ナイトトレイン異境行


 ノーンカイ行急行列車は定刻より35分遅れの21時15分、バンコク・ファラーンポーン駅を出発した。
私が乗っている2等寝台はほぼ満席であり、冷房が効きすぎて寒いぐらいである。

 今回、福岡−バンコク間のみのチケットを手配していたが、バンコクのみにいるつもりはなく、漠然と「タイ北部かラオスぐらいへ行こう」としか考えていなかった。タイ南部とというのは今回の気分ではなく、なんとなく「北へ」である。

事前に、バンコクに留学中の啓旅社のAwazuくんには連絡を取っていて、ひさしぶりにバンコクで会おうという約束を取っていた。その彼にも、メールで、なんとなくラオスか北に行ってみるつもりだ、と伝えていた。
バンコクに向う機内でも、どこへ行こうかと決めかねていた。

バンコクに到着して、ともかくファラポーン駅に向った。
7年ぶりのファラーンポーン駅は改装されて、電光掲示になっているし、明るくなっているし、ちょっとビックリ。
駅の窓口で、チェンマイ行きやノーンカイ行きの表示を見てしばらく悩んだが、結局「ノーンカイまで、寝台で。」と切符を買った。
「メコンの夕陽を見ながらビール」というのが、その日の気分だった。
いつもタイで思うのだが、700kmの距離を2等寝台と急行券を含めて583B(=1,574円 1バーツ=2.7円)という値段、タイの公共交通機関というのはやはり安い。
ともかく行き先も決まり、Awazu君に電話をした。

「Awazuくんバンコクに着いたよ、とりあえずはノーンカイに向うよ。13日にはバンコクに戻ってくる予定」
「ogawaさん、この後のスケジュールは?」
「別に、後3時間ほどだから駅周辺で何か食べるよ」
「よろしければ今からよければゴハン食べませんか? 僕も時間空いていますし、ファラポーンなら20分あれば行けます。」
「それなら、青い表示のインフォメーションの前で待っているよ。」
20分後、彼と合流して、ヤワラーへ向った。

久々に会う彼は、格段にタイ語がうまくなっていた。

美味いゴハンと氷を入れたシンハ・ビアを飲みながら、再開に話が盛り上がった。
乾季のバンコクは10数年ぶりだが、日が落ちると涼しいぐらいで気持ちがよかった。

排気ガスは相変わらずなので空気は汚れているが・・・


「寒い」
夜中上段で寝ていた私は、寒さで目が覚めた。
午前2時。
車内は寝静まっている。

冷房が効きすぎていて、毛布一枚では寒い。
ともかく長袖のシャツやベストを着込んだ。
上段には窓がないので、車輌の連結部分に出て外を見ると、「闇」の中に思い出したようにポツンと光りが見えたりする。

久々の「闇」をしばらく見つめていた。
日頃は分刻みのスケジュールで仕事をしているので1時間も空くと落ちつかないのだが、旅に出ると2時間でも3時間でもボーッとすることができる。
その後も何度か寒くて起きた。

朝8時10分、本来ならノーンカイ到着予定なのだが、まだ走っている。
南部で見られる水田風景ではなく、赤土の広がった北部タイの風景が広がっている。
車内では朝食の販売などをやっているので、まだまだ到着の気配はない。

9時過ぎ、ウドンターニーに到着。ということは、ノーンカイ到着予定は10時頃である。
ウドンターニーはこのエリアの中心であり、ほとんどの乗客はここで下車した。
車内に残っているのは、バックパックなどを持った、いかにも「ラオスへ向います」
という乗客ばかりである。

10時、約2時間遅れでノーンカイに到着。
すでにホームには、トゥクトゥクなどの客引きが群がっている。
案の定、私のところへも来た。
「ラオスへ行くのか」
「そうだ」
「50Bでどうだ」
吹っかけてくるとは聞いていたが、ボリすぎである。
「10Bじゃないと行かない。朝飯まだだから、その後」
と無視しながら、屋台等捜したが何も無い。
運転手はしっかり私の後をついてくる、私を逃したら次の客は無いのだから。
とりあえず国境へ向おう。
「そんじゃ友好橋(国境)まで行くわ、10Bでどう?」
「20B・・・」
まっ、いっか。
彼のトゥクトゥクに乗った。
途中、彼はVISAが必要だからと何度も途中の旅行代理店に行こうとするが、
私は「ラオスの国境で取るから要らない」と言って断った。
コミッション欲しさはわかるけど、ラオス側で取れるのだから無理に行く必要はないし。余分な金を払う気もないし時間を使う気も無い。
1990年代前半は、その日の状況を見てみないとVISAが発給されるかどうかわからなかったが今は国境で問題なく取ることができる。

ともかく国境。

タイを出国して、10B払いラオス国境への連絡バスに乗った。
ラオス側に到着。
VISA申請の窓口に行き申請書類、写真1枚、30US$+1US$(この日は日曜日だったので、1$のチャージがかかった。)を払い、5分でVISAをもらった。

そしてラオス入国。
ここで入国手数料10Bを払い、ビエンチャン市内へ向おうとした。
ここで、同じ目的を持ったバックパッカー5人とシェアして市内に向うことにした。

トゥクトゥクの運転手と交渉して一人30BでOKとなった。
記憶が曖昧なのだが、入国の時にラオスの通貨キップ(kip)の両替所に気がつかなかった。
20分ほどトゥクトゥクに揺られた後、バスターミナル到着。
バスターミナルと言っても、停まっているのはトゥクトゥクばかりだが。

ラオスの首都ビエンチャン。

ただいまお昼12時・・・バンコクを出て15時間かかったことになる。

静かなる首都へ

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