第18回

『読書力』 齋藤 孝/著  岩波新書、2002、\700+税
 

 この人は今、多くの著書で、言葉や教育について伝統的手法の復権を叫んでいる。その特徴の一つは身体性の重視。頭だけの理解や学習が様々な弊害を生んでいることを指摘し、スポーツのような感覚で知性を鍛えることを奨励する。『「できる人」はどこがちがうのか』でもその論理が述べられている。
 この著者が読書の意義を正攻法で説いたのが本書だ。日本人の読書力が低下していることにかなりの危機感をもって
いることが、読んでいてひしひしと伝わってくる。ぼくの読書歴など貧弱そのものだが、読書が人生の大きな部分を占めていることは確かだ。だからこの本の内容には共感する部分が多く、読書を通してあるいは読書そのものについて、ぼくが発見したり考えてきたことを、この本で確認することができた。一言で言うなら、読書は決して趣味のレベルではなく、呼吸や食と同じくらいに重要な営みであり、生きることそのものであるということだ。
 この本
では単に論を展開するだけでなく、具体的な読書法が示されているところがいい。例えば文庫100冊を4年間で読み終えることを目標にする、3色ボールペンで線を引きながら読む(このとおりに実行する必要はないだろうけど)、といったようなこと。さらに巻末には読書力アップのための文庫百選が掲載されていて、若い人にはいいガイドになる。もちろんこれはあくまでも参考であって、全部を読むことが義務になってしまうと、読書は苦痛でしかない。参考にしながら、自分の読書法を身につけることが肝心だ。
                               10/16/2002

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