|
声で人を感動させる
8/29
声や歌で人を感動させることのできる人をぼくは尊敬します。きのう、ぼくの行っている教会で、「子どもたちに贈るサマーコンサート」が開かれました。ピアニスト矢冨圭子さんとバリトン歌手小林由樹さんによるコラボレーション。ピアノ演奏ももちろん見事で別の機会に取り上げたいのですが、今回ぼくは初めて生で聞くバリトンの声の迫力に圧倒されました。
収容人数100名余りの会場の隅々まで、たった一人の声が満たす。そんなことができちゃうんだという驚き。いや、満たすどころではありません。会場の外にまであふれ出すのです。大きな声が出ると言うだけではない。しっとりとした歌い方にも力強さが常に感じられます。
オペラ歌手ですから表情も豊かで、歌詞の情景が生き生きと浮かんできます。一瞬にしてそこに別の空間が出現するのです。生身の体で一つの世界を作り出すところが演劇の大きな魅力ですが、ぼくはこういうのがたまらなく好きです。
教会のコンサートでいつも感じることは、すばらしい演奏を間近に見て聞くことができること。一つ一つの楽器の音色がこれほど力強く豊かなものなのか、と毎回驚かされます。これがもし劇場だったら、鈍感なぼくなどは「そんなものだろうな」と当たり前に聞き流してしまうに違いありません。でも、コンサートホールでもない場所で、プロの鍛えられた演奏を聴くとき、改めてその力を知らされるのです。
さて、ぼくはといえば、あ、そうだ、この前カラオケで10点満点とれたなあ。え、百点満点中の10点?(笑)
騒音と警察
8/26
おとといの夜、すぐ近くの公園で若者と思われる集団が騒いでいました。10時半過ぎからずっと深夜まで大きな声を出して遊んでいる。夏は暑いから窓を開けたまま寝ることが多いのですが、戸外で騒いだり爆竹をならす奴が結構いて、迷惑します。
この時は爆竹はなかったけれど、声だけでも十分うるさい。なんとか寝ようとするのですが眠りが浅く、深夜1時に騒ぐ声ではっきり目が覚めました。で、ぼくはたまらず110番することにしました。
「はい、事件ですか、事故ですか」と答えたのは若く元気な声。ぼくは状況を説明しました。話を聞いて最後にその若い警察官は「はい、わかりました。さっそく人を回します」と答えて、電話は切れました。
ああ、良かったと思って少し安心し、眠りにつく前にベランダから様子を見ることにしました。ぼくは待ちました。5分、10分……。ところが、いっこうに変化がない。ま、いいか、そのうち治まるだろう、と思って布団の中に戻りました。
しかし! 騒ぎはその後いつまで経っても静まらなかったのです。半分眠ってるような起きてるような状態で過ごし、また時計を見ると、午前3時。まだ声は聞こえていました。最終的にぼくを眠らせたものは「疲れ」でした。
今や日本の警察は、市民が苦情を訴えても、事件が起きない限り腰を上げないと聞いていたけど、ほんとにそうだということがわかりました。それとも、騒いでいた連中に相手にされなかったとか? 日本の未来が心配です。
藤沢周平は面白い
8/24
先日、ブックオフでバーゲンをやっていたので(いつも以上の安値)、5冊買いました。そのうち3冊が藤沢周平の本。まず『秘太刀(ひだち)馬の骨』を読みました。去年の春に読んだ『蝉しぐれ』以来の、まだ2冊目。でも藤沢周平はぼくの好きな作家のリストにしっかり入っているんです。
この『馬の骨』、ミステリー仕立ての構成で、藩の権力争いと主人公の家庭の物語を絡めながら話が進んでいきます。この夫婦の話が泣かせるんですよ。今週の26日からNHK「金曜時代劇」で始まります。小説と映像化されたものは全く別物と考えていいのですが、どんな風に料理されているかはちょっと興味があります。前の『蝉しぐれ』がなかなか良かったですからね。『蝉しぐれ』は映画版も間もなくですね。
今、藤沢周平ブームなんじゃないかと思うのですが、ぼくが勝手にそう思ってるだけなのでしょうか。ここ数年テレビドラマや映画化される作品が多いおかげで、よく目につくのかも知れません。
ぼくが藤沢周平に興味を持ったのは、山田洋次監督『たそがれ清兵衛』の影響もあります。英雄ではない普通の人間がよく描かれていて、こういうタイプの時代劇はそれまでに見たことがなかったので、感動したのです。原作とはかなり筋が違っていましたが、藤沢作品に入る良い道案内になりました(でも、同監督の『隠し剣 鬼の爪』は失敗作)。
というわけで、今この作家の言葉に直接触れる楽しみを味わっているところです。
追記:NHK「金曜時代劇」第1回目を見ましたが、原作とはかなり異質な脚本と、お粗末な演出になっていました。何が違うか? いろいろありますが、決定的なのは、登場人物の陰翳が全く消え失せていることです。うすっぺらなソースで奥深い味をだいなしにした料理みたいなものです。来週からはもう見ようとは思いませんね(8/26)。
秋来ぬと 8/22
きょう、久しぶりに涼しいさわやかな朝を迎えることができました。テレビでは今日の最低気温を27度と言っていたけれど、いやいや、間違いなく体では、秋の風を感じ取っていました。
ゆうべ、今年初めてのサンマを食べました。正確に言うと、冬にも冷凍物を食べているのですが、夏を過ごしたあとのサンマは、これが最初です。でも、旬はまだ少し先のよう。
ゆうべ外に出たら、コオロギの声が聞こえてきました。今までは、夜もずっと蝉の声がかまびすしかったのに。あれ、おとといの晩はどうだったんだろう、もうコオロギは鳴き始めていたんだろうか、と思いました。
そう言えば、団地の階段やベランダにアブラゼミの死骸をよく見かけるようになりました。木にとまっている蝉さえ、手で捕まえられるくらい元気がなくなっています。
そして野原にはいつの間にかおびただしい数の赤トンボが飛び交っています。
そう言えば、今年は入道雲らしい入道雲を見ないでいるうちに、空には鱗雲が浮かぶようになりました。
海にも行けなかったなあ、カブトムシも見なかったなあ、と思う心などお構いなしに、あっちからもこっちからも、秋は確実にやってきています。どこかしら寂しさも感じるけれど、それでいいのです。心のどこかではそろそろ夏とはおさらばしたいという気持もあるから。
大人だけじゃない。 子どもだって、新学期が始まってからしつこく続く残暑なんて、まっぴらごめんでしょう。
品性のない時代
8/19
ホリエモンが衆議院選挙に出馬するようですね。去年の11月、ぼくは堀江さんについて、この欄で次のように書きました。
「堀江さんは一見古い体質に抗しているようですが、新しいのはIT技術だけ。と言っちゃおしまいかも知れませんが、「世の中すべてカネ」というコンセプトはまさに戦後の自民党政治の体質そのものじゃありませんか。」
だから自民党支援によるこの人の出馬は全く不思議ではありません。ぼくの人物評が図らずも的を射ていたと言うことでしょう(ちっとも嬉しくないけど)。でも、一般国民はここまでバカにされちゃってるんだなあ。
変なことが毎日起こることにはだいぶ慣れたつもりですが、程度やペースはぼくの予想をはるかに上回っています。小泉首相のやっていることはその典型。それでもって、衆議院解散が決まったあと、小泉内閣の支持率が上がったというのだから、あいた口がふさがらない。投票にはきちっと参加して、選挙結果を見守りたいと思います。
政治に限らず、社会全般を見ていて気づくのは、人々の考えや行動から品性(大江健三郎氏はdecency
という単語を用いています)がどんどん失われているということです。えげつないこと、下品なことを堂々とやって構わない、むしろそういう奴の方が「得をする」世の中になってしまっているようです。
ぼくの考え方など今では絶滅危惧種に属するのだろうけれど、良い意味での「恥の文化」をもう一度見直した方がいいんじゃないかと思ったりします。
たいへんなお盆
8/16
今日、帰省先の福井から東京に戻ってきました。夏に車で帰省したのは2年ぶり。中央道を通って片道520km。長旅は年を重ねるごとに少しずつ体に応えてきているのか、往路では背中が筋肉痛になってしまいました。何しろドライバーはぼくだけなんだから。
今日はUターンラッシュのピークだと聞いていたので、ちょっと心配だったのですが、朝6時半に出発したおかげで渋滞に巻き込まれることはほとんどなく、午後2時半に帰宅しました。
ところが、昼に立ち寄ったサービスエリアで、東北地方の地震のニュースを知りました。中央道も揺れたはずですが、全然気づきませんでした。自然災害も交通事故同様、いつ遭遇するかわからないものですが、最近ほんとに多い。
さて、福井では、父が死んで最初のお盆(新盆というのですね)でお墓参りをしたり、金沢の21世紀美術館を訪れたり(これに関しては後日報告します)、いろいろスケジュールがありましたが、雨にたたられた毎日でした。金沢へ行った日も大雨。息子が一番楽しみにしていた昆虫採集はほとんど中止(とは言っても、ある程度の収穫はあったので、それについてもまた報告します)。まるで雨に遭うために戻った帰省のようでした。
で、東京に戻る日になって天気が回復するというのも皮肉なもので、子どもたちはブーブー文句を言ってましたが(ぼくも)、いやいや帰り道が嵐じゃなくて良かったと喜んでいようと、自分たちに言い聞かせたのでした。
あなたの性格は?
8/10
先日、妻が、職場の研修会で受けたという性格診断テストをぼくたち家族にも試しました。あなたは5種類の動物を持っているとする。しかしそれを手放さなければならなくなったとして、どの順番で手放すか、というものです。
動物は猿、虎、羊、馬、牛。いやあ、どれも捨てがたいよなあ。絵に描いてみるだけで新たな発見があるじゃありませんか。
猿はただ顔や尻が赤いと言うだけの動物ではない。虎のヒゲがずいぶんゴワゴワしているということを、ぼくは上野動物園で間近に見た時に知りました。古代中国人が「大きな羊」から「美」という文字を作ったと聞くと、ぼくたちはその美しさをどれだけ知っているのかと思ってしまう。また、ダ・ヴィンチを始め多くの芸術家が愛する馬の力強さや美しさも、競馬を見ただけでわかるものではないだろうし。牛について言えば、去年、山古志村の大震災の報道を見た時、家族の一員である牛の美しさを、ほんの少し教えてもらったような気がします。
だから、実物を良く知りもしないで、リアリティーのないイメージで決めたって意味がないよ、性格診断がいい加減だというのは最近も誰かが言ってるじゃないか、と言ったら、家族から、こんなのはその程度のゲームとして楽しめばいいんだよ、と言われました。ちなみにこれらの動物はそれぞれ、財産、子ども、プライド、伴侶、仕事、を表すそうですが、どれがどれかは、当ててみて下さい。そんなクイズにした方が楽しめますね。
で、ぼくが自分で勝手に下した自分の性格診断は「考えすぎのへそ曲がり」です。
美術を通して戦争を考えた 8/8
土曜日(6日)のテレビ番組で、広島に原爆が落とされたことを知っている人の割合が、広島県民の中でさえ半分を切ったと報道していました。驚くべき数字です。第二次世界大戦があったことさえ知らない若者が増えているという傾向は、もうかなり前から表れていましたが。
ぼくは去年の暮れに見た『父と暮せば』を思い出します。最近も朝日新聞に、世界で上演されているという記事が出ていました。原爆を落とされたから報復をするという発想ではなく、悲惨さをなくそうと訴えるところが受け入れられたのだろうと、井上ひさしさんが言っていました。舞台を是非見たいと思っているのですが、映画もすばらしい。ぜひ見て下さい。
ところで、ぼくはこのところずっと、美術関連のテレビ番組を見たり本を読んだりしていますが、戦争はほんとうにすべてを破壊するのだなとつくづく思います。
NHKの新日曜美術館で先月、無言館の特集をやっていました。ここにはまだ行ったことがなくて、いつか行きたいと思っているのです。画学生たちが戦争に駆り出されて、かけがえのない才能を散らしてしまうのを見て、言葉が見つかりませんでした。戦争がなければ、この人たちはもっともっとたくさんのすばらしい絵を描けたのだろうにと。
今のような平和な時代でも、絵を描くという行為はいろんな意味で、主流からははずれた生き方という感覚があります。ましてや、戦時中に絵を描き続けたというのは、本当に好きでなければできなかったろうし、どれほど勇気のいることだったかと思いました。
吹奏楽コンクール 8/6
プロの演奏会もいいけれど、アマチュアの演奏会やコンクールもそれなりの楽しみがあります。ひとつは成長の過程を見る喜びですね。小学生だと、聴かせる技術を持つ人はまだ少ないのですが、中学生以上になるとグンと増えて、結構楽しめます。
夏休み、東京都中学校吹奏楽部コンクールが府中で開かれています。参加校が407校もあるので、8日間に渡り延べ16会場で行なわれます。息子の中学が演奏したのがおととい(4日)。前後合わせて5校の演奏を聴きに行きました。
息子の中学は部員数が少なく、日頃の練習の様子を聞いていると、あまり期待しない方がいいだろうと思っていましたが、予想よりはずっと頑張っていい演奏をしていました。息子の担当はパーカッション。シンバル、木琴、鉄琴、大太鼓と、あれこれ忙しそうに演奏していました。途中木琴のソロもやって、親が言うのも何だけど、これが意外に上手だった(実際、審査員の評価も高かったらしい)。日頃、ヘラヘラ過ごしてるあいつがねえ。
感動したのは前後の2校。部員数も多かったけれど、演奏は聴衆を圧倒するレベルで、最初から最後まで飽きさせず、ぼくは吹奏楽の醍醐味を味わうことができました。
それにしても、最近の傾向として、男子部員が少ないんですね。ぼくの若い頃は結構いたのに。今の時代はごく少数のものだけに人気が偏って、みんな群れて行動しているような所があるのでしょう。でも実は男で楽器が弾けるのって、かっこいいんですよ。
Mr.インクレディブル 8/3
最近ビデオを借りる機会がめっきり減りましたが、昨日久々に子どもたちと一緒に『Mr.
インクレディブル』を借りて見ました。
ぼくはここ数年、アメリカ的なものには昔ほど魅力を感じなくなっていますが、こういうのを見ると、アメリカの国全体が持つエンタテイナーとしての実力を改めて知らされます。単にCGがすごいだけじゃなく、脚本や人物設定などが良くできています。細かい部分を考え尽くしていて、随所に新しいアイデアを盛り込んでいます。楽しませるための努力を惜しまない。
余談ですが、予想外の驚きだったのは、吹き替えのすばらしさ。主人公を三浦友和、奥さん役を黒木瞳が演じているのですが、ピッタリはまっていて、全く違和感がありません。宮崎アニメで起用される有名タレントの中には、声が映像から浮き上がってしまう人がいますが、この『インクレディブル』の方は、全員成功していますね。
敵役の作り方(バットマンに出てきそう)、家族の描き方など、どこを切り取ってもいかにもアメリカなのですが、不思議に嫌みは感じませんでした。奥さんのキャラはなかなかかわいげがあって、ぼくは気に入っちゃった。
アメリカのアニメはどんどん立体CGの方向に進んでいるようで、ぼくは必ずしもそればかりがいいとは思いませんが、『トイ・ストーリー』『バグズライフ』などなど、PIXARの作品は非常に良くできていて、楽しく見ることができます。この映画もレベルの高い娯楽作品です。まだ見ていなかったら、ぜひどうぞ。
ナチュラリスト 8/1
息子が練馬区の夏休み恒例の行事、小中学生を対象にした自然観察会に参加しました。去年に続いて2回目。長野県の武石(たけし)村に2泊3日で滞在し、動物や虫を観察するのです。指導はプロのナチュラリスト、佐々木洋さん。この方、テレビにもしばしば登場します。
直前に台風がやってきて、中止になるかと心配しましたが、幸い台風一過で空気が澄み渡り、素晴らしい3日間だったようです。帰ってきてから、楽しい報告をいっぱい聞きました。タヌキ、サル、ハナカマキリ、ミヤマクワガタなど、都会では見られない動物や昆虫を見ることができたそうです。野生のオオムラサキを見た時は感激したと言ってました。
ナチュラリストは蝶の飛んでいる様子を遠くで見ただけで、種類のみならず、オスかメスかまで区別できるそうですから、すごいものです。かなりの知識がないとやっていけない。でもなかなか楽しそう。
さて、わが家ではここしばらくたくさん飼っていた虫たちが先週、立て続けに死んでしまいました。自然に死んだものもありますが、環境を整えてやればもう少し生き延びられたのに、という虫もいました。その辺が知識不足ゆえで、残念です。これからも勉強していきたいと思います。ナチュラリストを見習って。
結局、わが家はまたいつもの通り、カメのマックだけが餌を求めて水槽の中を暴れ回っているという状態に戻りました。それにしても、こいつだけはほんとうに万年でも生きそうなくらい元気です。
7月の「ごあいさつごあいさつ」
|