雨の八重山


 「お客さん。今日梅雨に入りました。昨年より10日例年より3日早いです。」

「そうですか・・・(例年どおりでも昨年どおりでも良かったのに)」と生返事。
石垣空港から離島桟橋へ向かうタクシーの中での会話である。
タクシーのワイパーは規則正しく動いている。


誕生日割引・・・誕生日を挟んだ前後のフライトは国内どこへ飛んでも片道12,000円というバーゲンチケットである。ただし28日前までに予約が必要。
仕事が忙しくて予約するのをすっかり忘れていたが、ANAからのメールで締め切り直前であることを知りあわててサイトをチェック。

もともとは宮古島と見当をつけていたが・・・5/10まで誕生日割引は完売・・・で石垣島はかろうじて5/5発5/7戻に空席が残っていた。もう1〜2日いたかったのだが他の日は完売状態。そりゃ関空-石垣往復で70,000円が24,000円なのだから有効利用したいのは誰でも同じである。
4月はイベントの仕事で休日出勤が続くので6日と7日休暇を取るには何も問題はない。
2泊3日の八重山・・・休暇には丁度いいかな。


石垣島離島桟橋・・・さてどの島に渡ろうか。
波照間島・・・夕方まで便が無い。西表島・・・10分後に便あり。

ほんじゃ山猫に逢いに行きますか。
石垣島−西表島大原港往復2930円に一瞬ひるむが、ほかに手段がないので仕方がない。
かろうじて雨はやんでいるものの暗い空である。
35分で西表島に到着。
沖縄では沖縄本島に次いで2番目に大きな島だが、島の面積の9割が国有林ということもあり人口は5,000人足らずの島である。

島に着いた第一印象は「人がいない」。
とりあえず宿探しっと。
一番最初に見つけた「はま荘」へ、パラパラ雨が降ってきた。
GW最終日ということもあり部屋はすぐ確保できた。

15時30分すぎ、昼をまたいだフライト、タクシーそして船と移動したので昼ゴハンを食べ損ねていた。
軽く何か食べようと思い飲食店を探したが・・・集落にある2軒とも閉まっている。
「えっ!! そんな」

集落唯一のスーパーマーケット(おそらく西表島で一番大きいスーパー)でビールとつまで何とかしのいだ。
夕食時間が18時30分なので暇つぶしにと小雨まじりの中、集落周辺を探索。

仲間川を渡って対岸まで行ったりしたが、自然以外何も無い。
写真を撮るにしても天気が悪い、人が全くいない、自然も雨で霞んでいるのでシャッターを押す回数も少なくなる。

「まいったなぁ〜、何も無い」
西表島は自然と向き合う島であることに気がついた。
石垣島のように町の規模がそこそこあるとか竹富島のように琉球の伝統を守っているようなイメージで来たのが大間違い・・・アレアレ。
探索の間に見かけた人は、捕虫網を持っている人と望遠鏡を持っている人・・・虫捕りとバードウォッチングが目的であると実にわかりやすい。

実はタウンウォーカーというかアーバントラベラーの私は、100%自然というのは苦手である。
「西表山猫」は知っているがこれほどの自然のままとは思わなかった。

1時間ほどで宿に戻り、どこにも行くところがないので夕食まで部屋でテレビを見ていた。
旅先で日のある時間帯に部屋でテレビを見るということは今までしたことがなかった。「2泊というのは間違えたかな・・・」
ちょっと後悔していた。晴れていれば気分も違っただろうが生憎の曇り空である。
夕食、13人がすでに食べ初めていた。カップル6組と若い男が1人という、その若い旅行者の向かいの席に膳が用意されていた。

あまり沖縄らしくないゴハンを食べながら、「この人たちは私をどうような人間と見ているのだろう」と思った。
今までこのようなことは意識したことがなかったが、GWも終わる日いい年したオヤヂが1人で食べている姿はどのように映っているのだろう。

昼間はカメラバックを持っているので「写真を撮りに来ている」と認識してくれるが、少なくともこの場所では一番浮いた存在である。
夕食後、夜景を撮りに出たが集落唯一の信号とスーパーあたりでしか「光」が無いので撮りようがない。おまけに唯一の飲み屋も定休日。

結局20時前に宿に戻り部屋でテレビを見ながら泡盛を飲んでいた。
天気予報では明日の天気は「雨」。
「なんか冴えないなぁ・・・」

物音ひとつしない静かな夜である。


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