プロローグ


小学校高学年の頃、父が買ってきた雑誌を盗み読みをしていたことである。
パラパラとページめくっていたら、一枚の写真に魅入られてしまった。
「安全への逃避」沢田教一・UPIというクレジットのある写真だった。
そう、あまりにも有名なベトナム報道写真の1枚である。
ベトナム戦争に興味があるわけでもない年齢でもあったので「すごい」という印象のみが残った。
ただ、写真の持つ力を感じた一瞬だった。


しかし、父のNikomatを借りて蒸気機関車を追っかけていた私にとっては別世界のことであった。
中学3年の1975年4月30日。ベトナム戦争は終結した。
そしてあの写真と再開した。
それ以外にも引き込まれるように「ベトナム戦争」の写真を見、また記事を読むようになった。
沢田教一、ロバート・キャパ、ダグラス・アダムス、アンリ・ユエ、一ノ瀬泰造、岡村昭彦、嶋元啓三郎、石川文洋各氏の写真にのめり込んでいった。


そして多くのカメラマンがベトナムで取材中に亡くなっていることを知った。
また写真ではないが、古森義久、近藤紘一、酒井辰夫、本多勝一、開高健の他多くの記者、作家がベトナム戦争に従軍していることを知った。
戦争が持つ善悪とは別に、純粋に彼らが「かっこいい」と思った。
ベトナム戦争に関わったジャーナリストに憧れを持った少年は、20数年の歳月を経て、複雑な想いを持ちベトナムの地に降り立った。
そして旅ははじまった。

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