第26回
『あてになる国のつくり方 フツー人の誇りと責任』 井上ひさし他/著
光文社、2002、\1300+税
ぼくたちは今、世界や日本で起こっていることについて、無関心でいたり他人任せにしていてはいけないのだ。この本を読んでつくづくそう思う。自分や子どもたちの生存がどんどん危機にさらされていくだけだから。作家の井上ひさしさんと彼の主催する生活者大学校の3人の講師がそれぞれ社会全般
、農業、経済、NGOの観点から、ぼくたちが世界をどう見て何をすればいいかを語ってくれる。これはその講義録を加筆・再構成したもの。
序章で井上ひさしさんは言う。「世の中のことの責任は、世の中を動かしている偉い人にあるんだ、というのが、これまでのフツー人の考え方でした。(中略)フツー人には責任がないとは言っていられない。」そしてわたしたちの社会は、わたしたちで変えられるということを、具体的にボローニャの街づくりの例を挙げて説いていく。問題の検討する中でクローズアップされているのは、経済グローバリゼーションと昨年の9.11テロ以後の世界情勢。どの講義も新しい行動を促すような貴重な意見ばかりだ。特に農業については、身近な問題のはずなのに、ぼくみたいに直接携わっていない人間は、実相を知らずに過ごしてしまっている。憲法と農業は国の基本である、日本の農業を守ろう、と主張する理由が分かってくる。目が見開かれた思い。ぼやーっとはしていられません。
なお、グローバリゼーションの問題を全く別の視点から論じたものに、『ナショナリズムの克服』(森巣博、姜尚中/共著、集英社新書、2002)がある。これまた刺激的でおもしろい。併せて読むと、今の日本の問題点がまたひとつはっきり見えてくる。
12/12/2002
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