GUINNESS と黒い川


1998年8月28日22:30 ダブリン郊外。
「無い・・・まちがえた・・・インフォメーションのお姉ちゃんの指示通り 来たのに」
ダブリン空港のインフォメーションでB&B(ベッド&ブレックファスト)紹介して もらった時に行き方を書いたメモをもらってそのとおり歩いたのだが・・・着い た所は住宅街のど真ん中。
B&Bの看板を探したがなし・・・そもそも通り名が違っている。

「41番のバスに乗って、シティセンターで降りたらリージェンシーホテルが あって、ホテルの正面の右手を歩いて最初の角を左に曲がって2ブロック目だか らすぐわかるわよ。」と ニコニコと教えてくれたのに・・・・市内地図ケチら ずに買うべきだった。
シティセンターの方にもどりなんとかタクシーをつかまえて、B&Bの 住所を見 せた。運ちゃんはうなずいて、反対方向に走り出した。
「えっ!?」っと思ったが、スキンヘッドだし左腕には入れ墨が見えていておっ かないので黙っていたら一言「No problem, Don't worry!」
15分ほど走ったあと「Here!!」といって車を停めた。同じような住宅街だが番地は合っているし玄関にはB&Bの看板がある・・・23:10到着。
チップも受け取らずに運ちゃんは行ってしまった・・・人は見かけによらない ・・感謝(^^)
そして旅ははじまった。

郊外

「バッカス気分で地球放浪」(川又一英 著 新潮社)という一冊の本があ る。奥付を見ると10年以上も前の日付である。結構好きな本で年に1〜2度読み返 している。
「ヴェネチアの赤い酒」「水瓶の街、紹興の酒」「バーボン通りのサゼラック ・カクテル」など酒と旅の15のエッセー集。(ねっ!! 読みたくなるでしょ)そ の中でも「ダブリン市民の黒ビール」と「ウィスキー街道、命の水」はギネス・ ビールとシングルモルト・スコッチウィスキーが題材でお気に入りの2編である 。
今回の旅はこの2編のエッセーが下敷きとなった。

翌朝、B&Bの界隈を歩いてみた。
典型的な郊外の住宅街。昨晩タクシーの走ったルートも歩いてみたが、市の中 心部まで行くのは徒歩では無理だということは見当がついた。

Irish Breakfast(=English Breakfast)の後、宿のママ(なんとママはタイ人、アイルランド人と結婚してこの地でB&Bを経営している。たまたま私はシンハビールのTシャツを着ていたためにママはすごく喜んでほんと親切にし てもらった。)に地図をもらい、市の中心部までの行き方を教えてもらった。
このB&Bは空港と市の中心部との中間に位置して、123番のバスで15分で中心部 のオコンネル通りに出られることがわかった。やっと自分の居場所がはっきりし て気分が落ち着いた。

 オコンネル通りでバスを降りて歩き始めた。気温は20度、空気は乾燥し天候 晴れ。ほんと気分の良い気候である。

オコンネル橋を渡りトリニティカレッジ、





グラフトン通りのパフォーマンスを見て、





テンプル・バー、聖パトリック大聖堂、ダブリン城と歩き、市場を覗き、路地 裏に入ったりして街歩きを楽しんだ。

「やっぱ、欧州の街並みは落ち着いていてホッとするなぁ。電柱と電線がない からスッキリしているし歩きやすいし。」
ダブリンは首都とはいえ高層ビルもなく、こじんまりとした街である。

時計が11:00を回った頃。
「そろそろ行こうか・・・」
リフィー川沿いに西に向かって歩きはじめた
通り名を確認しながらしばらく行くと、見慣れた色合い、黒に金文字の看板が 見えてきた。そう、アイルランドが世界の誇る黒ビール(スタウト)のGUINNESS 本社工場である。

広大な敷地である。ダブリン市の面積の何%になるのだろう。
その一角にビジターセンターがあり、入口で入場料4IR£(1IR£=220円)払っ て入場。ちゃんと案内パンフレットは日本語版も用意されていた。

GUINNESSの歴史、醸造機器の展示、歴代の広告など見ていった。
その昔PUBでの話題のネタのために作り始めた、なんでも世界一の本「GUINNESS BOOK」の展示はなかった。純粋にビール関連だけの展示であった。
見学も終わり1階のBARへ。カウンターでバウチャー(入場券がバウチャーにな っている)を渡し「A pint of GUINNESS,please!!」

目の前に1パイントグラスに注がれた黒い液体が置かれた。
GUINNESSを飲むのは2年ぶりぐらいだろうか、目の前にあるできたてと日本に 輸入された缶ビールの味の差は容易に想像できた。

一口。
濃厚で香ばしい液体がなめらかに喉に落ちていく。苦みは思ったほど気になら ない。
「美味い!!」
このできたてを飲むために14,000qの距離を飛んできたのだから・・・酔狂な 話だ・・・(^^;;
一杯飲み干すと二杯目がほしくなってきた。しかし「二杯目からは街のPUBで 飲もう」と決めビジターセンターを後にした。
アイルランド滞在中PUBではGUINNESSでとおした。実は4日めに一度だけラガー ビールを飲んだが気が抜けたようで水っぽく飲めたものではなかった。またスコ ットランドに移動した後もBitterが水っぽく感じてしかたがなかった。私の舌 はGUINNESSの濃厚な味に馴れていったである。

 PUBで観察していたら、地元の人ばかり行くPUBでは9割がGUINNESSを注文し ていた、まさしく国民飲料である。

午後はセント・スティーブンス・グリーン(公園)で子供達の写真を撮ったり 昼寝をした。













公園から市中心部へ戻るときリフィー川沿い歩いていると。GUINNESSの工場の 前あたりで川沿いに人が集まっている。何事かな?堤防から川に降りる階段に水 着の女性が大勢並んでいる。気温は20度を超えたぐらいだろうか、決して水遊び したい環境ではないことは確かである。

川はピート(泥炭)層から流れてきている水なので見た目「真っ黒」である。

「ほんとに泳ぐの?」と思ったら。最初のグループが川に入り泳ぎはじめた。
「ひぇ〜」
船やカヌーが搬送し、救急車も控えている。
ボクも暇なので観客と一緒に川沿いを歩き始めた。

友人とか肉親が泳いでいる人は盛んに応援をしている
最初は次の橋までぐらいかなと思ってついていくとトップ集団は快調に橋をく ぐっていく。
「こりゃ遠泳だ」
みんな泳ぐ泳ぐ。

応援団は歩く人、走る人、自転車の人様々、メイクしている子供までいる。
そして2qはいっただろうか川の真ん中に浮島のゴールが設営されていた。
みんなつぎつぎゴールしていく。

どうやら全員無事ゴールしたみたいである。
しかし首都の真ん中を流れる川それも河口付近でそのような競技ができること はすごいことだと思う。だって大和川や淀川の河口でそんなことした病気になる よ。
足下を見るとGUINNESSの空き缶がころがっていた。
「黒い川には黒いビールか。」と脈絡もなく思った。

フェアリーテールとハイクロス  へ進む

表紙へ
 
海外旅行目次に戻る