公式サイト(SHM-CD)があった。ポリカーボネイトを透明度の高い他の材質に置き換えたものらしい。

 それにしても、たかだかCD程度の情報量のディジタル・データが、基盤素材がガラスやSHMに変わっただけで音が変わる・・・ふつーに考えて有り得るとは思えん。パソコンのCD-ROMを読む度にデータがころころ変わって・・・なんてことが起こったらプログラムがまともに動かないことは素人でも分かるが、それが音楽CDでもおきうると言ってるのだから、どう考えても辻褄の合わない話である。

 一度、ふつーのCDとガラスCDとSHM-CDで、エラー率の比較テストをやってみたらどうかね?今まで色々な素材のCDが出てきたけど、一度たりともこういう厳密なデータ比較というヤツにお目にかかった例が無い。どういうことかね?

 ま、でもオーディオの話で騙されても数千円の話である。従来CDより悪いという訳でもないし、オーディオ業界の飯のタネにイチャモンを付けるのは大人のすることではない。一緒になって楽しむのが良いだろう・・・



オーディオトラブル(2008.1.1記)

 新年早々トラブルのお話を・・・

その1

 昨年10月に購入したKENWOODR-K700、コンパクトなボディに似合わぬ性能と機能に満足していますが、最近ちょっとご機嫌斜め?
 KENWOOD R-K700
 電源を入れると(といってもオフしても待機状態なんだけど)、暫くしてCDプレーヤー部分からカカカカ・・・というノイズが・・・。恐らくCDが入っているかどうかのチェックの動作音で、それがどこか機械的な不具合で音が鳴るようになったと思う。ピックアップ部分だろうか?今のところ動作に支障はないけど気になる。無料保証期限が切れる今年10月までには一度チェックを兼ねて修理に持っていく必要があるかな。

その2

 これまた、昨年10月に購入したLDプレイヤーのPioneerのCLD-R5。
 Pioneer CLD-R5
 ある日、ディスクをトレーから出そうとすると、白いネットリとした物体がディスクの上に「ちょこん」と乗っかっていた。綿棒の綿ほどの大きさの真っ白な、グリスかワセリンのような潤滑剤のようだ。それがよりによって、オーマンディ・フィラデルフィア管のディスクだった・・・まあ、簡単に拭き取れたし、信号面から外れた最内周(ディスク中央ラベルより少し外周側)

 恐らく、ディスクをホールドする上部クランパー軸受け部のグリスか、レーザーピックアップを移動するレールかガイドに塗ってある潤滑剤が多すぎて余分が落っこちてきたもの・・・と思い、カバーを開けて内部を見てみた。(これだけで修理に持ってくのも面倒だし・・・)ピックアップのレーザー光が目に入らないように注意しながらカバーを開ける。
カバーを開けたところ

 さて、原因は・・・と色々探して「恐らくこれだろう」と思われる箇所を突き止めた。どうやら、ピックアップのガイドレールに塗られた潤滑剤の余分がガイドに掻き捕られて溜まり、ピックアップがディスク上部で動いている時にそれがポトリと落ちた・・・というところだろう。両面再生するため、ピックアップがディスクの両面をアクセスできるよう、ピックアップガイドがディスクをUの字に挟んでいるようなイメージを想像してもらうと良いだろうか(上の写真を見てもらえば解るかと)

 
写真左:中央部分に白い潤滑剤有、写真右:除去後

 入り組んでいて手が届きにくい場所なので、箸に綿棒や爪楊枝を付けて注意深く余分な潤滑剤を除去し、カバーを復旧。まあ、これで当分は大丈夫だろう。

 カバーを外した状態でプレイ、直径30cmの銀色円盤がビュンビュン回転してこれにはたまげた。ちょっとしたソリやディスク密度の不均一があっても機械的な負担は相当なものだろう、ディスクが割れていたら・・・(冷や汗;)「知らぬが仏」とはこのこと。機械的にはDVDの方が安心できる。

 それにしても、LDが出た当時「絵の出るレコード」と大々的に宣伝され、あの銀色に輝くディスクを見てため息をついていたのも二昔以上も前のことか。出始めのパイオニアLDプレイヤー1号機、当時はトップローディングでレーザーも現在のような半導体レーザーでは無くガスレーザーだったからガタイはでかかった。ディジタル音声規格も無かった。それが現在はDVDに取って代わられ、昔日の面影は無い。世の無情を感じますなあ。

 どうも運が悪いと言うか、新しいオーディオ機器を買うと必ずと言っていいほどトラブルに見舞われてしまう。困ったものだ。日ごろの行いが悪いせいか?



オーディオ更新その4(LD,CD,DVD)(2007.10.24記)

 今から10年程前、会社の先輩から譲ってもらった SONY MDP-A7 だが、最近調子が悪く殆ど使っていなかった。

←SONY MDP-A7

 一度修理しているが、SONYはもう既にLDから撤退しており、中古オーディオ屋さんに「修理できるかなあ?」と聞くと「SONYはLDから撤退してかなり経つので、修理を受け付けてくれない可能性が高いよ・・・」ということで、これもリプレースすることに。

 また、これまでCD・DVD再生用に船井電機の SUEDE DVD-AE1 という安価なプレーヤーを使っていたけど、ヘッドフォンで聴いていると、最初の曲の頭・曲間・最終トラックの最後で「ブツッ」というノイズが聞こえるのにとうとう我慢が出来なくなり、あわせてリプレースすることにした。

 で、どうせCD・DVD Player をリプレースするのであれば、最近増えてきたSACD Hybrid盤をSACDで聴きたくなり、SACDも再生可能なユニバーサル・プレーヤーを購入することにした。

 たまたま寄った大須のオーディオ屋さんに、ちょうど値段も手ごろでこちらの狙いにぴったりの機種があった。SACD再生可能なユニバーサル・プレーヤーは、MarantzDV7001,LDプレーヤーはPioneerのCLD-R5。どちらもエントリー機種ではあるが、まあまあそれなりに高級感がある。(少なくとも、ボタンを押して後ずさりするような軽量級機種は嫌だな)

 パイオニアはLD開発メーカーということで、民生用2機種・業務用2機種の計4機種をまだカタログに残している。まあ、いつかは製造終了ということになるのだろうが、あと数年は大丈夫であって欲しいな。

 MarantzのDV7001・・・これはちょいと失敗だったかな。というのも、(僕にとって)肝心のSACD再生仕様にとんでもない問題があったのだ・・・

 それはどういうことかというと、SACDをトレイに載せて閉じると自動再生するが、なんと最初の曲の頭が切れてしまうのだ!いったん停止して再生するとちゃんと演奏するが・・・

 また、曲間の無音部分をすっ飛ばして再生してしまうのだ。つまり、交響曲と何らかの小品数曲をカップリングしたディスクの場合、ジャーン!と交響曲の最終楽章が終わった後、余韻に浸る間もなくほんの1〜2秒で次の曲がドン!と始まってしまうのだ。

 CDやSACDをセットした際、総曲目数やトータル時間が表示されないのは我慢するにしても、これでは困る。(これまで使っていたCDプレーヤーではちゃんと表示したので、てっきりこのユニバーサル・プレーヤーでも表示してくれると思ってました・・・なお、CD再生時には総曲目数やトータル時間が表示されない以外の不具合は無いのだ。

 これらのことについてメーカーに問い合わせると・・・

Q:SACD再生時の最初のトラックの頭が欠けてしまうのは?

A:1曲目の再生時は、再生開始時のノイズ等を防ぐため、音声のミュート機能が働きます。このミュート解除時に、トラックの頭 0.3秒程度、解除の時間が掛かります。トラックの頭よりすぐに音が出るようなDiscですと、若干頭が切れる可能性があります。

Q:SACD再生時、曲間の無音部分が再生されないのは?

A:DV7001は、DVD再生との兼ね合いで、曲間の無音部分(インデックス0)を飛ばして再生する仕様になっており、曲間の無音部分(インデックス0)が長いようなDiscですと、トラック間の無音部分を飛ばし、ご指摘のような症状になります。

ガチョーーーーン!!!、だめだこりゃ。

・・・嗚呼、谷啓といかりや長介の偉大さを初めて理解できたような気がしました・・・

 こんなエピソードが頭に浮かんできた・・・SONYのでのヒトコマ。CDの瞬時頭出し機能開発に血眼になっていた大賀氏はCDプレーヤー開発陣に、大賀氏はこう宣ったそうな。

「音楽というものは、ボタンを押したと同時に音が出れば良いというものではない。ちょっとした間が必要なんだ」

 仰るとおり、曲間の「間」をすっ飛ばす仕様は文字どおり「間抜け」仕様と言わざるを得ない。SACDに入っている音楽を再生する機械としては致命的な欠陥だと思う。SACD再生機能はオマケと考えた方が良いようだ・・・哀しいなあ・・・

 ・・・といっても仕様ではどうしようもない・・・(なんかパソコンの話みたい)。しょうがないので、このDV7001 でのSACD再生は諦め、DVD再生機として使うことにする。

 ということで、SACD,CD再生機として、これまたMarantzのSA7001を購入することにした。今度はSACDを店に持参して、DV7001で問題となったような「仕様」が無いかどうか確認してから選んだ。

 なぜSA7001を選んだかというと、重量感がありルックスもまあまあで、最も安かったからである。出力は2ch。DV7001は5.1ch対応だが、どうせアンプもスピーカーも 2ch Stereo だから5.1chは不要なのである。値段だけなら、ソニーのでもっと安い機種もあったけど、軽量級でボタンを押すと後ずさりするので止めた。

 ・・・結局、下の写真のとおりの構成となった。

 
 上:SACD PlayerSA7001,中央:Universal PlayerDV7001,下:LD Player CLD-R5

 正直、これが「安物買いの銭失い」なのか「結果としては良かったのか」・・・(2007.10.24記)



オーディオ更新その3(台所ステレオ)(2007.10.24記)

 台所ステレオ("LIVING STEREO")のレシーバーを更新した。これまでレシーバーとして使っていた TEAC CR-H80 の調子がおかしくなってきたのだ。

 
 左:PIONEER PL-Y7, 右上:AVOX ADS-200S, 右下:TEAC CDマイクロシステム CR-H80

 電源投入後しばらくは右チャンネルの音が小さくて聞こえなかったり、選局ボタンを押しても受信周波数が変わらないことがあったり・・・と。CD Player代わりの AVOX ADS-200S も動作がぎこちなくなってきた。

 ということで、思い切ってフォノ・イコライザーも付いているKENWOODのR-K700にリプレースを決行!

  
 左写真 左:PIONEER PL-Y7 + Audio Technica AT-10RG(VM Cartridge), 右:KENWOOD R-K700
 右写真:BOSE 101MM

 TEAC CR-H80 はフォノ・イコライザーが無いので、単体フォノイコライザーAudio Technica AT-PEQ3 を介してアナログ・プレーヤーと接続していたが、R-K700 はフォノが付いているのでダイレクトに接続できる。当然、CDも再生できるので AVOX ADS-200S は要らなくなり、ついでにMDまで再生できる。

 しかもR-K700 はディジタルサウンドイコライザーを内蔵しており、リスニング・ポジションがスピーカーを結ぶ二等辺三角形の頂点でなくとも、部屋の伝達関数・スピーカーのf特・リスニングポジションでの左右スピーカーの時間差等々、全て補正をかけてフラットに近づけてしまうという機能まで持っている。これだけの機能を持っていて実売価格3万程度だから驚いてしまう。そのまま鳴らしたら明らかに低音不足になる BOSE 101MM もトーン・コントロールを併用して強引に低域をブーストして鳴らせるのだ。まったくもって、技術の進歩の凄さを実感してしまった。KENWOODの製品のまとめ方もうまいもんだ。

 おかげで、単体フォノとDVDプレーヤーが要らなくなりコンセントも2つで済み、見た目もすっきりして言うこと無しである。音も立派なものだ。CDをヘッドホンで聴いてもほとんどノイズを感じない。これまで使っていて不満に思っていたことのほとんどを解消出来た。今から考えれば、始めからR-K700を導入したら良かったなあ・・・と少々後悔している。まあ、でも回り道もまた良し。

 なお、TEAC CR-H80はリスニング・ルームでチューナー専用機として使っている。壊れるまで使うつもりである。(2007.10.24記)

 
 右下:TEAC CDマイクロシステム CR-H80



オーディオ更新その2(カートリッジ)(2007.10.24記)

 Technics SL-1200MK4 で使っていた Audio Technica AT-ML140 を壊してしまった・・・。ことの起こりは、SL-1200MK4のトーンアームのヘッドシェル取りつけ部分の傾きの矯正から始まった。

 4年前にTechnics SL-1200MK4を購入した際、トーンアームのヘッドシェル取りつけ部分が傾いており、レコード面に対して平行になってないという不具合があった。
 ←こんなかんじ

 この時は、Audio Technica ATLH13/OCC という首を回せる重量級ヘッドシェルを付けて傾きを補正した。
 ←こんなかんじ

 しかし、このシェルはがっちりしている半面重量(13gある)が増えて、トーンアームのウェイト部にバランスウェイトを付加しなければならず、レコードの反りに対するアームの追従性が悪くなり、またハイレベルでカッティングされているレコードをトレースさせるとぶるぶる震えてしまうことがあり酷いときは針が溝から飛び出してしまうこともあった。
 カートリッジのコンプライアンスと重量(シェル・バランスウェイトを含めて)のミスマッチが共振を引き起こしてしまったのだ・・・

 やはり小手先の対応では駄目と悟り、トーンアームのヘッドシェル接続部分を再調整することにした。

 ←トーンアームのヘッドシェル接続部分

 精密ドライバーでヘッドシェル接続部分の二つのネジを緩めると首が回るようになった。ギリギリ、レコード面に対して平行に保てるところまで回せたので、そこでネジを固定する。ネジを回している最中に首が振れるので押さえながらネジを締めるのに一苦労。どうやらうまくいった。

 さて、ではAT-ML140をシェルから外そうと、リード線を端子から抜こうとしたら、「パキッ」と軽い音と共に端子は本体から離れてしまった・・・もう駄目だ・・・まだ交換針は使えるのに勿体ない・・・

 ←哀れ・・・すまん・・・

 仕方がない、この際だからカートリッジを新調することにしよう。AT-ML140を購入したのはもうかれこれ20年前かな。すでにカタログからは消えており交換針も入手不可能となっている。3〜4年前はまだ使える交換針(AT-ML150用)はあったが、現在では入手不可能に近い。VM式でML針だから互換針メーカーも手を出せないだろう・・・

 Technics SL-1700 で使っている SHURE M97xE はダイナミックスタビライザー(またはゴミ取りブラシ)が付いていて音もマイルド傾向で結構気に入っているのだが、Audio TechnicaのVMカートリッジのパシッとした音も好きなので、Technics SL-1200MK4 にはやはりAudio TechnicaのVMカートリッジを付けたい。

 ←Technics SL-1700

 ←SHURE M97xE(青いスタイラスカバーがダイナミックスタビライザーも兼ねている)

 ということで、大須の某オーディオ店でカートリッジを物色する。テクニカのVMカートリッジでML針(ラインコンタクト針、MLはMicro Linearの略か)となると、AT150MLXしかないが、これは3万円程度と高価。(これでもカートリッジとしては安い部類なのだが・・・)

 たまたま、記念限定モデルとして AT150Ti というモデルが1台だけあり、1万円程度と値段も手頃である。針は楕円だがチタンカンチレバー(だからTiという型番)で、AT150MLXの交換針が使えるという。

 ML針で聴きたいが、AT150MLXではちょっと値段が・・・と思っていたので、将来ML針に交換できるこの AT150Ti に決めて購入した。

 これに組み合わせるシェルは Audio Craft AS-2PL を使った。テクニカのシェル ATLH13/OCC は13gだがこの AS-2PL は9gと4gも軽い。おかげでバランスウェイトも不要となり、これでトーンアームの追従性も良くなり、ハイレベルカッティングのレコードでも共振することは無いだろう。

  AT150Ti はアルミ削り出しボディで高級感があり見た目もなかなか良い。

 ←AT150Ti+AS-2PL、レコード面との平行もばっちり!

 ←Technics SL-1200MK4に取り付けて只今演奏中。

 テクニカVM型のパシッとした音が出て、苦労した甲斐があったといもの。さあ、秋の夜長はレコードをじっくり聴こうではないか。

 それにしても、ここ最近、多くのMM,VMカートリッジがカタログから姿を消し、値段も上がっている。今の内に必要な物は入手しておいた方がいいのかな。MMカートリッジは安物というイメージがあるけど、その製造には高精度な樹脂モールドを製造する金型等の技術が必要であり、それは今後失われることが必定なものである。手作り可能なMCと異なり、それらの金型が使えなくなったら終わりである。新たに金型を起こす需要も見込めないしね。

 諸行無常の響きあり・・・か、レコードから流れる音楽の響きも、春の世の夢のごとし・・・(2007.10.23記)



オーディオ更新その1(ヘッドフォン)

 「オーディオ」・・・う〜ん、今の若いもんにこの言葉は通じないだろう。「ステレオ」「ハイ・ファイ」・・・死語(この言葉も含めて)というヤツですな。

 久しぶりに自宅で使っているオーディオの一部をリプレースしました。今までなんとか騙し騙し使ってきた機材がそろそろ限界に達してきたので・・・

・ヘッドフォン

  ついに、長年愛用していた SONY MDR-CD1000(密閉型)の使用を諦めることになった。購入してから既に15年近く経過し、この間ダイヤフラムやら布やらを交換して継続利用してきたが、現在ではヘッドパッド部の布が交換不可能となり、(たぶん)このバイオ素材が劣化してベトベト纏わり付くようになってしまった。また、ダイヤフラムもグランカッサの一発で再度ビリつくようになってきて、ついに限界に来たかという感じ。

 このSONY MDR-CD1000 はパワフルでオルガンの低音も良く伸びておりとても気に入っていたのだが・・・15年間お疲れさま。

SONY MDR-CD1000

 一方、AKG K501(オープン・エアー)は健在だ。
AKG K501

  ま、使用頻度が少ないこともあるけど、パッド等の劣化はほとんど感じられない。ただ、このモデルはオープン・エアー・タイプということもあり、MDR-CD1000 のようなパワフルな低音は期待できない。

 ということで、MDR-CD1000 の後継機種を物色することに。大須の某オーディオショップで色々試聴させてもらう。低音再生能力が第一なので、よく分かっているソースCDを持参して聴き比べを行うが、静かでない店内での比較試聴は難しい。音量レベルを揃えるという基本的なことすら出来ないから厳密な比較は出来ないのだ。まあ、あとはルックスと費用とカンで選ぶしかないなあ・・・と悟る。

 ソニーのMDR-CD1000の後継機種は無いらしく、かなりお高い高級機とエントリーモデルがある程度で残念。ソニーは候補から外し、それ以外の密閉型のヘッドフォンを色々聴かせてもらう。音以外にも装着感は重要で、耳当たりとか締め付け具合とか色々試させてもらう。

 1〜2時間迷った末、オーディオテクニカATH-A700 と デノンAH-D2000 の2機種を購入した。

左:ATH-A700,右:AH-D2000

 1台だけだと劣化が激しいかなと思い、少々キャラクターの異なる2機種とした。テクニカはデノンに比べると少々明るくてパンチが効いているように思えたのでポピュラー用途、デノンは落ち着いた傾向なのでクラシック用途・・・というところかな。ちなみに、デノンの方は最近までヘッドフォンからは撤退していたようで、この機種は再開して間もない機種とのこと。

 さて、これでまたガンガン(?)音楽を聴くぞーーー!(2007.10.23記)



LIVING STEREO(台所ステレオ計画)

 1950年代後半から1960年代前半に一世を風靡した・・・かどうかはともかく、RCA Victor が誇る "LIVING STEREO" というLPがあった。今でも(今だから?)好事家(特に日本)の間ではそのオリジナル盤は珍重されているようで信じられない高値で取引されているのを目にするのも一度や二度ではない・・・という話はどうでも良くって、台所ステレオ計画、名付けて"LIVING STEREO"計画を実行することにした。

 と言っても大したことはなく、「音聴箱」だけでは満足できなくなったので、CDとラジオも聴けるシステムを台所に導入することにしただけのことなのだ。台所=LIVING なわけは無いのだが、自分がくつろぐ所でもあるので強引にこじつけることにした。もともとの「生き生きとした」という意味はこの際棚上げすることにする。

 ちょうど、アンプとCDプレーヤーとチューナーがコンパクトに纏まっている「TEAC CDマイクロシステム CR-H80」が殆ど開店休業状態であったので、こいつを核にしてレコードプレーヤー(&フォノ・イコライザー)とCDプレーヤー(CDプレーヤー部は壊れているので)を追加すれば安上がりに済みそうだ。

 大須の中古オーディオ店で、ストレート・アームのフルオートプレーヤー PIONEER PL-Y7 と 小形スピーカー BOSE 101MM を見繕って購入した。ついでに、フォノイコライザーのAudio Technica の AT-PEQ3 を併せて購入した。プレーヤーはダストカバーは無いがその分安いとのこと。使わないときは風呂敷でもかけておくことにしよう。付属のMCはMCなのに針交換が可能な変わったタイプ。交換針部分に磁気回路を全て集約させている面白い構造をしている。PIONEER 5MC というタイプのようだが、恐らくコイルの線を沢山巻いて高インピーダンス出力タイプでMM並みの出力電圧を稼いでいるのだろう。(下記写真は2007.10.24に追加)

   
 PIONEER 5MC
 左:本体、交換針を外したところ(マグネットは上部、下のピンは交換針側MC接続用)
 中央:交換針
 右:交換針内部(カンチレバー根元にコイル配線が見える)

 もっとも、既に交換針は製造されておらず、このタイプの互換針も期待できそうにないので、素直にMMカートリッジに交換する。Audio Technica AT-10RG が余っているのでちょうど良い。

 CDプレイヤーは当初ポータブルタイプを考えていたが、最近のモデルは LINE OUT が無いのだ。う〜ん、20年前とは感覚が違う〜。どうしようかと大須を徘徊(?)して色々物色していると、幅の小さいDVDプレイヤーが安く売られているのが目に入った。DVDプレイヤーなら当然CDもイケル。プレイヤー操作面に表示が無いので演奏している曲番や演奏時間は知ることが出来ないがBGMで気軽に聴くのだから問題ない。AVOX ADS-200S という型番の製品で五千円足らずで買えた。DVDプレイヤーも安くなったもんだ。

   
  左:レコード再生中、右:スピーカー収まり状況

  AT-10RGにて演奏中

 ・・・かくて、LIVING STEREO計画はこんな感じとなった。レコードラックの上にプレイヤー、その右にアンプ(チューナー&壊れたCDプレイヤー)がありその上にDVD(CD)プレーヤーを乗っけた。スピーカーはシンク上の戸棚に放り込んだ。皿洗いをしながら左右からピンポン・ステレオのように音が聞こえる。BOSE 101MM はパワーは入るが低音不足気味なので、アンプのトーンコントロールでバスを目いっぱいブーストして聴いている。LPでは結構良いバランスだがCDは低音が軽い。使いこなしでなんとかしようと目下色々小細工を楽しんでいるところだ。

←使わないときは風呂敷をかけておく

 レコードプレーヤーは着いた早々、オートリピートがかかりっぱなしになるというアクシデントに見舞われた。お店の方では引き取って対応すると言ってくれたが、それも面倒なので、なんとか小細工でオートリピートを強制的に殺すことに成功した。フルオート機能は使えなくなったが、セミオート(演奏終了でトーンアームが自動的に戻り回転が止まる)機能は使えるので問題はない。聴きながら眠ってしまっても大丈夫だ。

 夜、部屋を暗くしてLPを聴きながら一杯やるのが最近の楽しみなのだ。ジャズ・ヴォーカルや50年代モノラルLPのクラシックなんかなかなか宜しい・・・ということで、再燃した私の音盤青春時代はまだまだ続くのであった。(2006.1.28)



「音聴箱」台所に降臨

 LP熱(病)が再燃して以来、台所で手軽にLPを聴きたい・・・とぼんやり考えていたある日、大須アメ横の電気屋さんで、卓上レコードプレーヤーが売られていた。2機種、CDとラジオも聴ける多機能のヤツ(だったと思う)と、レコードプレーヤーのみのヤツだ。どちらも「レトロ」調デザインで、多機能の方はアメリカのジュークボックス(らしきもの)を連想させ、もう片方は木目調の「蓄音機」をイメージしているようだ。木目調「蓄音機」モドキは既に生産完了の現品限り。レコードのみという潔さ(?)が気に入り、購入することに。店頭展示品ということで、多少値引してもらい、交換針(サファイヤ針・・・う〜ん、懐かしい)も一個付けてもらった。日本コロムビアの卓上型レコードプレーヤー GP−17(通称 「音聴箱」)であった。


これが「音聴箱」なのだ(乗っかっているのは日本コロムビアのSP)

蓋の裏側には、魔法の音 "Magic Note" マークと "Viva-tonal Grafonola" というこれまたノスタルジーを掻き立てる殺し文句が・・・


控えおろう!このマークが目に入らぬか!

明らかに78rpm と 蓄音機 で育った世代をターゲットにしたこのデザインが心地よい。当然ながら78回転のSPも演奏可能なのだ。

 このプレイヤーの面白いところは、センタースピンドルが回転しないことだ。つまり、固定されているセンタースピンドルに穴アキターンテーブルがセットされ、それをベルト駆動で回転させるのだ。今まで色々プレーヤーを見てきたが、このような回転機構のプレーヤーは初めてだ。なお、ターンテーブルは取り外せない。ベルト交換はメーカーに送らないと出来ないようで、これは困る。

 残念ながら薄っぺらい「ソノシート」はこのプレーヤーでは演奏できない。センタースピンドルが固定されているので、ソノシートはターンテーブルの回転に逆らって回らないのだ。

 ターンテーブルとトーンアームは一つにユニット化されており、箱とはスプリングでフローティングされているようだ。輸送用の固定ネジがあり、最初はこのネジを緩めてスプリングを効かせる必要がある。トーンアームは一応アームリフター(オモチャみたいな代物だが)がついており、オートプレイ機能は無い。完全なマニュアル操作である。

 操作は至って簡単。前面の操作はスピード切替つまみ(回転数を33,45,78から選択)と電源スイッチを兼ねた音量つまみの2つのみ。トーンアームをレコード面に持っていけばターンテーブルは回転する。レコードに針を落として演奏開始。終わったら手動で戻せば回転は止まる。


前面操作パネル。レトロなデザインと日本語表示が嬉しい。

 ピックアップは圧電式(セラミックタイプ)であり、これも懐かしい。圧電素子に水晶をつかったクリスタル・ピックアップなんてのがあったと思う。イヤホンもクリスタル・イヤホンなんてのがあったかな。発電電圧が大きく(ライターの着火素子に使われているくらいだし)、丁度再生特性が録音特性を補正するような形になるので、フォノイコライザーも不要なのだ。でも、ちゃんとしたステレオで再生するのだ。

  
左:ピックアップ、中央:SP用ダイヤ針(DSN-75SP)、右:LP用サファイア針(SJN-75)

 スピーカーは口径7.7cmが箱にLとR各一つ取りつけられている。レコードプレーヤーボックスがスピーカーボックスを兼ねており、それなりに低音も出るのだ。あまり欲張りすぎるとハウリングするから、まあこの辺はうまくまとめているのだろう。気軽にレコードを楽しむには申し分ない。

 最初レコードを再生したとき、ピッチの高さには閉口してしまった。どうにかならないかと後ろを開けてみた。


「音聴箱」舞台裏

駆動モーターが商用交流周波数で回転数が決まる(厳密には違うが)誘導モーターではどうしようもないが、どうやらそうではないようだ。うまい具合に回転数調整用の半固定抵抗があった。どうやら直流モーターのようだ。


左:回転数調整用の半固定抵抗、右:ストロボスコープ(昔はこんなのがあったんですなあ・・・)

ターンテーブルに骨董屋で買ったストロボスコープを乗っけて、回転数を見ながら33回転用のVRを調整して回転数を合わせた(箱内は高さが無いので小さいプラスドライバーが必要)。45と78も33のVRに連動しており、温度変化等で回転数がドリフトする場合は33回転を調整するだけで済むので合理的な設計と言えよう。クラシック(特にピアノ)ではワウが気になるが、ポピュラー音楽を気楽に聴くのにそれほど目くじら立てることも無い。

 日本コロムビア純正の交換針(SJN-75)はサファイヤ針で寿命はせいぜい50時間だ。これでは財布の負担も大きいので、ダイヤモンド針の互換針を探したところ、「レコード針の専門店A'pis Japan」が扱っていた。純正針と値段もそう変わらないのでこちらを購入した。ちなみに純正SP針(DSN-75SP)はダイヤモンド針で、こちらは互換針は無かった。LP用の針でも一応再生は出来るが、溝の大きさが違うのでSP再生には専用の針を使った方が良い。
 
左:日本コロムビア純正のサファイア交換針(SJN-75)、右:A'pis Japanのダイヤモンド互換針

 「音聴箱」を購入したお蔭で、それまで持っていなかったSPにまで手を出すという本末転倒なことになってしまったが、これで聴くSPの音はなかなかのものだ。高価な蓄音機やSP専用カートリッジが無くてもこのプレーヤーで手軽にSPを聴くことが出来るのだ。まだまだ、家の倉庫でSPが眠っている・・・という方には好適なプレーヤーと言えるだろう。このモデルは生産終了しているが、別のモデルが継続して販売されている。

 ということで、再燃した私の音盤青春時代はまだまだ続きそうである。ヤレヤレ。(2006.1.28)

<補足(2006.6.18)>

 残念ながらこのモデルは生産終了していますが、別のモデル(音聴箱GP−S30)が後継機種として販売されていますし、GP−17もまだ店頭在庫が残っている可能性もあるので、気長に探すのも良いかと。以下、ご参考に。

デノン 音聴箱ホームページ
http://denon.jp/products/otogibako.html

デノン 音聴箱GP−S30(GP−17の後継機種)
http://denon.jp/products2/gps30.html



相次ぐオーディオ・ファイル向けMMカートリッジの生産完了(2005.8.28)

 名器と言われたSHUREV15VxMRが生産完了したとのこと。交換針は少なくとも今後5年間は製造を続けるということだが・・・。私が今使っているM97xE はまだ生産が続くようだが・・・M97xEがV15VxMRに取って代わるShureのハイエンド機になるということか。でもマイクロリッジ針のV15に対して楕円針のM97では・・・MMの雄Shureもとうとう・・・世の無情さを感じないわけにはいかないなあ・・・Trackability という造語を造ったあのShureが ・・・なんて他人事のように思っていたら、Audio Technica もAT-ML150/OCC を生産完了したとアナウンスをしていた。私が今使っているAT-ML140はとうの昔に生産完了をしており、その交換針に互換性のあるAT-ML150/OCC 用の交換針を使用していたのに、それも在庫が無くなり次第使えなくなってしまうのだ。MM(VM)カートリッジは交換針も含めてその製造には高価な金型や高精度の製造プロセスが必要であり、これまでは過去の資産をやりくりしていたのがついに限界に来たということか・・・。マイクロリッジ針の手ごろなMM(VM)型は少ないから困ったものだ。もしAT-ML150/OCC の交換針が入手不可能になったら、AT-150MLXに乗り換えるしかないかなあ・・・困ったものだ。


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