第6回

『自給自足』 
  小林カツ代/著、日経新聞社、1996、\1262+税
 
http://www.nikkei.co.jp/pub/newbooks96-12-1/16204/16204.html

 台所に立ったことのない男性はぜひこの本を買って、料理をつくってみてほしい。ぼくはもう1年以上「主夫の料理」を担当しているが、その際に非常に重宝しているのが、小林カツ代さんの本。何がいいかというと、手間をかけずに、楽しくおいしく料理をつくろう、という基本姿勢だ。
 へんなガンバリズムで炊事をしていると、最初からあらゆることを完璧にこなさないといけないような義務感を抱えてしまい、料理づくりが苦痛になる。うんちくを傾けて、素材にこだわるいわゆる「男の料理」にはそういう部分がある。そうでなくても、料理はやたらめんどうそうだ、と感じる人が多いのではないか。
 そういうプレッシャーから解放してくれるのが、小林カツ代さんの本。たくさん本を出しているが、ここではその中から、男性に役立つもの。 発行元にご注目。日経新聞社である。つまりこれは、ぼくの想像だが、主に単身赴任の男性が主な読者として想定されているのではないか。今まで料理なんかやったことない、と言う人でも興味を持って料理ができるように書かれていて、気軽に読める。それにこの人独特の擬音をふんだんに用いた文章(醤油をピャッとかける、とか、魚をドヒャーッと並べる、とか)が面 白い。さすが関西のご出身。それでいて、料理一般や作り方の基本が抑えてある。何が大さじ1とか小さじ2とか、材料の分量 を細かく言わないところもまた気持ちいい。
 もちろん、女性が読んでも役に立つ。
 
                                                                       5/11/2001

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