第13回
『情熱のブラジルサッカー』 沢田啓明/著、平凡社新書、2002、\760+税
2002年W杯は、日本のマスコミとFIFAの頽廃ぶりを浮き彫りにして、後味の悪いものに終わったが、それでも準決勝以降の試合は順当な結果になって良かった。最後はブラジルの快勝。ぼくはブラジルチームの中では、個人的にロナウジーニョのとぼけた顔と鮮やかなテクニックが気に入っているが、彼らのあの強さや、華麗なプレイはどこから来るのだろう。そんなことに興味を持った人にお薦めなのが、この本。
著者はぼくの大学時代の友人。現在サンパウロに住み、実際に試合を観戦し、現地の空気の中でサッカーを体験しているから、話にリアリティーがあって、本書はカフェでサンバでも聞きながら、楽しい話を聞いているような感覚がある。もちろんルポだけでなく、文献調査によるブラジルサッカーの歴史や、今回のW杯南米予選の報告もある。さらに単なる礼賛に終わらず、ブラジルサッカーの多くの問題点も指摘し、将来への熱い期待も盛り込まれている。
読んでいてつくづく感じさせられる日本とブラジルの違いは、生活への浸透度の差だ。子どもから老人に至るまで、サッカー文化が国民の生活にしっかりと根付いているから幅広いサポートができるのだし、選手のみならずサポーターの層の厚さが優れた選手を生み出すのだと、改めて思う。特に6章のメディアに関する記述は、日本のサッカーを発展させるために日本人が耳を傾けるべき提言だろう。日本はまだまだ歴史が浅い。それは可能性もまた大きいということ。ここまでの急速な発展は見事なものだ。もっと上を目指して、いつかブラジルと対等に渡り合えるくらいに成長する日を待とう。
7/18/2002
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