ニャチャンまで420km


このベトナム旅行には、強力な助っ人がいる。
ベトナム在住が長く、また奥様もベトナム人と日本人のハーフというT氏にいろいろと教えてもらい、かつ手配もお願いした。さて今回の最大の目的ベトナムが誇るビーチリゾート、ニャチャン行きである。
妻が一番こだわったのは、ニャチャンのANA MANDARA RESORTに泊まること。
雑誌「CREA」の「ベトナム特集」表紙の写真のベッドが、このホテルである。

ところがである、日本から予約を入れたら、「満室」という返事で、泊まれないとなるとなおさら泊まりたくなるのが人情。
そこでT氏のルートでお願いしたところ、3連泊は無理だが、14日、15日の2泊なら大丈夫ということである。もちろんお願いした、それも日本での予約レートより4割安い金額で。
さてニャチャンへ行く方法である。サイゴンから約400km。選択肢は空路1時間をとるか、列車かバスで10時間をとるかである。

ニャチャンからサイゴンまで戻るのは空路として、行きをどうするかでT氏に相談したら、「ogawaさん、タクシーをチャーターするんですよ、ホーチミンからニャチャンまでなら80US$〜100US$でOKですよ。変りゆく景色を見ながらのドライブは良いですよ」
バスなら1人20US$、人数、時間を勘案すれば、タクシーで行くほうが自由がきくし、楽である。およそ車で6時間、国道1号線を北上していくことになる。

当日朝、ホテルのコンシェルジェに相談したら、それでは自分の叔父が車を持っているから叔父に運転手をしてもらうという予想外の展開になった。
でも不思議な話ではない、100US$だしていいよという観光客がいて、その収入は月収に相当する、となれば身内に頼むという発想が出てきてもおかしくはない。

この提案を受け入れ9時にホテルに車を回してもらった。車は日本車でカムリ。この国では奇麗な車の部類である。走行メーターは22万キロでかなり走り込んでいるが、クッションもきいているし文句なしである。
床に穴のあいたタクシーよりよほど安心できる。
実はその叔父さんの名前がよく聞き取れなかったので、ボクと妻は叔父さんが、映画「キリング・フィールド」の主人公ディス・プランに雰囲気が似ているということから「プランさん」と勝手に呼んでいた。

さてサイゴン市内のバイクの洪水を抜けて車は北へ。
ビエンフォアを通り過ぎ、国道1号線を北へ向かう。
街道のドライブインというか休憩所では、ハンモックが用意してあり、ハンモックで休憩している人もいた。

途中 ファンティエットの町で昼食。
ほぼ中間地点である。

さて午後の部スタート。

昨年向かったメコンデルタとちがいこちらは田んぼはほとんど見当たらない。
1号線沿いには一定区間ごとにハノイまで○○Km、フエまで○○Kmと標識があり、ニャチャンまで140kmの標識が見えた。
「あと約2時間かな」
海沿いや砂漠を横目に走っている。

さすがに京は疲れたみたいであった。後部座席で寝ている。
お昼以外は休憩なし。

プランさんは、時々たばこを吸いながら、黙々と運転している。
さすがに車やバイクの数もまばらである。
空は快晴で、スコールの来る様子もない。

ニャチャンまで「50km」「30km」「10km」と着実に近づいている。
16:00。7時間かけて到着。
トリップメーターは420kmを指していた。
今日の宿は決めていなかったので、とりあえず「ハイ・イエン ホテル」に車を着けてもらった。
フロントで聞くとスイートが640,000ドン(=45US$)。ツインが500,000ドン(=35US$)ということで子連れの我々は迷わずスイートを選択。
部屋も決まったのでプランさんのところに戻り。

お礼と約束の100US$を渡した。
ボクは何気なく聞いてみた。

「今晩はどうされるのですか」
「ホーチミンに帰ります」
「えっ!! 今来た道を?400km・・・」
「そうです。」
「それではお気をつけて、安全運転で・・・」
プランさんと記念撮影をして、握手をして別れた。
プランさんは、なんとなく不安そうな顔をして運転席に座り、サイゴンに向って車を発信させた。
車が見えなくなるまで見送った。
おそらくサイゴン到着は順調にいっても24時ぐらいになるのではないか。
ほんとに無事に帰宅してほしいものである。

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