第43回

『日本美術応援団』
            赤瀬川原平・山下裕二/著
 ちくま文庫、2004、\950+税

 日本美術はお好きですか? あまり関心がないとか、難しくてようわからんいう人に特におすすめなのがこの本。日本美術がたちまち身近なものに感じられるようになります。ぼくが最近日本美術に強く惹かれていることは当サイトでたびたびふれていますが、読んでいて、そんなぼくのために作ってくれた本のような気がしました。
 雪舟から始まって、等伯、北斎、縄文土器、安井曾太郎など、広範囲の日本美術を取り上げ、二人の対談形式で日本美術のすごさ面白さを語っています。カラー図版満載。アプローチの仕方が従来のアカデミズムにとらわれていないところがいい。赤瀬川さんが関わっているとなれば、そういう内容だというのは読む前から予想できますね。
 もう一人の著者、山下裕二さんについては今まで知らなかったのですが、日本美術史の専門家。造詣の深さは本書を読んでわかります。彼は後書きの中で、
日本美術を「歴史的に見ない」ことの快感を前面に押し出した、と述べています。それは専門家である彼が「自分の属する世界の殻がどうしようもなく気になり始めて、それを内側からぶち壊そうとする気分が、少しずつふくらんできた」からです。
 最初は画集を前にして始まった対談ですが、数回目から各地の美術館へ足を運んで実物を見ながらの対談に変更されました。赤瀬川さんは前書きで「日本美術を見るのは生に限る」と断言しています。それはどんな芸術についても言えるのですが、特に日本美術についてはその要素が大きいと言うのです。確かに、ぼくも丸山応挙展を見てそれは感じました。
 考えてみればわたしたちは、万事において受験勉強風の接し方しかできなくなっているところがあります。北斎=浮世絵=富岳三十六景、はいおしまい。そこには何の感動も理解もありません。しかし著者たちは、美術品を直に見ることで味わう感動と新たな理解を、この対談によってわたしたちに伝えてくれているのです。
 いろんな美術を見に行く楽しみがまた増えました。笑いつつ、感心しつつ、多くを学べる楽しい本です。
                               2/4/2005

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