坂道とケーブルカー


Lisbonは「七つの丘の街」であり当然坂道ばかりの街である。

その中の交通手段も独特の交通機関が発達している。
一つはエレベーター。

エレベーター専用の鉄塔が建っていて、下から上まで運んでいる。
1回の乗車料は片道150escと、れっきとした有料の「市営交通」である。
上にはカフェテラスがあり、丘までの陸橋で繋がっている。

最初見た時は一言「う〜む」とうなってしまった。
でかい箱にちゃんと操作係に乗ってきてチケットを販売し、運転して上まで運んでくれる。

もう一つはケーブルカー。

市内4ヶ所に点在していて急な丘を一挙に上がっていく。

Lisbonの観光写真には必ず出てくる風景の一つである。

その軌道を人が歩き、車が走り、その合間を縫ってケーブルカーが上り下りする。
私もLisbon滞在中にはケーブルカーを何カット撮ったことか。

たしかに「絵」になる被写体である。

ベレンから戻って、カフェテラスで一息。
やはりヨーロッパのオープンカフェテラスの開放感は良いものである。

ヨーロッパへ来るとオープンカフェで一息つくのが日課となってくる。

丘の上のカフェテラスは風に吹かれて実に気分が良い。

ひさびさに何も考えずにビールを飲みながらぼーっとしていた。

この3年の生活は、平日や休日関係なしの仕事をして、まとまった休みが取れそうで取れないという生活が続いている。

夏の沖縄旅行でも「携帯電話」というものを持っていたために、ほとんど毎日仕事場から連絡が入ってくるという事態で、休暇中の旅の空の下でも「仕事」をしている状態であった。

今回の旅も当初は9月上旬で予定を組んでチケットも購入していたが、急遽韓国出張が入ったためにすべて予定変更で一旦は「やめようか」と思ったが、再度スケジュール調整してやっと獲得した休暇であった。

このような「無駄」な時間を楽しみつつ、カフェにくる観光客をながめていた。
乾いた風が一瞬強く吹いた、紙ナプキンが夕暮れの街に舞った。

夕食はLisbon滞在中毎夜通うことになった店にいった。

一人でいっても温かく迎えてくれ、毎日まず生ハムとチーズとビール、そしてメインとハウスワインという夕食であった。










ポルトガル料理はスペイン料理と似ていて美味しく、またビール、ワインも安くて美味しいという毎日幸せな食事であった。
地味な国だけにスペイン、フランス、イタリアの影になりがちであるが、なかなかのものである。

ケーブルカーで丘を降りた。






ホテルの近くに戻ると「Fado」を聞かせる店があった。

Fadoは、ポルトガル人の心情を切々と歌い上げる歌である。この店は金、土だけFadoの演奏がありチャージ無しでドリンクだけで聞くことができる。

この時も歌い手が、「アメリカのテロで愛する人を失った人たちに捧げます」と言って歌い始めた。
その歌は朗々と響き、言葉の分らない私も感動してしまった。

「サウダーデ」
ポルトガル人の気質を表わす言葉と言われるが、この日のFadoを聞いてこの意味が解ったような気がした。

 

ここで地果て、ここより海はじまる

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