第23回

『教科書でおぼえた名詩』 文春ネスコ1997、\1400+税

 97年6月発行のこの本は、2002年5月で17刷。読者層はおそらくほとんど40代以上だろう。でも単に郷愁からだけでなく、詩歌の「基本食」という意味で、この本は家においておく価値がある。これは覚えておいて損はないという代表的な詩歌ばかりだから。昭和20年代から平成8年までに日本の学校で使われた中学・高校の国語の教科書1500冊あまりから選りすぐった愛唱詩歌集。新しいところでは、俵万智さんの『サラダ記念日』から3首、掲載されている。
 
ぼくは子どものころ、とりたてて詩に興味があったわけでもないし、まじめに授業を聞く優等生ではなかったけれど、あのころに出会い、記憶の底に沈んでしまった詩や短歌が、今ごろちょっとした精神の糧になっていることに気づく。名詩の中には、読んだ当時すぐに良さを感じることができたものもあるが、今読み返してみて、やっとしみじみ味わえる詩もある。もちろん今回この本で初めて出会う詩も多く、そこからも新鮮な驚きと楽しみが与えられる。一方、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」なんて、この歳になって一言一言味わいながらじっくり読むと、作者の思いや感情が全く新しい形で立ち現れてきて、鳥肌ものだ。中学2年の時の先生の解説をなぜか今も覚えているが、その意味が今ごろになってよくわかる。
 巻末の「うろ覚え索引」は、記憶に残る一節から探し出すことができるもので、心憎い配慮だ。
                               11/14/2002

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