何でまた雑誌の創刊ラッシュ?  9/29 
バブル崩壊に伴って雑誌の廃刊が続き、この10年ほどめっきり雑誌の数が減っていましたが、最近また次々に創刊されているようです。そのほとんどはファッション誌なのだけど、でも今どうしてブームのようになっているでしょう?
 そういえばamazon.co.jp でも雑誌コーナーが新しくできました。明らかに出版社と連携で企画されたというのがわかります。
先日銀座の教文館へ行った日が女性雑誌の発売日で、店頭でブースを出して売ってましたよ。しかも先着数十名(数百名?)様には化粧品のおまけ付き。こんなことをしてまで宣伝しようとしている。すごいなあと思いながら、でもぼくはその雑誌の名前を覚える気はありませんでした。
はっきり言って今、雑誌というのは昔ほどの需要や文化的影響はもっていないと思います。見出しを見ても、今さら手に取ってみたいとは思わない。いかにも新味があるように見せて創刊しても、あっという間に種は尽きて、10号も行かないうちに月並みなファッションやグルメや占いの記事に収まっていくのです。男性誌の広告を見ても、不良っぽさを売り物にするなんてそれこそ手垢の付いたコンセプトじゃありませんか。何でそんなものを今ごろやっているんだろう? 出版社が生き延びるための最後の手段が、雑誌創刊による広告費収入の増加ということなのでしょうか。
動向だけは注目していこうと思っています。

またまた本づくりの舞台裏  9/22 
暑さ寒さも彼岸まで……嘘だろう?と毒づきたくなるくらい、ひたすら残暑が続きます。
さて、今日ぼくはまた銀座教文館へ『本づくりの舞台裏』を聴きに行きました。今回の講師は福音館書店の絵本編集長、田村実さん。ご自身が担当された絵本のうち4冊を取り上げて、どのようにできあがったかを丁寧に解説してくださいました。
講演の最初と最後におっしゃっていたのは「絵本編集の仕事は何と大変で、また何と面白いものか」ということです。そして、本は作者だけでなく編集者が関わったときに、よりいいものができあがることがあるのではないか、ということもおっしゃっていました。
確かに。でもそれはいい作家といい編集者がいいものを作りたいという共通意識を持っているときに初めて実現できるものですね。ぼくはこのシリーズの講演を聴くたびに自分の現実を思い、自分の非力さに打ちのめされるのですが、でも必ず大きな刺激を受けて希望を与えられて帰ってくるのです。
今日のお話で紹介された『きつねとうさぎ』『きりのなかのはりねずみ』(どちらもF. ヤールブソワ絵、Y. ノルシュテイン構成、こじまひろこ訳)はすてきな絵本です。『きつね〜』を買っちゃいました。
ところで講演の間、ぼくの隣にいた50代後半と見られるおばさん、お話にいちいち「うんうん」「そうそう」「あらまあ」と過剰反応をしていました。こういう人、いるよねえ。

読書日記  9/14 
久しぶりに英語の本を1冊読み通しました。5月末にRoald Dahl の作品
を2冊読んで以来です。読みかけならたくさんあるんですが、その途中に日本語の本があれこれ割り込んだりすると、なかなか読了しない。これでは達成感がなくてよくありません。一気に読み終えることにしました。
読んだのは、Holes という青少年向けの小説で著者はLouis Sachar
。『穴』という題で邦訳もされています。読みやすいので、英語の読書力をつけるのにいいでしょう。お話はいかにもアメリカ的ですね。感想は、まあまあ。
映画にもなったみたいですが、日本には来ていないのでは? ぼくの買ったペーパーバック版の表紙は映画の写真でした。本文にも8ページ映画の写真が挿入されていました。
ハリポタなどもそうですが、小説が映画化されると登場人物がかっこよくなっちゃうのがぼくは好きではありません。この物語の主人公は肥満なのに、映画ではふつうの体型ですてきな顔の少年になってしまっている。
もうひとつ、外出のときに読んでいた星野道夫の『ノーザンライツ』も数ヶ月越しでやっと読み終わりました。電車に乗っても読まなかったりしたので、間が空きすぎました。読む勢い保つことは大切ですね。それにしてもこの人の本は、読む前に心を整えて、大自然に身をゆだねるつもりで読むのが正しい読書の仕方のような気がします。時間の流れが違ってくるから。

小学館ノンフィクション大賞  9/11 
ぼくの友達でフリーライターをやっている杉山春さんのことをちょっとご報告。
杉山さんとそのご家族とは教会で家族ぐるみのおつきあいをさせてもらっていて、当サイトの「絵日記ですよ」第1作目は、この人のお宅
へ遊びに行ったときのものです。その杉山さんが今年の小学館ノンフィクション大賞を受賞しました。これはめでたい。ということで、昨日贈賞式に招かれて行って来ました。
広い会場を使った盛大なパーティーでした。さすが大手出版社だけあります。ぼくにしてみれば最近にない非日常の世界で、二次会も含めて楽しく過ごせました。
この日、文芸ポストが発売になり(小学館が式と雑誌発売を合わせたスケジュールを組んだのでしょう)出席者へのおみやげとして配られました。その中に受賞作の抄録と選考委員の選評が掲載されていました。帰りの電車の中で半分ほど読み、残りを今朝読み終えました。
作品は『伊織ちゃんはなぜ死んだか』という題で、2000年に愛知県で起きた児童虐待事件を丹念に取材した労作です。3歳の女の子が若い両親からいわゆるネグレクトの虐待を受けて孤独な死を迎えたという、いま日本のあちこちで頻発している社会現象を取り上げています。悲惨な現実が無駄のない淡々とした文体で描き出され、読んでいて言葉を失います。
単行本は10月下旬に発売予定。完全な形で読める日が楽しみです。

ちょっと覚えたい言葉  9/7 
心に留めておきたい言葉の
蓄えは、多ければ多いほど、ぼくたちの生活は豊かになります。
NHK『英語でしゃべらナイト』では、毎週すてきな言葉がいくつも出てきますが、その一つをご紹介します。8/30放映のゲストにイギリスのWill Kemp というバレーダンサー(兼俳優)がいたのですが、これがまたイケメンなんです。彼が視聴者に向けて残してくれたメッセージ。
Live life like there's no tomorrow. Love like you've never been hurt. (明日がないかのように生きなさい。傷ついたことがないかのように愛しなさい)
これは彼が考えた言葉なんでしょうか?それともどこかかからの引用かな?ま、どっちでもいいとして、力のある言葉です。若い人向けの言葉と言っていいかな。
特に後半のLove like 〜がいい。人は人生経験を重ねていくと、いつの間にか他者への関わり方を割り引いていくようになるものです。もちろんそれはそれで一つの大切な成熟という過程であり、現実は「傷つくことをおそれず」なんて無防備にやってればいいほど甘くはありません。でもひたすら用心深くあるいは小賢しくなるだけでは、貧しい気がします。

どうでもいいかもしれない疑問  9/4 
日常使っている言葉について、ちょっと気がついた疑問。
「負けず嫌い」ってよく言いますよね。負けるのが嫌いなことですね。では「食わず嫌い」は? 食うのが嫌いなこと……ではなくて、食わないのに嫌い、という意味であることはみなさんご存じ。でも言葉の構成から言うと、前者の意味ではないか? 
いや、むしろ「負けず嫌い」の言葉の方が成り立ちが変なのかもしれない。……と思って、新明解国語辞典で「負けず嫌い」を引きました。そうしたらこの単語は、「負け嫌い」と「負けず」の混同から生じた語だということです。いつ、どうして、そんな混同が始まったのでしょうね。
もうひとつ、「梅干し」。普段何とも思わずに使っているけど、この言い方に習えば、干し椎茸は「椎茸干し」と言っても良さそうな気がする。逆になぜ梅干しを「干し梅」とは言わないか。また「布団干し」は「干した布団」を指すのではないか。「梅干し」のような【名詞】+【動詞の連用形】は、ふつう「梅を干す行為」を指すはずです。それがいつの間に、干した梅そのものを指すようになったのか? 何か梅独自の文化的由来があるのでしょうか?
ふとこんなことを考えたのは数日前。こんなことを疑問に思ったところでどうなるわけでもないなあと思いながらも、言葉っておもしろいなあと改めて感じた夏の終わりでした。

ニオイヒバ  9/2  
子どもたちの夏休みがオリンピックとともに終わりました。祭りの後の寂しさが、秋風とともに心に忍び込んできます。でも、新しい季節に向かってまた出発だ。
今回のオリンピックがいつも以上に面白かったのは、やっぱり日本選手があんなにたくさんメダルを取ったからでしょうね。最後に印象に残ったのは、男子マラソンで変な男に妨害されたデリマ選手のゴールシーンでした。飛行機のように手を左右に伸ばして走る姿が希望を与えてくれました。ハンガリーのアヌシュがドーピング疑惑で醜態をさらせばさらすほど、デリマ選手の前向きな姿勢が輝いて見えました。あんな風に生きたいものだと思います。
先日東大農場へ行ったとき、ニオイヒバという木がありました。ヒノキ科で、名前から推測できるように、すてきな香りがします。インターネットのあるホームページでは「パイナップル様の匂い」と書いてありましたが、そこまで甘ったるくはない。
葉っぱの一部をとってきて、ずっと食卓においてあります。香りはどぎつくなく、鼻に近づけてようやくわかる程度。でも1週間たった今もちゃんと香りを放っていて、それをかぐと気持ちが穏やかになります。
香りと思い出はつながっています。もしかしていつかまたニオイヒバの香りをかいだら、アテネ五輪を思い出すかもしれません。これがオリーブの香りだったら、いかにもアテネなのでしょうが。

8月の「ごあいさつごあいさつ」