スペイ川の蒸留酒


朝、ダブリン空港でエジンバラ行きエア・リンガスのチェックインをすまして 矢印通り歩いたら待合室についてしまった。

「あれ、イミグレがない」と見渡したら通り過ぎた廊下の隅にあった。
もう国内線感覚である、免税店が唯一国際線を感じさせてくれる

昨夜の雨もあがり、あざやかなアイリッシュグリーンの飛行機に乗り込みエジ ンバラへ。

土砂降りのエジンバラ空港に到着。
アイルランドの低気圧がグレートブリテン島に移動してきていた。
「西から天気が変わるのは世界共通だなぁ〜」と妙に感心。

エジンバラ駅からアバディーン駅まで列車で約3時間。
アバディーンで乗り換えて、ハイランドのエルギン駅までさらに列車で1時間半。
おおよそ400km北上した。

17:30・・・土砂降りで薄暗いエルギン駅に到着。
何人か降りた乗客はアッという間に迎えの車で行ってしまい。誰もいない駅に 一人取り残された。
タクシーもバスもない。地図もない。インフォメーションの場所もわからない 。店もない。
「地球の歩き方」にはエルギンにインフォメーションがあるという5 行ほどの記述だけ、簡易地図もない。電話をかけようにも電話がない。
しばし途方にくれる・・・今回の旅で二度目だ(^^;;
あたりを見回すと駅前の道路のむこうにホテルが雨でかすんで見える。そこへ 行けばなんとかなるだろうと歩き始めた。駐車場を横切って道路を渡ろうとした 時、右手の掲示板に市内案内図が貼ってあった。
「これをさがしていたんだよぉ〜」
鉄道駅はやはり街の中心部から離れていて、市の中心部は駅から約10分ほど北 に歩いたところでインフォメーションの「i」マークもあった。

ずっと上りの道を歩き、ずぶぬれになってインフォメーションに到着。
客は私ひとり。
「こんにちは」
きれいなお姉ちゃんがニコニコと応対してくれた。
「こんにちは、ようこそエルギンへ。こんな素敵な天気はこの時期のスコットランドでは大変珍しいことです。あなたはラッキーですね。」
いかにも英国人らしい持って回ったジョークを一つもらい、B&Bの予約とダフタ ウンへの行き方を教えてもらった。
B&Bの手配が意外に手間取っている、「3連泊」が引っかかっているらしい。
5件目にてやっとOKがでた。
「OKがでたわよ。でもちょっと歩かなくてはならないわ。この地図ではあなた は今ここにいる。ここから南に行ってこの通りを歩いて線路をこえてさらに南に 行ったここ。ここからだと25分ぐらいかかるわ。がんばって歩いてね!!」
地図を見ながら説明を聞いてげんなりした。
「バスは?」
「(時刻表をめくって)・・・あと1時間後、待つ?」
「いい、歩く。苦労して来た道を戻ってさらに南かぁ〜。なにが頑張ってだ!! 」
B&Bのデポジット払って、あいかわらずの土砂降りのなか来た道を戻り始めた。
タクシーの気配もない・・・
25分後・・・無事B&Bに到着した。
エルギン・・・特別有名な遺跡や名所があるわけではなく、廃墟となった大聖 堂があるぐらいのスコットランドの田舎町。

スコッチウィスキーの蒸留所はスコットランドに約100余りある。
そのうち半数はハイランドそれもスペイ川流域に集中している。そこで造られているスコッチウィスキーはスペイサイドモルトと呼ばれている。
そのスペイサイド蒸留所巡りの起点となるのがここエルギンである。

簡単にスコッチウィスキーのお話
スコッチウィスキーの種類は大別して2種類
一つはブレンデッド・ウィスキー・・・何種類かのモルトウィスキーとグレンウィスキーをブレンドして飲みやすく仕上げたもの。
銘柄としてはヴァランタイン、シーバスリーガル、ジョニーウォーカー、ホワ イトホース、オールドパーetc普通スコッチウィスキーといえばこちらのイメー ジがあるかな。

二つ目はシングルモルト・ウィスキー・・・こちらは一つの蒸留所でつくったモルトウィスキーのみ。ブレンデッド・ウィスキーより個性が強 いです。
銘柄としてはマッカラン、ボウモア、ラフロイグ、ザ・グレンリベット、グレンフィディックetc個性派ぞろい。蒸留所の数だけ銘柄があります。多くがブレンデッド・ウィスキーの原酒になるため、なかなか市場にでない銘柄もあります 。

翌日。快晴。
ダフタウン行きのバスはウィスキートレイル(ウィスキー街道)を走っていた 。
ロングモーン、グレンエルギンと蒸留所が次々見えてくる。
「すごいすごい、ほんとウィスキー街道だ」感心しつつ1時間ほどで終点のダ フタウンに到着。
バスを降りるとウィスキーの香りが漂ってきた。
気のせい・・・?
見渡すと空き地に廃樽を積み上げていたり修理していたりしているのでそこか ら漂っているのだろう。

歩いて10分ほどで端から端まで行ける小さな町である。だが、ここには7つも の蒸留所が集まっている。

その一つ、緑の三角瓶で有名な「グレンフィディック蒸留所」に向かった。
レセプションセンターに行くと数人が蒸留所ツアーの出発を待っていた。
一人の日本人がいた。東京の広告代理店に勤める亀谷氏である。私と同様一人旅でレンタカーでスコットランドを回っているとのこと。
ちゃっかり車に相乗りさせてもらうことにした・・・(^^;;

11時ツアースタート。まずAVセンターでビデオを見る。それは6カ国語の音声 で日本語も選択できた。日本語は「NHK標準語」という感じで驚いた。ビデオを 見た後ドイツ語、フランス語、英語と3グループに別れてガイドがついてツアー が開始。亀谷氏と私は当然英語グループにまぎれこんだ。案内嬢はかわいいお 嬢さんなんだけどパリパリのスコットランド訛の英語で何をしゃべっているのかさっぱ りわからなかった・・・(^^;;

発酵室、蒸留室と案内された。ウィスキー蒸留過程は知っていたので面白く見 させてもらった。

最後は試飲。軽い柑橘系の味。やっぱりみんなこれが目当てなんだよなぁ〜。
ビールと違ってウィスキーは日本で飲もうが産地で飲もうが同じ味のはずなのになぜか美味しく感じてしまういい加減な舌であった。

グレンフィディック蒸留所を後にして次はローゼスの町にあるグレン・グラン ト蒸留所に向かった。
日本では、なじみのない銘柄だがイタリアではシングルモルト一番人気。
ここは蒸留所だけではなく公園化された敷地も見学可である。

この敷地内には川が流れているが、ブラック・バーン(黒い川)と呼ばれピー ト(泥炭)層から湧き出しているためほんとに黒い色をしている。スコットラン ドの川はどこでもこのような色をしていた。

入場料2£払って蒸留所見学。今度の案内嬢はわかりやすい英語をしゃべってくれた。施設はグレンフィディックよりもどこかのんびりした雰囲気がしている 。
最後の試飲ではグレン・グラントの案内ビデオを見ながら2種類シェリー樽で 寝かせたタイプと通常の樽で寝かせたタイプの2種類を飲ませてもらった。
両方とも軽い口当たりでシェリー樽のタイプのほうが香りがあって好みに合い ましたね。

さて3つ目の蒸留所は車で15分のマッカラン蒸留所へ。
ウィスキー評論家マイケル・ジャクソン(ミュージシャンにあらず)をしてマ ッカラン25年物はラガブーリン16年物とならんで95点の評価を持つシングルモル ト・ウィスキーの逸品である。

私もラフロイグ、ストラスアイラとならんで好きなシングルモルトである。

この蒸留所は山間の緑に囲まれたこじんまりとしている。

案内嬢はグレン・グラントの案内嬢よりもさらに理解しやすい英語で案内して くれた。蒸留所は家内制手工業というかんじで、ここが世界に誇るマッカランか と思うほどである。

見学後ここでもビデオを見ながら試飲だった。

シェリーの香りが漂い後味までしっかりと残る・・・・やっぱ美味しいわ(^^) 。
3蒸留所回ってもう16:00。亀谷氏にローゼスまで送ってもらって降ろしてもら った。
氏はパースへ向かうということであった。

今回、車がなければマッカラン蒸留所は行くことができなかった。ほんと感謝 。
もともとスコッチ蒸留所は密造酒が起源なため人里離れてさらに水のきれいな 山間にある蒸留所が多い。そのためグレンフィディックやグレン・グラントのようにバスで行ける蒸留所はごくわずかである。ほとんどの蒸留所は車でないと行 けない。

日本の11月上旬ぐらいの気候の中、窓、サンルーフ全開で車の少ない道を走る ことは快感である。そして左側通行だから日本人には違和感はないし。「次回か らはレンタカー借りよう」と決心したのだった(^^;;

今回の蒸留所巡りに1冊の本を持ってきた
「モルトウィスキー大全」(土屋 守 著 小学館)
この本はスコットランド蒸留所をすべてまわり、蒸留所ごとの解説と作られているスコッチ・ウィスキーのテイスティングをしている労作である。
これを見ながらの蒸留所巡りはほんと役に立ち、楽しかった(^^)

バスでエルギンにもどったが、まだ陽が高いのでバスで20分ほどの海辺の町ロ ッシーマウスへいった。

蒸留所見学はどこも16:00で終了、バスの一日券買っていたからまだ使えると いう単純な理由だった。
ロッシーマウス行きのバスに乗っていたら、町外れですごいものを見た。
そのモノとは・・・・次のページで(^^)

ロッシーマウス。
北海に面した町、ここも、また何もない。

でもいい感じ。

老夫婦は何か語り合っている

海沿いのバーは、どこかドラマで見たシチュエーションだ。

子供はどこでも元気だ。

ゆっくり散歩して夕暮れのエルギンに戻った。

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