第45回
『日本一元気な動物園――旭山動物園8年間の記録』
多田ヒロミ、ザ・ライトスタッフオフィス/著 小学館、2005、\1400+税
ぼくはこの歳になっても動物園が好きです。しょっちゅう行くわけではありませんが、たまに行って、動物をスケッチします。動物園は絵に描きたいものだらけです。
いま全国的に、動物園が面白いと注目されていますが、中でも北海道旭川市の旭山動物園はここ1、2年の間にぐっと有名になりました。ぼくがこの動物園を知ったのは、去年だったように思います。新聞で、入園者数が上野動物園を上回って日本一になった、という記事を見つけてびっくりしました。それで興味を持つようになり、その後、テレビでも何度か見ていますが、小菅(こすげ)園長をはじめとするスタッフの考え方と熱意にいつも感動させられます。ああ、これは本物だと思いました。こんな風に自然や動物のことを考え、行動している人たちがいるというのは嬉しいことです。
今年初めに見たドキュメンタリーで小菅さんはこんなことをおっしゃっていました。「動物を見て、かわいいと言う方は多いのですが、そうではなくて、動物はすごいんだ、ということをここで感じてもらいたい。」この言葉が今も強く心に残っています。ぜひ一度この動物園に行ってみたいものです。それに何と、絵本作家のあべ弘士さんがこの動物園で働いていたと言うことを知って、ますます好きになりました。
しかし今でこそ超人気のこの動物園も、一時期は入場者数が減り続け、9年前には廃園の危機に直面したことがあるそうです。そこからどうやって立て直したか? 小手先のテクニックに逃げず、動物園はどうあるべきかという本質を追究して、新しい施設の企画を考え、実現していったのです。それが、成功の最大の要因でした。
さて、本書は大きく2部に分かれていて、前半の第1部は施設紹介。楽しい写真満載で、動物園を回るための親切なガイドブックになっています。旭山動物園まで行くことがちょっと難しい人にとっては、読んでいるだけでも面白く、特に飼育係からのワンポイントレクチャーはいいですね。またひとつ勉強しちゃった、って偉くなったような。
そして後半の第2部が、上に述べた、今日の成功に至るまでの8年間の記録です。ここからわたしたちはビジネスのあり方、環境問題など、多くのことを学ぶことができます。テレビ番組だけではわからなかったことを知りました。本書の価値はこの第2部にこそあり、とぼくは確信します。
10/30/2005
「言葉ですよ」のトップへもどる
|