空港へ・・・


7時30分。
リンは約束どおり待っていてくれた。
「おはよう。約束守ってくれてありがとう。」
「勿論。」
きれいごとではなく、彼にとって確実な収入を得るための少ない機会でもある。


「ねぇリン、ホース・タクシーのライセンスはどうなっているの?」
「1日1,000チャットをオーナーに払うんだ。それは収入の無い日でも払わなくていけないんだ。」
「それじゃ、あんまり儲からないだろう。」
「うん、一人のお客も無い日もあるからね。趣味でやっているようなもんだよ。
だから、4月から3ヶ月マレーシアに出稼ぎに行っていた。」
「この先どうするんだい?」
「今、エンジニアの勉強しているんだ。そっちの方向に進みたいんだ。」
「そっか・・・希望がかなうといいね。」


「私は帰国したらインターネットでこの旅行のレポート書く予定なんだ。」
「残念だけど、まだバガンではインターネットはほとんど見ることができない。だからogawaのレポートを見ることができないなぁ。」
「ちょっと残念だね。実はリンに教えてもらいたいことがあるんだ。」
「何?」
「レポートを書く時、現地名か旧地名・・・どちらで書くかなんだ。ミャンマーかビルマか、ヤンゴンかラングーンか、バガン(Bagan)かパガン(Pagan)か、日本ではまだ旧名称も使うことがあるんだ。」
「ogawa・・・この国は軍事政権で、貧しくて、コロニーみたい国なんだけど、ボクはこの国に生まれ育っている。
妻も娘もそうだ。何であれ今の国名がボクたち証明なんだ、パスポートもミャンマーだしビルマではないんだ。
だから、過去をレポートするのでなければ現名称にしてほしい。」
この時だけは、穏やかなリンの言葉が厳しいものになった。
この国では政治の話はタブーである・・・
「うん、わかった。リンのいうとおり現名称でレポートすることにするよ。」
「ありがとう。良いレポートになるといいね。」
そうこうするうちに空港が見えてきた。

空港までの3,000チャットに今日も1,000チャット上乗せして払った。
「元気でなリン。」
「ogawaこそ。またバガンに来てよ。」
「そうだね、また夕陽を見にくるよ。」
そうさ、また来るさ・・・

 

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